石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(11)試金石となる試合
「試金石」という言葉がある。本来は貴金属をすりつけてその金属の品位を判断するための黒くて硬い石のことだが、転じて「ある物事の価値、人物の力量を見極める試験になるような物事」と辞書にある。
この前の日曜日、春のシーズンの総決算として行われたパナソニック・インパルスとの決戦がまさにそんな試合だった。攻守とも社会人トップクラスのチームを相手に、昨年とはメンバーを一新したファイターズがどのように戦うか。春の試合で経験を積み、力を付けてきたはずの新戦力が、どこまで通用するか。春先からずっと不安定だったキッキングチームの完成度は上がっているか。そういうことを試合を通じてテストする格好の相手である。僕は勝敗以上に、ひたすらそういった点に注目して観戦した。
結果は24-8。各クオーターに万遍なく得点された結果が示しているように、試合は終始先手をとられたままで終わった。実際、オフェンス陣が反撃に転じたのは、後半に入ってから。得点を挙げたのも第4Qに入って24-0とリードされた局面からで、勝敗だけに注目していたら、全く面白くない試合だったろう。
でも、この試合をチームの力量、現状をテストする「試金石」としてみれば、見所が一杯。極めて有意義な内容だった。思いついたことを順不同で箇条書きにしてみよう。
?昨年、1昨年の甲子園ボウル、ライスボウルの経験者と、それ以外の選手との試合に臨む姿勢にまだまだ大きな差があった。大舞台を経験した選手たちは社会人のトップチームが相手でも物怖じせず、真っ向から渡り合っていたが、経験の浅い選手は、相手の強さ、速さを意識するあまり、動きが相対的にぎこちなかった。この落差を埋めるのは、シーズン当初からの課題だったが、いまだに解消されていない。秋のシーズンを戦い、立ちはだかるライバルたちとの試合を勝ち抜くためには、なんとしても選手層の底上げを図らなければならないことが判明した。
?逆に、1年生でこの試合に登場したメンバー(LBの西田、山岸、松尾、DBの小池、DLの松本ら)は「怖い者知らず」というか、まったくひるむことなく相手に向かっていた。期待通りの働きで、秋の活躍を予感させてくれたが、それでもタックルやブリッツのコース取りなどには、まだまだ改善の余地がある。これから夏合宿をはさんで、どれだけ基礎体力を上げるか、一つ一つのプレーに力強さを加えるか、課題が明確になった。
?QBの斎藤が「チームを引っ張るのはオレだ」という意識をむき出しにして、果敢にパスを投げ、思い切りのいいスクランブルで陣地を回復していった。今回ほど無防備な状態に置かれ、QBサックを浴びせられた経験はなかったはずだが、少しもひるまず、終始チームを奮い立たせた。パスを投じるタイミングに課題はあったが、それでも成功率は約6割。とりわけ、第4Q自陣19ヤードから始まった攻撃シリーズでは、短いパスとランを使い分けて5回連続でダウンを更新。仕上げはTE樋之本へのTDパスを通し、一矢を報いた。このTDは、苦しい試合を最後まで崩れずに戦い抜いたことに対するアメフットの神様からのご褒美だろう。今回の経験を生かして精進すれば、まだまだ成長できる可能性が見えてきた。
?春先からずっと不安定だったパントチームの連携がこの日も効果的に作動せず、立ち上がりにいきなりパントブロックをくらい、相手に主導権を渡してしまった。その後も、パントは不安定なまま。昨年まではキッキングチームで相手に差を付けてきたチームの思わぬ弱点が明らかになり、秋のシーズンに向けて大きな課題を残した。
?学生チーム相手には、十分に機能していたオフェンスラインが相手守備陣に何度も破られ、QBを孤立させる場面が再三あった。社会人の代表に勝つ、というのなら、ラインの5人がもう1段階上の力量を身に付けないと、戦いきれないのでは、という課題を残した。同様に、学生相手なら格の違いを見せつけていた鷺野を中心としたRB陣も、この日は自由に走らせてもらえず、ラン攻撃が手詰まりになったときの打開策に課題が残された。
?前列に3人を配した守備は健闘したが、それでも再三、ランプレーを通された。DB陣もピンポイントでパスを投げ込んでくる相手に対処しきれなかった。11人の守備陣が連携し、それぞれの役割を完遂して守るという意識を徹底しないと、強力なライバルには対処できない、という課題が判明した。
春とはいえ、社会人のトップチームと本気で戦ったことで、こうした課題が次々と明らかになった。課題が分かれば、これまでの練習で欠けていたことも明らかになる。対処の仕方も工夫出来る。そういうたくさんの宿題をもらえた試合である。得点経過だけを見れば一方的な敗戦だったが、有意義な試合だったと、僕は喜んでいる。
