石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(26)僥倖か地力か
14日の龍谷大戦は、何とも評価の難しい試合だった。
得点は63-0。4つのクオーターにバランスよく点を重ねたし、先発メンバーが引っ込んだときにも控えのメンバーが持ちこたえて相手を完封した。2枚目、3枚目のメンバーが顔見せのように登場した第4Qにも着実にTDを重ね、スコアボードを見る限りは、ファイターズの圧勝だった。
だが、現場で試合を見ている限り、そういう気楽な気分ではなかった。エースQB畑に代わって、この日は斎藤が先発したが、立ち上がり2回の攻撃シリーズは、ともにパスが思うように通らず、2度ともパントを蹴る羽目になった。ディフェンスもまた、反則などがあって簡単には相手を抑えきれない。
このままずるずる押されるのか、という流れになりかかったところで、QB斎藤のパンチが炸裂した。オプションキーププレーで中央を抜け出し、3人のブロッカーに守られて53ヤードを独走、先制のTDにつなげたのだ。
その直後、今度は守備陣が見せた。相手が自陣10ヤード付近から投じた短いパスをLB小野がインターセプト、そのまま15ヤードを走り切ってTD。第1Q終了間際の1分足らずの間に、一気に14点を獲得して、ようやくベンチを落ち着かせた。
第2Qに入っても、ファイターズの一発攻勢は続く。まずは南本の52ヤードパントリターンTD。相手デフェンスのタックルを十分な見切りで一人、二人とかわし、左のサイドライン際を一気に駆け上がった。次のシリーズはパントに追いやられたが、自陣25ヤードからのその次の攻撃では、RB望月が立て続けに中央をついて計16ヤード前進。続いて斎藤から1年生WR木下への26ヤードのパスがヒットして相手陣35ヤード。
ここでファイターズはWR木戸からWR梅本へ34ヤードのパス。相手の意表を突いたとっておきのプレーであり、木戸の遠投力と梅本の走力がかみ合った見事なパスだった。残った1ヤードは望月がお約束のように左オフタックルを抜けてTD。K堀本がすべてのキックを決めて前半を28-0で折り返した。
このように得点経過を振り返れば、いかにも順調である。だが、よく注意してみると、1本目は斎藤のキーププレーからの53ヤード独走。2本目は小野のインターセプトTD、3本目は南本の52ヤードリターンTD。4本目も、途中ランプレーやパスで陣地を進めてきたが、決め手は木戸のスペシャルプレーだった。
つまり、こつこつとジャブを放って陣地を進めるのではなく、一発パンチで相手をKOするような戦いだったのである。こういうパンチが27日からの京大、関大、立命との戦いで、炸裂するかどうか。逆にそのパンチの裏をとったカウンターパンチを決められるようなことになるのではないか。そう思うと、すっかり憂鬱になってしまうのである。
何しろ相手は、鳥内監督いわく「とてつもなく強力な守備力を持っている」。オフェンスには「一発で試合を決める決定力のあるタレント」がいる。キッキングチームも、ファイターズ以上に洗練されているそうだ。
そういう強敵を相手に、前半4試合のような余裕を持った戦いができるかどうか。龍谷戦のような一発で決めるプレーが決まるかどうか。試合後も、厳しい表情を崩さなかった副将、川端君がこんなことを言っていた。
「まだまだです。相手がこれまでのチームで一番強かったこともありますが、なかなか思い通りにさせてくれなかった。2枚目以下の選手はがんばってくれたけど、スタメンがもう一段階上のプレーを追求しないと、これからの試合は苦しいでしょう」
実際に戦った選手ならではの言葉である。得点板に記された数字はひとまず忘れ、次からの試合に備えなければならないということだろう。
この試合を63-0で勝ったのは事実である。しかし、その得点が僥倖(ぎょうこう)によってもたらされたのか、それとも本物だったのか。それは、これからの3戦で判明する。そのハードな戦いに臨むために、チームが一丸となって、残された時間を惜しみ、いっそうの奮励努力を重ねてほしい。
