石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(33)覚悟が問われる
日曜日に王子スタジアムであった西日本地区代表決定戦の結果を伝えるデイリースポーツの記事がツイッタ-で紹介されていた。
「鳥内監督 思わぬ苦戦に怒り」という見出しのついたこんな記事である。
……主力を温存したとはいえ、ふがいない戦いぶりに鳥内監督は「真剣にやれよ」と怒り心頭だった……。
僕もスタンドから応援していて、全く同じ心境だった。ほんの1週間前、鬼気迫るプレーを連発する立命を相手に一歩も譲らず、骨をきしませ、気力と知恵の限りを尽くして戦った、これが同じチームの戦いぶりとは、全く思えなかった。
それを象徴する場面が、ファイターズの最初の攻撃シリーズから現れた。自陣37ヤードからの攻撃。QB前田が木戸への短いパスを通し、RB鷺野が12ヤードまずはダウンを更新。相手陣45ヤードからの攻撃もRB西山と野々垣が走って3ダウン2ヤード。次もランプレーだったが、この2ヤードが進めない。相手陣37ヤードから伊豆が相手ゴール前に転がる絶妙のパントを蹴ったが、それをカバーチームの3人がお見合いする形で譲り合い、結局はタッチバック。
相手にとっては、ゴール前1ヤード付近からの攻撃を労せずして25ヤードからの攻撃としてもらったのだから、こんなおいしい話はない。もっといえば、いきなりパスとランでダウンを更新され、関西代表の力を見せ付けられて浮き足立った相手に、力比べのランを1ヤードで止められ、あげくにこんな失敗をして、相手に「関学は油断している。やれるぞ」と思わせてしまったのだ。
鳥内監督だけでなく、スタンドから応援している身としても「もっと真剣にやれよ」といいいたくなる。
結局、第1Qは0-0。第2QになってようやくK三輪のFGで3点を先行したが、ひたすらランプレーを続ける名城の攻撃を食い止めることが出来ず、逆に相手にTDを奪われ、2点コンバージョンも決められて8-3。今季初めて相手にリードを許す展開となる。
次のファイターズの攻撃は、1年生RB池永弟のナイスリターンで自陣45ヤードから。ここで前田がWR木戸、梅本、松下に立て続けにパスを通して相手ゴール前に迫ったが、ここも肝心なところでパスが通らず、三輪のFGで3点を挙げただけ。依然相手にリードを許したままの苦しい試合である。
ようやく次の攻撃シリーズ。自陣21ヤードから連続して短いパスを決めて陣地を進め、残り時間が40秒を切ったところで前田から木戸へのTDパスが決まって逆転。14-8で前半を折り返す。
後半は、一度はグラウンドから離れていた主力選手を次々と投入。まず守備を固めてから主導権の確保に努める。ようやく第3Q6分30秒、三輪がこの試合3本目のFGを決めて17-8。TD1本では追いつかれないところまで引き離すことが出来た。
この辺りから、攻守の歯車がかみ合う。第4Qに入ると、最初のシリーズは三輪が4本目のFGを決めて20-8。相手は自陣30ヤード付近から強引に第4ダウンのプレーを仕掛けてきたが、これを冷静に止めて攻守交代。相手陣21ヤード付近からの攻撃をRB三好の18ヤードTDランに結び付けて27-8。その後は互いに1本ずつTDを挙げて結局は34-14で試合は終了した。
試合から一晩がたち、少し冷静になったから、こうして試合を振り返ることが出来るが、スタンドで応援しているときは、それどころではない。「今日は交代メンバーが、その実力を披露するチャンス」「出来れば立ち上がりに3本ほどTDをとって、1年生にも出場機会を与えてほしい」なんて、勝手に想像していたのに、それが思いもよらない苦戦である。
なんせ、あの強い立命や京大を零点に封じてきたファイターズである。関西リーグではまともに相手にTDを許さなかったチームである。それがなぜ、こんな試合を演じてしまったのか。主力を少なからず温存したとはいえ、スタメンはほとんどが先日の立命戦を戦ったメンバーである。交代メンバーの選手たちもそれぞれ監督やコーチが抜擢してグラウンドに送り出した期待の人材である。さらにいえば、甲子園ボウルの1Q15分の試合を心置きなく戦えるように交代メンバーの層を厚くしたいという願望のこもった選手起用である。
その期待に応えられなかった選手が多かったのはどうしてか。監督の談話にある通り「もっと真剣にやれ」ということなのか。それとも、日ごろの取り組みに問題があるのか。
こうした疑問に対して、僕なりの回答というのか、感慨はあるのだが、あえてここでは触れない。それよりも、この日の試合に交代メンバーとして出場した選手全員にいっておきたいことがある。
ファイターズのメンバーとしてグラウンドに出る以上、そのすべてがあの立命戦を戦ったメンバーと同等の覚悟をもって試合に臨まなければならないということだ。もちろん、口先だけではダメ。日ごろの練習から、常時、その覚悟を確かめ、その覚悟にふさわしい取り組みが求められる。
甲子園ボウルまで2週間足らず。練習出来る日は限られている。その限られた時間をチームの全員が火の玉となって過ごせるかどうか。チームに関わる者すべての覚悟が問われている。
