石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(9)冷酷な現実
2度あることは3度ある、とはいかなかった。5月30日のアサヒ飲料チャレンジャーズ戦のことである。
5月に入ってから組まれた日大と京大の試合は、ともに攻守とも相手に主導権を握られ、圧倒された。試合そのものは何とか勝つことができたが、スタンドから見ていても、勝てたのが不思議なくらいだった。相手がここぞというときに決め手を逃してくれたからだろう。
しかし、この日の相手は違った。立ち上がりから容赦なくファイターズに襲いかかり、攻守ともに力の差を見せつけた。攻めてはファイターズのラインを押しまくり、QB井川が次々と余裕のパスを決める。あれよあれよという間に先制のTD。続けて、2本目のTDも簡単に決める。
守っても、和久や石田を中心にした1列目がファイターズOLを圧倒、力とスピードでラインをずたずたに引き裂いていく。ファイターズは、攻めの糸口さえつかめない。先発したQB加藤のランの記録が5回のラッシュでマイナス32ヤード。この数字を見ただけでも、いかにラインが押しまくられていたかが分かるだろう。
突然の雷鳴で試合が中断。後半の開始が40分ほど遅れたが、事態は少しも変わらない。QBは浅海に交代したが、ラインがたびたび割られ、思うようにプレーをさせてもらえない。逆に相手には2本のTDと1本のフィールドゴールを決められ、4Q半ばでついに24-0。屈辱の完封負けという姿まで視野に入ってくる。
ようやく、4Qも半ばを過ぎて、河原が39ヤードのランで活路を開く。これで元気の出たオフェンス陣が踏ん張り、浅海と稲村のランでゴール前23ヤードまで陣地を進める。ここで浅海が左のオープンスペースを駆け上がったWR萬代に絶妙のパスを通し、ようやくTD。スタンドの観客もほっと一息である。
余談になるが、この4年生コンビは、このプレーの直前にも、まったく同じコースのパスを投げ、失敗に終わっている。同じ失敗を2度は繰り返さないという気持ちのこもったプレーを成功させてくれたことが、敗戦の中で唯一、うれしいことだった。
話を戻す。せっかく一矢を報いたが、ファイターズの反撃もここまで。逆に、今春までファイターズで活躍していたQB幸田に67ヤードのロングパスを決められ、万事休す。31-7の完敗となった。
この試合は、試合前から楽しみだった。相手のメンバー表を見ると、懐かしいファイターズの卒業生が多数、名を連ねている。背番号の若い順にRB古谷明仁、QB有馬隼人、QB幸田謙二郎、DB池谷陽平、DB山本幸司、DB星田光司、LB河合雄輝、LB毛利匡宏、DL石田貴祐。実に9人にも上る。普段、練習にも顔を出し、後輩の指導もしてくれるこの面々と、まともにぶつかり、どこまで「恩返し」ができるか、注目していた。
だが、期待はもろくも裏切られた。ファイターズOBがはつらつとプレーしているのに、現役はそれに対抗できない。攻守とも好き放題にラインを割られ、それになすすべもない状態。ときおり相手の裏をかいたRB久司へのショベルパスやWR松原へのパスが通るが、その攻撃が続かない。
ようやく終盤になって、相手がメンバーを交代させ、ファイターズも攻守に若手やこれまであまり試合に出ていなかったメンバーを投入してから、ようやく試合が落ち着いた。なかでも、1年生のOL和田(箕面)、DL金本(滝川)、梶原(箕面自由)、4年生のDL三村、LB吉川(よしかわ)、2年生のLB辻本らの動きは、先発メンバーと比べて、少しも遜色がなかった。
それにしても、1年生やこれまでけがなどで試合に出ていなかったメンバーが出てから試合が落ち着くとはどういうことだろう。先発メンバーに、控えのメンバーを圧倒するほどの力がないということか。ドングリの背比べといっては失礼だが、上級生といっても、下級生を圧倒するだけの突出した力を付けていないということか。チーム内の競争がないから、いつまでたっても強力チームに対抗できる人材が育たないということか。
この日の試合で白日の下にさらされたのは、社会人の一流チームには、手も足も出なかったということである。個別に素晴らしいプレーはあっても、それを得点につなげるチームとしての力が備わっていなかったということである。日大や京大との戦いでも、その点は明らかだったが、この試合に完敗したことで、その実態が明確になった。「日本1を目指すなんて、口にするのはおこがましい」と鳥内監督がいう通り、現在の実力の程度が天下にさらされたのである。
さあ、どうする。
自分で立ち上がるしかない。デフェンス、オフェンスの別なく、グラウンドで戦うすべてのメンバーが「オレがファイターズを引っ張る」という気構えを持って、鍛錬を続けるしかない。誰も助けてくれないのである。
