石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(30)予想という名の願望
京大戦の朝は、5時に起きた。家人は誰も熟睡中。朝刊を読み終え、静かにシャワーを浴びて、すっきりしたところで机に向かう。その日の天候を見て、試合展開を予測し、自分が監督やコーチになったつもりで、勝手な作戦を練る。活躍してくれそうな選手の顔と名前が次々に浮かんでくる。試合当日、誰にも邪魔されたくない至福の時間が始まる。
勝手に考えた作戦は当たることもあるし、当たらないこともある。活躍してくれそうな選手が思いの外調子が悪かったり、思わぬ選手が活躍してくれることもある。誰に相談することもなく、事前に誰かに打ち明けることもないから、予測が当たろうが外れようが、そんなことはどうでもよい。自分の「今日の試合はこのように展開してほしい」という願望を「作戦」と称しているだけだから、誰に迷惑をかけることもない。
この「作戦」というより「願望」が、京大戦では8割方的中した。自分でも驚きながら、このコラムを書いている。
まず、ロースコアのゲームになることを前提に、互いに辛抱、我慢の展開になると予想し、キッキングの出来不出来が勝敗を分けるとにらんだ。試合で目立った活躍をしてくれそうな予感がしたのは、オフェンスでは主将松岡、WR和田、小山、そしてK大西である。それぞれ、キッキングゲームにおいても、必ずヒーローになる場面が来るはずと、勝手な願望を付け加えた。さらに、ほんの短い時間、グラウンドに登場するであろう4年生、例えばQB糟谷やRB兵田らが目立つ場面が必ずあるとも予想した。
デフェンスの予測が難しかった。誰もがヒーローになる可能性があるし、ひょっとしてポカをしでかす選手が出てくるのではないかという懸念も、頭の片隅にはあった。しかし、僕の頭では、どう守れば一番効果があるのか、という答えは出てこなかった。結局、つまらないことを考えるより、DL、LB、DB諸君の高い運動能力と俊敏な動きに期待しよう、相手がどんな秘策を練ってきても、誰かが必ずカバーしてくれる、大崩れはないと信じるしかない、と結論づけて、それ以上は考えるのをやめた。外野は無責任である。
さて、試合である。立ち上がり、ファイターズは松岡の35ヤードリターンで50ヤードからの攻撃。先発の糟谷がいきなり中央を突破して7ヤードを獲得。味方を奮い立たせる元気なプレーである。3回のランプレーでダウンを更新すると、QB畑から小山への36ヤードのパスが炸裂、いきなり相手ゴール前4ヤードに攻め込む。
ところが、ここで京大の守備陣が踏ん張る。強烈なタックルでRB望月のダイブプレーを跳ね返し、残り4ヤードを守りきる。結局は大西のFGで3点。
ランプレーに徹した京大の攻撃シリーズを全員で食い止め、再びファイターズの攻撃。今度は畑からTE金本、WR和田へのパス、松岡のドロープレー、さらにはトリッキーなパスプレーなどを交えて、あっという間に敵陣21ヤード。だが、ここからが攻めきれない。大西のFGも失敗して無得点。
第2Qに入って最初の攻撃シリーズもちぐはぐだった。QBのファンブルで大きく陣地を失った後に、小山へのパスが成功。ようやく落ち着いたかと思った瞬間に、パスインターセプト。相手に攻撃権を奪われ、あげくにFGにまで持ち込まれて3-3の同点。
だが、主将松岡があわやTDかと思わせる77ヤードのキックオフリターンでファイターズの士気を奮い立たせる。相手ゴール前20ヤードからの攻撃で畑が和田へのパスを成功させ、残り7ヤード。だが、反則による罰退などで、ここでもTDは取れず、大西のFGによる3点のみ。
次のシリーズでは、キッキングチームが絶妙のカバーを見せ、京大を自陣16ヤードからの攻撃に追いやる。前半、残り時間は1分54秒。ここでファイターズベンチは3回連続でタイムアウトを要求。京大の攻撃機会を封じ、逆に自分たちの攻撃時間を確保しようと試みる。この積極的な作戦に守備陣が応え、京大の攻撃を完封して攻撃権を取り戻す。
残り時間は1分54秒。ゴール前35ヤード付近からの攻撃は和田と小山へのパスで、あっという間にゴール前数ヤード。しかし、そこからが攻めきれない。通ったと思ったTDパスをはじいたりして、またまた大西のFG。結局、前半は互いにTDが奪えずフィールドゴールだけの9-3。
後半になっても、京大守備陣のスタミナは衰えない。攻撃陣も果敢にパスを通して攻め込んでくる。しかし、守備陣が奮起し、肝心なところは食い止める。
ファイターズの攻撃陣も、京大ディフェンスの素早くて強力な守りに手を焼き、後半は3度もパントに追い込まれた。しかしその都度、大西が滞空時間の長いパントを相手陣深くまで蹴り込み、主導権は渡さない。
そんな中、後半、唯一のチャンスとなった場面で、大西が47ヤードのFGを決めて3点を追加。キッキングチームを率いるリーダーの意地とプライドを見せつけた。
厳しい状況下で、何度もスーパーキャッチを見せた和田、リターナーとしても再三、ロングゲインを奪い、士気を鼓舞した松岡らの活躍もあって、4年生が引っ張っていくチームの姿がようやく見えてきた。我慢と辛抱、勝つための高いモラルも見えてきた気がする。
