石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

(6)栄養剤は試合経験

投稿日時:2011/05/12(木) 07:05rss

 8日の関大戦は31-7でファイターズの勝利。ファイターズは終始主導権を握り、存分に戦ったように見えた。
 だが、ほぼフルメンバーを並べたファイターズに対し、相手は主力選手が何人も欠場していたようだし、まだまだ調整途上のように見えた。昨年秋、甲子園ボウル出場決定戦で手痛い敗北を喫した相手だけに、大差で勝ったのはうれしいが、シーズンはまだ始まったばかり。調整途上の段階で、彼我の戦力を比べてみても、あまり参考にならないだろう。
 それより僕は、ファイターズの諸君が冬を越してどれほど成長したか、新しいメンバーがどんなプレーを見せてくれるか、という点に注目して観戦した。
 結論から言えば、うれしい内容と、不安を覚える内容が交錯していた。
 まずはうれしい話から並べてみよう。
 オフェンスでは、何といってもRB陣が目についた。LBからコンバートされた望月(3年)は、中央を突破していく力強いラッシュが魅力。先日の日大戦の活躍に続き、この日も11回のキャリーで57ヤードを獲得した。相手が彼のランを警戒している状況で、なおかつ確実に5ヤード前後を獲得できる突破力が素晴らしい。このまましっかり練習を積み、もう一段上の速さを身につければ、秋には恐ろしいランナーになるだろう。
 スピードのある野々垣と雑賀の2年生コンビにも期待が持てる。野々垣はカットバック、雑賀は加速力と、それぞれ違う分野で素晴らしい能力を持っており、これまた成長が楽しみだ。ともにまだまだ発展途上。物足りない点はいくつもあるが、しっかり練習に取り組み、試合で経験を積んでいけば、まだまだ成長するはずだ。
 タイトエンド(TE)を含めたレシーバー人も人材豊富。4年生の和田は第1Q11分21秒、QB畑からの長くて難しいパスを見事にキャッチし、体勢を崩しながら一気に20ヤード近くを走り切ってタッチダウンまで持ち込んだ(記録は59ヤードのパスキャッチ)。日大戦で到底キャッチできないようなパスを身を挺してキャッチした(この写真はいまトップページに掲載されている)3年生の小山とともに、球際の強さを見せつけた。3年生の大型TE金本も成長しており、昨年以上に多彩なパス攻撃が期待できそうだ。
 ラインも発展途上。関大戦で先発した4年生は谷山、小林の2人。あとは3年生の和田、2年生の友国、木村がスタメンに名を連ねた。2年生には、ほかにも先発争いをしている大型選手が何人もおり、そのうち何人かはこの試合でも交代要員として出場した。2年生が今後、試合で経験を積んでいけば、例年になく層の厚いラインが完成するだろう。
 守備でも下級生が活躍した。第2Q1分29秒、ファンブルリターンTDを決めた池田、再三鋭いタックルを見せた阪本の2年生LBコンビがその代表。高等部のサンデーコーチをしていた朝日新聞記者、大西史恭氏が「二人とも高校時代から突出した動きをしていました」という通り、目を見張るような鋭い動きを見せた。
 DB陣では、この日2本のインターセプトを奪った3年生の保宗と2年生の大森に注目。ともに、今春のJV戦から3試合連続の先発だが、試合を重ねるたびに動きが軽快になっており、これからの伸びしろに期待が持てる。
 一方、いまひとつ物足りなかったのが4年生の糟谷が欠場したままのQB陣。日大戦に続いて、この日も3年生の畑が試合をリードしたが、RBやWRへの短いパスのタイミングが微妙にずれて、いまひとつ攻撃のリズムに乗り切れなかった。関大を相手に4本のTDを奪ったのだから、不足をいうのは失礼かもしれないが、立命に勝つ、という目標を考えると、さらなる精進が必要だろう。
 もちろん、シーズンはまだ始まったばかりだ。いま名前を挙げた選手の大半は、昨年まで交代要員で出場することはあっても、試合を任されたことのない選手たちである。練習ではうまくできても試合ではできないこともある。逆に、試合経験を積まなければ覚えられないこともいっぱいある。
 相手のスピード、当たりの強さ、反応の速さ。そういう事柄は、実際に強敵と対戦しないと実感できない。カバーする相手のちょっとしたしぐさから次のプレーを予測したり、相手の反応を逆用したりすることも、経験を積んで初めて可能になる。自分の動きに生かすことができる。
 そういう意味で、下級生にとっては試合に出て経験を積むこと、いろんなチャレンジをすること、それが成長のための栄養剤になるのである。失敗を恐れず、前のめりのプレーを続けてほしい。
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