石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(20)楽しみな「下克上」
世間は夏休みだが、昭和の高度成長期を生きてきた僕たち「モーレツ世代」に、そんな言葉はない。年齢を忘れて東奔西走、ひたすら走り回っている。この2週間ほどで愛車の走行距離は確実に3千キロを超えた。
その行程には、もちろん東鉢伏の合宿見学が含まれている。終了前日の17日。朝の5時起きで西宮を出発、深夜に帰宅という日程でファイターズの鍛錬ぶりを眺めてきた。
朝と夕方、JVとVに分けられた練習が秒刻みで進行していく。監督やマネジャーの話では、今年は天候に恵まれ(選手たちには暑すぎたようだが)、予定していた練習にじっくり取り組めたそうだ。大きなけがや事故もなかったという。
そんな練習を見ていて驚いたことがある。VとJVのメンバー分けである。春のシーズンを先発あるいは主要交代メンバーとして戦った上級生の何人もがJVに入り、代わってこれまでJV戦以外ではほとんど試合に出ていなかった1年生や2年生がVのメンバー入りしていたのである。
ポジションによっては、4年生と3年生が各1人、2年生が2人、1年生が3人という具合。オフェンス、ディフェンスともに、すべてのパートに1年生が参加し、上級生と堂々と渡り合う。「お客様」ではなく、秋の熾烈な戦いを担う戦力として期待され、1年生もまたそれに応えようと全力で取り組む。そんな光景は、この10年ほど見たことがなかったから、本当に驚いた。チーム内の「下克上」が始まっているのかもしれない。
もちろん、VとJVのメンバーを決めるに当たっては、監督やコーチのさまざまな思惑があったのだろう。
秋の試合を戦い、社会人に勝って日本1、という目標を達成するのは、並大抵のことではない。新たな戦力の確保、育成は何よりの優先課題だし、それが達成出来ればチームの層は厚くなる。そのためには、才能に恵まれた多くの下級生に、甲子園ボウルやライスボウルを戦ってきた上級生と本気でぶつかる場を用意しなければならない。9日間、文字通りフットボール漬けの毎日を送り、練習もミーティングも共にする夏の合宿こそ、そういうチャンスを与える絶好の機会である。
一方で、JVのメンバーも1年後、2年後を見据えてじっくり鍛えなければならない。彼らは「その他大勢」のメンバーではなく、近い将来、必ずファイターズを背負って立つ一員である。その選手たちに目標を持った練習をさせ、手本を見せるには、試合経験の豊富な上級生こそが適任である。
たまたまVのメンバーからははみ出してしまったとしても、下級生を指導する能力に長け、お手本を見せるのが上手な上級生は少なくない。だからこそ、あえて経験豊富な上級生をVのメンバーから外してJVメンバーの指導に当たらせる。そういう監督やコーチの思惑もあって、今年は特別にVとJVの入れ替えを活発に行ったのかもしれない。
たった1日だったが、練習を眺めていてそんなことを感じ取った。そして、その思惑は功を奏し、下級生の底上げ、層の厚さの確保につながっていると、勝手に結論を出した。
なんせ、半年前までは高校生だった1年生の面々が、練習とはいえ、ライスボウルを戦った上級生とまともに渡り合い、時には凌駕(りょうが)しているのである。そういう選手が特定のポジションではなく、どのパートにも1人や2人はいるのである。すごいことではないか。
チーム内部の戦力、戦略にも関係することだから、そうした選手たちの名前はあえて挙げない。でも、春の試合からは想像もつかないメンバーが秋の試合に先発し、活躍してくれる場面を想像するだけで、わくわくする。
今季、ファイターズの初戦は9月1日。相手は1部に昇格したばかりの大阪教育大である。対戦相手の情報は、僕にはまったくないが、夏に鍛えた選手たちが必ず活躍してくれると確信している。
◇ ◇
このコラムを読んでくださっているみなさん。当日は、友人と誘い合って、いそいそと王子スタジアムに出掛けようではありませんか。そして、ファイターズの諸君に心からの声援を送りましょう。
その前に、伝言が一つ。関西リーグ初戦の前夜、8月31日の夕方に、大阪・中之島の朝日カルチャーセンターで、小野ディレクターの講演会があります。聞くところでは、事前の申し込みはほぼ満席ですが、10人程度なら、まだ受け入れ可能とのこと。聴講をご希望の方は、朝日カルチャーセンターにお問い合わせ下さい。
◆朝日カルチャーセンター中之島教室
アメリカンフットボールの本当の魅力 - 学生日本一:関西学院大学のディレクターが語る、体験的コーチング論とともに
日時:8月31日(土)18:30-20:30
講師:小野 宏 ディレクター