5月に入ってから組まれた日大と京大の試合は、ともに攻守とも相手に主導権を握られ、圧倒された。試合そのものは何とか勝つことができたが、スタンドから見ていても、勝てたのが不思議なくらいだった。相手がここぞというときに決め手を逃してくれたからだろう。
しかし、この日の相手は違った。立ち上がりから容赦なくファイターズに襲いかかり、攻守ともに力の差を見せつけた。攻めてはファイターズのラインを押しまくり、QB井川が次々と余裕のパスを決める。あれよあれよという間に先制のTD。続けて、2本目のTDも簡単に決める。
守っても、和久や石田を中心にした1列目がファイターズOLを圧倒、力とスピードでラインをずたずたに引き裂いていく。ファイターズは、攻めの糸口さえつかめない。先発したQB加藤のランの記録が5回のラッシュでマイナス32ヤード。この数字を見ただけでも、いかにラインが押しまくられていたかが分かるだろう。
突然の雷鳴で試合が中断。後半の開始が40分ほど遅れたが、事態は少しも変わらない。QBは浅海に交代したが、ラインがたびたび割られ、思うようにプレーをさせてもらえない。逆に相手には2本のTDと1本のフィールドゴールを決められ、4Q半ばでついに24-0。屈辱の完封負けという姿まで視野に入ってくる。
ようやく、4Qも半ばを過ぎて、河原が39ヤードのランで活路を開く。これで元気の出たオフェンス陣が踏ん張り、浅海と稲村のランでゴール前23ヤードまで陣地を進める。ここで浅海が左のオープンスペースを駆け上がったWR萬代に絶妙のパスを通し、ようやくTD。スタンドの観客もほっと一息である。
余談になるが、この4年生コンビは、このプレーの直前にも、まったく同じコースのパスを投げ、失敗に終わっている。同じ失敗を2度は繰り返さないという気持ちのこもったプレーを成功させてくれたことが、敗戦の中で唯一、うれしいことだった。
話を戻す。せっかく一矢を報いたが、ファイターズの反撃もここまで。逆に、今春までファイターズで活躍していたQB幸田に67ヤードのロングパスを決められ、万事休す。31-7の完敗となった。
この試合は、試合前から楽しみだった。相手のメンバー表を見ると、懐かしいファイターズの卒業生が多数、名を連ねている。背番号の若い順にRB古谷明仁、QB有馬隼人、QB幸田謙二郎、DB池谷陽平、DB山本幸司、DB星田光司、LB河合雄輝、LB毛利匡宏、DL石田貴祐。実に9人にも上る。普段、練習にも顔を出し、後輩の指導もしてくれるこの面々と、まともにぶつかり、どこまで「恩返し」ができるか、注目していた。
だが、期待はもろくも裏切られた。ファイターズOBがはつらつとプレーしているのに、現役はそれに対抗できない。攻守とも好き放題にラインを割られ、それになすすべもない状態。ときおり相手の裏をかいたRB久司へのショベルパスやWR松原へのパスが通るが、その攻撃が続かない。
ようやく終盤になって、相手がメンバーを交代させ、ファイターズも攻守に若手やこれまであまり試合に出ていなかったメンバーを投入してから、ようやく試合が落ち着いた。なかでも、1年生のOL和田(箕面)、DL金本(滝川)、梶原(箕面自由)、4年生のDL三村、LB吉川(よしかわ)、2年生のLB辻本らの動きは、先発メンバーと比べて、少しも遜色がなかった。
それにしても、1年生やこれまでけがなどで試合に出ていなかったメンバーが出てから試合が落ち着くとはどういうことだろう。先発メンバーに、控えのメンバーを圧倒するほどの力がないということか。ドングリの背比べといっては失礼だが、上級生といっても、下級生を圧倒するだけの突出した力を付けていないということか。チーム内の競争がないから、いつまでたっても強力チームに対抗できる人材が育たないということか。
この日の試合で白日の下にさらされたのは、社会人の一流チームには、手も足も出なかったということである。個別に素晴らしいプレーはあっても、それを得点につなげるチームとしての力が備わっていなかったということである。日大や京大との戦いでも、その点は明らかだったが、この試合に完敗したことで、その実態が明確になった。「日本1を目指すなんて、口にするのはおこがましい」と鳥内監督がいう通り、現在の実力の程度が天下にさらされたのである。
さあ、どうする。
自分で立ち上がるしかない。デフェンス、オフェンスの別なく、グラウンドで戦うすべてのメンバーが「オレがファイターズを引っ張る」という気構えを持って、鍛錬を続けるしかない。誰も助けてくれないのである。
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