石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

(1)「今季に期す」

投稿日時:2009/03/29(日) 23:29rss

 春である。寒の戻りで震え上がっていても、桜が咲けば、やっぱり春である。上ケ原の第3フィールドに出掛ければ、ファイターズの面々が元気な顔をそろえ、もう春本番というような表情で練習している。
 もちろん、六甲山から吹き下ろす風は冷たい。たまらんほど寒い。練習を見に行くときには、しっかり着込んで、防寒対策はしているつもりだが、それでも鼻水が垂れてくる。
 けれども、選手たちは元気いっぱい。体から湯気を立てている。みぞれが降ろうかという日でも半パンTシャツ姿の元気者もいるし、もう初夏のように日焼けした選手もいる。
 長いご無沙汰だった。昨年11月30日、神戸のユニバースタジアムで立命に敗れた試合の報告を最後に、長い冬眠に入ったこのコラムだが、フィールドの元気な選手たちにたたき起こされる形で、今日から再開する。
 もちろん、コラムは冬眠していても、僕はせっせと第3フィールドに出掛け、選手たちの表情を眺めてきた。2月、3月はまだ、パートごとの基本練習。それと走りモノである。余りにも地味だから、ボヤーと見ているだけでは面白くも何ともない。
 しかしながら、僕のような素人でも、真剣に目を凝らしていると、いろんな事が見えてくる。今年にかけるチームの意気込み。コーチの取り組み。新しくリーダーになって表情が変わった選手。リベンジに燃える選手。走りモノで最後まで手を抜かない選手の姿も確認できるし、昨年や1昨年のチームが滑り出したときとの比較も興味深い。
 見るべき所はいくつもある。地味でも、寒さに震えていても、この時期の練習を見るのは、楽しいのである。
 これらの細部を報告すれば、それだけで興味深い読み物になりそうだ。だが、それは同時に、ライバルチームに手の内を明かすことにもなりかねない。そこで、この手の話は胸の内にしまって、代わりに、新しい幹部たちの今季にかける抱負をお伝えしたい。まずは主将の新谷太郎君から。
……今季は、2位からスタートするチーム。昨年は残念ながら、オフェンスもディフェンスも、立命に歯が立たなかった。その悔しさを忘れず、その現実を直視して、何事にもチャレンジしていくチームにしたい。
……4年生が中心となって、学年の上下関係なくチームの雰囲気を上げていく。立命に対抗するためには、チームの力を付けるしかない。そのためには、自分自身がより上のレベルを追求する姿勢で取り組み、その姿を下級生に見せるしかない。
……主将になったことで、これまで以上にファイターズの名前に恥じない行動を心掛けている。今年がアメフットをする最後の年だと思っているので、両親をはじめ、これまで支えてくださった人に感謝するためにも、勝たなければならない。そのためには、練習あるのみだと思って取り組む。
 続いて、副将の古下義久君の抱負。
……まずは、新谷主将を支えていくこと。僕の考える「支える」とは、下から支えるのではなく、存在感や技術面で主将を超えに行くこと、よきライバルとなること。そのためには、僕自身が声を出して激しくプレーすることだと思っている。
……昨年の立命戦で一番悔しかったことは、ベンチでもプレーでも声が出なかったこと。やられたらシュンとしてしまう部分が大きくて、言葉がない、気持ちがない状態で負けたことが悔しい。今年は、そういう悔しさを味わいたくないので、練習の段階から僕自身が先頭に立って厳しく取り組んでいきたい。
……普段から、上下関係を気にせず、上級生も下級生も互いに厳しく要求しあえるチームにしたい。学年を問わず、間違っていることは間違っているといえる、本当の意味での信頼関係を築きたい。
 もう一人の副将、亀井直樹君には取材の時間がとれなかったので、最後に主務の三井良太君の抱負を。
……なにより大切にしたいのは団結力。昨年のチームは、パートごとの自主性を重んじる余り、この面で欠けていた。オフェンスもディフェンスも、スタッフの中でも、団結ができていなかった。それでは互いに厳しいことも要求できないし、本当の意味での信頼感も生まれない。今年は、少々波紋を起こしても、言いたいことは言い合い、そこから本当の信頼を築きたい。
……これまで関学のフットボールといえば、戦術というか、ポイントをずらせて、こちらが勝てる状況を作って勝ってきた。けれども今年は、団結力にこだわり、正面から勝てる状況を作っていきたい。
……根本的な所では、どんな人間になりたいんや、ということを一人一人の部員に突き詰めさせたい。学生スポーツだから、一人一人が「一人前」の人間になってこそ価値がある。付いてこられないヤツとは徹底的に対話し、つねに「日本1の集団になりたい」という気持ちで行動したい。
  ◇  ◇
 以上、練習の合間に時間をとってもらって取材したさわりの部分である。「今季に期す」彼らの気持ちを感じていただけただろうか。来週からまた、報告を続けたい。
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