石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(9)ピンチをチャンスに
ファイターズに血をたぎらせている友人から電話があった。先日の関大戦を観戦していて、チームの現状に居ても立ってもいられない気持ちになったという。
「あれが今年の実力か? 攻守ともなんだかちぐはぐで、心配になるんだけど」
「昨年活躍した梶原や畑は、いまどんな状態なん? 秋には出てこられるの? 彼らが活躍してくれないとヤバイんと違う?」
こんな彼の質問は、あの日、王子スタジアムで観戦されていた多くのファンに共通する疑問だと思う。実際、攻守ともミスというか不本意なプレーがいくつもあった。立ち上がり、ファンブルという形で相手が与えてくれた2度のチャンスを攻めあぐね、フィールドゴールの3点しか取れなかった攻撃。相手にはここ一番というプレーをびしばしと決められたのに、自分たちはせっかくのインターセプトの機会を2度も失敗した守備。
キッキングチームも精彩を欠いた。前半、短いフィールドゴールは外すし、パントも不安定。終盤、WR木戸の好リターンからつかんだ好機にRB陣が奮起、最後はRB鷺野が11ヤードを走り切ってTD。K堀本もキックを決めて同点に追いついたのに、その直後に、95ヤードのキックオフリターンTDを許して、再び追いかける展開を強いられた。
試合終了まで残り3分ほどという状況で、ようやくQB斎藤からWR梅本へのTDパスが決まって1点差。しかし、勝ち越しを狙った2点コンバージョンは、相手の反則でゴール前1.5ヤードからの攻撃となったのに、それが決められなかった。
いわばこのプレーが、春シーズンの象徴。絶対に決めなければならないところで決められない。ここをしのげば明かりが見えるという場面で、しのぎきれない。歯がゆい気持ちばかりが募っていく。古い友人が心配して、わざわざ電話をかけてきた気持ちがよく分かる。
だが、現状を憂い、悲観するだけでは、年寄りの繰り言。チームは生きている。適当な水分を与え、新たな養分を注ぎ込まなければ成長しない。時には剪定や間引きも必要だろう。失敗は失敗、できなかったことはできなかったことと現実を直視し、そこから対策を立て、次の手を打っていかなければ、話は前に進まない。
あのような不本意な試合になったことをどう受け止めるのか。そこから何を学び、何を成長の糧にしていくのか。そういう方向で話を進めて行かないと、チームとして脱皮することも成長することもできない。
この世には2種類の人間がいるという。物事を悲観的な側面から見る人と、楽観的な側面から見る人である。何かの行動を起こし、判断をするとき、もしもの場合を考えて、あらゆる注意を怠らない人と、あえて渦中に飛び込み、浮かぶ瀬を探し出す人。走る前に考える人と、走り出してから考える人といってもいいだろう。
それぞれに、いい面、悪い面がある。どちらの生き方が正しい、とは言い切れない。はっきりしているのは、僕が明らかに楽観的な側面から眺める人間であるということだ。物事を突き詰めて考えることが苦手で、いつも「ぐじゃぐじゃいう前にやれ」「とにかく走れ、理屈は後からついてくる」という生き方を選択してきた。「くよくよするのは今夜だけ。明日は明日の風が吹く」という信条で、この60数年を生きてきた。
なんせ、新聞記者だ。抜いた抜かれたは世の習い。いちいち抜かれたことにくよくよしたり、落ち込んでいたりしたら、その日の新聞が作れない。「抜かれたのは昨日のこと。明日はまた別の日が始まる」。そう思って、日々、心を新たにしないとやっていける仕事ではない。
ファイターズの諸君にとっても同じこと。最長でもわずか4年しかない競技人生だ。昨日の失敗を引きずっている時間はない。たとえ失敗があったとしても、不本意なことがあったとしても、それを乗り越え、糧にして、新たな一歩を踏み出すことが大切だ。
幸い、あの日の試合で関大はたぐいまれな戦力があり、いろんな戦い方ができることを見せてくれた。個人として傑出した能力を持った選手が何人もいること、途中から出場した1年生QBが、とてつもない可能性を持った選手であることも分かった。
収穫である。あのような傑出した選手たちとどのように戦うのか、そのためにはどんな練習が必要なのか、そのためにチームのリーダーである4年生はどのように振る舞えばよいのか。具体的な課題がいくつも与えられた。いまこの時期に、そのような課題が与えられたというのは、幸運というしかない。
この幸運を生かしたい。チームが一丸となって対策を立て、取り組みを深める。その取り組みができるように心身を鍛える。足らざるを補い、長所をさらに伸ばしていく。そういう機会とすれば、あの不本意な試合も、笑顔で振り返えれる日がくるに違いない。
