石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(14)聞いて納得の講演会
このところ、毎晩、ジャム作りに励んでいる。いまが収穫の最盛期である完熟のスモモを鉄鍋で煮詰め、丁寧にあくを取り除くだけの作業だが、やり始めると、結構手間がかかる。どんなに弱火にしていても、油断すると吹きこぼれるし、取っても取ってもあくは出る。下ごしらえから煮上がるまでの約2時間は、台所で立ちっぱなしである。
僕が働いている紀州・田辺とその周辺は知る人ぞ知る果樹王国。生産量、品質とも日本1を誇る南高梅があるし、80種類も栽培されているミカンは、ほぼ1年中収穫される。そして今はスモモの収穫が最盛期。地元の農産物直売店に行けば、完熟のうまそうなのがびっくりするほどの安値で販売されている。ついつい大量に買い込み、処理に困ってジャムづくり、という次第である。ファイターズのコラムを書いている暇はない。
でも今週は、どうしても紹介しなければならない催しがある。ファイターズが主催する講演会「ライスボウル秘話」のことである。「ファイターズはいかに王者に挑んだか、コーチが語る舞台裏」という副題の付いたこの催しは、すでに6月21日に大阪・梅田の毎日新聞社にある「毎日インテシオ」で開催された。OB会員、ファンクラブ会員、後援会会員、そしてシニアファイターズのメンバーに限定した催しだったが、定員一杯の聴衆が詰めかけ、大いに盛り上がった。
今年1月3日、東京ドームで行われたライスボウルのビデオを小野ディレクターが1週間かけて夜な夜な編集。勝敗のポイントとなった場面を一つ一つ取り上げて解説し、その場面場面に応じて監督やコーチの意図したことを聞き出そうという趣向である。その場面ごとにベンチはどんな意図でプレーをコールしたか、そのときに監督やコーチはどんな動きをしたか。観客席だけでなく日本のフットボール関係者のすべてを驚嘆させたスペシャルプレーは、どういう手順、どういう状況判断で連発されたのか。そのためにチームや選手はどんな準備をし、どんな伏線を張ったのか。
大げさに言えば、日本のフットボール関係者のすべてが大枚をはたいても聞きたい裏話が、会費3000円を支払うだけで納得いくまで聞けたのである。会場で顔を合わせた「関学アメフット探検会」の先生たちが口々に「大学教授も顔負けの説明力」「理路整然とした話し方、的確な分析、どれを取っても最高。こういう話が聞ける私たちは幸せ者です」と脱帽される内容だった。
なんといっても司会の小野ディレクターと講師を務めた鳥内監督、大村アシスタントヘッドコーチの掛け合いが面白かった。
小野ディレクターは、恐ろしいほどの分析力と説明力があるし、彼から話を振られた時の監督の間合いが絶妙。さすが、吉本新喜劇を生んだ大阪で育った人である。勝敗の機微に関係する質問(それは、往々にして当事者としてはなかなか答えにくい)はさらりとかわし、それでいて聴衆の「聴きたい願望」には、絶妙の大阪弁でやんわりと答える。意図したかどうかは聞いていないが、笑いを取るせりふもふんだんに盛り込む。説明の足りないところは大村コーチが補完し、気がつけば聴衆は3人の掛け合いに完全に引き込まれていた。
圧巻は試合の終盤、ファイターズが逆転に成功。その直後の相手攻撃をDB鳥内弟がインターセプトで断ち切ってからの話である。それまではリードされても泰然自若としてびくともしなかったベンチがなぜ、あの場面に限ってあたふたとし始めたのか。的確なプレーコールが出せなくなったのか。もう一度タイムアウトをとる選択はなかったのか。僕はかねがねそんな疑問を持っていたのだが、その疑問も監督の「打ち明け話」で一気に解消した。(その詳細については、あえて触れません。今度の講演会の楽しみにして下さい)
講演後の質問の時間に、会場から「こんなに微妙な舞台裏まで話して大丈夫ですか」という質問が出たが、それはこの日の講演を聴いた誰もが感じたことだろう。そういう、普通のチームなら「部外秘」にしておく内容までをあっけらかんと公開し、それをビデオの画面で見せながら「フットボールとは細部にまで神経を行き届かせたチームが勝つスポーツ」であり、そういうチームを作っていくところに「フットボールの本当の魅力」があると訴える。そういう情報を惜しみなく開示するところに、ファイターズの魅力があると感じたのは、僕だけではあるまい。
この講演会13日(土)に再び開催される。前回は金曜の夜だったので「仕事の都合が付かず、参加できなかった」という人が多く、あらためて土曜の夕方に、同じ内容の講演会をセットしたという。「部外には伏せておきたい内容」も含まれているため、前回と同様、OB会、後援会、ファンクラブ、シニアファイターズ、アメフト探検隊などの会員限定の催しとなる。
