石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(27)神さまが与えた試練
10月30日は僕の66回目の誕生日。この年になったら「冥途への一里塚」というくらいで、特段の喜びはなかったけれど、関学の宗教活動委員会から「あなたの誕生日を心からお祝い申し上げます」というはがきが届いた。グルーベル院長をはじめたくさんの方々のお祝いの言葉や署名も入っていたから、喜んで頂戴した。なにより、立命との決戦を前に、こういうお祝いのメッセージがいただけることは、ゲンのよいことに思えた。
試合開始前後に襲来が予測されていた台風も紀伊半島のはるか南を通り過ぎ、その影響もなさそうに思えた。QB加藤のパスに支障が出ないかと心配していた強風もおさまり、これまたゲンがよいと、心を弾ませながら長居競技場に向かった。
ところが、試合が始まった瞬間、状況は一変した。相手のキックしたボールを受け、リターンしようとした尾崎が強烈なタックルを腹部に受けてダウン、担架で運び出された。リターンチームの切り札が退場し、いやな予感が漂う。
自陣37ヤード付近から始まったファイターズの攻撃。最初のプレーは加藤からRB稲村へのパスだったが、相手守備陣にカットされて失敗。続く第2プレー、加藤からハンドオフされたボールを抱えて走り始めたRB松岡に、相手DLが強烈なタックル浴びせ、ボールをはじき出してしまう。それを立命守備陣が抑えて、ターンオーバー。心の準備が整っていなかった守備陣が相手オフェンスに対応する前に、QBに30ヤードを独走され、先制点を与えてしまった。
苦しい。先手を取った上で、準備に準備を重ねてきた多彩なプレーで相手を翻弄するはずだった段取りがいきなり狂ってしまった。
それでも、ファイターズは踏ん張る。次の攻撃シリーズは、松岡のランに加藤からWR松原や春日へのパス、それに加藤やQB畑のキーププレーをからませてゴール前に迫り、仕上げは尾嶋の中央ダイブプレーでTD。
ここでベンチはキックではなく、2点を狙ってセンターがLB村上に直接スナップするとっておきのプレーを選択したが、わずかにゴールラインに届かない。
これで歯車が狂ったのか、前半の攻撃はその後、いっこうに進まない。逆に相手に2本のフィールドゴールを決められ、13-6で折り返し。
後半になっても、攻守のリズムはかみ合わない。DLを5人並べ、そのうちスピードのある主将、平澤をラインバッカーの位置に下げた守備陣が機能して、相手に得点機会を与えないまま試合は一進一退になったが、ここでまたファイターズに手痛いミスが出た。相手が自陣ゴール前から蹴ったパントを確保、ハーフライン付近で攻撃権を得たはずなのに、キッカーへの反則でそれを台無しにしてしまったのだ。それどころか、この攻撃シリーズを相手のTDに結び付けられ、第4Q9分29秒というところで20-6と引き離されてしまった。
苦しい。残り時間2分30秒弱で2本のTDを奪わないと、逆転の目はない。しかし、ここで加藤とWR陣が奮起。加藤から小山、春日へのパスを立て続けに決め、残る19ヤードを再び春日へのパスでTD。K大西のキックも決まって、わずか1分足らずの攻撃で7点差に迫る。
残り時間は1分40秒。次のオンサイドキックを決め、攻撃権を確保すれば、まだ何とかなる。この場面で、K大西が春からずっと練習してきた「一人時間差」のオンサイドキックに出たが、警戒していた相手守備陣はごまかされない。一瞬、あわてさせることはできたが、結局ボールを確保され、万事休す。そのまま試合終了となた。
悔しい。確かに試合は終始、立命のペースだった。相手にはミスらしいミスは一つもなかったのに、ファイターズはいくつかのミスが続いた。自ら招いたミスもあったし、相手に仕掛けられたミスもあった。そのミスにことごとく付け込まれたのだから、勝てなかったのは当然かもしれない。
いま、試合経過を振り返ってみても、相手の猛攻をよく20点で食い止めたという感想はあっても、ファイターズが付け込む隙はなかったような気もする。相手がファイターズの攻撃やキックリターンの傾向を徹底的に研究し、十分な対策を練ってきたこともよく分かった。ファイターズの攻撃が、終始自陣深くから始まったという状況から、打つ手が限られたということも理解できる。
しかし、である。日頃のファイターズの準備と練習を見てきた立場からいえば、どこかで仕掛けるチャンスはあったはずではないかと悔いが残る。確かに相手は強かった。けれども、ファイターズも、あのような負け方をするほど弱いチームではなかったはずだ。それは、あの強力な立命の攻撃陣を食い止めた守備陣の頑張りや最終局面での鮮やかなパス攻撃が証明している。
