石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(22)収穫は多かった
15日の龍谷大戦は雨。台風18号に伴う豪雨の中の戦いだった。試合終了後、和歌山県田辺市の勤務先に車で戻るまでの高速道路が、途中までは50キロ規制、和歌山県広川インターから田辺インターまでは通行止めになったといえば、その激しさが分かってもらえるだろう。
そんな中でも、アメフットの試合は決行される。人工芝のグラウンドには水が浮き、大粒の雨が目に入る。ゴムのボールは雨で滑るし、パスはコントロールしにくい。スナップの手元は狂うし、確保したはずのボールは簡単に飛び出す。おまけにナイターだから、雨粒が照明に光って何かと予期せぬことが起きる。
こういう条件だから、普段の試合以上に、試合経験の差が表面化する。経験が豊富な選手は、こういう悪条件をビッグプレーを起こすチャンスと捉えるし、実際、そういうプレーをいくつも見せてくれた。逆に、経験の少ない選手は、失敗してはいけない、と意識するせいか、あれやこれやとミスが出る。ファイターズの反則が7回54ヤードに及び、相手にセーフティーを奪われるという不本意なことになったのも、そういう条件を考慮すれば、簡単に説明できる。
それにしても、第3Q半ばまでのファイターズとそれ以降のファイターズは、同じチームとは思えないほど、その動きに差があった。つまり先発メンバーをきちんと揃えて戦った場合と、交代メンバーを入れて選手の力量をテストし、見定めようとした場合では、全く別のチームに変わってしまったのである。
得点経過を見れば、それは一目で分かる。
試合はファイターズのキック、龍谷のレシーブで始まったが、最初のシリーズでいきなりDB国吉が相手パントをブロック。相手陣31ヤードの好位置からファイターズの攻撃につなげる。このチャンスにRB鷺野と野々垣が確実なランで陣地を進め、仕上げは野々垣が8ヤードを駆け上がってTD。三輪のキックも決まって7-0。
このシリーズは6回連続のランプレー。それは、守備陣が作ってくれた好機を必ず生かそうという攻撃陣の意図が形になったものであり、雨の中、確実に得点に結びつけようというベンチの意図と選手の動きが呼応した得点だった。
自陣35ヤードから始まった3度目の攻撃シリーズも、基本的にはランプレーが中心。スピードのあるRB鷺野、野々垣、飯田の3人を使い分け、時にはドロープレーも織り込んで変化を付けながら確実に陣地を進め、仕上げは鷺野の8ヤードラン。スタンドから見ていても、ベンチの意図と選手の動きがかみ合って、全く危なげのない試合ぶりだった。
その直後の龍谷の攻撃は、守備陣が完封。おまけに相手のパントをカバーチームがブロック、転がったボールを拾ったDB鳥内が32ヤードを走り切ってTD。ここでも守備陣とキッキングチームの連携が見事に機能していた。
殊勲の鳥内は、次の龍谷の第1プレーで相手のパスをインターセプト。再び攻撃権を取り戻す。この活躍に今度は攻撃陣が呼応。鷺野が51ヤードを独走してまたもTD。点差は開くばかりである。
後半、第3Qに入ってもファイターズの勢いは止まらない。立ち上がり相手がキックしたボールを確保した鷺野がそのまま71ヤードを走り切りキックオフリターンTD。その直後にはLB池田が相手のファンブルルしたボールを拾い上げ、そのまま22ヤードを走り切ってTD。次の攻撃シリーズではQB斎藤がWR木戸、横山へのパスで陣地を進め、仕上げはWR梅本への22ヤードのTDパス。
豪雨の中、前半はランで確実に得点を重ね、ビッグプレーで試合の流れを確実にしたら、一転して華やかなパスプレーを続けてダメを押す。難しいグラウンドの状態を逆にチャンスと捉えて積極的に守り、攻めたファイターズは、まさに甲子園ボウル3連覇を目指すにふさわしい戦いぶりだった。
ところが、QBをはじめ攻守のメンバーを一新した第3Q後半からは全く別のチームのような戦いぶりに変わった。守備陣は相手のランプレーが止められず、攻撃も手詰まり。ダウンの更新さえままならず、あげくの果てにスナップミスから相手にセーフティーまで奪われた。
攻撃時間を見ればファイターズが19分7秒、龍谷が28分53秒。これで得点は45-2。二つの数字から、第3Q途中までにファイターズが効率のよい攻撃で得点を重ねたこと、その後は龍谷の一方的なペースで試合が進んだことがうかがえる。
もちろん、試合が進むにつれて相手が攻守ともファイターズの動きに対応し、時にはその動きの速さを逆手にとって攻め込んできたことが、後半相手に振り回された主要な原因である。同時に、交代で出場したメンバー、それは2年生や1年生が中心で、豪雨の中での試合経験がほとんどない。彼らが「雨は嫌だなあ」「失敗したらどうしょう」と消極的になったことにも原因があるのではないか、と僕は思っている。先発メンバーが「雨はチャンス」と喜び勇んでグラウンドに出たのとは好対照である。
さらにもう一つ。気になったことを付け加えておきたい。それは先発メンバーを揃えた前半、TDの後のボーナスポイントで、4度に渡って2点を狙ったプレーを仕掛けながら、一度も成功させることが出来なかったことである。言い換えれば、ゴール前3ヤードからの攻撃で、一度もTDがとれなかったのと同じこと。この短い距離で、下位チームに力負けしたことは事実である。華やかなTDを連発し、攻撃と守備、ベンチとグラウンドが互いに呼応して、理想的な試合を見せてくれただけに、1本目のメンバーで「残り3ヤードをフィニッシュ」出来なかったことの意味は、しっかり受け止めなければならない。
