石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(4)視点の違いが評価を変える
21日の土曜日は、明治大学との今季開幕戦。「KG,BOWL」と名付け、新入生歓迎の意味を込めた試合だった。
木曜日に理髪店に行き、髪を切って気分を一新し、金曜日は上ヶ原のグラウンドで試合前の練習を見学。ついでに上ヶ原の八幡神社にもお参りして、勝利と選手の無事を祈願。準備万端整えて土曜日は元気よく王子スタジアムへ。
いよいよシーズンが始まる。天気は晴れ。スタジアムを取り囲む木々の若葉は一斉に芽吹き、六甲山と摩耶山から吹き下ろしてくる風は肌に心地よい。「薫風香る」という表現がぴったりの天候だ。
いつもの席に着き、いつもの観戦仲間と試合前の練習を眺めていると、それだけで身も心も高ぶってくる。自分が試合をするわけではないけれども、グラウンドに降りた選手がみな親しい身内、かわいい子どもたちのように思えるからだろう。これから来年1月3日までの長い戦いの火ぶたが切られる、と考えるだけで、気分が高揚する。
さて、試合である。先発メンバーを見て驚いた。昨年の甲子園ボウルとはがらりとメンバーが入れ替わっている。ディフェンスラインはLBから川端がディフェンスエンドに回り、残る3人は岡部、中前、国安という2、3年生のメンバー。LBの西山、DBの保宗、高も、昨年は交代メンバーだった。
オフェンスはもっと新顔が多い。甲子園ボウルでスタメンだったのはOLの友國とWR梅本だけ。残りは全員が交代メンバーだった。OLの月山やQBの斎藤はこの春、2年生になったばかり。キッカー、パンターの堀本も、昨年までは大西君の陰に隠れて、ほとんど出番のなかった選手だ。
4年生が卒業していったという事情を考慮しても、ここまで多くの新しいメンバーが先発するとは思っていなかった。意外でもあったが、同時にまた「冬場に努力したメンバーの力を試合で試してみたい」という監督やコーチの強い意志を感じた。
とはいえ、これで関東の強豪、明治大学の強力なラインと対等に戦えるのだろうか、という不安がよぎる。というのはほかでもない。前日の練習では、試合に備えたチーム練習をほとんどせず、もっぱら基本的なスキルを身につける練習に力を入れているのを見てきたばかりだったからだ。
ファイターズのキックで試合開始。立ち上がりはファイターズがDB高のファンブルリカバーやLB坂本のインターセプトなど守備陣の踏ん張りで押し気味に試合を進めた。だが、急所で反則が続出。QB斎藤からWR木戸へのTDパスをふいにしたりして、両軍とも無得点。
ところが、第2Q開始早々、ファイターズのパントが相手守備陣にブロックされ、そのままTD。思わぬ形で相手に主導権を奪われた。その後も互いにターンオーバーを繰り返す雑な攻撃が続いたが、梶原弟のファンブルリカバーで得た好機にK堀本が40ヤードのフィールドゴールを決め、ようやく試合が落ち着いた。ファイターズは前半終了間際に斎藤からWR梅本、南本、大園へのパスが次々ヒット。相手ゴール前に陣地を進め、最後はRB榎本が2ヤードを走り切ってTD。10-7で前半を折り返した。
ファイターズは後半、2度目の攻撃シリーズで、RB野々垣のランと斎藤から南本への長いパスで相手ゴール前に迫り、仕上げは斎藤からWR森本への15ヤードTDパス。その直後、明治の攻撃シリーズでTDを返されたが、ファイターズもすぐさまRB後藤が左オープンを走り切ってTD。相手の反撃をDB森岡のインターセプトで断ち切り、主導権を握ったままで試合終了。終わって見れば29-14でファイターズの勝利だった。
さて、この結果をどう評価するか。
「ライスボウルの雪辱を」「今年こそ社会人に勝って日本1に」という視点で見れば、攻守ともに物足りない点がいくつもあった。試合後のハドルでも副将の金本君が「こんな試合してて、日本1になれるんか」と大きな声で檄を飛ばしていた。梶原主将も「試合に出ているメンバーはともかく、ベンチの雰囲気が悪すぎる。チームが一丸になって戦っている姿が見えない」と厳しい表情だった。
では、春の試合は新しい戦力を試す場という視点で見ればどうだろう。実のところ、鳥内監督や大村コーチは、試合の前日になっても「今季は試合前に特別な準備はしない。春は、普段やっていることがどこまで強い相手に通用するか、それが見たい」と話していた。
その視点で見れば、攻守とも新しい戦力の芽生えがあった。2年生に限ってもOLの月山、RB吉澤は十分使えそうだ。LBの小野と西山も動きがよいし、DBには高校時代から実績のある国吉のほか、バスケットボール部から転じてきたアスリート森岡の動きが目についた。村岡も経験を積めば使えそうだ。DLの岡部と梶原弟の高等部コンビの動きもよい。これからもどんどん試合に出て、経験を積んでほしい。
もちろん、斎藤と前田という2人のQBにも期待がかかる。昨シーズン、急速に成長した4年生の畑と比較すれば、すべてにおいて見劣りするが、経験を積み、試合の雰囲気に慣れてくれば、持っている才能をもっともっと発揮してくれるだろう。それはRB米田や松岡弟にもいえることだ。
そう考えると、初戦の結果だけで、今季のファイターズのことを判断するのは早計だ。不満もあり、期待もあるという、ニュートラルな立場で今後を見守りたい。
