石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(18)「集散」
長い間、ファイターズの練習を見てきて、僕の中にはそのチーム状態を計る目安が生まれている。それは練習時の「集散のスピード」である。
春先のチームは例年、新加入のメンバーが多いせいか、それともチーム練習のメニューが少ないからか、練習が始まる時間になっても「集散」は何となくのんびりしている。もちろん、マネジャーの「練習開始10分前」という大きな声が響き、「ハドル」という声に合わせて、選手がグラウンド中央に集まってくるのだが、ここの選手の「さあ、始めるぞ」という気合いは感じても、集団としての熱気は感じられないのが常態である。
ところが、春のシーズンが終わり、前期試験も済ませて8月になった瞬間、ギアが一気に加速される。チームとしてのある種の高ぶりが生まれる。グラウンドのあちこちから、場合によっては40ヤードも50ヤードも全力疾走して中央のハドルに集まってくる部員の姿から、1年生も4年生も関係ない、ついてこれないヤツは振り落とす、というようなオーラが出てくるのである。
本当に自分と勝負する、夏合宿を間近に控えていることもあるだろう。秋のシーズン開幕まで1カ月、立命戦まで100日余り、という時間的なリミットが具体的な日数で数えられるところまで来たということもあるだろう。とりわけ4年生や3年生は、ここで頑張らなければ一生後悔する、という切羽詰まった気持ちにもなるだろう。
チームを構成する全員のそういった気持ちが、練習開始時、あるいは5分間のブレークタイムやサプリメントタイムが終わった後の集りの速さとなって具象化されるのである。「集散のスピードがチーム状態を反映する」というのは、そういう意味である。
実際、今年も8月になった瞬間に、集散のスピードがアップした。選手だけではなく、マネジャーやトレーナー、アナライジングスタッフなど、グラウンドにいる全員が全力疾走でハドルに参加し、また水分やサプリメントの補給に散っていくのである。
ファイターズの練習は、細部にまでこだわったタイムテーブルに沿って進行する。監督やコーチの助言を生かしながら、マネジャーを中心に4年生の幹部らがメニューを作り、その時間割に沿って、分刻み、秒刻みで進められていく。ユニットの練習も、オフェンス、ディフェンスそれぞれに本数が決められており、失敗しても成功しても、予定した本数が終われば、その練習は終わる。チーム練習についても、キッキング練習についても、同様である。失敗したからもう一度、というよいうな甘ったれたことは許されない。
そういう緊迫した練習を実りあるモノにするためには、いつも実戦を想定した動きと、緊張感が求められる。その緊張感を体全体で高めて行くためにも、練習開始時の数十ヤードの全力疾走に意味があるのだ。
だから、練習が始まる前、ブレークやサプリタイムが終わった後のハドルへの集散のスピードが、そのままチームとしての集中力、緊張感を計る物差しになるのである。
先週末、上ヶ原のグラウンドで、そうした練習ぶりを眺めていたら、たまたま「オープンキャンパス」で大学を訪問した何人かの高校生がその練習の様子を見学しているのに出くわした。
それぞれ、高校でフットボールをやっている選手たちだったが、一様に驚いていたのがその集散のスピードと、一つ一つの練習メニューが短時間で効率よく進められていくこと。彼らも炎天下で、ハードな練習をしているようだったが、ファイターズのメンバーが練習に取り組むスピード感には、度肝を抜かれたような表情だった。
けれども、本番はこれからである。いまは試験期間中の休みが終わった後の久々のチーム練習であり、合宿を前に気持ちが高ぶっているだけの時期かもしれない。これからは長い合宿、そしてシーズン開始へと、厳しいチーム内競争の日々が始まる。体力的にも精神的にも厳しい毎日が続くに違いない。そういう日々を、いまのような「やる気満々」の集散のスピードで乗り切っていけるかどうか。
試されるのは、まずこれからの1カ月。そして関西リーグが始まってからの2カ月半である。そこで現在の自分を1段階も2段階も向上させた者にのみ、栄冠は輝く。関西リーグから甲子園、そして東京ドームへと続く道を、いまの集散のスピードを落とすことなく走り切ってほしい。頑張ろう。