詳細こちら⇒http://www.asahiculture.com/LES/detail.asp?CNO=207734&userflg=0
その行程には、もちろん東鉢伏の合宿見学が含まれている。終了前日の17日。朝の5時起きで西宮を出発、深夜に帰宅という日程でファイターズの鍛錬ぶりを眺めてきた。
朝と夕方、JVとVに分けられた練習が秒刻みで進行していく。監督やマネジャーの話では、今年は天候に恵まれ(選手たちには暑すぎたようだが)、予定していた練習にじっくり取り組めたそうだ。大きなけがや事故もなかったという。
そんな練習を見ていて驚いたことがある。VとJVのメンバー分けである。春のシーズンを先発あるいは主要交代メンバーとして戦った上級生の何人もがJVに入り、代わってこれまでJV戦以外ではほとんど試合に出ていなかった1年生や2年生がVのメンバー入りしていたのである。
ポジションによっては、4年生と3年生が各1人、2年生が2人、1年生が3人という具合。オフェンス、ディフェンスともに、すべてのパートに1年生が参加し、上級生と堂々と渡り合う。「お客様」ではなく、秋の熾烈な戦いを担う戦力として期待され、1年生もまたそれに応えようと全力で取り組む。そんな光景は、この10年ほど見たことがなかったから、本当に驚いた。チーム内の「下克上」が始まっているのかもしれない。
もちろん、VとJVのメンバーを決めるに当たっては、監督やコーチのさまざまな思惑があったのだろう。
秋の試合を戦い、社会人に勝って日本1、という目標を達成するのは、並大抵のことではない。新たな戦力の確保、育成は何よりの優先課題だし、それが達成出来ればチームの層は厚くなる。そのためには、才能に恵まれた多くの下級生に、甲子園ボウルやライスボウルを戦ってきた上級生と本気でぶつかる場を用意しなければならない。9日間、文字通りフットボール漬けの毎日を送り、練習もミーティングも共にする夏の合宿こそ、そういうチャンスを与える絶好の機会である。
一方で、JVのメンバーも1年後、2年後を見据えてじっくり鍛えなければならない。彼らは「その他大勢」のメンバーではなく、近い将来、必ずファイターズを背負って立つ一員である。その選手たちに目標を持った練習をさせ、手本を見せるには、試合経験の豊富な上級生こそが適任である。
たまたまVのメンバーからははみ出してしまったとしても、下級生を指導する能力に長け、お手本を見せるのが上手な上級生は少なくない。だからこそ、あえて経験豊富な上級生をVのメンバーから外してJVメンバーの指導に当たらせる。そういう監督やコーチの思惑もあって、今年は特別にVとJVの入れ替えを活発に行ったのかもしれない。
たった1日だったが、練習を眺めていてそんなことを感じ取った。そして、その思惑は功を奏し、下級生の底上げ、層の厚さの確保につながっていると、勝手に結論を出した。
なんせ、半年前までは高校生だった1年生の面々が、練習とはいえ、ライスボウルを戦った上級生とまともに渡り合い、時には凌駕(りょうが)しているのである。そういう選手が特定のポジションではなく、どのパートにも1人や2人はいるのである。すごいことではないか。
チーム内部の戦力、戦略にも関係することだから、そうした選手たちの名前はあえて挙げない。でも、春の試合からは想像もつかないメンバーが秋の試合に先発し、活躍してくれる場面を想像するだけで、わくわくする。
今季、ファイターズの初戦は9月1日。相手は1部に昇格したばかりの大阪教育大である。対戦相手の情報は、僕にはまったくないが、夏に鍛えた選手たちが必ず活躍してくれると確信している。
◇ ◇
このコラムを読んでくださっているみなさん。当日は、友人と誘い合って、いそいそと王子スタジアムに出掛けようではありませんか。そして、ファイターズの諸君に心からの声援を送りましょう。
その前に、伝言が一つ。関西リーグ初戦の前夜、8月31日の夕方に、大阪・中之島の朝日カルチャーセンターで、小野ディレクターの講演会があります。聞くところでは、事前の申し込みはほぼ満席ですが、10人程度なら、まだ受け入れ可能とのこと。聴講をご希望の方は、朝日カルチャーセンターにお問い合わせ下さい。
◆朝日カルチャーセンター中之島教室
アメリカンフットボールの本当の魅力 - 学生日本一:関西学院大学のディレクターが語る、体験的コーチング論とともに
日時:8月31日(土)18:30-20:30
講師:小野 宏 ディレクター
詳細こちら⇒http://www.asahiculture.com/LES/detail.asp?CNO=207734&userflg=0
この記事は外部ブログを参照しています。すべて見るには下のリンクをクリックしてください。
記事タイトル:(20)楽しみな「下克上」
