石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(30)天地人
11日の関大戦は予報通りの雨。雨脚が強くなったり弱くなったりしながら、試合中ずっと降り続いた。この雨を味方に付けるか、それとも敵に回すか。ファイターズの首脳陣が予測していた通りの試合展開になった。
先週金曜日、久々に練習を見にいって、鳥内監督と顔を合わせたら、いきなり天気予報の話題。「日曜は雨でしょう。予報では相当強い雨らしい。それにどう対処するか。小降りなら問題ないけど、強く降ったり、風が吹いたりしたら最悪。ゴムボールは扱いが難しいし、パスで勝負するうちにとってはやっかいなことです」
監督の言葉を受けて、その日は完全に雨を意識した練習。水を張ったバケツにゴムボールを浸けて滑りやすくし、WRも機会あるたびにグラブに水をかけ、最悪の条件でパスを受ける練習を繰り返していた。
そういう場面を見ていると、関西最強といわれるレシーバー陣が雨で力を発揮できなくなるのではないか。抜群のコントロールを誇る畑のパスも、ゴムボールでは思い通りに通らなくなるのではないか。そんな弱気の虫が顔をのぞかせる。
たまたま、一緒に練習を見ていた小野コーチに聞くと「雨の日はパスを得意とするうちの方が有利ですよ。力のあるQBは、そんなに雨の影響を気にしないけど、経験の少ないQBにとってはより影響が大きいですから」「それより心配は風です。強い風が吹いたら、どんなに有能なQBでも力が出せません。雨は仕方ないけど、風の吹かないことを願っています」。さすがはQBコーチ。QBのことなら、その心理状態を含めて細部の細部まで見通している。その話を聞いて「どんなに雨が降っても、我慢をしていればきっとチャンスは来る」。そう思って試合を観戦した。
ファイターズのレシーブで試合開始。案の定、両軍とも雨の影響か、陣地が進まない。互いに攻撃が手詰まりになり、パントを蹴り合う展開が続く。ボールも手につかず、ファンブルもある。第1Qが終わった時点で、両軍ともダウンを更新したのは1度だけ、という記録を見れば、我慢比べの展開だったことがよく分かる。
両軍とも一歩も引かない守り合いの試合に突破口を開いたのはファイターズ。第2Q残り2分19秒、相手陣49ヤードから始まったシリーズで勝負をかけた。雨が少し小降りになったのを見極めたベンチがゴムボールから皮のボールに交換を要求したのだ。皮のボールは水分を吸収すれば重くなるし、滑りやすい。当然、パスは投げにくい。
しかし、雨は小降りになっている。前半、残された時間は短い。少し小降りになったここで勝負をかけないと、後半、再び土砂降りになって、皮のボールを使う機会が来ないかもしれない。そう見極めて、鳥内監督が審判団にボール交換を要求したのだ。
この決断に畑が応える。WR梅本、大園、木戸へと立て続けに短いパスをヒットさせてダウンを2度更新。パスが通ればランも通る。RB望月のダイブプレーや畑のキープを織り交ぜ、さらにWR小山と木戸にパスを通して、あっという間にゴール前に迫る。ゴムボールではあれほど苦しんだパスが、皮のボールだといとも簡単に通っていく。
前半残り41秒。第3ダウン残り3ヤード。中央ダイブのフェイクから畑が左オープンを走り切って待望のTD。堀本のキックも決まって7-0で前半終了。
後半は関大のレシーブ。ファイターズベンチが一番懸念していた関大のリターナー陣がその能力を見せつける。好リターンでいきなりファイターズ陣45ヤードから始まったシリーズは、わずか2プレーで、ファイターズゴール前20ヤードに迫る。ここは守備陣が必死に食い止め、関大はフィールドゴールにトライ。
ここでファイターズ守備陣が踏ん張る。フィールドゴールチャージに入っていたLB池田が相手の蹴ったボールをカットしたのだ。フィールドゴール不成功。相手に傾きかけた流れを一気に引き戻すビッグプレーだった。
試合後、池田に聞くと「たまたまですよ。前がうまく空いていただけです」。だが、梶原主将に聞くと「あれは、(フィールドゴールチャージ担当の鳥内)貴央の手柄です。フィールドゴールチャージの練習で、ずっとああいう場面を想定してプレーのアイデアを練り、チャージする練習を繰り返していましたから。リーダーを中心に努力してきたチャージチーム全員の手柄です」ということだった。練習とアイデアという裏付けがあって初めて実現した起死回生の好プレーということだろう。
これで勢いづいたファイターズは、第3Qに望月のラン、畑の2度に渡る独走で立て続けに3本のTDを挙げ、試合を決めた。
振り返れば、雨が一瞬小降りになった「天の時」を逃がさず、ホームゲームという「地の利」を生かして戦ったファイターズ。苦しい時に耐え続けた守備陣や、オフェンスライン。努力とアイデアで突破口を開いたフィールドゴールチャージチーム。グラウンドで戦う全員で流れを引き寄せた「人の和」。
雨の中、厳しい戦いを勝ち抜いたのは「天地人」の力を結集したファイターズだった。
