石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(13)春の決算、その2
6月30日のJV戦、大阪学院大学との試合で、春のシーズンは終了。これから前期試験を挟んで、勝負の夏が巡ってくる。甲山での走り込み、鉢伏高原での長期合宿。存分に体を鍛え、技術を習得して、秋本番に備えなければならない。
その前に、今年のチームは春のシーズンをどう過ごしたのか。個々の選手はどこまで技量を向上させたのか。どんな収穫があり、どんな課題が残ったのか。そういうことについて書いてみたい。
まずは最終JV戦の収穫から。
一番目立ったのは、DB鳥内弟。立ち上がり、ファイターズのキックをレシーブした大阪学院の攻撃を一人で封じた。第一プレーから立て続けに相手RBに強烈なタックルを見舞ってパントに追いやったかと思うと、さらには相手のスナップが乱れた隙をついてパンターに襲いかかりゴール前6ヤードで押さえつけた。
この好機に、RB野々垣が6ヤードを走り切り、ファイターズは最初の攻撃でいきなりTD。ゲームの主導権を握った。
鳥内はその後も、思い切りのよい動きで再三相手のボールキャリアにタックル。それは昨シーズン、立命戦で相手QBを一発で仕留めたDB香山を彷彿させるような当たりであり、迷いとか逡巡とかいう言葉とは無縁の動きだった。「オレが仕留める」という気持ちがそのまま表現された「魂のタックル」といってもよい。
それが第4Q早々、29ヤードのインターセプトTDに結びついた。試合が13-3のまま膠着状態になっていたのを打破したというだけでなく、グラウンドでプレーしているすべての人間に「喝」を入れるプレーでもあった。迷いを吹っ切り、何かをつかんだ、一段上のステージに上がったということを、スタンドからでも確信させてくれるパフォーマンスだった。
彼は昨年後半のビッグゲームでも、先発に名を連ね、2年生とは思えないほどの活躍をした。同時に、ライスボウルでは、日本1のレシーバーと自他共に許すオービックの木下選手に子どものようにあしらわれ、悔しい体験もしている。日本を代表するプレーヤーととの間に横たわる深い溝を見せつけられ、どうすればその溝を越せるかと迷い、苦しみ、悩みながら、この半年間、練習を続けてきたに違いない。本来なら、JV戦は出なくてもいいほどの経験があるのに、あえて出場したのには、それなりの思いと覚悟があったに違いない。その覚悟が一つ一つのプレー、タックルとして表現された。一番目立った選手として、とくに名を挙げるゆえんである。
もう一人、何かをつかみかけている、と思わせるパフォーマンスを見せた選手がいる。LBの控え、キッキングのカバーチームの先発として出場した雑賀である。彼も鳥内と同様、高等部では野球部で活躍し、大学に入ってからアメフットに転向した選手である。チームでも1、2を争うスピードを持ちながら、タックルするのが苦手で、Vの試合ではなかなか出場機会がなかった。
けれども、キッキングチームの練習などを見ていると、いつも誰よりも早く相手パンターの近くに到達、あわやパントブロックか、と思えるようなパフォーマンスを何度も見せていた。何かきっかけをつかむと、ファイターズの守りには欠かせない「スピードスターになる」という予感がいつもしていた。
ようやくこの日、春のJVの最終戦になって、その予感が形になって見え始めた。LBでも、パントカバーでも、相手選手にタックルする場面が何度か見えたのである。あれだけのスピードスターがタックルすることを覚えたら、えげつないプレーヤーになるのに、という期待が実現しそうな動きが見え始めたのである。これも収穫だった。
二人だけではない。この日、登場した1年生にも、才能を感じさせるパフォーマンスを見せてくれた選手が何人かいる。LBとロングスナッパーとして登場した作道、先輩に見劣りしない動きを見せたOL鈴木、落ち着いたプレーをしていたDL岡村、長いパスを1本、確実にキャッチしたWR西山らである。U19の世界大会に出場しているDL橋本、WR田中、木下を含め、この夏にどれほど鍛えることができるか。楽しみでならない。
多分、いま名前を挙げた1年生のうち、何人かは秋のリーグ戦でも出場機会をつかみ、期待に応える働きをしてくれるのではないか。この日のJV戦で活躍した2、3年生を含め、彼らの成長を首を長くして待つことにしよう。
付記
最終のJV戦を含め、この数試合を見て、早急に取り組まなければならない課題がいくつか見えている。それについても書きたいところだが、気が重い。書き始めると個々の選手の批判になりかねないし、チームの運営に口出しするような結果になるかもしれない。しばらくは、一人で勝手に悩んでいるしかないだろう。