木曜日に理髪店に行き、髪を切って気分を一新し、金曜日は上ヶ原のグラウンドで試合前の練習を見学。ついでに上ヶ原の八幡神社にもお参りして、勝利と選手の無事を祈願。準備万端整えて土曜日は元気よく王子スタジアムへ。
いよいよシーズンが始まる。天気は晴れ。スタジアムを取り囲む木々の若葉は一斉に芽吹き、六甲山と摩耶山から吹き下ろしてくる風は肌に心地よい。「薫風香る」という表現がぴったりの天候だ。
いつもの席に着き、いつもの観戦仲間と試合前の練習を眺めていると、それだけで身も心も高ぶってくる。自分が試合をするわけではないけれども、グラウンドに降りた選手がみな親しい身内、かわいい子どもたちのように思えるからだろう。これから来年1月3日までの長い戦いの火ぶたが切られる、と考えるだけで、気分が高揚する。
さて、試合である。先発メンバーを見て驚いた。昨年の甲子園ボウルとはがらりとメンバーが入れ替わっている。ディフェンスラインはLBから川端がディフェンスエンドに回り、残る3人は岡部、中前、国安という2、3年生のメンバー。LBの西山、DBの保宗、高も、昨年は交代メンバーだった。
オフェンスはもっと新顔が多い。甲子園ボウルでスタメンだったのはOLの友國とWR梅本だけ。残りは全員が交代メンバーだった。OLの月山やQBの斎藤はこの春、2年生になったばかり。キッカー、パンターの堀本も、昨年までは大西君の陰に隠れて、ほとんど出番のなかった選手だ。
4年生が卒業していったという事情を考慮しても、ここまで多くの新しいメンバーが先発するとは思っていなかった。意外でもあったが、同時にまた「冬場に努力したメンバーの力を試合で試してみたい」という監督やコーチの強い意志を感じた。
とはいえ、これで関東の強豪、明治大学の強力なラインと対等に戦えるのだろうか、という不安がよぎる。というのはほかでもない。前日の練習では、試合に備えたチーム練習をほとんどせず、もっぱら基本的なスキルを身につける練習に力を入れているのを見てきたばかりだったからだ。
ファイターズのキックで試合開始。立ち上がりはファイターズがDB高のファンブルリカバーやLB坂本のインターセプトなど守備陣の踏ん張りで押し気味に試合を進めた。だが、急所で反則が続出。QB斎藤からWR木戸へのTDパスをふいにしたりして、両軍とも無得点。
ところが、第2Q開始早々、ファイターズのパントが相手守備陣にブロックされ、そのままTD。思わぬ形で相手に主導権を奪われた。その後も互いにターンオーバーを繰り返す雑な攻撃が続いたが、梶原弟のファンブルリカバーで得た好機にK堀本が40ヤードのフィールドゴールを決め、ようやく試合が落ち着いた。ファイターズは前半終了間際に斎藤からWR梅本、南本、大園へのパスが次々ヒット。相手ゴール前に陣地を進め、最後はRB榎本が2ヤードを走り切ってTD。10-7で前半を折り返した。
ファイターズは後半、2度目の攻撃シリーズで、RB野々垣のランと斎藤から南本への長いパスで相手ゴール前に迫り、仕上げは斎藤からWR森本への15ヤードTDパス。その直後、明治の攻撃シリーズでTDを返されたが、ファイターズもすぐさまRB後藤が左オープンを走り切ってTD。相手の反撃をDB森岡のインターセプトで断ち切り、主導権を握ったままで試合終了。終わって見れば29-14でファイターズの勝利だった。
さて、この結果をどう評価するか。
「ライスボウルの雪辱を」「今年こそ社会人に勝って日本1に」という視点で見れば、攻守ともに物足りない点がいくつもあった。試合後のハドルでも副将の金本君が「こんな試合してて、日本1になれるんか」と大きな声で檄を飛ばしていた。梶原主将も「試合に出ているメンバーはともかく、ベンチの雰囲気が悪すぎる。チームが一丸になって戦っている姿が見えない」と厳しい表情だった。
では、春の試合は新しい戦力を試す場という視点で見ればどうだろう。実のところ、鳥内監督や大村コーチは、試合の前日になっても「今季は試合前に特別な準備はしない。春は、普段やっていることがどこまで強い相手に通用するか、それが見たい」と話していた。
その視点で見れば、攻守とも新しい戦力の芽生えがあった。2年生に限ってもOLの月山、RB吉澤は十分使えそうだ。LBの小野と西山も動きがよいし、DBには高校時代から実績のある国吉のほか、バスケットボール部から転じてきたアスリート森岡の動きが目についた。村岡も経験を積めば使えそうだ。DLの岡部と梶原弟の高等部コンビの動きもよい。これからもどんどん試合に出て、経験を積んでほしい。
もちろん、斎藤と前田という2人のQBにも期待がかかる。昨シーズン、急速に成長した4年生の畑と比較すれば、すべてにおいて見劣りするが、経験を積み、試合の雰囲気に慣れてくれば、持っている才能をもっともっと発揮してくれるだろう。それはRB米田や松岡弟にもいえることだ。
そう考えると、初戦の結果だけで、今季のファイターズのことを判断するのは早計だ。不満もあり、期待もあるという、ニュートラルな立場で今後を見守りたい。
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