石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(35)タフであること
寒い。南国・紀州。黒潮の洗う田辺市でさえ、夜は凍えそうになるくらい寒い。夕食後の1時間、日課としている散歩に出るのも、フリースの手袋、毛糸の帽子、ファイターズのネックウオーマー、そしてダウンジャケットという重装備である。
けれども、先週末の上ヶ原、第3フィールドの寒さに比べたら、まだまだ暖かい。それほど金曜、土曜のグラウンドは寒かった。同じ関西学院のキャンパスといいながら、中央芝生付近に比べると、体感温度は確実に3度は低い。学生会館の裏まで行けばマイナス1度、上ヶ原の八幡神社の角を曲がるとマイナス1度、グラウンドに出れば、甲山からの寒風が吹き付けてさらにマイナス1度。都合マイナス3度である。吹きさらしのベンチに腰かけて、練習を眺めていると、寒さが全身に襲いかかってくる。足はしびれて感覚がないし、ほっぺたは凍り付く。
それでも、選手たちはいつも通り、平然と練習に取り組んでいる。レシーバーにいたっては、長袖にするとボールを扱う感覚が狂うからだろう。大半が半袖だ。太い腕をむき出しにしてボールをキャッチしている。
小山君に「寒くないか」と声を掛ける。
「寒いです。でも練習しているときは集中しているから大丈夫です」
元気な答えが返ってくる。
甲子園ボウルは目の前。寒いの、痛いのなんていってる場合じゃないのだろう。
土曜日は、5年生コーチや留年生、社会人チームで活動している若手OBが何人も来て、練習台を務めてくれた。パナソニックの生田君、アサヒ飲料の平澤君らである。日本IBMで監督を務めている山田氏も顔を見せ、鳥内監督と熱心に話し込んでおられた。
さすがに社会人のトップチームの主力選手たちである。練習台に入っても動きが違う。あっという間にラインを突破して、ボールキャリアに襲いかかる。QBも、普段と勝手が違うのか、パスを投げるタイミングがつかみにくそうに見えた。
でも、これから戦う相手を想定すれば、こうした一線級の選手の動きは、すべてが参考になる。より素早い相手、より強力な相手にどう対応するか。プレーが崩れた時の対応までを含め、すべてが得難い練習になる。
実際、練習でできていないことが試合でできるはずがない。今季、印象に残ったオフェンスのプレーはすべて、日ごろから練習を重ねてきた成果である。例えば、WR木戸君から梅本君へのロングパス、QB畑君からWR南本君、RB鷺野君へとパスが渡ったスペシャルプレーも、普段から何度も何度もタイミングを合わせ、磨きに磨いてきたプレーだった。
デフェンスやキッキングカバーのパフォーマンスも同様だ。細かいところを何度も何度もチェックし、タイミングを合わせ、ここしかないというポイントを突いてファインプレーを生み出している。観客には偶然が味方したように見えるパントのブロックも、ファンブルボールのカバーも、もちろんインターセプトも、すべて緻密な計算と、1プレーごとに結果をチェックし、微妙な修正を繰り返す濃密な練習によってもたらされた果実である。
そういう練習を営々と続けてきた1年間の成果が試されるのが、これからの試合である。京大、関大、立命館に勝って、一息入れている場合ではない。これからは1試合、1試合、肉体的、精神的に、どれだけタフな戦いができるかによって勝敗が決まる。現役OBたちがスカウトチームに入った練習が熱を帯びてくるのも当然である。寒いとか、痛いとかいってる場合ではない。
タフといえば、先日読んだロバート・B・パーカーの小説「春嵐」に、こんな台詞があった。
「喧嘩に勝つというのは、たんに喧嘩がうまいということ」「タフというのは、困難なものを正面から見据えて『これは困難だ。対処法を考えなければならない』といい、現実に対処すること」
聖書にある「狭き門より入れ」という言葉にも通じる台詞である。
タフになるチャンスは誰にでもある。しかし、実際にタフな人は少ない。困難な問題にぶつかったとき、それと向き合い、その壁を突破する対処法を考え、実行することから逃げてしまう人が大半だ。人は、そういう人間をチキンと呼び、弱虫という。
