石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(22)ピンチはチャンス
それにしてもけが人が多い。
秋のリーグ戦は始まったばかりだというのに、今季の活躍に注目していた選手たちが相次いで戦列を離れた。負傷した部位を氷で冷やし、テーピング用のテープでがちがちに固定してグラウンドを去る選手の姿を見ていると、自分の子や孫がけがをしたかのように胸が痛む。選手や家族にとっては、言葉に尽くせないほどの悔しさだろう。もちろん、チームにとっても、手痛い打撃である。
今年のチームづくりは、昨季、1月3日のライスボウルまでのハードな戦いで傷ついた選手たちの回復と、先発メンバーに次ぐ2番手、3番手メンバーの底上げが大きなテーマだった。ディフェンスでは主将の梶原、ラインの前川、岸、池永らの主力が春には全く試合に出ず、けがからの回復と体力作りに専念した。オフェンスも同様、司令塔の畑やラインを引っ張る和田らが出場を見合わせ、その分、3年生や2年生を積極的に起用してきた。
それが功を奏し、これまでは控えに甘んじていた3年生のOLやDB、2年生のDLやQB、RB、DBが力を付け、先発メンバーの一角に入ったり、交代要員として1枚目のメンバーに劣らない活躍をしたりして、スタンドをわくわくさせてくれた。
チームの底上げができた、これで戦力が厚くなった、と喜んだ矢先の「成長が目に見える」メンバーたちの離脱である。
幸い、初戦でけがはしたけど、すぐに2戦目から戦列に復帰し、元気でプレーしているメンバーもいる。2戦目は出られなかったが、次の試合を目標に懸命に回復訓練に励んでいる選手もいる。
けれども、人間の身体は微妙だ。負傷は癒えても「けがの記憶」は体が覚えている。けがをする前と、復帰後では、同じプレーでも精度が落ちることは少なくない。知らず知らずに負傷した部位をかばって、思い通りに体を動かせないことだってある。
そういう時こそ2枚目、3枚目のメンバーが活躍するチャンスである。どのポジションであっても、先発メンバーと遜色のない控え選手がいれば、主力選手の負傷は、逆に新たな人材を登用するチャンスになる。新たな人材が成長すれば、新たな作戦の展開も可能になるだろう。
「チームのピンチは、個人のチャンス」と呼ばれる、これが由縁である。近年の関西リーグのように、上位校の戦力が拮抗してくると「選手層の厚さが勝敗を分ける」といわれるのも、ここに理由がある。
ならば、ファイターズはそういうチームの底上げができているか。少しぐらい負傷者が出ても「オレがポジションを獲る」と言い切れる選手がどれだけいるか。15日の同志社戦は、そういう視点で観戦した。
結論からいうと、光明は3分、悪いことが7分ぐらいだった。
光明のひとつは、春はJV戦ぐらいしか出ていなかったRB榎本(3年)がエースRB望月を思わせるようなパワフルな走りを見せてくれたこと。試合会場に向かう電車で、たまたま一緒になったRB担当の島野コーチが「今日は榎本の走りに注目して下さい。最近はいい練習をしていますから」と言われていた通りのプレーぶり。10回のラッシュで73ヤードというチームトップの走りを見せ、タッチダウンも決めた。
2つ目は、DLの先発に名を連ねた2年生の梶原弟。4年生、前川の欠場が気にならないほどのスピードと当たりで相手ラインを押し込み、1枚目と遜色のないプレーぶりだった。春の試合で鍛えられ、「もう一丁、もう一丁」と積極的に練習してきた成果だろう。同じ2年生の練習仲間であるDLの岡部とともに、さらなる成長が楽しみだ。
3つ目は、僕が密かに注目しているLBの元気印・吉原がQBサックを決めてくれたこと。LB陣には副将・川端をはじめ1年生の時から活躍している池田雄や小野がおり、練習では全く目立たない選手だが、試合になると、そのハッスルプレーが目につく。時々、方向違いのプレーもあるが、そのひたむきさが目をひく選手である。けがでしばらく戦列を離れていたDBの足立とともに、これからのチームの底上げに欠かせない存在だろう。
さて、これらがいい方の3分とすれば、悪い方の7分は初戦の近大戦と同様、後半、メンバーが交代するごとに、目に見えて戦力がダウンしたこと。1枚目や1枚目半の選手とは、明らかにプレーの内容に落差があった。
梶原主将が「1枚目と2枚目の差をもっと詰めないと、リーグ終盤戦や甲子園ボウル、ライスボウルでは勝てない」、川端副将が「今後のビッグゲームでは2枚目以降の選手の力が必要になってくる。成長に期待したい」という通りである。
けが人が相次ぎ、チームとしては面白くない状況だが、そのピンチを「オレにはチャンス」と思う選手がどれだけいるか。そのチャンスを手に入れる選手が何人出てくるか。3戦目以降は、そこに注目していきたい。
