石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(11)「野球の神様がくれたもの」
先週日曜日の明治大学戦も観戦できず。東京まで出かけるのが億劫だ、という気持ちが半分、当日、紀州・田辺で開かれた陶芸家、出口清廣さんの「文部科学大臣賞受賞」を祝う集まりに出席したいという気持ちが半分。双方を足し算すると「観戦ツアーは見送り」という結論になったのである。
従って、当日はパソコンを開いて、ホームページの実況速報に集中、その断片的な情報を基に試合展開に想像を巡らせるしかなかった。日頃、関西で行われる試合に足を運ぶことがかなわず、インターネットを通じてファイターズの試合ぶりに一喜一憂されているファンの方々の気持ちはこういうものかと想像し、それにしても丁寧な速報よ、と会場で入力を担当されている方々に感謝した次第である。
そういうわけで、今週のコラムは試合の話はパス。代わりに桑田真澄氏の書かれた「野球の神様がくれたもの」(ポプラ社)について話をしたい。
桑田さんの話は、以前(2007年6月19日)、このコラムで書いたことがある。朝日新聞日曜版の「一流を育てる」という連載で、彼が師と仰ぐ甲野善紀さんとの関わりを3回(2002年10月19日、26日、11月2日)にわたって紹介したこともある。スポーツが大好きだったのに、社会部畑で育ち、スポーツの取材には縁の薄かった僕にとっては、親しく取材をさせていただいた数少ないプロ野球選手の一人である。
彼はこの本の中で「野球がうまくなるために必要な考え方を聞いてほしい」といって、こんな発言をしている。
……野球選手がうまくなるために必要なのは、トレーニング、食事、休息の三つのバランスだ。多くの選手やコーチはたくさん練習すればそれだけうまくなると思っている。でも、本当は練習の量だけでなく質を高めていかなくてはいけない。そして練習した分だけ栄養を摂取する必要がある。身体が栄養分を消化、吸収したり、疲労物質を代謝するためには休養の時間もとらなければならない。
……うまくなる選手に共通するのは「早寝早起き」だという(中略)親や監督からいわれて無理矢理そうするのではなく、自分から率先してやってもらいたい。自主的に行動することで自分ならではの小さな成功体験を積み重ねてほしいからだ。
……もう一つ、若い選手たちに伝えたいのは野球、勉強、遊びのバランスをとってほしいということだ。ほとんどの野球選手はグラウンドではボールに食らいつく。でも野球から離れた時でも努力できる選手は決して多くない。これはとてももったいない(中略)長年プロ野球で活躍する一流の選手に共通するのは頭がよいということだ(中略)分析力や観察力、洞察力を養うのに一番手っ取り早いのは、実は学校の勉強だ。若いアマチュア選手はグラウンドで努力するだけでなく、学校ではしっかり授業を聞き、家に帰ったらしっかり休息をとる方が野球が早く上達する。
そして、この章の最後には、遊びの重要性を説く。「野球は勝負を競うのだから、厳しさは絶対に大事だ。でも日本の野球界にはエンジョイメント、楽しむという態度が決定的に欠けている。しかし、スポーツは本来、楽しくやるものだ。心の中で楽しいと思えないまま野球をしていても努力を続けることは難しい」「チームメートと心を一つにして戦おうと思えば、恐怖心が勇気となり、挑戦しようという前向きな気持ちでプレーできる。味方と気持ちを一つにするためには、普段から相手の気持ちや考え方を理解しておかなければならない。そのために有効なのが遊びだ。遊びを通して相手の気持ちを知る勉強をしてほしいと思う」
高校野球で頂点を極め、日本のプロ野球界でも一流投手として名声をほしいままにし、さらには40歳を目前にしてメジャーリーグのマウンドを踏んだ彼が、その豊富な体験から説くトレーニング、食事、休息のバランス。野球と勉強、遊びのバランスの強調。野球をアメフットに置き換えれば、そのままファイターズの諸君にも通じる話だと思う。
ただ、誤解してはいけないのは、彼は三つのバランスが必要と強調しているのであって、トレーニングがいやだから休息が必要といったり、練習がしんどいから遊びに逃げるとかいうようなことは一切いっていない。野球も勉強も遊びもそれぞれに意味がある。だからそれぞれ大事にしなさい、といっているのである。ここを間違えないようにしていただきたい。
彼はこの本のあとがきにも「がんばるプロセスが大事です。失敗しても挫折を味わっても、そこから立ち上がって前に進むプロセスを楽しんでください」と書いている。「失敗しても、挫折を味わっても、そこから立ち上がって前に進む」。この言葉にこそ、彼の考えのすべてが言い尽くされているのである。
