石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(27)我慢、我慢の関大戦
関大のリターンで始まった試合は、いきなり相手リターナーに96ヤードを走り切られ、そのままタッチダウン(TD)。その後のキックは外れたが、たちまち6-0とリードされた。
さて、どう挽回するのかと思ったファイターズの攻撃シリーズが始まって2プレー目にファンブル。そのボールを相手に押さえられ、自陣38ヤード地点で痛恨のターンオーバー。そこから相手に右、左と走られ、わずか5プレーでゴール前1ヤード。そこでファイターズのお株を奪うようなトリッキーなパスを決められて再びTD。キックも決まって7点追加。試合開 始からわずか2分57秒で13-0とリードされた。
この間、関大が選択したプレーはすべて、ファイターズに備えて周到に準備してきたことがうかがえるものばかり。守備陣の気迫もすごく、春の関関戦とはまったく異なるチームに成長していた。逆に、ファイターズ守備陣は、立ち上がりで相手の動きに目が慣れていないせいもあったのか、ほとんど対応できないまま。前途の多難を思わせた。
しかし、この逆境にあっても、QB加納を中心に、ファイターズは全員が我慢のプレーを重ねた。自陣21ヤードから始まった次の攻撃シリーズ。加納からWR萬代、松原らへの短いパ ス、加納のスクランブル、RB稲毛、河原、石田らのランを織り交ぜ、約7分、14プレーを費やして、最後はRB河原の3ヤードTDランに結びつけた。
さらに2Q終了まで残り2分6秒、自陣30ヤードから始まった攻撃シリーズを今度はWR柴田、萬代へのパスと加納のスクランブルでリズムよく陣地を進め、加納がWR金村への35ヤードTDパスで仕上げた。ゴール右隅に浮かせたパスは、相手DBと競り合いになったが、最後は長身の金村が上からもぎ取る形でキャッチした。
この間、関大に2本のフィールドゴールを決められており、前半は結局19-14。関大リードのまま終えた。
後半はファイターズのリターンで攻撃開始。このシリーズから加納に代わって登場した2年生QB加藤がこれまた我慢のプレーコール。約8分30秒、17プレーを費やしたシリーズを、最後はRB多田羅の突進で締めくくって逆転。加納の2点コンバージョンも成功して22-19とリードを奪った。
このシリーズも、QBはインターセプトを警戒して派手なパスを封印。我慢の短いパスと確実なランプレーでじりじりと陣地を進めた。ベンチの作戦に応えた稲毛や河原、萬代や松原らの堅実なプレーが光った。短い距離を確実に稼ぎ、ダウンを更新した加納やRB多田羅の突進力も高く評価できる。
逆転した後はファイターズペース。次の攻撃シリーズでは、再び登場した加納が松原、萬代へのパスと豊富なRBを使い分けるランプレー交互に繰り出して陣地を進め、最後は残り1ヤードを加納が自ら押し込んでTD。リードを広げた。
後半は、守備もすっかり落ち着いた。LB吉井の見事なパスカットやLB深川のQBサックなどビッグプレーも飛び出し、関大の攻撃をほぼ完封した。
このように試合の流れを振り返っていくと、とにかく我慢、我慢だった。
いきなり自分たちのミスで13点を先行され、普通のチームならガタガタと崩れてもおかしくない状況でのスタート。勢いに乗っている相手の力をそぐためには、それ以上のミスは絶対に許されないという制約の中でのプレーコール。もちろん、どんなに苦しくても、イチかバチかのプレーは許されない。立命戦を前に、絶対に負けられないという重圧はどの選手にもあったろう。スタジアムに詰めかけたファイターズファンのすべてが「自分たちの方が力があるはず」と信じ込んでいる中でプレーする苦しさは、観客席の想像をはるかに越えるはずだ。
そういう苦しさに耐えきれず、自ら墓穴を掘って敗れた試合も、ファイターズの歴史に少なくはない。強力な陣容を整えながら法政に敗れた2000年の甲子園ボウル、せっかくリーグ戦で立命を倒しながら、ミスが相次いで足元をすくわれた2004年の京大戦。ともに地力では相手に勝っていたと思えるチームだっただけに、いま思い出しても悔しさがこみ上げてくる。
この日の関大戦も、そのように展開する可能性が少なくなかった。相手はファイターズを標的に、攻守とも周到な準備を重ねてきていることが、スタンドからでもよく分かった。選手も自分たちの思惑通りのプレーで13点を先行し、士気が上がっている。ベンチも自信を持ったに違いない。
そういう状況にあって、ファイターズが攻守のどこかで、新たなミスを一つでも犯せば万事休す、である。
しかし、早川主将を中心に、チームは攻守とも一丸となって我慢のプレーを重ねた。地味だが堅実なプレーコールをひとつひとつ確実に仕上げた。そのしたたかな精神力を、フィールドゴールをはじめ、すべてのキックの機会を確実に決めた1年生キッカー大西の冷静さとともに、心から称賛したい。
もちろん、立命を相手の戦いでは、関大戦のような立ち上がりは許されない。相手がかけてくる重圧も比較にならないほど大きいだろう。立命戦まで10日余り。この日の反省点を踏まえ、さらに高度な戦いができるように、しっかりと取り組んでもらいたい。それができるチームであると僕は信じている。