秋のリーグ戦は始まったばかりだというのに、今季の活躍に注目していた選手たちが相次いで戦列を離れた。負傷した部位を氷で冷やし、テーピング用のテープでがちがちに固定してグラウンドを去る選手の姿を見ていると、自分の子や孫がけがをしたかのように胸が痛む。選手や家族にとっては、言葉に尽くせないほどの悔しさだろう。もちろん、チームにとっても、手痛い打撃である。
今年のチームづくりは、昨季、1月3日のライスボウルまでのハードな戦いで傷ついた選手たちの回復と、先発メンバーに次ぐ2番手、3番手メンバーの底上げが大きなテーマだった。ディフェンスでは主将の梶原、ラインの前川、岸、池永らの主力が春には全く試合に出ず、けがからの回復と体力作りに専念した。オフェンスも同様、司令塔の畑やラインを引っ張る和田らが出場を見合わせ、その分、3年生や2年生を積極的に起用してきた。
それが功を奏し、これまでは控えに甘んじていた3年生のOLやDB、2年生のDLやQB、RB、DBが力を付け、先発メンバーの一角に入ったり、交代要員として1枚目のメンバーに劣らない活躍をしたりして、スタンドをわくわくさせてくれた。
チームの底上げができた、これで戦力が厚くなった、と喜んだ矢先の「成長が目に見える」メンバーたちの離脱である。
幸い、初戦でけがはしたけど、すぐに2戦目から戦列に復帰し、元気でプレーしているメンバーもいる。2戦目は出られなかったが、次の試合を目標に懸命に回復訓練に励んでいる選手もいる。
けれども、人間の身体は微妙だ。負傷は癒えても「けがの記憶」は体が覚えている。けがをする前と、復帰後では、同じプレーでも精度が落ちることは少なくない。知らず知らずに負傷した部位をかばって、思い通りに体を動かせないことだってある。
そういう時こそ2枚目、3枚目のメンバーが活躍するチャンスである。どのポジションであっても、先発メンバーと遜色のない控え選手がいれば、主力選手の負傷は、逆に新たな人材を登用するチャンスになる。新たな人材が成長すれば、新たな作戦の展開も可能になるだろう。
「チームのピンチは、個人のチャンス」と呼ばれる、これが由縁である。近年の関西リーグのように、上位校の戦力が拮抗してくると「選手層の厚さが勝敗を分ける」といわれるのも、ここに理由がある。
ならば、ファイターズはそういうチームの底上げができているか。少しぐらい負傷者が出ても「オレがポジションを獲る」と言い切れる選手がどれだけいるか。15日の同志社戦は、そういう視点で観戦した。
結論からいうと、光明は3分、悪いことが7分ぐらいだった。
光明のひとつは、春はJV戦ぐらいしか出ていなかったRB榎本(3年)がエースRB望月を思わせるようなパワフルな走りを見せてくれたこと。試合会場に向かう電車で、たまたま一緒になったRB担当の島野コーチが「今日は榎本の走りに注目して下さい。最近はいい練習をしていますから」と言われていた通りのプレーぶり。10回のラッシュで73ヤードというチームトップの走りを見せ、タッチダウンも決めた。
2つ目は、DLの先発に名を連ねた2年生の梶原弟。4年生、前川の欠場が気にならないほどのスピードと当たりで相手ラインを押し込み、1枚目と遜色のないプレーぶりだった。春の試合で鍛えられ、「もう一丁、もう一丁」と積極的に練習してきた成果だろう。同じ2年生の練習仲間であるDLの岡部とともに、さらなる成長が楽しみだ。
3つ目は、僕が密かに注目しているLBの元気印・吉原がQBサックを決めてくれたこと。LB陣には副将・川端をはじめ1年生の時から活躍している池田雄や小野がおり、練習では全く目立たない選手だが、試合になると、そのハッスルプレーが目につく。時々、方向違いのプレーもあるが、そのひたむきさが目をひく選手である。けがでしばらく戦列を離れていたDBの足立とともに、これからのチームの底上げに欠かせない存在だろう。
さて、これらがいい方の3分とすれば、悪い方の7分は初戦の近大戦と同様、後半、メンバーが交代するごとに、目に見えて戦力がダウンしたこと。1枚目や1枚目半の選手とは、明らかにプレーの内容に落差があった。
梶原主将が「1枚目と2枚目の差をもっと詰めないと、リーグ終盤戦や甲子園ボウル、ライスボウルでは勝てない」、川端副将が「今後のビッグゲームでは2枚目以降の選手の力が必要になってくる。成長に期待したい」という通りである。
けが人が相次ぎ、チームとしては面白くない状況だが、そのピンチを「オレにはチャンス」と思う選手がどれだけいるか。そのチャンスを手に入れる選手が何人出てくるか。3戦目以降は、そこに注目していきたい。
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