春先のチームは例年、新加入のメンバーが多いせいか、それともチーム練習のメニューが少ないからか、練習が始まる時間になっても「集散」は何となくのんびりしている。もちろん、マネジャーの「練習開始10分前」という大きな声が響き、「ハドル」という声に合わせて、選手がグラウンド中央に集まってくるのだが、ここの選手の「さあ、始めるぞ」という気合いは感じても、集団としての熱気は感じられないのが常態である。
ところが、春のシーズンが終わり、前期試験も済ませて8月になった瞬間、ギアが一気に加速される。チームとしてのある種の高ぶりが生まれる。グラウンドのあちこちから、場合によっては40ヤードも50ヤードも全力疾走して中央のハドルに集まってくる部員の姿から、1年生も4年生も関係ない、ついてこれないヤツは振り落とす、というようなオーラが出てくるのである。
本当に自分と勝負する、夏合宿を間近に控えていることもあるだろう。秋のシーズン開幕まで1カ月、立命戦まで100日余り、という時間的なリミットが具体的な日数で数えられるところまで来たということもあるだろう。とりわけ4年生や3年生は、ここで頑張らなければ一生後悔する、という切羽詰まった気持ちにもなるだろう。
チームを構成する全員のそういった気持ちが、練習開始時、あるいは5分間のブレークタイムやサプリメントタイムが終わった後の集りの速さとなって具象化されるのである。「集散のスピードがチーム状態を反映する」というのは、そういう意味である。
実際、今年も8月になった瞬間に、集散のスピードがアップした。選手だけではなく、マネジャーやトレーナー、アナライジングスタッフなど、グラウンドにいる全員が全力疾走でハドルに参加し、また水分やサプリメントの補給に散っていくのである。
ファイターズの練習は、細部にまでこだわったタイムテーブルに沿って進行する。監督やコーチの助言を生かしながら、マネジャーを中心に4年生の幹部らがメニューを作り、その時間割に沿って、分刻み、秒刻みで進められていく。ユニットの練習も、オフェンス、ディフェンスそれぞれに本数が決められており、失敗しても成功しても、予定した本数が終われば、その練習は終わる。チーム練習についても、キッキング練習についても、同様である。失敗したからもう一度、というよいうな甘ったれたことは許されない。
そういう緊迫した練習を実りあるモノにするためには、いつも実戦を想定した動きと、緊張感が求められる。その緊張感を体全体で高めて行くためにも、練習開始時の数十ヤードの全力疾走に意味があるのだ。
だから、練習が始まる前、ブレークやサプリタイムが終わった後のハドルへの集散のスピードが、そのままチームとしての集中力、緊張感を計る物差しになるのである。
先週末、上ヶ原のグラウンドで、そうした練習ぶりを眺めていたら、たまたま「オープンキャンパス」で大学を訪問した何人かの高校生がその練習の様子を見学しているのに出くわした。
それぞれ、高校でフットボールをやっている選手たちだったが、一様に驚いていたのがその集散のスピードと、一つ一つの練習メニューが短時間で効率よく進められていくこと。彼らも炎天下で、ハードな練習をしているようだったが、ファイターズのメンバーが練習に取り組むスピード感には、度肝を抜かれたような表情だった。
けれども、本番はこれからである。いまは試験期間中の休みが終わった後の久々のチーム練習であり、合宿を前に気持ちが高ぶっているだけの時期かもしれない。これからは長い合宿、そしてシーズン開始へと、厳しいチーム内競争の日々が始まる。体力的にも精神的にも厳しい毎日が続くに違いない。そういう日々を、いまのような「やる気満々」の集散のスピードで乗り切っていけるかどうか。
試されるのは、まずこれからの1カ月。そして関西リーグが始まってからの2カ月半である。そこで現在の自分を1段階も2段階も向上させた者にのみ、栄冠は輝く。関西リーグから甲子園、そして東京ドームへと続く道を、いまの集散のスピードを落とすことなく走り切ってほしい。頑張ろう。
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