石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(15)期待の星
関西学院大学はいま、前期試験のまっただ中。ファイターズの諸君はみな、ねじりはちまきで試験問題に取り組んでいる。
当然ながら、僕が非常勤講師として教えている授業も終了。成績表もさっさと事務室に提出した(僕の授業では、毎週小論文を書かせ、それを採点し、それを元に成績を評価しているので、あらためて試験は実施しない。つまり授業終了=成績評価も完了となる)ので、いまは宿題を終えた生徒のように、ちょっとした開放感に浸っている。
だが、大学の授業が終わるのを待ちかねたように、スポーツ推薦で関学を受験してくれる高校生を対象にした「小論文講座」を始めなければならない。今年も、大学の授業が終わった13日から週に一度、関西在住の高校生を対象にした勉強会がスタートした。
今年、ファイターズからの推薦で受験してくれるのは、関西在住者だけで10人。ほかに関東地区から受験してくれる生徒もいるが、これはファクスをやりとりして指導することになる。
振り返れば、こうした勉強会を始めたのは1999年。もう14年も前のことである。池田高校から受験する平郡雷太君と箕面高校から受験する池谷洋平君を相手に、小論文の書き方を手探りで教えたのが始まりだった。当時、僕は朝日新聞社で論説委員をしていたので、週に一度、仕事が終わった頃を見計らって大阪本社に来てもらい、社内の喫茶室や近所の喫茶店でマンツーマンの指導をした。
だが、指導といえばかっこいいが、親子以上に年齢の離れた高校生にどのように教えたらいいのか、見当もつかない。どういう小論文を書けば大学の入試担当者に評価してもらえるのかも分からない。新聞記事を書くことには少しばかりの自負はあったが、大学受験の小論文なんて手がけたこともない。
唯一の頼みは、朝日新聞で入社試験の小論文採点委員をした経験である。自分が採点したときに好感を持ったような小論文が書ければ、それでオーケーと決めて指導を始めた。
指導というより「身近な人、おばあちゃんや妹に向かって話しかけるように書けば、読む人にもよく伝わる」「文章は短いほど分かりやすい。主語の次には述語、余計な形容詞や接続詞はない方がいい」「自分の体験を基に説明すれば、説得力のある主張ができる」などという、ごくごく大雑把な話をするだけ。それでも、平郡君も池谷君も頭脳明晰、感受性の豊かな高校生だったから、僕の話すことを即座に理解し、それを文章に反映させてくれた。彼らの進歩、上達に励まされて、高校生に対する指導法を勉強し、以来、毎年、この時期に高校生を相手に勉強会を続けている。
もちろん、なぜ、関学の試験には小論文が課せられるか、小論文を書くことにどういう意味があるのか、ということについてもきちんと教える。大学は勉強する場所であり、スポーツは課外活動、しっかり授業に取り組み、成果を上げてこそアメフットも上達する。アメフットで成果を上げるためには、人の話を聞く能力を養わなければならないし、自分の主張を相手に伝える力も必要だ。そのためには、読み書きの能力が試される。具体的には小論文を書く能力が必要であり、それを身につけるために勉強会をしているのだよ、というようなことである。
幸い、勉強会にきているメンバーは好感の持てる高校生ばかりである。大学生にも負けないくらいの大柄なメンバーがいるし、いかにもアスリートという生徒もいる。積極的に話しかけてくる生徒もいるし、小論文を一目見ただけで頭脳の明晰さを感じさせる生徒もいる。10人が10人とも期待の星、明日のファイターズを背負って立つ人材である。
この顔ぶれを見ながら、リクルートを担当している宮本ディレクター補佐や3年生マネジャーの多田君らの努力に頭が下がる思いだった。足繁く試合会場に足を運び、関係者と接触を続けてきた鳥内監督や大村コーチの積極的なリクルート活動の成果といってもよいであろう。
そしてもう一つ。忘れてならないのは、昨シーズンのファイターズの活躍である。プレーごとに火花が散るようだった立命との決戦、日大を翻弄した甲子園ボウルの頭脳的な試合運び、そして美しく戦い、堂々と散ったライスボウル。高校生のまぶたに焼き付けられたそれらの試合が「ぜひ、僕もファイターズでがんばりたい」と将来有望な選手たちの背中を押してくれたのである。
