石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(16)アメフットの伝道師
暑さと遊びにかまけて、すっかり遅くなったが、先日、大阪の朝日カルチャーセンターで行われた小野宏コーチの講演会の模様を報告する。
「アメリカンフットボールの本当の魅力」と題して行われた講演会は、満員の盛況。カルチャーセンターで一番広い会場を埋め尽くす119人の聴衆が詰めかけた。親しくさせていただいているファイターズ後援会やファンクラブの方々の顔も大勢見える。東京から新幹線で見えられた方も少なくないようだ。KGファイターズの頭脳と呼ばれ、長い間オフェンスコーディネーターを務めたあと、近年はキッキングコーチを担当し、関西学院大学の企画室の担当課長として学院の将来構想・中期計画の策定や実行にも携わっている小野コーチの話に対する期待のほどがうかがえる。
会場で配布されたレジュメによると、話は「人間の本質は遊びにある」「遊びそのものに人類にとっての崇高な価値があり、スポーツや経済活動など人間の活動のあらゆる局面にゲーム的な遊びの要素が組み込まれている」という前置きから始まり、昨年の甲子園ボウルの秘密を解説し、アメリカンフットボールの本質に迫る膨大な内容。途中、ビデオ画面を利用しながら、2時間の講演時間が予定されていたが、とうていその枠に収まる話ではない。結局、最後を急ぎ足でとりまとめ、質問の時間を短くして収拾されたが、それでも予定を30分近くオーバーする濃密な時間だった。
冒頭の「甲子園ボウルの秘密」では、プレーのビデオを流しながら、キーとなるプレーを解説。キッキングによるゲームメイク戦略、奇跡を呼び込んだ計画されたパントカバーなどの舞台裏を説明した。途中、サプライズゲストとして、昨年の甲子園ボウル最優秀選手になったキッカーの大西君も登場。手近にあったペットボトルをボールに見立てて、勝敗を分けた逆回転キックや無回転キックの蹴り方や原理を解説する場面もあり、会場を大いにわかせた。
さらには、ファイターズファンには、何度見ても感慨が新たになる2007年甲子園ボウルの逆転タッチダウンの場面。これをビデオで再現しながら解説する「逆転サヨナラ勝ちのシナリオ」や10年間、温めながら使う機会がなく、ようやく2007年の立命戦で成功させたゴール前3ヤードからのフェイクパスTDなど、数々のスペシャルプレーの舞台裏や興味深い話が次々に登場し、聴衆は興味津々だ。
もちろん、成功したプレーばかりではない。1昨年のプレーオフ、関大との戦いで仕掛け、失敗に終わったフィールドゴールフェイクのプレーや、2007年の立命戦で、練りに練ったプレーが相手のより考え抜かれたブリッツで打ち壊された場面なども、ビデオ画像を見ながら解説。たった一つのプレーを1年間、互いに考え抜き、知恵を絞りあって工夫し、それをグラウンドでぶつけ合えるアメリカンフットボールの爽快感やワクワク感についても話した。
これだけでも、この日の講演を聴きに来た人たちは満足、満足という様子だったが、これらはあくまで序の口。本題は、その後に展開された「フットボールの本質」についての話である。「メンバーチェンジの思想」「資本主義と分業」「数値のスポーツ」「数量化と視覚化」「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」などの柱立てをして、なぜアメリカンフットボールでは交代が自由に行えるのか、なぜスペシャリストが活躍できるのか、なぜ分業になっているのか、なぜ資本主義の国、アメリカでこのスポーツが発達したのか、というような点について解説してくれた。アダム・スミスの『国富論』やマックス・ウエーバー、果ては関西学院の創設者ウォルター・ランバスまでの言説を引用しながら、説き来たり説き去ったのである。
聴講に来られていた関西学院大学名誉教授であり、かの「アメフット探検会」前会長の鈴木實先生が「大学教授も顔負け。素晴らしい講演です」と感嘆された内容だった。
それを裏付けるように、講演会終了後に回収されたアンケートの回収率も上々。カルチャーセンターの講演会では珍しく69人もの受講生が提出。その大半が「素晴らしい講演だった」「機会があれば、是非また聞きたい」というようなことを書き込まれていたという。中には二人ばかり「次は石井さんの講演が聴きたい」という希望もあったそうだが、これはお愛想だろう。
以上、小野コーチの講演会の概要である。僕のつたない文章では、その全容を伝えられないのが残念だが、幸い、ファイターズのマネジャーが会場の端っこでこの模様を「部内学習用」としてビデオに収録してくれている。ファイターズの諸君には是非、シーズンオフの時でもいいから、それを見ていただきたい。自分たちの関わっているアメリカンフットボールがいかに魅力あるものなのか、いかに奥行きの深いスポーツなのかということが理解でき、心から納得できるだろう。それを理解することで、このスポーツに取り組む意欲がさらにかき立てられ、技術も上達するに違いない。