落ち込んでいる時間はない。他人を責めている暇もない。いまは、ひたすら練習に取り組むしかないのである。
「あれが今年の実力か? 攻守ともなんだかちぐはぐで、心配になるんだけど」
「昨年活躍した梶原や畑は、いまどんな状態なん? 秋には出てこられるの? 彼らが活躍してくれないとヤバイんと違う?」
こんな彼の質問は、あの日、王子スタジアムで観戦されていた多くのファンに共通する疑問だと思う。実際、攻守ともミスというか不本意なプレーがいくつもあった。立ち上がり、ファンブルという形で相手が与えてくれた2度のチャンスを攻めあぐね、フィールドゴールの3点しか取れなかった攻撃。相手にはここ一番というプレーをびしばしと決められたのに、自分たちはせっかくのインターセプトの機会を2度も失敗した守備。
キッキングチームも精彩を欠いた。前半、短いフィールドゴールは外すし、パントも不安定。終盤、WR木戸の好リターンからつかんだ好機にRB陣が奮起、最後はRB鷺野が11ヤードを走り切ってTD。K堀本もキックを決めて同点に追いついたのに、その直後に、95ヤードのキックオフリターンTDを許して、再び追いかける展開を強いられた。
試合終了まで残り3分ほどという状況で、ようやくQB斎藤からWR梅本へのTDパスが決まって1点差。しかし、勝ち越しを狙った2点コンバージョンは、相手の反則でゴール前1.5ヤードからの攻撃となったのに、それが決められなかった。
いわばこのプレーが、春シーズンの象徴。絶対に決めなければならないところで決められない。ここをしのげば明かりが見えるという場面で、しのぎきれない。歯がゆい気持ちばかりが募っていく。古い友人が心配して、わざわざ電話をかけてきた気持ちがよく分かる。
だが、現状を憂い、悲観するだけでは、年寄りの繰り言。チームは生きている。適当な水分を与え、新たな養分を注ぎ込まなければ成長しない。時には剪定や間引きも必要だろう。失敗は失敗、できなかったことはできなかったことと現実を直視し、そこから対策を立て、次の手を打っていかなければ、話は前に進まない。
あのような不本意な試合になったことをどう受け止めるのか。そこから何を学び、何を成長の糧にしていくのか。そういう方向で話を進めて行かないと、チームとして脱皮することも成長することもできない。
この世には2種類の人間がいるという。物事を悲観的な側面から見る人と、楽観的な側面から見る人である。何かの行動を起こし、判断をするとき、もしもの場合を考えて、あらゆる注意を怠らない人と、あえて渦中に飛び込み、浮かぶ瀬を探し出す人。走る前に考える人と、走り出してから考える人といってもいいだろう。
それぞれに、いい面、悪い面がある。どちらの生き方が正しい、とは言い切れない。はっきりしているのは、僕が明らかに楽観的な側面から眺める人間であるということだ。物事を突き詰めて考えることが苦手で、いつも「ぐじゃぐじゃいう前にやれ」「とにかく走れ、理屈は後からついてくる」という生き方を選択してきた。「くよくよするのは今夜だけ。明日は明日の風が吹く」という信条で、この60数年を生きてきた。
なんせ、新聞記者だ。抜いた抜かれたは世の習い。いちいち抜かれたことにくよくよしたり、落ち込んでいたりしたら、その日の新聞が作れない。「抜かれたのは昨日のこと。明日はまた別の日が始まる」。そう思って、日々、心を新たにしないとやっていける仕事ではない。
ファイターズの諸君にとっても同じこと。最長でもわずか4年しかない競技人生だ。昨日の失敗を引きずっている時間はない。たとえ失敗があったとしても、不本意なことがあったとしても、それを乗り越え、糧にして、新たな一歩を踏み出すことが大切だ。
幸い、あの日の試合で関大はたぐいまれな戦力があり、いろんな戦い方ができることを見せてくれた。個人として傑出した能力を持った選手が何人もいること、途中から出場した1年生QBが、とてつもない可能性を持った選手であることも分かった。
収穫である。あのような傑出した選手たちとどのように戦うのか、そのためにはどんな練習が必要なのか、そのためにチームのリーダーである4年生はどのように振る舞えばよいのか。具体的な課題がいくつも与えられた。いまこの時期に、そのような課題が与えられたというのは、幸運というしかない。
この幸運を生かしたい。チームが一丸となって対策を立て、取り組みを深める。その取り組みができるように心身を鍛える。足らざるを補い、長所をさらに伸ばしていく。そういう機会とすれば、あの不本意な試合も、笑顔で振り返えれる日がくるに違いない。
落ち込んでいる時間はない。他人を責めている暇もない。いまは、ひたすら練習に取り組むしかないのである。
この記事は外部ブログを参照しています。すべて見るには下のリンクをクリックしてください。