(ブログタイトル:石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」)
アーカイブ
- 2024年11月(2)
- 2024年10月(3)
- 2024年9月(3)
- 2024年6月(2)
- 2024年5月(3)
- 2024年4月(1)
- 2023年12月(3)
- 2023年11月(3)
- 2023年10月(4)
- 2023年9月(3)
- 2023年7月(1)
- 2023年6月(1)
- 2023年5月(3)
- 2023年4月(1)
- 2022年12月(2)
- 2022年11月(3)
- 2022年10月(3)
- 2022年9月(2)
- 2022年8月(1)
- 2022年7月(1)
- 2022年6月(2)
- 2022年5月(3)
- 2021年12月(3)
- 2021年11月(3)
- 2021年10月(4)
- 2021年1月(2)
- 2020年12月(3)
- 2020年11月(4)
- 2020年10月(4)
- 2020年9月(2)
- 2020年1月(3)
- 2019年12月(3)
- 2019年11月(3)
- 2019年10月(5)
- 2019年9月(4)
- 2019年8月(3)
- 2019年7月(2)
- 2019年6月(4)
- 2019年5月(4)
- 2019年4月(4)
- 2019年1月(1)
- 2018年12月(4)
- 2018年11月(4)
- 2018年10月(5)
- 2018年9月(3)
- 2018年8月(4)
- 2018年7月(2)
- 2018年6月(3)
- 2018年5月(4)
- 2018年4月(3)
- 2017年12月(3)
- 2017年11月(4)
- 2017年10月(3)
- 2017年9月(4)
- 2017年8月(4)
- 2017年7月(3)
- 2017年6月(4)
- 2017年5月(4)
- 2017年4月(4)
- 2017年1月(2)
- 2016年12月(4)
- 2016年11月(5)
- 2016年10月(3)
- 2016年9月(4)
- 2016年8月(4)
- 2016年7月(3)
- 2016年6月(2)
- 2016年5月(4)
- 2016年4月(4)
- 2015年12月(1)
- 2015年11月(4)
- 2015年10月(3)
- 2015年9月(5)
- 2015年8月(3)
- 2015年7月(5)
- 2015年6月(4)
- 2015年5月(2)
- 2015年4月(3)
- 2015年3月(3)
- 2015年1月(2)
- 2014年12月(4)
- 2014年11月(4)
- 2014年10月(4)
- 2014年9月(4)
- 2014年8月(4)
- 2014年7月(4)
- 2014年6月(4)
- 2014年5月(5)
- 2014年4月(4)
- 2014年1月(1)
- 2013年12月(5)
- 2013年11月(4)
- 2013年10月(5)
- 2013年9月(3)
- 2013年8月(3)
- 2013年7月(4)
- 2013年6月(4)
- 2013年5月(5)
- 2013年4月(4)
- 2013年1月(1)
- 2012年12月(4)
- 2012年11月(5)
- 2012年10月(4)
- 2012年9月(5)
- 2012年8月(4)
- 2012年7月(3)
- 2012年6月(3)
- 2012年5月(5)
- 2012年4月(4)
- 2012年1月(1)
- 2011年12月(5)
- 2011年11月(5)
- 2011年10月(4)
- 2011年9月(4)
- 2011年8月(3)
- 2011年7月(3)
- 2011年6月(4)
- 2011年5月(5)
- 2011年4月(4)
- 2010年12月(1)
- 2010年11月(4)
- 2010年10月(4)
- 2010年9月(4)
- 2010年8月(3)
- 2010年7月(2)
- 2010年6月(5)
- 2010年5月(3)
- 2010年4月(4)
- 2010年3月(1)
- 2009年11月(4)
- 2009年10月(4)
- 2009年9月(3)
- 2009年8月(4)
- 2009年7月(3)
- 2009年6月(4)
- 2009年5月(3)
- 2009年4月(4)
- 2009年3月(1)
- 2008年12月(1)
- 2008年11月(4)
- 2008年10月(3)
- 2008年9月(5)
- 2008年8月(2)
- 2008年4月(1)