「アメリカンフットボールの本当の魅力」と題して行われた講演会は、満員の盛況。カルチャーセンターで一番広い会場を埋め尽くす119人の聴衆が詰めかけた。親しくさせていただいているファイターズ後援会やファンクラブの方々の顔も大勢見える。東京から新幹線で見えられた方も少なくないようだ。KGファイターズの頭脳と呼ばれ、長い間オフェンスコーディネーターを務めたあと、近年はキッキングコーチを担当し、関西学院大学の企画室の担当課長として学院の将来構想・中期計画の策定や実行にも携わっている小野コーチの話に対する期待のほどがうかがえる。
会場で配布されたレジュメによると、話は「人間の本質は遊びにある」「遊びそのものに人類にとっての崇高な価値があり、スポーツや経済活動など人間の活動のあらゆる局面にゲーム的な遊びの要素が組み込まれている」という前置きから始まり、昨年の甲子園ボウルの秘密を解説し、アメリカンフットボールの本質に迫る膨大な内容。途中、ビデオ画面を利用しながら、2時間の講演時間が予定されていたが、とうていその枠に収まる話ではない。結局、最後を急ぎ足でとりまとめ、質問の時間を短くして収拾されたが、それでも予定を30分近くオーバーする濃密な時間だった。
冒頭の「甲子園ボウルの秘密」では、プレーのビデオを流しながら、キーとなるプレーを解説。キッキングによるゲームメイク戦略、奇跡を呼び込んだ計画されたパントカバーなどの舞台裏を説明した。途中、サプライズゲストとして、昨年の甲子園ボウル最優秀選手になったキッカーの大西君も登場。手近にあったペットボトルをボールに見立てて、勝敗を分けた逆回転キックや無回転キックの蹴り方や原理を解説する場面もあり、会場を大いにわかせた。
さらには、ファイターズファンには、何度見ても感慨が新たになる2007年甲子園ボウルの逆転タッチダウンの場面。これをビデオで再現しながら解説する「逆転サヨナラ勝ちのシナリオ」や10年間、温めながら使う機会がなく、ようやく2007年の立命戦で成功させたゴール前3ヤードからのフェイクパスTDなど、数々のスペシャルプレーの舞台裏や興味深い話が次々に登場し、聴衆は興味津々だ。
もちろん、成功したプレーばかりではない。1昨年のプレーオフ、関大との戦いで仕掛け、失敗に終わったフィールドゴールフェイクのプレーや、2007年の立命戦で、練りに練ったプレーが相手のより考え抜かれたブリッツで打ち壊された場面なども、ビデオ画像を見ながら解説。たった一つのプレーを1年間、互いに考え抜き、知恵を絞りあって工夫し、それをグラウンドでぶつけ合えるアメリカンフットボールの爽快感やワクワク感についても話した。
これだけでも、この日の講演を聴きに来た人たちは満足、満足という様子だったが、これらはあくまで序の口。本題は、その後に展開された「フットボールの本質」についての話である。「メンバーチェンジの思想」「資本主義と分業」「数値のスポーツ」「数量化と視覚化」「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」などの柱立てをして、なぜアメリカンフットボールでは交代が自由に行えるのか、なぜスペシャリストが活躍できるのか、なぜ分業になっているのか、なぜ資本主義の国、アメリカでこのスポーツが発達したのか、というような点について解説してくれた。アダム・スミスの『国富論』やマックス・ウエーバー、果ては関西学院の創設者ウォルター・ランバスまでの言説を引用しながら、説き来たり説き去ったのである。
聴講に来られていた関西学院大学名誉教授であり、かの「アメフット探検会」前会長の鈴木實先生が「大学教授も顔負け。素晴らしい講演です」と感嘆された内容だった。
それを裏付けるように、講演会終了後に回収されたアンケートの回収率も上々。カルチャーセンターの講演会では珍しく69人もの受講生が提出。その大半が「素晴らしい講演だった」「機会があれば、是非また聞きたい」というようなことを書き込まれていたという。中には二人ばかり「次は石井さんの講演が聴きたい」という希望もあったそうだが、これはお愛想だろう。
以上、小野コーチの講演会の概要である。僕のつたない文章では、その全容を伝えられないのが残念だが、幸い、ファイターズのマネジャーが会場の端っこでこの模様を「部内学習用」としてビデオに収録してくれている。ファイターズの諸君には是非、シーズンオフの時でもいいから、それを見ていただきたい。自分たちの関わっているアメリカンフットボールがいかに魅力あるものなのか、いかに奥行きの深いスポーツなのかということが理解でき、心から納得できるだろう。それを理解することで、このスポーツに取り組む意欲がさらにかき立てられ、技術も上達するに違いない。
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