石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(23)雨、豪雨をついて
先週末の龍谷大戦はまたも雨、それも途中からは豪雨となった。
僕は試合中、いつも小さな手帳を持参してメモをとり、プレーごとに関係したプレーヤーとプレーの成否、獲得距離などを記録。目立った選手については、寸評を書き止めてこのコラムを書く参考にしている。18日の試合も当然のように、キックオフからすべてのプレーをチェックしていた。
しかし、豪雨には勝てない。体には完全防水、透湿をうたう登山用の雨具をつけ、ゴアテックスの靴を履いているので、どんな雨でも苦にしないが、メモ帳が濡れるのは阻止できない。雨が激しくなった第2Qの途中、K大西が1本目のフィールドゴールを決めた直後から、メモをとるのを中断してしまった。その代わり、というのも何だが、それぞれのプレーについては「鳥の目」で全体像をチェックしてきた。メモをとることにとらわれず、プレーを見る楽しさを味わったといってもよい。久々のことである。
さて、試合である。立ち上がりは龍谷のペース。今季、久々に1部リーグに復帰した勢いと、この試合にかける思いが凝縮したようなプレーが続く。切れ味のよいランとパスでいきなりダウンを更新、続く攻撃は自陣38ヤードからだったが、ここでも第4ダウン残り9ヤードという状況から、意表を突くパントフェイクのランで関学陣46ヤードまで攻め込んできた。
この勢いを何とかディフェンス陣が食い止め、ファイターズの攻撃は自陣13ヤードから始まる。その最初のプレー。QB畑からのサイドライン際へのパスを受けたWR和田がいきなり80ヤードを走るビッグゲイン。スピードと、相手守備陣の動きを冷静に見つめる目を持った和田ならではの素晴らしい走りで一気にゴール前に迫った。反則で10ヤードの罰退を受けたが、このプレーで落ち着きを取り戻したファイターズは、残り17ヤードからRB望月、RB松岡のランでダウンを更新。最後は、残り3ヤードを畑が走り込んで先制のTD。大西のキックも決まってようやく主導権を握った。
しかし、龍谷の意気は衰えない。すぐにパスでダウンを更新。次の攻撃は、この日はLBの位置に入った香山のタックルなどで簡単に自陣25ヤード、第4ダウンという状況に追い込まれたが、そこからまたもパントフェイクのランを選択した。
しかし、1度目はやすやすと走られたが、2度目はない。これを守備陣がしっかり封じ込み、敵陣24ヤードからファイターズの攻撃が始まる。第3ダウン。ダウン更新まで残り8ヤード、ゴールまで22ヤードという状況だったが、ここで畑が右オープンを走る松岡をダミーに使って中央を駆け上がり、一気にTD。松岡のランを警戒する相手守備の動きを逆手にとったプレーが鮮やかに決まった。
次のファイターズの攻撃は、第2Qに入った直後、自陣21ヤードから。このシリーズでは、RB鷺野の16ヤードラン、畑から松岡への47ヤードパスとたたみかけて、一気にゴール前15ヤードに迫る。松岡のスピードを生かしたこのパスは、相手チームにとってとてもやっかいなプレーになりそうな予感がする。
しかし、ここからゴールが遠い。最後は大西のフィールドゴールで3点を追加したが、せっかくリズムに乗って攻めてきたのに、TDにまで持って行けなかった点に多少の物足りなさを感じた。この前後から雨脚が強くなり、視界も悪くなっていたことが影響していたのだろうか。逆に言うと、そんな悪条件に関わらず、確実に任務を果たした大西の冷静さが光る。
さてここからは、冒頭でいいわけしたように、メモがない。豪雨とともに、攻撃も淡泊になって、特記するような場面が出てこない。時々、「いいね」と思うプレーが出ても、線としてつながらない。反則も多く、ちぐはぐな攻撃が続く。
気がつけば、後半第4Qである。得点は前半に挙げた20点。守備陣が安定していたから、勝敗という意味では安心して見ておれたが、攻撃はいまひとつ乗り切れない。ようやく2分41秒、RB後藤が中央12ヤードを走り抜けてTD。活路を開く。これで目が覚めたのか、ここからは派手な得点シーンが連続する。
一番手はDB大森。相手リターナーをDB山本がタックルしてファンブルしたボールを敵陣25ヤードで確保し、そのままゴールまで走り込んでファンブルリターンTD。雨の中、何かが起こりそうと準備していた嗅覚と、素早い反応がもたらせた好プレーだった。
次の主役は、リターナーに入っていたWR南本。相手パントを自陣26ヤード付近でキャッチすると、土橋、足立、小野、国吉が作った壁に沿ってそのまま左サイドライン沿いを一気に走り切ってTD。攻撃陣のもやもやを晴らすような見事な走りだった。
三番手はまたもディフェンス。相手QBのパスをDB鳥内弟がインターセプト、そのまま今度は右のサイドライン沿いを駆け上がってTDに結びつけた。途中、相手守備陣に押し出されそうになりながら、巧みな身のこなしでそれを交わし、ゴールまで27ヤードを走り切った根性が素晴らしかった。
点差が離れてしまったが、第4Q終盤の攻撃も特筆される。この試合ではQBとして登場したRB松岡弟が自身の走力を生かしてラン、ラン、ランと攻め付け、最後はそのプレーのフェイクからRB林にハンドオフ。松岡弟のランを警戒してがら空きになった右オープンを林が44ヤード走り切ってTDに結びつけた。
試合終了間際ということで、相手の集中力が失われていたのかもしれないが、こういうプレーができると、ラン攻撃に厚みが出る。今季のこれからに期待を持たせてくれるプレーだった。