ファイターズの諸君にもこの言葉を送りたい。
従って、当日はパソコンを開いて、ホームページの実況速報に集中、その断片的な情報を基に試合展開に想像を巡らせるしかなかった。日頃、関西で行われる試合に足を運ぶことがかなわず、インターネットを通じてファイターズの試合ぶりに一喜一憂されているファンの方々の気持ちはこういうものかと想像し、それにしても丁寧な速報よ、と会場で入力を担当されている方々に感謝した次第である。
そういうわけで、今週のコラムは試合の話はパス。代わりに桑田真澄氏の書かれた「野球の神様がくれたもの」(ポプラ社)について話をしたい。
桑田さんの話は、以前(2007年6月19日)、このコラムで書いたことがある。朝日新聞日曜版の「一流を育てる」という連載で、彼が師と仰ぐ甲野善紀さんとの関わりを3回(2002年10月19日、26日、11月2日)にわたって紹介したこともある。スポーツが大好きだったのに、社会部畑で育ち、スポーツの取材には縁の薄かった僕にとっては、親しく取材をさせていただいた数少ないプロ野球選手の一人である。
彼はこの本の中で「野球がうまくなるために必要な考え方を聞いてほしい」といって、こんな発言をしている。
……野球選手がうまくなるために必要なのは、トレーニング、食事、休息の三つのバランスだ。多くの選手やコーチはたくさん練習すればそれだけうまくなると思っている。でも、本当は練習の量だけでなく質を高めていかなくてはいけない。そして練習した分だけ栄養を摂取する必要がある。身体が栄養分を消化、吸収したり、疲労物質を代謝するためには休養の時間もとらなければならない。
……うまくなる選手に共通するのは「早寝早起き」だという(中略)親や監督からいわれて無理矢理そうするのではなく、自分から率先してやってもらいたい。自主的に行動することで自分ならではの小さな成功体験を積み重ねてほしいからだ。
……もう一つ、若い選手たちに伝えたいのは野球、勉強、遊びのバランスをとってほしいということだ。ほとんどの野球選手はグラウンドではボールに食らいつく。でも野球から離れた時でも努力できる選手は決して多くない。これはとてももったいない(中略)長年プロ野球で活躍する一流の選手に共通するのは頭がよいということだ(中略)分析力や観察力、洞察力を養うのに一番手っ取り早いのは、実は学校の勉強だ。若いアマチュア選手はグラウンドで努力するだけでなく、学校ではしっかり授業を聞き、家に帰ったらしっかり休息をとる方が野球が早く上達する。
そして、この章の最後には、遊びの重要性を説く。「野球は勝負を競うのだから、厳しさは絶対に大事だ。でも日本の野球界にはエンジョイメント、楽しむという態度が決定的に欠けている。しかし、スポーツは本来、楽しくやるものだ。心の中で楽しいと思えないまま野球をしていても努力を続けることは難しい」「チームメートと心を一つにして戦おうと思えば、恐怖心が勇気となり、挑戦しようという前向きな気持ちでプレーできる。味方と気持ちを一つにするためには、普段から相手の気持ちや考え方を理解しておかなければならない。そのために有効なのが遊びだ。遊びを通して相手の気持ちを知る勉強をしてほしいと思う」
高校野球で頂点を極め、日本のプロ野球界でも一流投手として名声をほしいままにし、さらには40歳を目前にしてメジャーリーグのマウンドを踏んだ彼が、その豊富な体験から説くトレーニング、食事、休息のバランス。野球と勉強、遊びのバランスの強調。野球をアメフットに置き換えれば、そのままファイターズの諸君にも通じる話だと思う。
ただ、誤解してはいけないのは、彼は三つのバランスが必要と強調しているのであって、トレーニングがいやだから休息が必要といったり、練習がしんどいから遊びに逃げるとかいうようなことは一切いっていない。野球も勉強も遊びもそれぞれに意味がある。だからそれぞれ大事にしなさい、といっているのである。ここを間違えないようにしていただきたい。
彼はこの本のあとがきにも「がんばるプロセスが大事です。失敗しても挫折を味わっても、そこから立ち上がって前に進むプロセスを楽しんでください」と書いている。「失敗しても、挫折を味わっても、そこから立ち上がって前に進む」。この言葉にこそ、彼の考えのすべてが言い尽くされているのである。
ファイターズの諸君にもこの言葉を送りたい。
この記事は外部ブログを参照しています。すべて見るには下のリンクをクリックしてください。
記事タイトル:(11)「野球の神様がくれたもの」