さて、どう挽回するのかと思ったファイターズの攻撃シリーズが始まって2プレー目にファンブル。そのボールを相手に押さえられ、自陣38ヤード地点で痛恨のターンオーバー。そこから相手に右、左と走られ、わずか5プレーでゴール前1ヤード。そこでファイターズのお株を奪うようなトリッキーなパスを決められて再びTD。キックも決まって7点追加。試合開 始からわずか2分57秒で13-0とリードされた。
この間、関大が選択したプレーはすべて、ファイターズに備えて周到に準備してきたことがうかがえるものばかり。守備陣の気迫もすごく、春の関関戦とはまったく異なるチームに成長していた。逆に、ファイターズ守備陣は、立ち上がりで相手の動きに目が慣れていないせいもあったのか、ほとんど対応できないまま。前途の多難を思わせた。
しかし、この逆境にあっても、QB加納を中心に、ファイターズは全員が我慢のプレーを重ねた。自陣21ヤードから始まった次の攻撃シリーズ。加納からWR萬代、松原らへの短いパ ス、加納のスクランブル、RB稲毛、河原、石田らのランを織り交ぜ、約7分、14プレーを費やして、最後はRB河原の3ヤードTDランに結びつけた。
さらに2Q終了まで残り2分6秒、自陣30ヤードから始まった攻撃シリーズを今度はWR柴田、萬代へのパスと加納のスクランブルでリズムよく陣地を進め、加納がWR金村への35ヤードTDパスで仕上げた。ゴール右隅に浮かせたパスは、相手DBと競り合いになったが、最後は長身の金村が上からもぎ取る形でキャッチした。
この間、関大に2本のフィールドゴールを決められており、前半は結局19-14。関大リードのまま終えた。
後半はファイターズのリターンで攻撃開始。このシリーズから加納に代わって登場した2年生QB加藤がこれまた我慢のプレーコール。約8分30秒、17プレーを費やしたシリーズを、最後はRB多田羅の突進で締めくくって逆転。加納の2点コンバージョンも成功して22-19とリードを奪った。
このシリーズも、QBはインターセプトを警戒して派手なパスを封印。我慢の短いパスと確実なランプレーでじりじりと陣地を進めた。ベンチの作戦に応えた稲毛や河原、萬代や松原らの堅実なプレーが光った。短い距離を確実に稼ぎ、ダウンを更新した加納やRB多田羅の突進力も高く評価できる。
逆転した後はファイターズペース。次の攻撃シリーズでは、再び登場した加納が松原、萬代へのパスと豊富なRBを使い分けるランプレー交互に繰り出して陣地を進め、最後は残り1ヤードを加納が自ら押し込んでTD。リードを広げた。
後半は、守備もすっかり落ち着いた。LB吉井の見事なパスカットやLB深川のQBサックなどビッグプレーも飛び出し、関大の攻撃をほぼ完封した。
このように試合の流れを振り返っていくと、とにかく我慢、我慢だった。
いきなり自分たちのミスで13点を先行され、普通のチームならガタガタと崩れてもおかしくない状況でのスタート。勢いに乗っている相手の力をそぐためには、それ以上のミスは絶対に許されないという制約の中でのプレーコール。もちろん、どんなに苦しくても、イチかバチかのプレーは許されない。立命戦を前に、絶対に負けられないという重圧はどの選手にもあったろう。スタジアムに詰めかけたファイターズファンのすべてが「自分たちの方が力があるはず」と信じ込んでいる中でプレーする苦しさは、観客席の想像をはるかに越えるはずだ。
そういう苦しさに耐えきれず、自ら墓穴を掘って敗れた試合も、ファイターズの歴史に少なくはない。強力な陣容を整えながら法政に敗れた2000年の甲子園ボウル、せっかくリーグ戦で立命を倒しながら、ミスが相次いで足元をすくわれた2004年の京大戦。ともに地力では相手に勝っていたと思えるチームだっただけに、いま思い出しても悔しさがこみ上げてくる。
この日の関大戦も、そのように展開する可能性が少なくなかった。相手はファイターズを標的に、攻守とも周到な準備を重ねてきていることが、スタンドからでもよく分かった。選手も自分たちの思惑通りのプレーで13点を先行し、士気が上がっている。ベンチも自信を持ったに違いない。
そういう状況にあって、ファイターズが攻守のどこかで、新たなミスを一つでも犯せば万事休す、である。
しかし、早川主将を中心に、チームは攻守とも一丸となって我慢のプレーを重ねた。地味だが堅実なプレーコールをひとつひとつ確実に仕上げた。そのしたたかな精神力を、フィールドゴールをはじめ、すべてのキックの機会を確実に決めた1年生キッカー大西の冷静さとともに、心から称賛したい。
もちろん、立命を相手の戦いでは、関大戦のような立ち上がりは許されない。相手がかけてくる重圧も比較にならないほど大きいだろう。立命戦まで10日余り。この日の反省点を踏まえ、さらに高度な戦いができるように、しっかりと取り組んでもらいたい。それができるチームであると僕は信じている。
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