ファイターズが美しく勝ち続けなければならない理由は、ここにもある。
当然ながら、僕が非常勤講師として教えている授業も終了。成績表もさっさと事務室に提出した(僕の授業では、毎週小論文を書かせ、それを採点し、それを元に成績を評価しているので、あらためて試験は実施しない。つまり授業終了=成績評価も完了となる)ので、いまは宿題を終えた生徒のように、ちょっとした開放感に浸っている。
だが、大学の授業が終わるのを待ちかねたように、スポーツ推薦で関学を受験してくれる高校生を対象にした「小論文講座」を始めなければならない。今年も、大学の授業が終わった13日から週に一度、関西在住の高校生を対象にした勉強会がスタートした。
今年、ファイターズからの推薦で受験してくれるのは、関西在住者だけで10人。ほかに関東地区から受験してくれる生徒もいるが、これはファクスをやりとりして指導することになる。
振り返れば、こうした勉強会を始めたのは1999年。もう14年も前のことである。池田高校から受験する平郡雷太君と箕面高校から受験する池谷洋平君を相手に、小論文の書き方を手探りで教えたのが始まりだった。当時、僕は朝日新聞社で論説委員をしていたので、週に一度、仕事が終わった頃を見計らって大阪本社に来てもらい、社内の喫茶室や近所の喫茶店でマンツーマンの指導をした。
だが、指導といえばかっこいいが、親子以上に年齢の離れた高校生にどのように教えたらいいのか、見当もつかない。どういう小論文を書けば大学の入試担当者に評価してもらえるのかも分からない。新聞記事を書くことには少しばかりの自負はあったが、大学受験の小論文なんて手がけたこともない。
唯一の頼みは、朝日新聞で入社試験の小論文採点委員をした経験である。自分が採点したときに好感を持ったような小論文が書ければ、それでオーケーと決めて指導を始めた。
指導というより「身近な人、おばあちゃんや妹に向かって話しかけるように書けば、読む人にもよく伝わる」「文章は短いほど分かりやすい。主語の次には述語、余計な形容詞や接続詞はない方がいい」「自分の体験を基に説明すれば、説得力のある主張ができる」などという、ごくごく大雑把な話をするだけ。それでも、平郡君も池谷君も頭脳明晰、感受性の豊かな高校生だったから、僕の話すことを即座に理解し、それを文章に反映させてくれた。彼らの進歩、上達に励まされて、高校生に対する指導法を勉強し、以来、毎年、この時期に高校生を相手に勉強会を続けている。
もちろん、なぜ、関学の試験には小論文が課せられるか、小論文を書くことにどういう意味があるのか、ということについてもきちんと教える。大学は勉強する場所であり、スポーツは課外活動、しっかり授業に取り組み、成果を上げてこそアメフットも上達する。アメフットで成果を上げるためには、人の話を聞く能力を養わなければならないし、自分の主張を相手に伝える力も必要だ。そのためには、読み書きの能力が試される。具体的には小論文を書く能力が必要であり、それを身につけるために勉強会をしているのだよ、というようなことである。
幸い、勉強会にきているメンバーは好感の持てる高校生ばかりである。大学生にも負けないくらいの大柄なメンバーがいるし、いかにもアスリートという生徒もいる。積極的に話しかけてくる生徒もいるし、小論文を一目見ただけで頭脳の明晰さを感じさせる生徒もいる。10人が10人とも期待の星、明日のファイターズを背負って立つ人材である。
この顔ぶれを見ながら、リクルートを担当している宮本ディレクター補佐や3年生マネジャーの多田君らの努力に頭が下がる思いだった。足繁く試合会場に足を運び、関係者と接触を続けてきた鳥内監督や大村コーチの積極的なリクルート活動の成果といってもよいであろう。
そしてもう一つ。忘れてならないのは、昨シーズンのファイターズの活躍である。プレーごとに火花が散るようだった立命との決戦、日大を翻弄した甲子園ボウルの頭脳的な試合運び、そして美しく戦い、堂々と散ったライスボウル。高校生のまぶたに焼き付けられたそれらの試合が「ぜひ、僕もファイターズでがんばりたい」と将来有望な選手たちの背中を押してくれたのである。
ファイターズが美しく勝ち続けなければならない理由は、ここにもある。
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