その前に、今年のチームは春のシーズンをどう過ごしたのか。個々の選手はどこまで技量を向上させたのか。どんな収穫があり、どんな課題が残ったのか。そういうことについて書いてみたい。
まずは最終JV戦の収穫から。
一番目立ったのは、DB鳥内弟。立ち上がり、ファイターズのキックをレシーブした大阪学院の攻撃を一人で封じた。第一プレーから立て続けに相手RBに強烈なタックルを見舞ってパントに追いやったかと思うと、さらには相手のスナップが乱れた隙をついてパンターに襲いかかりゴール前6ヤードで押さえつけた。
この好機に、RB野々垣が6ヤードを走り切り、ファイターズは最初の攻撃でいきなりTD。ゲームの主導権を握った。
鳥内はその後も、思い切りのよい動きで再三相手のボールキャリアにタックル。それは昨シーズン、立命戦で相手QBを一発で仕留めたDB香山を彷彿させるような当たりであり、迷いとか逡巡とかいう言葉とは無縁の動きだった。「オレが仕留める」という気持ちがそのまま表現された「魂のタックル」といってもよい。
それが第4Q早々、29ヤードのインターセプトTDに結びついた。試合が13-3のまま膠着状態になっていたのを打破したというだけでなく、グラウンドでプレーしているすべての人間に「喝」を入れるプレーでもあった。迷いを吹っ切り、何かをつかんだ、一段上のステージに上がったということを、スタンドからでも確信させてくれるパフォーマンスだった。
彼は昨年後半のビッグゲームでも、先発に名を連ね、2年生とは思えないほどの活躍をした。同時に、ライスボウルでは、日本1のレシーバーと自他共に許すオービックの木下選手に子どものようにあしらわれ、悔しい体験もしている。日本を代表するプレーヤーととの間に横たわる深い溝を見せつけられ、どうすればその溝を越せるかと迷い、苦しみ、悩みながら、この半年間、練習を続けてきたに違いない。本来なら、JV戦は出なくてもいいほどの経験があるのに、あえて出場したのには、それなりの思いと覚悟があったに違いない。その覚悟が一つ一つのプレー、タックルとして表現された。一番目立った選手として、とくに名を挙げるゆえんである。
もう一人、何かをつかみかけている、と思わせるパフォーマンスを見せた選手がいる。LBの控え、キッキングのカバーチームの先発として出場した雑賀である。彼も鳥内と同様、高等部では野球部で活躍し、大学に入ってからアメフットに転向した選手である。チームでも1、2を争うスピードを持ちながら、タックルするのが苦手で、Vの試合ではなかなか出場機会がなかった。
けれども、キッキングチームの練習などを見ていると、いつも誰よりも早く相手パンターの近くに到達、あわやパントブロックか、と思えるようなパフォーマンスを何度も見せていた。何かきっかけをつかむと、ファイターズの守りには欠かせない「スピードスターになる」という予感がいつもしていた。
ようやくこの日、春のJVの最終戦になって、その予感が形になって見え始めた。LBでも、パントカバーでも、相手選手にタックルする場面が何度か見えたのである。あれだけのスピードスターがタックルすることを覚えたら、えげつないプレーヤーになるのに、という期待が実現しそうな動きが見え始めたのである。これも収穫だった。
二人だけではない。この日、登場した1年生にも、才能を感じさせるパフォーマンスを見せてくれた選手が何人かいる。LBとロングスナッパーとして登場した作道、先輩に見劣りしない動きを見せたOL鈴木、落ち着いたプレーをしていたDL岡村、長いパスを1本、確実にキャッチしたWR西山らである。U19の世界大会に出場しているDL橋本、WR田中、木下を含め、この夏にどれほど鍛えることができるか。楽しみでならない。
多分、いま名前を挙げた1年生のうち、何人かは秋のリーグ戦でも出場機会をつかみ、期待に応える働きをしてくれるのではないか。この日のJV戦で活躍した2、3年生を含め、彼らの成長を首を長くして待つことにしよう。
付記
最終のJV戦を含め、この数試合を見て、早急に取り組まなければならない課題がいくつか見えている。それについても書きたいところだが、気が重い。書き始めると個々の選手の批判になりかねないし、チームの運営に口出しするような結果になるかもしれない。しばらくは、一人で勝手に悩んでいるしかないだろう。
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