という次第で講評は終わり。次は晴れた日の試合が見たい。
僕は試合中、いつも小さな手帳を持参してメモをとり、プレーごとに関係したプレーヤーとプレーの成否、獲得距離などを記録。目立った選手については、寸評を書き止めてこのコラムを書く参考にしている。18日の試合も当然のように、キックオフからすべてのプレーをチェックしていた。
しかし、豪雨には勝てない。体には完全防水、透湿をうたう登山用の雨具をつけ、ゴアテックスの靴を履いているので、どんな雨でも苦にしないが、メモ帳が濡れるのは阻止できない。雨が激しくなった第2Qの途中、K大西が1本目のフィールドゴールを決めた直後から、メモをとるのを中断してしまった。その代わり、というのも何だが、それぞれのプレーについては「鳥の目」で全体像をチェックしてきた。メモをとることにとらわれず、プレーを見る楽しさを味わったといってもよい。久々のことである。
さて、試合である。立ち上がりは龍谷のペース。今季、久々に1部リーグに復帰した勢いと、この試合にかける思いが凝縮したようなプレーが続く。切れ味のよいランとパスでいきなりダウンを更新、続く攻撃は自陣38ヤードからだったが、ここでも第4ダウン残り9ヤードという状況から、意表を突くパントフェイクのランで関学陣46ヤードまで攻め込んできた。
この勢いを何とかディフェンス陣が食い止め、ファイターズの攻撃は自陣13ヤードから始まる。その最初のプレー。QB畑からのサイドライン際へのパスを受けたWR和田がいきなり80ヤードを走るビッグゲイン。スピードと、相手守備陣の動きを冷静に見つめる目を持った和田ならではの素晴らしい走りで一気にゴール前に迫った。反則で10ヤードの罰退を受けたが、このプレーで落ち着きを取り戻したファイターズは、残り17ヤードからRB望月、RB松岡のランでダウンを更新。最後は、残り3ヤードを畑が走り込んで先制のTD。大西のキックも決まってようやく主導権を握った。
しかし、龍谷の意気は衰えない。すぐにパスでダウンを更新。次の攻撃は、この日はLBの位置に入った香山のタックルなどで簡単に自陣25ヤード、第4ダウンという状況に追い込まれたが、そこからまたもパントフェイクのランを選択した。
しかし、1度目はやすやすと走られたが、2度目はない。これを守備陣がしっかり封じ込み、敵陣24ヤードからファイターズの攻撃が始まる。第3ダウン。ダウン更新まで残り8ヤード、ゴールまで22ヤードという状況だったが、ここで畑が右オープンを走る松岡をダミーに使って中央を駆け上がり、一気にTD。松岡のランを警戒する相手守備の動きを逆手にとったプレーが鮮やかに決まった。
次のファイターズの攻撃は、第2Qに入った直後、自陣21ヤードから。このシリーズでは、RB鷺野の16ヤードラン、畑から松岡への47ヤードパスとたたみかけて、一気にゴール前15ヤードに迫る。松岡のスピードを生かしたこのパスは、相手チームにとってとてもやっかいなプレーになりそうな予感がする。
しかし、ここからゴールが遠い。最後は大西のフィールドゴールで3点を追加したが、せっかくリズムに乗って攻めてきたのに、TDにまで持って行けなかった点に多少の物足りなさを感じた。この前後から雨脚が強くなり、視界も悪くなっていたことが影響していたのだろうか。逆に言うと、そんな悪条件に関わらず、確実に任務を果たした大西の冷静さが光る。
さてここからは、冒頭でいいわけしたように、メモがない。豪雨とともに、攻撃も淡泊になって、特記するような場面が出てこない。時々、「いいね」と思うプレーが出ても、線としてつながらない。反則も多く、ちぐはぐな攻撃が続く。
気がつけば、後半第4Qである。得点は前半に挙げた20点。守備陣が安定していたから、勝敗という意味では安心して見ておれたが、攻撃はいまひとつ乗り切れない。ようやく2分41秒、RB後藤が中央12ヤードを走り抜けてTD。活路を開く。これで目が覚めたのか、ここからは派手な得点シーンが連続する。
一番手はDB大森。相手リターナーをDB山本がタックルしてファンブルしたボールを敵陣25ヤードで確保し、そのままゴールまで走り込んでファンブルリターンTD。雨の中、何かが起こりそうと準備していた嗅覚と、素早い反応がもたらせた好プレーだった。
次の主役は、リターナーに入っていたWR南本。相手パントを自陣26ヤード付近でキャッチすると、土橋、足立、小野、国吉が作った壁に沿ってそのまま左サイドライン沿いを一気に走り切ってTD。攻撃陣のもやもやを晴らすような見事な走りだった。
三番手はまたもディフェンス。相手QBのパスをDB鳥内弟がインターセプト、そのまま今度は右のサイドライン沿いを駆け上がってTDに結びつけた。途中、相手守備陣に押し出されそうになりながら、巧みな身のこなしでそれを交わし、ゴールまで27ヤードを走り切った根性が素晴らしかった。
点差が離れてしまったが、第4Q終盤の攻撃も特筆される。この試合ではQBとして登場したRB松岡弟が自身の走力を生かしてラン、ラン、ランと攻め付け、最後はそのプレーのフェイクからRB林にハンドオフ。松岡弟のランを警戒してがら空きになった右オープンを林が44ヤード走り切ってTDに結びつけた。
試合終了間際ということで、相手の集中力が失われていたのかもしれないが、こういうプレーができると、ラン攻撃に厚みが出る。今季のこれからに期待を持たせてくれるプレーだった。
という次第で講評は終わり。次は晴れた日の試合が見たい。
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