石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(13)「ひたむき」ということ
先週土曜日は、上ヶ原の第3フィールドでJV戦。相手は、はるばる九州から遠征してきた西南学院。シーズンオフに、何人かの選手が練習に見えたことはあったように記憶しているが、JV戦としてこの時期に試合が組まれたのは実に10数年ぶりだそうだ。
その意気込みがすごかった。試合は午後4時開始というのに、正午過ぎには監督やコーチ、選手やスタッフが次々に到着。全員、元気がよい。ちょっとした振る舞いを見ても好感がもてる。たまたま、午前中に行われたファイターズのキッキング練習を見学していた僕にまで、選手やスタッフは丁寧に声をかけ、挨拶をしてくれた。
聞けば、アメフット部の部長でもある西南学院の学長まで、わざわざこの日の試合を応援に来られたそうだ。若い頃は選手として活躍されたそうで、アメフットを見る目も肥えているそうだ。前日、その情報を聞き込んだ鳥内監督が練習後「JV戦とはいえ、明日は無様な試合はできないぞ」とファイターズの選手たちに檄を飛ばしたという話も聞いた。
試合開始は午後4時。梅雨の晴れ間とあって気温は30度を超すかんかん照り。グラウンドに降りると、人工芝の照り返しで、立っているだけでもクラクラしそうだ。日陰を遮るものもない場所で眺めている方も汗だくだったが、選手たちはもっと大変だったろう。
西南学院のレシーブで試合開始。前半は、JVの試合とはいえ、伸び盛りの下級生と故障から回復途上の上級生で固めたファイターズのペース。QB糟谷の再三のキーププレーを中心に、RB松岡弟や林のランプレー、WR梅本や松下、押谷、岸本らへのパスを織り交ぜて、4回の攻撃シリーズをことごとくTDに結びつけた。堀本のキックもすべて決まり、前半だけで28-0。
ところが、西南学院の士気はいっこうに衰えない。この日は、西南学院のベンチが観客席の目の前に設定されていたので、相手ベンチの動向が手に取るように分かったのだが、とにかく元気がいい。試合開始前から、異様に盛り上がり、キャプテンや監督、コーチが次々に檄を飛ばしていたが、大量の得点差がついても、次々に負傷者が出ても、いっこうにひるむところがない。とにかくグラウンドに出ている選手全員がやる気満々、ひたむきにプレーしていた。
その結果が、後半の見事なフィールドゴールブロックや、立て続けのパスキャッチなどに表れた。スコアこそ44-0と大差がついたが、最後まで全力を尽くしてプレーする彼らの姿に胸を打たれた。「ひたむき」という言葉がぴったりする戦いぶりだった。
それでも、選手たちはこの日の試合内容には納得できなかったのだろう。試合終了後、泣きながら応援席に向かって挨拶しているキャプテンの姿に、彼らの悔しい胸の内が表れていた。自分たちの何が足りなかったのか、相手のどこに圧倒されたのか、今後どんな練習、どんな取り組みをすれば、こういうチームと戦えるのか。そんなことを考えると、気が遠くなるような思いだったに違いない。ひたむきに戦ったからこそ、見えてきた現実。目の前の巨大な壁。
九州で活動する西南学院は、練習相手にも恵まれず、競う相手も少ない。指導者も少ないし、切磋琢磨するライバルも少ない。年に一度の試合、その中のたった一つのプレーのために、1年間を費やすというような試練にさらされたこともないだろう。ないないづくしの環境にあって、それでも強くなりたい、もっと上達したいと思って臨んだこの日の試合。ファイターズにとっては、5試合あるJV戦の1試合だったかもしれないが、彼らにとっては「今季の総決算」ともいえるほどの覚悟があったに違いない。それがあのひたむきなプレーとして表れ、交代選手を送り出すたびにベンチからかけられる叱咤激励として形になったのだ。
そういうチームの試合を観戦し、僕は思わず胸が熱くなった。どんなに強い相手であっても、全員が結束し、ひるまず臆せず、ひたむきにプレーすること。アメフットに限らず、それがチームスポーツの原点である。創部70年の歴史を持つファイターズも、草創期は多分、この日の西南学院のようなチームだったのではないか。そんなことを思いながら、スポーツの原点を教えてくれた西南学院に感謝し、このことだけはどうしてもこのコラムに書いておきたいと思った。
