石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

(19)東鉢伏高原からの報告

投稿日時:2011/08/21(日) 13:44rss

 お盆をはさんで何かと忙しく、コラムの更新が滞っている。僕も人の子、先祖の供養もしなければならないし、気安く引き受けた仕事も山積みになっている。何から片付けていけばいいのかオロオロする状態だが、どれ一つとしてパスできるものではない。
 そういう事情でついついコラムを書くのが後回しになってしまったが、とりあえず夏合宿の様子を見学してきたので、遅ればせではあるが報告したい。
 8月10日。今年も関西学院大学アメリカンフットボール部は、この日から恒例の夏合宿をスタートさせた。場所は兵庫県の北部、鉢伏山の中腹にある東鉢伏高原。1980年から毎年、同じ時期、同じ場所で、アメフット漬けの日を過ごすのである。
 その典型的な日課を紹介しよう。午前6時起床。6時半、早朝練習スタート。選手だけで約150人、スタッフも入れると200人にもなる大所帯だから、起床と就寝時間だけが同じで、練習はVとJVに分かれ、別々のメニューで行われる。
 Vのメンバーは7時半までに練習を切り上げて朝食。しばらく休憩し、9時からグラウンドに出て練習再開。11時、朝のチーム練習終了。昼食としばらくの休憩の後、13時からミーティング。終了後は、休憩と午後の練習の準備。16時から18時まで午後のチーム練習。19時から夕食。20時から21時半までパートごとのミーティング。22時就寝。
 ざっと、こんなスケジュールである。実際に体をぶつけ合って鍛える時間は、早朝、朝、午後の3部の練習を合わせて5時間ほど。10年、20年前に比べると、時間は格段に短くなったそうだが、その分、密度が濃くなったという。秒刻みで行動し、攻守それぞれのパートに分かれた激しいぶつかり合いが続く。
 中心になるのは、実際の試合を想定した練習だが、体を徹底的に鍛えるメニューも入る。攻撃側と守備側に分かれた「勝負もの」と呼ばれるメニューも入る。思い通りのプレーができず、自分のふがいなさに泣く選手、失敗した仲間を怒鳴りつける選手。意識を失いそうになって、トレーナーや監督、コーチからストップをかけられる選手もいる。
 秋のシーズンを直前に控えた合宿であり、ここで1段階、2段階と高いステージに上がらなければ、出場もおぼつかないし、勝利の道も開けてこない。だれもがそういう意識で取り組んでいるから、ぎりぎりまで自分の可能性を追求するのだろう。
 それでも、主将や副将、パートリーダーからは厳しい叱声が飛ぶ。「お前ら、これでとことんやりきったといえるんか。お前らの本気はこんなもんか」「もっと自分を追い込め。相手にももっともっと要求せんかい」「こんな練習しかできんのやったら、合宿やめて帰れ!」。感情を高ぶらせ、最後は泣きながら怒鳴っている。
 そういう場面を2泊3日の日程で見学してきた。そこで見聞した個々の選手の情報やチーム事情については、あえて報告を控えておくが、僕としては「期待通り」という印象を受けた。合宿の激励にきた奥井常夫OB会長も「すべてにおいてマネジャーが仕切っていたように見えた昨年、1昨年とは違って、今年はキャプテンが前に出ていますね」といわれていたから、同じような印象を持たれたのだろう。
 もちろん、脳震盪などで練習を回避している選手や雷で練習が中断したこともあった。そういうことも考慮すれば、チームとしては満点はつけられないだろうが、それは仕方のないこと。あとは、この合宿で詰め切れなかった点や、新たに出てきた課題にどう対処するかである。
 ファイターズの諸君は、合宿終了後、すぐに大学に戻って2次合宿に取り組んでいる。そうこうするうちに9月の4日には初戦が始まる。シーズンが始まれば、クライマックスはすぐに到来する。
 残された短い時間に、どこまでチーム力を底上げできるか、決定的な勝利の方程式をどう確立するか。課題はいくつもあるが、後は選手諸君の奮起を願うばかりである。
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