石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

(18)暑い、厚い、熱い

投稿日時:2010/08/25(水) 21:06rss

 暑い。それにしても暑い。8月も終わりというのに、この暑さはどういうことか。雨さえまったく降らないのだから恐れ入る。
 先日、上ヶ原の大学構内を歩いていたら、よれよれになったクマゼミが肩にとまった。あれれ、と思って手を出すと、逃げもせず、そのまま死んでしまった。セミも熱中症でくたばってしまったのか、それとも寿命が尽きてお亡くなりになったのか。
 毎日の通勤経路にある紀州・田辺の道路沿いでは、土手一面に白いタカサゴユリが咲いているのだが、この1週間ほどのうちに、すっかり元気がなくなってしまった。連日の暑熱と日照りで、さしもの南国渡来の花も、くたばってしまったらしい。
 セミも花もくたばるくらいだから、人間も持ちこたえられない。日々暑い、暑いと文句をたれながら、ずぼらをかましている。
 それでも、高校野球開催期間中は、大阪市内や甲子園球場に出掛けなければならない用事が多い。ぶつくさいいながら、それでも汗だくになって歩き回っていた。その分、ファイターズの練習を見に行く機会が減り、このコラムもすっかりご無沙汰してしまった。申し訳ない。
 とはいえ、13日は午前4時に起きて、東鉢伏まで直行。合宿での鍛錬ぶりを見学してきた。先週は大学の第3フィールドで行われている2次合宿の様子も見に行った。遅ればせながらその報告をしよう。
 鉢伏の合宿を見学した感想を一言でいえば「層が厚くなった」。従来はレギュラー組とフレッシュマン組に分けて練習していたのだが、今年からはいわゆる1軍と2軍にチームを分割。合宿ではそれぞれ70人前後の規模で練習に取り組んでいた。
 当日は「2軍」が午前中と午後の前半、「1軍」は午前中に筋トレ、午後の後半が練習という振り分け。まずは「2軍」の午前の練習につきあったのだが、このレベルが高い。リーグ戦に出場した経験を持つ4年生や3年生が何人も含まれており、1、2年生の中にもスポーツ推薦組をはじめ有望選手が多々いるのだから、当然といえば当然だが、それにしても、とてもJVとは思えないような動きをしている選手が何人もいる。知らない人が見たら、これがファイターズのフルメンバーと勘違いしてもおかしくないぐらいだ。
 年に一度の鉢伏合宿ということ、それに何とか認められて上のメンバーに入りたいという強い意志があることから、どの選手も意欲満々。2時間ほどの練習時間があっという間に感じられた。午後の練習になると、さらに気合いが入り、パスプレーの練習などを見ていると、このままリーグ戦に出しても、下位チーム相手なら通用するのではないかと思えるほどの充実ぶりだった。
 思えば、近年のファイターズは部員数こそ多いけど、戦力としての層の薄さに泣いてきた。とくにラインは攻守とも層が薄く、1本目の選手が故障すると、その穴を補充するのにおたおたしていた感があった。
 それに引き換え、今年は質も量も層が厚くなっている。ポジションによっては「2軍」でさえ、リーグ戦で通用しそうなメンバーがごろごろいるのだから頼もしい。
 「2軍」が充実すれば、当然のことながら「1軍」の競争も激しくなる。午後も遅くなってから始まったその練習ぶりを見ていると、みんな歯切れがよい。運悪く練習が始まると同時に強い雨が降り出したが、それを苦にする様子もなく、流れるようにメニューをこなしていく。昨年までに比べると、今年は一つ一つのプレーの間隔が短く、その分、選手が息を整える時間は短い。それでもダウンする選手はいない。気持ちがこもっているからだろう。
 これは上ヶ原の第3フィールドでの練習でもいえることだが、プレーの間隔が短くなればなるほど、一つ一つのプレーの集中力が上がるようだ。一般的には、大相撲の立ち会いのように、しっかり間隔をとってプレーした方が集中力が増すように考えがちだが、実際の練習を見ていると、リズムに乗って、短い間隔でテンポよくメニューをこなしていく方が逆に集中できている。
 ともあれ、「暑い」夏に、層の「厚い」メンバーが「熱い」練習を繰り広げているのを見て、一安心。夏の成果を秋のシーズンに存分に発揮してもらいたいと思いながら、東鉢伏を後にした。
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