その意気込みがすごかった。試合は午後4時開始というのに、正午過ぎには監督やコーチ、選手やスタッフが次々に到着。全員、元気がよい。ちょっとした振る舞いを見ても好感がもてる。たまたま、午前中に行われたファイターズのキッキング練習を見学していた僕にまで、選手やスタッフは丁寧に声をかけ、挨拶をしてくれた。
聞けば、アメフット部の部長でもある西南学院の学長まで、わざわざこの日の試合を応援に来られたそうだ。若い頃は選手として活躍されたそうで、アメフットを見る目も肥えているそうだ。前日、その情報を聞き込んだ鳥内監督が練習後「JV戦とはいえ、明日は無様な試合はできないぞ」とファイターズの選手たちに檄を飛ばしたという話も聞いた。
試合開始は午後4時。梅雨の晴れ間とあって気温は30度を超すかんかん照り。グラウンドに降りると、人工芝の照り返しで、立っているだけでもクラクラしそうだ。日陰を遮るものもない場所で眺めている方も汗だくだったが、選手たちはもっと大変だったろう。
西南学院のレシーブで試合開始。前半は、JVの試合とはいえ、伸び盛りの下級生と故障から回復途上の上級生で固めたファイターズのペース。QB糟谷の再三のキーププレーを中心に、RB松岡弟や林のランプレー、WR梅本や松下、押谷、岸本らへのパスを織り交ぜて、4回の攻撃シリーズをことごとくTDに結びつけた。堀本のキックもすべて決まり、前半だけで28-0。
ところが、西南学院の士気はいっこうに衰えない。この日は、西南学院のベンチが観客席の目の前に設定されていたので、相手ベンチの動向が手に取るように分かったのだが、とにかく元気がいい。試合開始前から、異様に盛り上がり、キャプテンや監督、コーチが次々に檄を飛ばしていたが、大量の得点差がついても、次々に負傷者が出ても、いっこうにひるむところがない。とにかくグラウンドに出ている選手全員がやる気満々、ひたむきにプレーしていた。
その結果が、後半の見事なフィールドゴールブロックや、立て続けのパスキャッチなどに表れた。スコアこそ44-0と大差がついたが、最後まで全力を尽くしてプレーする彼らの姿に胸を打たれた。「ひたむき」という言葉がぴったりする戦いぶりだった。
それでも、選手たちはこの日の試合内容には納得できなかったのだろう。試合終了後、泣きながら応援席に向かって挨拶しているキャプテンの姿に、彼らの悔しい胸の内が表れていた。自分たちの何が足りなかったのか、相手のどこに圧倒されたのか、今後どんな練習、どんな取り組みをすれば、こういうチームと戦えるのか。そんなことを考えると、気が遠くなるような思いだったに違いない。ひたむきに戦ったからこそ、見えてきた現実。目の前の巨大な壁。
九州で活動する西南学院は、練習相手にも恵まれず、競う相手も少ない。指導者も少ないし、切磋琢磨するライバルも少ない。年に一度の試合、その中のたった一つのプレーのために、1年間を費やすというような試練にさらされたこともないだろう。ないないづくしの環境にあって、それでも強くなりたい、もっと上達したいと思って臨んだこの日の試合。ファイターズにとっては、5試合あるJV戦の1試合だったかもしれないが、彼らにとっては「今季の総決算」ともいえるほどの覚悟があったに違いない。それがあのひたむきなプレーとして表れ、交代選手を送り出すたびにベンチからかけられる叱咤激励として形になったのだ。
そういうチームの試合を観戦し、僕は思わず胸が熱くなった。どんなに強い相手であっても、全員が結束し、ひるまず臆せず、ひたむきにプレーすること。アメフットに限らず、それがチームスポーツの原点である。創部70年の歴史を持つファイターズも、草創期は多分、この日の西南学院のようなチームだったのではないか。そんなことを思いながら、スポーツの原点を教えてくれた西南学院に感謝し、このことだけはどうしてもこのコラムに書いておきたいと思った。
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