(ブログタイトル:石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」)
アーカイブ
- 2024年11月(3)
- 2024年10月(3)
- 2024年9月(3)
- 2024年6月(2)
- 2024年5月(3)
- 2024年4月(1)
- 2023年12月(3)
- 2023年11月(3)
- 2023年10月(4)
- 2023年9月(3)
- 2023年7月(1)
- 2023年6月(1)
- 2023年5月(3)
- 2023年4月(1)
- 2022年12月(2)
- 2022年11月(3)
- 2022年10月(3)
- 2022年9月(2)
- 2022年8月(1)
- 2022年7月(1)
- 2022年6月(2)
- 2022年5月(3)
- 2021年12月(3)
- 2021年11月(3)
- 2021年10月(4)
- 2021年1月(2)
- 2020年12月(3)
- 2020年11月(4)
- 2020年10月(4)
- 2020年9月(2)
- 2020年1月(3)
- 2019年12月(3)
- 2019年11月(3)
- 2019年10月(5)
- 2019年9月(4)
- 2019年8月(3)
- 2019年7月(2)
- 2019年6月(4)
- 2019年5月(4)
- 2019年4月(4)
- 2019年1月(1)
- 2018年12月(4)
- 2018年11月(4)
- 2018年10月(5)
- 2018年9月(3)
- 2018年8月(4)
- 2018年7月(2)
- 2018年6月(3)
- 2018年5月(4)
- 2018年4月(3)
- 2017年12月(3)
- 2017年11月(4)
- 2017年10月(3)
- 2017年9月(4)
- 2017年8月(4)
- 2017年7月(3)
- 2017年6月(4)
- 2017年5月(4)
- 2017年4月(4)
- 2017年1月(2)
- 2016年12月(4)
- 2016年11月(5)
- 2016年10月(3)
- 2016年9月(4)
- 2016年8月(4)
- 2016年7月(3)
- 2016年6月(2)
- 2016年5月(4)
- 2016年4月(4)
- 2015年12月(1)
- 2015年11月(4)
- 2015年10月(3)
- 2015年9月(5)
- 2015年8月(3)
- 2015年7月(5)
- 2015年6月(4)
- 2015年5月(2)
- 2015年4月(3)
- 2015年3月(3)
- 2015年1月(2)
- 2014年12月(4)
- 2014年11月(4)
- 2014年10月(4)
- 2014年9月(4)
- 2014年8月(4)
- 2014年7月(4)
- 2014年6月(4)
- 2014年5月(5)
- 2014年4月(4)
- 2014年1月(1)
- 2013年12月(5)
- 2013年11月(4)
- 2013年10月(5)
- 2013年9月(3)
- 2013年8月(3)
- 2013年7月(4)
- 2013年6月(4)
- 2013年5月(5)
- 2013年4月(4)
- 2013年1月(1)
- 2012年12月(4)
- 2012年11月(5)
- 2012年10月(4)
- 2012年9月(5)
- 2012年8月(4)
- 2012年7月(3)
- 2012年6月(3)
- 2012年5月(5)
- 2012年4月(4)
- 2012年1月(1)
- 2011年12月(5)
- 2011年11月(5)
- 2011年10月(4)
- 2011年9月(4)
- 2011年8月(3)
- 2011年7月(3)
- 2011年6月(4)
- 2011年5月(5)
- 2011年4月(4)
- 2010年12月(1)
- 2010年11月(4)
- 2010年10月(4)
- 2010年9月(4)
- 2010年8月(3)
- 2010年7月(2)
- 2010年6月(5)
- 2010年5月(3)
- 2010年4月(4)
- 2010年3月(1)
- 2009年11月(4)
- 2009年10月(4)
- 2009年9月(3)
- 2009年8月(4)
- 2009年7月(3)
- 2009年6月(4)
- 2009年5月(3)
- 2009年4月(4)
- 2009年3月(1)
- 2008年12月(1)
- 2008年11月(4)
- 2008年10月(3)
- 2008年9月(5)
- 2008年8月(2)
- 2008年4月(1)