記事タイトル:(9)ピンチをチャンスに
(ブログタイトル:石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」)
アーカイブ
- 2024年11月(3)
- 2024年10月(3)
- 2024年9月(3)
- 2024年6月(2)
- 2024年5月(3)
- 2024年4月(1)
- 2023年12月(3)
- 2023年11月(3)
- 2023年10月(4)
- 2023年9月(3)
- 2023年7月(1)
- 2023年6月(1)
- 2023年5月(3)
- 2023年4月(1)
- 2022年12月(2)
- 2022年11月(3)
- 2022年10月(3)
- 2022年9月(2)
- 2022年8月(1)
- 2022年7月(1)
- 2022年6月(2)
- 2022年5月(3)
- 2021年12月(3)
- 2021年11月(3)
- 2021年10月(4)
- 2021年1月(2)
- 2020年12月(3)
- 2020年11月(4)
- 2020年10月(4)
- 2020年9月(2)
- 2020年1月(3)
- 2019年12月(3)
- 2019年11月(3)
- 2019年10月(5)
- 2019年9月(4)
- 2019年8月(3)
- 2019年7月(2)
- 2019年6月(4)
- 2019年5月(4)
- 2019年4月(4)
- 2019年1月(1)
- 2018年12月(4)
- 2018年11月(4)
- 2018年10月(5)
- 2018年9月(3)
- 2018年8月(4)
- 2018年7月(2)
- 2018年6月(3)
- 2018年5月(4)
- 2018年4月(3)
- 2017年12月(3)
- 2017年11月(4)
- 2017年10月(3)
- 2017年9月(4)
- 2017年8月(4)
- 2017年7月(3)
- 2017年6月(4)
- 2017年5月(4)
- 2017年4月(4)
- 2017年1月(2)
- 2016年12月(4)
- 2016年11月(5)
- 2016年10月(3)
- 2016年9月(4)
- 2016年8月(4)
- 2016年7月(3)
- 2016年6月(2)
- 2016年5月(4)
- 2016年4月(4)
- 2015年12月(1)
- 2015年11月(4)
- 2015年10月(3)
- 2015年9月(5)
- 2015年8月(3)
- 2015年7月(5)
- 2015年6月(4)
- 2015年5月(2)
- 2015年4月(3)
- 2015年3月(3)
- 2015年1月(2)
- 2014年12月(4)
- 2014年11月(4)
- 2014年10月(4)
- 2014年9月(4)
- 2014年8月(4)
- 2014年7月(4)
- 2014年6月(4)
- 2014年5月(5)
- 2014年4月(4)
- 2014年1月(1)
- 2013年12月(5)
- 2013年11月(4)
- 2013年10月(5)
- 2013年9月(3)
- 2013年8月(3)
- 2013年7月(4)
- 2013年6月(4)
- 2013年5月(5)
- 2013年4月(4)
- 2013年1月(1)
- 2012年12月(4)
- 2012年11月(5)
- 2012年10月(4)
- 2012年9月(5)
- 2012年8月(4)
- 2012年7月(3)
- 2012年6月(3)
- 2012年5月(5)
- 2012年4月(4)
- 2012年1月(1)
- 2011年12月(5)
- 2011年11月(5)
- 2011年10月(4)
- 2011年9月(4)
- 2011年8月(3)
- 2011年7月(3)
- 2011年6月(4)
- 2011年5月(5)
- 2011年4月(4)
- 2010年12月(1)
- 2010年11月(4)
- 2010年10月(4)
- 2010年9月(4)
- 2010年8月(3)
- 2010年7月(2)
- 2010年6月(5)
- 2010年5月(3)
- 2010年4月(4)
- 2010年3月(1)
- 2009年11月(4)
- 2009年10月(4)
- 2009年9月(3)
- 2009年8月(4)
- 2009年7月(3)
- 2009年6月(4)
- 2009年5月(3)
- 2009年4月(4)
- 2009年3月(1)
- 2008年12月(1)
- 2008年11月(4)
- 2008年10月(3)
- 2008年9月(5)
- 2008年8月(2)
- 2008年4月(1)