石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(10)糧になる試合
先週日曜日、王子スタジアムであった慶応との試合は、近来になく面白かった。
一番の理由は、相手がファイターズをしっかり研究し、自分たちの強みを存分に発揮して戦ってくれたことだろう。それを受けて、ファイターズの面々も、懸命に戦った。双方が全力を出し切ってぶつかるから、一つ一つの場面が盛り上がり、試合そのものも白熱する。勝敗もプレーの成否も超えて、終始、すがすがしい風が吹き渡るような試合だった。
ファイターズのキックで試合開始。最初の攻撃権を握った慶応は、QB徳島のスクランブルでリズムをつかみ、立て続けにダウン更新。あっという間にハーフラインを超えてきた。ここはDLの踏ん張りでなんとかしのいだが、続くファイターズの攻撃はなすところなく終了。再び攻撃権を手にした慶応は、QBのキープやRBの切れ味のよいランで再びフィールドゴール圏内まで攻め込む。
ここでファイターズ守備陣が奮起。DL梶原、LB坂本が立て続けにロスタックルを浴びせ、仕上げはDL池永のパントブロック。相手陣41ヤードでファイターズが攻撃権を奪回する。
この好機に、QB畑がWR森本に16ヤードのパスを通し、残り25ヤード。ここでRB野々垣が右オープンを駆け上がってTD。一度走り出したら止まらないスピードと素早いカットバックで、ファンを魅了する。K大西のキックも決まって7-0。
その後しばらくは、両軍ともに決め手を欠き、パントの応酬となったが、前半終了間際に慶応が開き直ったようなランプレーで活路を開く。RB小平、QB徳島らが切れのよい走りを連発。ファイターズ守備陣を翻弄してTDに持ち込む。同点で前半終了。「恐るべし、慶応」「とんでもないスピード」という声が観客席のあちこちから聞こえてくる。
後半はファイターズのレシーブで試合再開。このシリーズはRB望月、坪谷のラン、畑からWR小山、木戸らへのパスなどで陣地を進め、最後はK大西のフィールドゴール。
3Q終了直前、自陣44ヤードから始まったファイターズの攻撃も野々垣、望月のラン、WR梅本、森本へのパスで着実に陣地を進め、4Q1分36秒、畑から梅本への7ヤードのパスが決まりTD。リードを10点差に広げる。4Qに入って、ようやく試合が落ち着いてきたと思ったが、慶応が本領を発揮したのはここから。
ファイターズがフィールドゴールを失敗して、自陣20ヤードから始まった慶応の攻撃。短いパスと切れのよいランを織り交ぜ、次々とダウンを更新して、あっという間にファイターズのゴール前5ヤードに攻め込む。ここはDB香山が相手パスをゴール前でインターセプトし、逆に50ヤードをリターンしてしのいだが、慶応の勢いは止まらない。残り時間1分54秒。再び自陣10ヤードから攻撃を開始し、わずか9プレーでTD。17-14と追い上げる。
しかし、ファイターズも慌てない。攻撃権の継続を狙った相手のオンサイドキックを確実にキャッチし、敵陣49ヤードで攻撃権を確保。ここから野々垣のラン、畑から梅本、WR大園へのパスで陣地を進め、仕上げは大園への21ヤードパス。残り6秒で坪谷が中央に飛び込みTD。
最終的に24-14のスコアになったが、試合内容は全く互角。獲得ヤードもファイターズが290ヤード、慶応は289ヤードと拮抗している。松岡主将が試合後のインタビューで「前半の7-7が本当の両軍の力」といっていた通り、互いに力を出し合い、しのぎあった48分だった。いや、慶応27分2秒、ファイターズ20分58秒という攻撃時間を見れば、ファイターズが押しまくられていたという印象を持たれた方も多いだろう。
それほど、慶応の戦いぶりはすばらしかった。久々のファイターズ相手の戦いということで、チームとして、しっかり準備がされていたのだろう。守備陣の的確な動きに、それは随所にうかがえた。
それより何より、攻撃の小気味よさ。スピードのある徳島、パスの得意な須藤という二人のQBを的確に使い分け、それにスピードのあるRBが加わってプレーに変化をつける。今季、これまでの試合では、そのスピードで相手を翻弄してきたファイターズの守備陣が、逆に翻弄され、太刀打ちできない場面が何度も見られた。「こんなチームがあったのか」と、ファイターズの諸君も驚いたに違いない。
試合後、顔を合わせた選手やコーチ陣は、異口同音にその驚きを表現していた。久しぶりに対戦した慶応は、それほど新鮮なチームだった。
けれども、関西にはQBが走り回るチームが少なくない。立命館はもとより、関大も京大も毎年、走力のあるQBを擁して多彩なランプレーを展開してくる。そういう相手と戦う上で、「QBが走りまくった」この日の慶応との試合は、何よりの経験になったはずだ。これからしっかり対策を立て、秋に備えれば、この試合の値打ちはさらに輝きを増す。試合経験はすべて、選手の糧になり薬になるのである。