立命戦まで、あと10日余り。京大戦で見せた粘りと勇気を、チーム全体でさらに進化させ、決戦に挑んでほしい。
勝手に考えた作戦は当たることもあるし、当たらないこともある。活躍してくれそうな選手が思いの外調子が悪かったり、思わぬ選手が活躍してくれることもある。誰に相談することもなく、事前に誰かに打ち明けることもないから、予測が当たろうが外れようが、そんなことはどうでもよい。自分の「今日の試合はこのように展開してほしい」という願望を「作戦」と称しているだけだから、誰に迷惑をかけることもない。
この「作戦」というより「願望」が、京大戦では8割方的中した。自分でも驚きながら、このコラムを書いている。
まず、ロースコアのゲームになることを前提に、互いに辛抱、我慢の展開になると予想し、キッキングの出来不出来が勝敗を分けるとにらんだ。試合で目立った活躍をしてくれそうな予感がしたのは、オフェンスでは主将松岡、WR和田、小山、そしてK大西である。それぞれ、キッキングゲームにおいても、必ずヒーローになる場面が来るはずと、勝手な願望を付け加えた。さらに、ほんの短い時間、グラウンドに登場するであろう4年生、例えばQB糟谷やRB兵田らが目立つ場面が必ずあるとも予想した。
デフェンスの予測が難しかった。誰もがヒーローになる可能性があるし、ひょっとしてポカをしでかす選手が出てくるのではないかという懸念も、頭の片隅にはあった。しかし、僕の頭では、どう守れば一番効果があるのか、という答えは出てこなかった。結局、つまらないことを考えるより、DL、LB、DB諸君の高い運動能力と俊敏な動きに期待しよう、相手がどんな秘策を練ってきても、誰かが必ずカバーしてくれる、大崩れはないと信じるしかない、と結論づけて、それ以上は考えるのをやめた。外野は無責任である。
さて、試合である。立ち上がり、ファイターズは松岡の35ヤードリターンで50ヤードからの攻撃。先発の糟谷がいきなり中央を突破して7ヤードを獲得。味方を奮い立たせる元気なプレーである。3回のランプレーでダウンを更新すると、QB畑から小山への36ヤードのパスが炸裂、いきなり相手ゴール前4ヤードに攻め込む。
ところが、ここで京大の守備陣が踏ん張る。強烈なタックルでRB望月のダイブプレーを跳ね返し、残り4ヤードを守りきる。結局は大西のFGで3点。
ランプレーに徹した京大の攻撃シリーズを全員で食い止め、再びファイターズの攻撃。今度は畑からTE金本、WR和田へのパス、松岡のドロープレー、さらにはトリッキーなパスプレーなどを交えて、あっという間に敵陣21ヤード。だが、ここからが攻めきれない。大西のFGも失敗して無得点。
第2Qに入って最初の攻撃シリーズもちぐはぐだった。QBのファンブルで大きく陣地を失った後に、小山へのパスが成功。ようやく落ち着いたかと思った瞬間に、パスインターセプト。相手に攻撃権を奪われ、あげくにFGにまで持ち込まれて3-3の同点。
だが、主将松岡があわやTDかと思わせる77ヤードのキックオフリターンでファイターズの士気を奮い立たせる。相手ゴール前20ヤードからの攻撃で畑が和田へのパスを成功させ、残り7ヤード。だが、反則による罰退などで、ここでもTDは取れず、大西のFGによる3点のみ。
次のシリーズでは、キッキングチームが絶妙のカバーを見せ、京大を自陣16ヤードからの攻撃に追いやる。前半、残り時間は1分54秒。ここでファイターズベンチは3回連続でタイムアウトを要求。京大の攻撃機会を封じ、逆に自分たちの攻撃時間を確保しようと試みる。この積極的な作戦に守備陣が応え、京大の攻撃を完封して攻撃権を取り戻す。
残り時間は1分54秒。ゴール前35ヤード付近からの攻撃は和田と小山へのパスで、あっという間にゴール前数ヤード。しかし、そこからが攻めきれない。通ったと思ったTDパスをはじいたりして、またまた大西のFG。結局、前半は互いにTDが奪えずフィールドゴールだけの9-3。
後半になっても、京大守備陣のスタミナは衰えない。攻撃陣も果敢にパスを通して攻め込んでくる。しかし、守備陣が奮起し、肝心なところは食い止める。
ファイターズの攻撃陣も、京大ディフェンスの素早くて強力な守りに手を焼き、後半は3度もパントに追い込まれた。しかしその都度、大西が滞空時間の長いパントを相手陣深くまで蹴り込み、主導権は渡さない。
そんな中、後半、唯一のチャンスとなった場面で、大西が47ヤードのFGを決めて3点を追加。キッキングチームを率いるリーダーの意地とプライドを見せつけた。
厳しい状況下で、何度もスーパーキャッチを見せた和田、リターナーとしても再三、ロングゲインを奪い、士気を鼓舞した松岡らの活躍もあって、4年生が引っ張っていくチームの姿がようやく見えてきた。我慢と辛抱、勝つための高いモラルも見えてきた気がする。
立命戦まで、あと10日余り。京大戦で見せた粘りと勇気を、チーム全体でさらに進化させ、決戦に挑んでほしい。
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