関西リーグもあと1試合。本当に強い立命との決戦にも「天地人」の力を結集して臨んでほしい。
先週金曜日、久々に練習を見にいって、鳥内監督と顔を合わせたら、いきなり天気予報の話題。「日曜は雨でしょう。予報では相当強い雨らしい。それにどう対処するか。小降りなら問題ないけど、強く降ったり、風が吹いたりしたら最悪。ゴムボールは扱いが難しいし、パスで勝負するうちにとってはやっかいなことです」
監督の言葉を受けて、その日は完全に雨を意識した練習。水を張ったバケツにゴムボールを浸けて滑りやすくし、WRも機会あるたびにグラブに水をかけ、最悪の条件でパスを受ける練習を繰り返していた。
そういう場面を見ていると、関西最強といわれるレシーバー陣が雨で力を発揮できなくなるのではないか。抜群のコントロールを誇る畑のパスも、ゴムボールでは思い通りに通らなくなるのではないか。そんな弱気の虫が顔をのぞかせる。
たまたま、一緒に練習を見ていた小野コーチに聞くと「雨の日はパスを得意とするうちの方が有利ですよ。力のあるQBは、そんなに雨の影響を気にしないけど、経験の少ないQBにとってはより影響が大きいですから」「それより心配は風です。強い風が吹いたら、どんなに有能なQBでも力が出せません。雨は仕方ないけど、風の吹かないことを願っています」。さすがはQBコーチ。QBのことなら、その心理状態を含めて細部の細部まで見通している。その話を聞いて「どんなに雨が降っても、我慢をしていればきっとチャンスは来る」。そう思って試合を観戦した。
ファイターズのレシーブで試合開始。案の定、両軍とも雨の影響か、陣地が進まない。互いに攻撃が手詰まりになり、パントを蹴り合う展開が続く。ボールも手につかず、ファンブルもある。第1Qが終わった時点で、両軍ともダウンを更新したのは1度だけ、という記録を見れば、我慢比べの展開だったことがよく分かる。
両軍とも一歩も引かない守り合いの試合に突破口を開いたのはファイターズ。第2Q残り2分19秒、相手陣49ヤードから始まったシリーズで勝負をかけた。雨が少し小降りになったのを見極めたベンチがゴムボールから皮のボールに交換を要求したのだ。皮のボールは水分を吸収すれば重くなるし、滑りやすい。当然、パスは投げにくい。
しかし、雨は小降りになっている。前半、残された時間は短い。少し小降りになったここで勝負をかけないと、後半、再び土砂降りになって、皮のボールを使う機会が来ないかもしれない。そう見極めて、鳥内監督が審判団にボール交換を要求したのだ。
この決断に畑が応える。WR梅本、大園、木戸へと立て続けに短いパスをヒットさせてダウンを2度更新。パスが通ればランも通る。RB望月のダイブプレーや畑のキープを織り交ぜ、さらにWR小山と木戸にパスを通して、あっという間にゴール前に迫る。ゴムボールではあれほど苦しんだパスが、皮のボールだといとも簡単に通っていく。
前半残り41秒。第3ダウン残り3ヤード。中央ダイブのフェイクから畑が左オープンを走り切って待望のTD。堀本のキックも決まって7-0で前半終了。
後半は関大のレシーブ。ファイターズベンチが一番懸念していた関大のリターナー陣がその能力を見せつける。好リターンでいきなりファイターズ陣45ヤードから始まったシリーズは、わずか2プレーで、ファイターズゴール前20ヤードに迫る。ここは守備陣が必死に食い止め、関大はフィールドゴールにトライ。
ここでファイターズ守備陣が踏ん張る。フィールドゴールチャージに入っていたLB池田が相手の蹴ったボールをカットしたのだ。フィールドゴール不成功。相手に傾きかけた流れを一気に引き戻すビッグプレーだった。
試合後、池田に聞くと「たまたまですよ。前がうまく空いていただけです」。だが、梶原主将に聞くと「あれは、(フィールドゴールチャージ担当の鳥内)貴央の手柄です。フィールドゴールチャージの練習で、ずっとああいう場面を想定してプレーのアイデアを練り、チャージする練習を繰り返していましたから。リーダーを中心に努力してきたチャージチーム全員の手柄です」ということだった。練習とアイデアという裏付けがあって初めて実現した起死回生の好プレーということだろう。
これで勢いづいたファイターズは、第3Qに望月のラン、畑の2度に渡る独走で立て続けに3本のTDを挙げ、試合を決めた。
振り返れば、雨が一瞬小降りになった「天の時」を逃がさず、ホームゲームという「地の利」を生かして戦ったファイターズ。苦しい時に耐え続けた守備陣や、オフェンスライン。努力とアイデアで突破口を開いたフィールドゴールチャージチーム。グラウンドで戦う全員で流れを引き寄せた「人の和」。
雨の中、厳しい戦いを勝ち抜いたのは「天地人」の力を結集したファイターズだった。
関西リーグもあと1試合。本当に強い立命との決戦にも「天地人」の力を結集して臨んでほしい。
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