ファイターズの諸君には全員、チキンではなく、タフな人間になってもらいたい。甲子園ボウルからライスボウルへと続く試合が、そのチャンスである。
けれども、先週末の上ヶ原、第3フィールドの寒さに比べたら、まだまだ暖かい。それほど金曜、土曜のグラウンドは寒かった。同じ関西学院のキャンパスといいながら、中央芝生付近に比べると、体感温度は確実に3度は低い。学生会館の裏まで行けばマイナス1度、上ヶ原の八幡神社の角を曲がるとマイナス1度、グラウンドに出れば、甲山からの寒風が吹き付けてさらにマイナス1度。都合マイナス3度である。吹きさらしのベンチに腰かけて、練習を眺めていると、寒さが全身に襲いかかってくる。足はしびれて感覚がないし、ほっぺたは凍り付く。
それでも、選手たちはいつも通り、平然と練習に取り組んでいる。レシーバーにいたっては、長袖にするとボールを扱う感覚が狂うからだろう。大半が半袖だ。太い腕をむき出しにしてボールをキャッチしている。
小山君に「寒くないか」と声を掛ける。
「寒いです。でも練習しているときは集中しているから大丈夫です」
元気な答えが返ってくる。
甲子園ボウルは目の前。寒いの、痛いのなんていってる場合じゃないのだろう。
土曜日は、5年生コーチや留年生、社会人チームで活動している若手OBが何人も来て、練習台を務めてくれた。パナソニックの生田君、アサヒ飲料の平澤君らである。日本IBMで監督を務めている山田氏も顔を見せ、鳥内監督と熱心に話し込んでおられた。
さすがに社会人のトップチームの主力選手たちである。練習台に入っても動きが違う。あっという間にラインを突破して、ボールキャリアに襲いかかる。QBも、普段と勝手が違うのか、パスを投げるタイミングがつかみにくそうに見えた。
でも、これから戦う相手を想定すれば、こうした一線級の選手の動きは、すべてが参考になる。より素早い相手、より強力な相手にどう対応するか。プレーが崩れた時の対応までを含め、すべてが得難い練習になる。
実際、練習でできていないことが試合でできるはずがない。今季、印象に残ったオフェンスのプレーはすべて、日ごろから練習を重ねてきた成果である。例えば、WR木戸君から梅本君へのロングパス、QB畑君からWR南本君、RB鷺野君へとパスが渡ったスペシャルプレーも、普段から何度も何度もタイミングを合わせ、磨きに磨いてきたプレーだった。
デフェンスやキッキングカバーのパフォーマンスも同様だ。細かいところを何度も何度もチェックし、タイミングを合わせ、ここしかないというポイントを突いてファインプレーを生み出している。観客には偶然が味方したように見えるパントのブロックも、ファンブルボールのカバーも、もちろんインターセプトも、すべて緻密な計算と、1プレーごとに結果をチェックし、微妙な修正を繰り返す濃密な練習によってもたらされた果実である。
そういう練習を営々と続けてきた1年間の成果が試されるのが、これからの試合である。京大、関大、立命館に勝って、一息入れている場合ではない。これからは1試合、1試合、肉体的、精神的に、どれだけタフな戦いができるかによって勝敗が決まる。現役OBたちがスカウトチームに入った練習が熱を帯びてくるのも当然である。寒いとか、痛いとかいってる場合ではない。
タフといえば、先日読んだロバート・B・パーカーの小説「春嵐」に、こんな台詞があった。
「喧嘩に勝つというのは、たんに喧嘩がうまいということ」「タフというのは、困難なものを正面から見据えて『これは困難だ。対処法を考えなければならない』といい、現実に対処すること」
聖書にある「狭き門より入れ」という言葉にも通じる台詞である。
タフになるチャンスは誰にでもある。しかし、実際にタフな人は少ない。困難な問題にぶつかったとき、それと向き合い、その壁を突破する対処法を考え、実行することから逃げてしまう人が大半だ。人は、そういう人間をチキンと呼び、弱虫という。
ファイターズの諸君には全員、チキンではなく、タフな人間になってもらいたい。甲子園ボウルからライスボウルへと続く試合が、そのチャンスである。
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