また、OB会東京支部からも強い要請があり、8月上旬に東京で同じ講演会が開催される予定とのことだ。
僕が働いている紀州・田辺とその周辺は知る人ぞ知る果樹王国。生産量、品質とも日本1を誇る南高梅があるし、80種類も栽培されているミカンは、ほぼ1年中収穫される。そして今はスモモの収穫が最盛期。地元の農産物直売店に行けば、完熟のうまそうなのがびっくりするほどの安値で販売されている。ついつい大量に買い込み、処理に困ってジャムづくり、という次第である。ファイターズのコラムを書いている暇はない。
でも今週は、どうしても紹介しなければならない催しがある。ファイターズが主催する講演会「ライスボウル秘話」のことである。「ファイターズはいかに王者に挑んだか、コーチが語る舞台裏」という副題の付いたこの催しは、すでに6月21日に大阪・梅田の毎日新聞社にある「毎日インテシオ」で開催された。OB会員、ファンクラブ会員、後援会会員、そしてシニアファイターズのメンバーに限定した催しだったが、定員一杯の聴衆が詰めかけ、大いに盛り上がった。
今年1月3日、東京ドームで行われたライスボウルのビデオを小野ディレクターが1週間かけて夜な夜な編集。勝敗のポイントとなった場面を一つ一つ取り上げて解説し、その場面場面に応じて監督やコーチの意図したことを聞き出そうという趣向である。その場面ごとにベンチはどんな意図でプレーをコールしたか、そのときに監督やコーチはどんな動きをしたか。観客席だけでなく日本のフットボール関係者のすべてを驚嘆させたスペシャルプレーは、どういう手順、どういう状況判断で連発されたのか。そのためにチームや選手はどんな準備をし、どんな伏線を張ったのか。
大げさに言えば、日本のフットボール関係者のすべてが大枚をはたいても聞きたい裏話が、会費3000円を支払うだけで納得いくまで聞けたのである。会場で顔を合わせた「関学アメフット探検会」の先生たちが口々に「大学教授も顔負けの説明力」「理路整然とした話し方、的確な分析、どれを取っても最高。こういう話が聞ける私たちは幸せ者です」と脱帽される内容だった。
なんといっても司会の小野ディレクターと講師を務めた鳥内監督、大村アシスタントヘッドコーチの掛け合いが面白かった。
小野ディレクターは、恐ろしいほどの分析力と説明力があるし、彼から話を振られた時の監督の間合いが絶妙。さすが、吉本新喜劇を生んだ大阪で育った人である。勝敗の機微に関係する質問(それは、往々にして当事者としてはなかなか答えにくい)はさらりとかわし、それでいて聴衆の「聴きたい願望」には、絶妙の大阪弁でやんわりと答える。意図したかどうかは聞いていないが、笑いを取るせりふもふんだんに盛り込む。説明の足りないところは大村コーチが補完し、気がつけば聴衆は3人の掛け合いに完全に引き込まれていた。
圧巻は試合の終盤、ファイターズが逆転に成功。その直後の相手攻撃をDB鳥内弟がインターセプトで断ち切ってからの話である。それまではリードされても泰然自若としてびくともしなかったベンチがなぜ、あの場面に限ってあたふたとし始めたのか。的確なプレーコールが出せなくなったのか。もう一度タイムアウトをとる選択はなかったのか。僕はかねがねそんな疑問を持っていたのだが、その疑問も監督の「打ち明け話」で一気に解消した。(その詳細については、あえて触れません。今度の講演会の楽しみにして下さい)
講演後の質問の時間に、会場から「こんなに微妙な舞台裏まで話して大丈夫ですか」という質問が出たが、それはこの日の講演を聴いた誰もが感じたことだろう。そういう、普通のチームなら「部外秘」にしておく内容までをあっけらかんと公開し、それをビデオの画面で見せながら「フットボールとは細部にまで神経を行き届かせたチームが勝つスポーツ」であり、そういうチームを作っていくところに「フットボールの本当の魅力」があると訴える。そういう情報を惜しみなく開示するところに、ファイターズの魅力があると感じたのは、僕だけではあるまい。
この講演会13日(土)に再び開催される。前回は金曜の夜だったので「仕事の都合が付かず、参加できなかった」という人が多く、あらためて土曜の夕方に、同じ内容の講演会をセットしたという。「部外には伏せておきたい内容」も含まれているため、前回と同様、OB会、後援会、ファンクラブ、シニアファイターズ、アメフト探検隊などの会員限定の催しとなる。
また、OB会東京支部からも強い要請があり、8月上旬に東京で同じ講演会が開催される予定とのことだ。
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