石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(32)空に弦月、地に男前
こういうのを男前、と呼ぶのだろう。宿敵・立命館を37-7の大差で下し、観客席に向かって整列したファイターズの面々の表情を眺めながら、そんなことを思った。
そこには、何事かを成し遂げた男のみが見せることのできる満ち足りた表情があり、自らの生き様をライバルとの死闘の中で表現し得た男のみに許される輝きがあった。
頭をつるつるにそり上げ、必死の形相で強敵に立ち向かった主将松岡、副将長島、谷山。立ち上がりからピンポイントのパスを確実にキャッチし、絶妙のランで2本のTDに結びつけたWR和田。それが先制パンチとなって、相手には焦りを呼び、ファイターズには主導権をもたらせた。
相手のエースQBに強烈なタックルを見舞たDB香山はDBのパートリーダー。OLのパートリーダーである濱本もまた下級生主体のラインを鼓舞して懸命のブロックを続け、立命の速くて強い守備陣からQBやRBを守った。チームを率いる主将、副将はもちろん率先垂範。松岡主将がホームページで宣言した「僕らの生き様を見て下さい」という言葉に結束した4年生が体を張って表現した。
キッキングチームを率いる大西の冷静さも特筆される。正確無比なキックで4本のトライフォーポイントを成功させ、3本のフィールドゴールを確実に決めて得点を積み重ねた。どんなに観客席が騒いでも、相手守備陣が思い切ったブリッツに来ても、表情一つ変えず、滞空時間のあるキックや距離の出るキックを正確に蹴り分ける姿は、どれほどチームメートを落ち着かせたことか。先日の京大戦に引き続き、彼のキックとキッキングカバーチームでファイターズは終始、相手を苦しい位置からの攻撃に追いやり、味方守備陣に余裕を与えることができた。
体を張って最高のパフォーマンスを見せたのは、4年生だけではない。自らをおとりにして相手守備陣を引きつけ、ぎりぎりまで我慢してパスコースが開くのを待って絶妙のパスを次々とヒットさせたQB畑は、この日の主役である。彼はQBドローやスクランブルにも果敢に挑み、自らの足で陣地を進めた。その勇気あるプレーには、どれだけ拍手を送っても足りないほどだ。
体を張るといえば、走るのが専門と思われているRBやレシーバーの体を張ったブロックも見応えがあった。ブロックに秀でたWR小山が立ち上がり、立て続けに決めた2本のパスキャッチは、先制のTDにつながったし、WR梅本の的確なブロックは和田の独走TDを生んだ。立命守備陣の強固な壁に、何度もぶつかっていったRB望月や野々村、鷺野の果敢な挑戦は、TE金本のパスキャッチからのTDや望月の独走TDにつながった。彼らの内一人でも、試合中にひるんだ様子を見せていたら、これらのTDは生まれなかったに違いない。
守備陣も生き生きと動き回った。長島、梶原を中心とするラインは営々と中央を守り、2列目は川端や池田が素早い反応で相手に仕事をさせない。香山が率いるDBも大森や鳥内、保宗らスピードのあるメンバーが立命の攻撃陣にスピード負けせず、再三相手のパスをカットした。
後半になると、インターセプトの量産。相手QBが下級生に代わった隙をつき、大森、池田、保宗、重田が立て続けに4本のインターセプトを奪った。相手が素晴らしい運動能力を持った立命の選手たちということを考えると、これは特筆すべきできごとである。全員が互いに仲間を信じ、自分たちのやってきたことを信じてプレーした結果が、この成果につながったのだろう。
もちろん、立命は点差以上に強かった。ファイターズが前半、立て続けに得点を挙げ、主導権を握ったからよかったものの、途中、ぐいぐい押し上げてくる迫力はただごとではなかった。アクシデントに焦らず、じっくり攻め込まれていたら、もっともっと僅差の試合になっていたに違いない。
例えば、ファーストダウン獲得回数はファイターズの16回に対して立命は19回。総獲得ヤードはファイターズの397ヤードに対して立命は292ヤード。得点差が示すほどの力の差がなかったのは、こうした数字を見ればよく分かる。
そんな強敵を相手にファイターズの諸君は全員、ひるまず臆さず、みんなが結束し、すべての力を発揮して戦った。こんなメンバーを男前と呼ばずになんと呼ぶべきか。
試合の形勢がファイターズに傾き、グラウンドに照明がともされた頃、長居スタジアムの上空に、針のように細い三日月が上った。校章よりやや細い、その黄色い弦月を眺めていると、今季は関西学院、そしてファイターズに何かいいことが起こりそうな気がしてきた。空に弦月、地に男前。