一番の理由は、相手がファイターズをしっかり研究し、自分たちの強みを存分に発揮して戦ってくれたことだろう。それを受けて、ファイターズの面々も、懸命に戦った。双方が全力を出し切ってぶつかるから、一つ一つの場面が盛り上がり、試合そのものも白熱する。勝敗もプレーの成否も超えて、終始、すがすがしい風が吹き渡るような試合だった。
ファイターズのキックで試合開始。最初の攻撃権を握った慶応は、QB徳島のスクランブルでリズムをつかみ、立て続けにダウン更新。あっという間にハーフラインを超えてきた。ここはDLの踏ん張りでなんとかしのいだが、続くファイターズの攻撃はなすところなく終了。再び攻撃権を手にした慶応は、QBのキープやRBの切れ味のよいランで再びフィールドゴール圏内まで攻め込む。
ここでファイターズ守備陣が奮起。DL梶原、LB坂本が立て続けにロスタックルを浴びせ、仕上げはDL池永のパントブロック。相手陣41ヤードでファイターズが攻撃権を奪回する。
この好機に、QB畑がWR森本に16ヤードのパスを通し、残り25ヤード。ここでRB野々垣が右オープンを駆け上がってTD。一度走り出したら止まらないスピードと素早いカットバックで、ファンを魅了する。K大西のキックも決まって7-0。
その後しばらくは、両軍ともに決め手を欠き、パントの応酬となったが、前半終了間際に慶応が開き直ったようなランプレーで活路を開く。RB小平、QB徳島らが切れのよい走りを連発。ファイターズ守備陣を翻弄してTDに持ち込む。同点で前半終了。「恐るべし、慶応」「とんでもないスピード」という声が観客席のあちこちから聞こえてくる。
後半はファイターズのレシーブで試合再開。このシリーズはRB望月、坪谷のラン、畑からWR小山、木戸らへのパスなどで陣地を進め、最後はK大西のフィールドゴール。
3Q終了直前、自陣44ヤードから始まったファイターズの攻撃も野々垣、望月のラン、WR梅本、森本へのパスで着実に陣地を進め、4Q1分36秒、畑から梅本への7ヤードのパスが決まりTD。リードを10点差に広げる。4Qに入って、ようやく試合が落ち着いてきたと思ったが、慶応が本領を発揮したのはここから。
ファイターズがフィールドゴールを失敗して、自陣20ヤードから始まった慶応の攻撃。短いパスと切れのよいランを織り交ぜ、次々とダウンを更新して、あっという間にファイターズのゴール前5ヤードに攻め込む。ここはDB香山が相手パスをゴール前でインターセプトし、逆に50ヤードをリターンしてしのいだが、慶応の勢いは止まらない。残り時間1分54秒。再び自陣10ヤードから攻撃を開始し、わずか9プレーでTD。17-14と追い上げる。
しかし、ファイターズも慌てない。攻撃権の継続を狙った相手のオンサイドキックを確実にキャッチし、敵陣49ヤードで攻撃権を確保。ここから野々垣のラン、畑から梅本、WR大園へのパスで陣地を進め、仕上げは大園への21ヤードパス。残り6秒で坪谷が中央に飛び込みTD。
最終的に24-14のスコアになったが、試合内容は全く互角。獲得ヤードもファイターズが290ヤード、慶応は289ヤードと拮抗している。松岡主将が試合後のインタビューで「前半の7-7が本当の両軍の力」といっていた通り、互いに力を出し合い、しのぎあった48分だった。いや、慶応27分2秒、ファイターズ20分58秒という攻撃時間を見れば、ファイターズが押しまくられていたという印象を持たれた方も多いだろう。
それほど、慶応の戦いぶりはすばらしかった。久々のファイターズ相手の戦いということで、チームとして、しっかり準備がされていたのだろう。守備陣の的確な動きに、それは随所にうかがえた。
それより何より、攻撃の小気味よさ。スピードのある徳島、パスの得意な須藤という二人のQBを的確に使い分け、それにスピードのあるRBが加わってプレーに変化をつける。今季、これまでの試合では、そのスピードで相手を翻弄してきたファイターズの守備陣が、逆に翻弄され、太刀打ちできない場面が何度も見られた。「こんなチームがあったのか」と、ファイターズの諸君も驚いたに違いない。
試合後、顔を合わせた選手やコーチ陣は、異口同音にその驚きを表現していた。久しぶりに対戦した慶応は、それほど新鮮なチームだった。
けれども、関西にはQBが走り回るチームが少なくない。立命館はもとより、関大も京大も毎年、走力のあるQBを擁して多彩なランプレーを展開してくる。そういう相手と戦う上で、「QBが走りまくった」この日の慶応との試合は、何よりの経験になったはずだ。これからしっかり対策を立て、秋に備えれば、この試合の値打ちはさらに輝きを増す。試合経験はすべて、選手の糧になり薬になるのである。
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