「鳥内監督 思わぬ苦戦に怒り」という見出しのついたこんな記事である。
……主力を温存したとはいえ、ふがいない戦いぶりに鳥内監督は「真剣にやれよ」と怒り心頭だった……。
僕もスタンドから応援していて、全く同じ心境だった。ほんの1週間前、鬼気迫るプレーを連発する立命を相手に一歩も譲らず、骨をきしませ、気力と知恵の限りを尽くして戦った、これが同じチームの戦いぶりとは、全く思えなかった。
それを象徴する場面が、ファイターズの最初の攻撃シリーズから現れた。自陣37ヤードからの攻撃。QB前田が木戸への短いパスを通し、RB鷺野が12ヤードまずはダウンを更新。相手陣45ヤードからの攻撃もRB西山と野々垣が走って3ダウン2ヤード。次もランプレーだったが、この2ヤードが進めない。相手陣37ヤードから伊豆が相手ゴール前に転がる絶妙のパントを蹴ったが、それをカバーチームの3人がお見合いする形で譲り合い、結局はタッチバック。
相手にとっては、ゴール前1ヤード付近からの攻撃を労せずして25ヤードからの攻撃としてもらったのだから、こんなおいしい話はない。もっといえば、いきなりパスとランでダウンを更新され、関西代表の力を見せ付けられて浮き足立った相手に、力比べのランを1ヤードで止められ、あげくにこんな失敗をして、相手に「関学は油断している。やれるぞ」と思わせてしまったのだ。
鳥内監督だけでなく、スタンドから応援している身としても「もっと真剣にやれよ」といいいたくなる。
結局、第1Qは0-0。第2QになってようやくK三輪のFGで3点を先行したが、ひたすらランプレーを続ける名城の攻撃を食い止めることが出来ず、逆に相手にTDを奪われ、2点コンバージョンも決められて8-3。今季初めて相手にリードを許す展開となる。
次のファイターズの攻撃は、1年生RB池永弟のナイスリターンで自陣45ヤードから。ここで前田がWR木戸、梅本、松下に立て続けにパスを通して相手ゴール前に迫ったが、ここも肝心なところでパスが通らず、三輪のFGで3点を挙げただけ。依然相手にリードを許したままの苦しい試合である。
ようやく次の攻撃シリーズ。自陣21ヤードから連続して短いパスを決めて陣地を進め、残り時間が40秒を切ったところで前田から木戸へのTDパスが決まって逆転。14-8で前半を折り返す。
後半は、一度はグラウンドから離れていた主力選手を次々と投入。まず守備を固めてから主導権の確保に努める。ようやく第3Q6分30秒、三輪がこの試合3本目のFGを決めて17-8。TD1本では追いつかれないところまで引き離すことが出来た。
この辺りから、攻守の歯車がかみ合う。第4Qに入ると、最初のシリーズは三輪が4本目のFGを決めて20-8。相手は自陣30ヤード付近から強引に第4ダウンのプレーを仕掛けてきたが、これを冷静に止めて攻守交代。相手陣21ヤード付近からの攻撃をRB三好の18ヤードTDランに結び付けて27-8。その後は互いに1本ずつTDを挙げて結局は34-14で試合は終了した。
試合から一晩がたち、少し冷静になったから、こうして試合を振り返ることが出来るが、スタンドで応援しているときは、それどころではない。「今日は交代メンバーが、その実力を披露するチャンス」「出来れば立ち上がりに3本ほどTDをとって、1年生にも出場機会を与えてほしい」なんて、勝手に想像していたのに、それが思いもよらない苦戦である。
なんせ、あの強い立命や京大を零点に封じてきたファイターズである。関西リーグではまともに相手にTDを許さなかったチームである。それがなぜ、こんな試合を演じてしまったのか。主力を少なからず温存したとはいえ、スタメンはほとんどが先日の立命戦を戦ったメンバーである。交代メンバーの選手たちもそれぞれ監督やコーチが抜擢してグラウンドに送り出した期待の人材である。さらにいえば、甲子園ボウルの1Q15分の試合を心置きなく戦えるように交代メンバーの層を厚くしたいという願望のこもった選手起用である。
その期待に応えられなかった選手が多かったのはどうしてか。監督の談話にある通り「もっと真剣にやれ」ということなのか。それとも、日ごろの取り組みに問題があるのか。
こうした疑問に対して、僕なりの回答というのか、感慨はあるのだが、あえてここでは触れない。それよりも、この日の試合に交代メンバーとして出場した選手全員にいっておきたいことがある。
ファイターズのメンバーとしてグラウンドに出る以上、そのすべてがあの立命戦を戦ったメンバーと同等の覚悟をもって試合に臨まなければならないということだ。もちろん、口先だけではダメ。日ごろの練習から、常時、その覚悟を確かめ、その覚悟にふさわしい取り組みが求められる。
甲子園ボウルまで2週間足らず。練習出来る日は限られている。その限られた時間をチームの全員が火の玉となって過ごせるかどうか。チームに関わる者すべての覚悟が問われている。
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