この前の日曜日、春のシーズンの総決算として行われたパナソニック・インパルスとの決戦がまさにそんな試合だった。攻守とも社会人トップクラスのチームを相手に、昨年とはメンバーを一新したファイターズがどのように戦うか。春の試合で経験を積み、力を付けてきたはずの新戦力が、どこまで通用するか。春先からずっと不安定だったキッキングチームの完成度は上がっているか。そういうことを試合を通じてテストする格好の相手である。僕は勝敗以上に、ひたすらそういった点に注目して観戦した。
結果は24-8。各クオーターに万遍なく得点された結果が示しているように、試合は終始先手をとられたままで終わった。実際、オフェンス陣が反撃に転じたのは、後半に入ってから。得点を挙げたのも第4Qに入って24-0とリードされた局面からで、勝敗だけに注目していたら、全く面白くない試合だったろう。
でも、この試合をチームの力量、現状をテストする「試金石」としてみれば、見所が一杯。極めて有意義な内容だった。思いついたことを順不同で箇条書きにしてみよう。
?昨年、1昨年の甲子園ボウル、ライスボウルの経験者と、それ以外の選手との試合に臨む姿勢にまだまだ大きな差があった。大舞台を経験した選手たちは社会人のトップチームが相手でも物怖じせず、真っ向から渡り合っていたが、経験の浅い選手は、相手の強さ、速さを意識するあまり、動きが相対的にぎこちなかった。この落差を埋めるのは、シーズン当初からの課題だったが、いまだに解消されていない。秋のシーズンを戦い、立ちはだかるライバルたちとの試合を勝ち抜くためには、なんとしても選手層の底上げを図らなければならないことが判明した。
?逆に、1年生でこの試合に登場したメンバー(LBの西田、山岸、松尾、DBの小池、DLの松本ら)は「怖い者知らず」というか、まったくひるむことなく相手に向かっていた。期待通りの働きで、秋の活躍を予感させてくれたが、それでもタックルやブリッツのコース取りなどには、まだまだ改善の余地がある。これから夏合宿をはさんで、どれだけ基礎体力を上げるか、一つ一つのプレーに力強さを加えるか、課題が明確になった。
?QBの斎藤が「チームを引っ張るのはオレだ」という意識をむき出しにして、果敢にパスを投げ、思い切りのいいスクランブルで陣地を回復していった。今回ほど無防備な状態に置かれ、QBサックを浴びせられた経験はなかったはずだが、少しもひるまず、終始チームを奮い立たせた。パスを投じるタイミングに課題はあったが、それでも成功率は約6割。とりわけ、第4Q自陣19ヤードから始まった攻撃シリーズでは、短いパスとランを使い分けて5回連続でダウンを更新。仕上げはTE樋之本へのTDパスを通し、一矢を報いた。このTDは、苦しい試合を最後まで崩れずに戦い抜いたことに対するアメフットの神様からのご褒美だろう。今回の経験を生かして精進すれば、まだまだ成長できる可能性が見えてきた。
?春先からずっと不安定だったパントチームの連携がこの日も効果的に作動せず、立ち上がりにいきなりパントブロックをくらい、相手に主導権を渡してしまった。その後も、パントは不安定なまま。昨年まではキッキングチームで相手に差を付けてきたチームの思わぬ弱点が明らかになり、秋のシーズンに向けて大きな課題を残した。
?学生チーム相手には、十分に機能していたオフェンスラインが相手守備陣に何度も破られ、QBを孤立させる場面が再三あった。社会人の代表に勝つ、というのなら、ラインの5人がもう1段階上の力量を身に付けないと、戦いきれないのでは、という課題を残した。同様に、学生相手なら格の違いを見せつけていた鷺野を中心としたRB陣も、この日は自由に走らせてもらえず、ラン攻撃が手詰まりになったときの打開策に課題が残された。
?前列に3人を配した守備は健闘したが、それでも再三、ランプレーを通された。DB陣もピンポイントでパスを投げ込んでくる相手に対処しきれなかった。11人の守備陣が連携し、それぞれの役割を完遂して守るという意識を徹底しないと、強力なライバルには対処できない、という課題が判明した。
春とはいえ、社会人のトップチームと本気で戦ったことで、こうした課題が次々と明らかになった。課題が分かれば、これまでの練習で欠けていたことも明らかになる。対処の仕方も工夫出来る。そういうたくさんの宿題をもらえた試合である。得点経過だけを見れば一方的な敗戦だったが、有意義な試合だったと、僕は喜んでいる。
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