天上の三日月に張り合うのは「僕たちの生き様を見て下さい」と宣言して戦う男前の集団である。さらに朝鍛夕練。稽古を積んで、このまま甲子園から東京ドームまで、一気に突っ走ってもらいたい。
そこには、何事かを成し遂げた男のみが見せることのできる満ち足りた表情があり、自らの生き様をライバルとの死闘の中で表現し得た男のみに許される輝きがあった。
頭をつるつるにそり上げ、必死の形相で強敵に立ち向かった主将松岡、副将長島、谷山。立ち上がりからピンポイントのパスを確実にキャッチし、絶妙のランで2本のTDに結びつけたWR和田。それが先制パンチとなって、相手には焦りを呼び、ファイターズには主導権をもたらせた。
相手のエースQBに強烈なタックルを見舞たDB香山はDBのパートリーダー。OLのパートリーダーである濱本もまた下級生主体のラインを鼓舞して懸命のブロックを続け、立命の速くて強い守備陣からQBやRBを守った。チームを率いる主将、副将はもちろん率先垂範。松岡主将がホームページで宣言した「僕らの生き様を見て下さい」という言葉に結束した4年生が体を張って表現した。
キッキングチームを率いる大西の冷静さも特筆される。正確無比なキックで4本のトライフォーポイントを成功させ、3本のフィールドゴールを確実に決めて得点を積み重ねた。どんなに観客席が騒いでも、相手守備陣が思い切ったブリッツに来ても、表情一つ変えず、滞空時間のあるキックや距離の出るキックを正確に蹴り分ける姿は、どれほどチームメートを落ち着かせたことか。先日の京大戦に引き続き、彼のキックとキッキングカバーチームでファイターズは終始、相手を苦しい位置からの攻撃に追いやり、味方守備陣に余裕を与えることができた。
体を張って最高のパフォーマンスを見せたのは、4年生だけではない。自らをおとりにして相手守備陣を引きつけ、ぎりぎりまで我慢してパスコースが開くのを待って絶妙のパスを次々とヒットさせたQB畑は、この日の主役である。彼はQBドローやスクランブルにも果敢に挑み、自らの足で陣地を進めた。その勇気あるプレーには、どれだけ拍手を送っても足りないほどだ。
体を張るといえば、走るのが専門と思われているRBやレシーバーの体を張ったブロックも見応えがあった。ブロックに秀でたWR小山が立ち上がり、立て続けに決めた2本のパスキャッチは、先制のTDにつながったし、WR梅本の的確なブロックは和田の独走TDを生んだ。立命守備陣の強固な壁に、何度もぶつかっていったRB望月や野々村、鷺野の果敢な挑戦は、TE金本のパスキャッチからのTDや望月の独走TDにつながった。彼らの内一人でも、試合中にひるんだ様子を見せていたら、これらのTDは生まれなかったに違いない。
守備陣も生き生きと動き回った。長島、梶原を中心とするラインは営々と中央を守り、2列目は川端や池田が素早い反応で相手に仕事をさせない。香山が率いるDBも大森や鳥内、保宗らスピードのあるメンバーが立命の攻撃陣にスピード負けせず、再三相手のパスをカットした。
後半になると、インターセプトの量産。相手QBが下級生に代わった隙をつき、大森、池田、保宗、重田が立て続けに4本のインターセプトを奪った。相手が素晴らしい運動能力を持った立命の選手たちということを考えると、これは特筆すべきできごとである。全員が互いに仲間を信じ、自分たちのやってきたことを信じてプレーした結果が、この成果につながったのだろう。
もちろん、立命は点差以上に強かった。ファイターズが前半、立て続けに得点を挙げ、主導権を握ったからよかったものの、途中、ぐいぐい押し上げてくる迫力はただごとではなかった。アクシデントに焦らず、じっくり攻め込まれていたら、もっともっと僅差の試合になっていたに違いない。
例えば、ファーストダウン獲得回数はファイターズの16回に対して立命は19回。総獲得ヤードはファイターズの397ヤードに対して立命は292ヤード。得点差が示すほどの力の差がなかったのは、こうした数字を見ればよく分かる。
そんな強敵を相手にファイターズの諸君は全員、ひるまず臆さず、みんなが結束し、すべての力を発揮して戦った。こんなメンバーを男前と呼ばずになんと呼ぶべきか。
試合の形勢がファイターズに傾き、グラウンドに照明がともされた頃、長居スタジアムの上空に、針のように細い三日月が上った。校章よりやや細い、その黄色い弦月を眺めていると、今季は関西学院、そしてファイターズに何かいいことが起こりそうな気がしてきた。空に弦月、地に男前。
天上の三日月に張り合うのは「僕たちの生き様を見て下さい」と宣言して戦う男前の集団である。さらに朝鍛夕練。稽古を積んで、このまま甲子園から東京ドームまで、一気に突っ走ってもらいたい。
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