得点は63-0。4つのクオーターにバランスよく点を重ねたし、先発メンバーが引っ込んだときにも控えのメンバーが持ちこたえて相手を完封した。2枚目、3枚目のメンバーが顔見せのように登場した第4Qにも着実にTDを重ね、スコアボードを見る限りは、ファイターズの圧勝だった。
だが、現場で試合を見ている限り、そういう気楽な気分ではなかった。エースQB畑に代わって、この日は斎藤が先発したが、立ち上がり2回の攻撃シリーズは、ともにパスが思うように通らず、2度ともパントを蹴る羽目になった。ディフェンスもまた、反則などがあって簡単には相手を抑えきれない。
このままずるずる押されるのか、という流れになりかかったところで、QB斎藤のパンチが炸裂した。オプションキーププレーで中央を抜け出し、3人のブロッカーに守られて53ヤードを独走、先制のTDにつなげたのだ。
その直後、今度は守備陣が見せた。相手が自陣10ヤード付近から投じた短いパスをLB小野がインターセプト、そのまま15ヤードを走り切ってTD。第1Q終了間際の1分足らずの間に、一気に14点を獲得して、ようやくベンチを落ち着かせた。
第2Qに入っても、ファイターズの一発攻勢は続く。まずは南本の52ヤードパントリターンTD。相手デフェンスのタックルを十分な見切りで一人、二人とかわし、左のサイドライン際を一気に駆け上がった。次のシリーズはパントに追いやられたが、自陣25ヤードからのその次の攻撃では、RB望月が立て続けに中央をついて計16ヤード前進。続いて斎藤から1年生WR木下への26ヤードのパスがヒットして相手陣35ヤード。
ここでファイターズはWR木戸からWR梅本へ34ヤードのパス。相手の意表を突いたとっておきのプレーであり、木戸の遠投力と梅本の走力がかみ合った見事なパスだった。残った1ヤードは望月がお約束のように左オフタックルを抜けてTD。K堀本がすべてのキックを決めて前半を28-0で折り返した。
このように得点経過を振り返れば、いかにも順調である。だが、よく注意してみると、1本目は斎藤のキーププレーからの53ヤード独走。2本目は小野のインターセプトTD、3本目は南本の52ヤードリターンTD。4本目も、途中ランプレーやパスで陣地を進めてきたが、決め手は木戸のスペシャルプレーだった。
つまり、こつこつとジャブを放って陣地を進めるのではなく、一発パンチで相手をKOするような戦いだったのである。こういうパンチが27日からの京大、関大、立命との戦いで、炸裂するかどうか。逆にそのパンチの裏をとったカウンターパンチを決められるようなことになるのではないか。そう思うと、すっかり憂鬱になってしまうのである。
何しろ相手は、鳥内監督いわく「とてつもなく強力な守備力を持っている」。オフェンスには「一発で試合を決める決定力のあるタレント」がいる。キッキングチームも、ファイターズ以上に洗練されているそうだ。
そういう強敵を相手に、前半4試合のような余裕を持った戦いができるかどうか。龍谷戦のような一発で決めるプレーが決まるかどうか。試合後も、厳しい表情を崩さなかった副将、川端君がこんなことを言っていた。
「まだまだです。相手がこれまでのチームで一番強かったこともありますが、なかなか思い通りにさせてくれなかった。2枚目以下の選手はがんばってくれたけど、スタメンがもう一段階上のプレーを追求しないと、これからの試合は苦しいでしょう」
実際に戦った選手ならではの言葉である。得点板に記された数字はひとまず忘れ、次からの試合に備えなければならないということだろう。
この試合を63-0で勝ったのは事実である。しかし、その得点が僥倖(ぎょうこう)によってもたらされたのか、それとも本物だったのか。それは、これからの3戦で判明する。そのハードな戦いに臨むために、チームが一丸となって、残された時間を惜しみ、いっそうの奮励努力を重ねてほしい。
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