交代メンバーに経験を積ませつつ、やるべき宿題はきちんと仕上げる。そういう課題が明確になった試合である。雨の中、よい意味でも悪い意味でも、収穫は多かった。
そんな中でも、アメフットの試合は決行される。人工芝のグラウンドには水が浮き、大粒の雨が目に入る。ゴムのボールは雨で滑るし、パスはコントロールしにくい。スナップの手元は狂うし、確保したはずのボールは簡単に飛び出す。おまけにナイターだから、雨粒が照明に光って何かと予期せぬことが起きる。
こういう条件だから、普段の試合以上に、試合経験の差が表面化する。経験が豊富な選手は、こういう悪条件をビッグプレーを起こすチャンスと捉えるし、実際、そういうプレーをいくつも見せてくれた。逆に、経験の少ない選手は、失敗してはいけない、と意識するせいか、あれやこれやとミスが出る。ファイターズの反則が7回54ヤードに及び、相手にセーフティーを奪われるという不本意なことになったのも、そういう条件を考慮すれば、簡単に説明できる。
それにしても、第3Q半ばまでのファイターズとそれ以降のファイターズは、同じチームとは思えないほど、その動きに差があった。つまり先発メンバーをきちんと揃えて戦った場合と、交代メンバーを入れて選手の力量をテストし、見定めようとした場合では、全く別のチームに変わってしまったのである。
得点経過を見れば、それは一目で分かる。
試合はファイターズのキック、龍谷のレシーブで始まったが、最初のシリーズでいきなりDB国吉が相手パントをブロック。相手陣31ヤードの好位置からファイターズの攻撃につなげる。このチャンスにRB鷺野と野々垣が確実なランで陣地を進め、仕上げは野々垣が8ヤードを駆け上がってTD。三輪のキックも決まって7-0。
このシリーズは6回連続のランプレー。それは、守備陣が作ってくれた好機を必ず生かそうという攻撃陣の意図が形になったものであり、雨の中、確実に得点に結びつけようというベンチの意図と選手の動きが呼応した得点だった。
自陣35ヤードから始まった3度目の攻撃シリーズも、基本的にはランプレーが中心。スピードのあるRB鷺野、野々垣、飯田の3人を使い分け、時にはドロープレーも織り込んで変化を付けながら確実に陣地を進め、仕上げは鷺野の8ヤードラン。スタンドから見ていても、ベンチの意図と選手の動きがかみ合って、全く危なげのない試合ぶりだった。
その直後の龍谷の攻撃は、守備陣が完封。おまけに相手のパントをカバーチームがブロック、転がったボールを拾ったDB鳥内が32ヤードを走り切ってTD。ここでも守備陣とキッキングチームの連携が見事に機能していた。
殊勲の鳥内は、次の龍谷の第1プレーで相手のパスをインターセプト。再び攻撃権を取り戻す。この活躍に今度は攻撃陣が呼応。鷺野が51ヤードを独走してまたもTD。点差は開くばかりである。
後半、第3Qに入ってもファイターズの勢いは止まらない。立ち上がり相手がキックしたボールを確保した鷺野がそのまま71ヤードを走り切りキックオフリターンTD。その直後にはLB池田が相手のファンブルルしたボールを拾い上げ、そのまま22ヤードを走り切ってTD。次の攻撃シリーズではQB斎藤がWR木戸、横山へのパスで陣地を進め、仕上げはWR梅本への22ヤードのTDパス。
豪雨の中、前半はランで確実に得点を重ね、ビッグプレーで試合の流れを確実にしたら、一転して華やかなパスプレーを続けてダメを押す。難しいグラウンドの状態を逆にチャンスと捉えて積極的に守り、攻めたファイターズは、まさに甲子園ボウル3連覇を目指すにふさわしい戦いぶりだった。
ところが、QBをはじめ攻守のメンバーを一新した第3Q後半からは全く別のチームのような戦いぶりに変わった。守備陣は相手のランプレーが止められず、攻撃も手詰まり。ダウンの更新さえままならず、あげくの果てにスナップミスから相手にセーフティーまで奪われた。
攻撃時間を見ればファイターズが19分7秒、龍谷が28分53秒。これで得点は45-2。二つの数字から、第3Q途中までにファイターズが効率のよい攻撃で得点を重ねたこと、その後は龍谷の一方的なペースで試合が進んだことがうかがえる。
もちろん、試合が進むにつれて相手が攻守ともファイターズの動きに対応し、時にはその動きの速さを逆手にとって攻め込んできたことが、後半相手に振り回された主要な原因である。同時に、交代で出場したメンバー、それは2年生や1年生が中心で、豪雨の中での試合経験がほとんどない。彼らが「雨は嫌だなあ」「失敗したらどうしょう」と消極的になったことにも原因があるのではないか、と僕は思っている。先発メンバーが「雨はチャンス」と喜び勇んでグラウンドに出たのとは好対照である。
さらにもう一つ。気になったことを付け加えておきたい。それは先発メンバーを揃えた前半、TDの後のボーナスポイントで、4度に渡って2点を狙ったプレーを仕掛けながら、一度も成功させることが出来なかったことである。言い換えれば、ゴール前3ヤードからの攻撃で、一度もTDがとれなかったのと同じこと。この短い距離で、下位チームに力負けしたことは事実である。華やかなTDを連発し、攻撃と守備、ベンチとグラウンドが互いに呼応して、理想的な試合を見せてくれただけに、1本目のメンバーで「残り3ヤードをフィニッシュ」出来なかったことの意味は、しっかり受け止めなければならない。
交代メンバーに経験を積ませつつ、やるべき宿題はきちんと仕上げる。そういう課題が明確になった試合である。雨の中、よい意味でも悪い意味でも、収穫は多かった。
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