それだけに、あの結果が残念でならない。いまこの原稿を書いていても、心は穏やかではない。なぜ勝てなかったのか。どこに欠陥があったのか。考えてもわからない。けれども負けたことは事実である。いまは、あの敗戦をファイターズがもっと強いチームになるために、フットボールの神さまが与えてくださった試練であると受け止め、無理やり心を鎮めている。
試合開始前後に襲来が予測されていた台風も紀伊半島のはるか南を通り過ぎ、その影響もなさそうに思えた。QB加藤のパスに支障が出ないかと心配していた強風もおさまり、これまたゲンがよいと、心を弾ませながら長居競技場に向かった。
ところが、試合が始まった瞬間、状況は一変した。相手のキックしたボールを受け、リターンしようとした尾崎が強烈なタックルを腹部に受けてダウン、担架で運び出された。リターンチームの切り札が退場し、いやな予感が漂う。
自陣37ヤード付近から始まったファイターズの攻撃。最初のプレーは加藤からRB稲村へのパスだったが、相手守備陣にカットされて失敗。続く第2プレー、加藤からハンドオフされたボールを抱えて走り始めたRB松岡に、相手DLが強烈なタックル浴びせ、ボールをはじき出してしまう。それを立命守備陣が抑えて、ターンオーバー。心の準備が整っていなかった守備陣が相手オフェンスに対応する前に、QBに30ヤードを独走され、先制点を与えてしまった。
苦しい。先手を取った上で、準備に準備を重ねてきた多彩なプレーで相手を翻弄するはずだった段取りがいきなり狂ってしまった。
それでも、ファイターズは踏ん張る。次の攻撃シリーズは、松岡のランに加藤からWR松原や春日へのパス、それに加藤やQB畑のキーププレーをからませてゴール前に迫り、仕上げは尾嶋の中央ダイブプレーでTD。
ここでベンチはキックではなく、2点を狙ってセンターがLB村上に直接スナップするとっておきのプレーを選択したが、わずかにゴールラインに届かない。
これで歯車が狂ったのか、前半の攻撃はその後、いっこうに進まない。逆に相手に2本のフィールドゴールを決められ、13-6で折り返し。
後半になっても、攻守のリズムはかみ合わない。DLを5人並べ、そのうちスピードのある主将、平澤をラインバッカーの位置に下げた守備陣が機能して、相手に得点機会を与えないまま試合は一進一退になったが、ここでまたファイターズに手痛いミスが出た。相手が自陣ゴール前から蹴ったパントを確保、ハーフライン付近で攻撃権を得たはずなのに、キッカーへの反則でそれを台無しにしてしまったのだ。それどころか、この攻撃シリーズを相手のTDに結び付けられ、第4Q9分29秒というところで20-6と引き離されてしまった。
苦しい。残り時間2分30秒弱で2本のTDを奪わないと、逆転の目はない。しかし、ここで加藤とWR陣が奮起。加藤から小山、春日へのパスを立て続けに決め、残る19ヤードを再び春日へのパスでTD。K大西のキックも決まって、わずか1分足らずの攻撃で7点差に迫る。
残り時間は1分40秒。次のオンサイドキックを決め、攻撃権を確保すれば、まだ何とかなる。この場面で、K大西が春からずっと練習してきた「一人時間差」のオンサイドキックに出たが、警戒していた相手守備陣はごまかされない。一瞬、あわてさせることはできたが、結局ボールを確保され、万事休す。そのまま試合終了となた。
悔しい。確かに試合は終始、立命のペースだった。相手にはミスらしいミスは一つもなかったのに、ファイターズはいくつかのミスが続いた。自ら招いたミスもあったし、相手に仕掛けられたミスもあった。そのミスにことごとく付け込まれたのだから、勝てなかったのは当然かもしれない。
いま、試合経過を振り返ってみても、相手の猛攻をよく20点で食い止めたという感想はあっても、ファイターズが付け込む隙はなかったような気もする。相手がファイターズの攻撃やキックリターンの傾向を徹底的に研究し、十分な対策を練ってきたこともよく分かった。ファイターズの攻撃が、終始自陣深くから始まったという状況から、打つ手が限られたということも理解できる。
しかし、である。日頃のファイターズの準備と練習を見てきた立場からいえば、どこかで仕掛けるチャンスはあったはずではないかと悔いが残る。確かに相手は強かった。けれども、ファイターズも、あのような負け方をするほど弱いチームではなかったはずだ。それは、あの強力な立命の攻撃陣を食い止めた守備陣の頑張りや最終局面での鮮やかなパス攻撃が証明している。
それだけに、あの結果が残念でならない。いまこの原稿を書いていても、心は穏やかではない。なぜ勝てなかったのか。どこに欠陥があったのか。考えてもわからない。けれども負けたことは事実である。いまは、あの敗戦をファイターズがもっと強いチームになるために、フットボールの神さまが与えてくださった試練であると受け止め、無理やり心を鎮めている。
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