石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(13)課題が見えた明大戦
長い間、新聞記者をしているせいか、物事を判断する場合、現場で見たこと、感じたことについつい重点を置きすぎてしまう傾向がある。人づてに聞いたことやテレビ画面を通して見たことは信用しないというか、どこか懐疑的になってしまうのである。
目の前のファイターズの試合なら、たいていのことは網膜に焼き付けており、結構細かいところまで覚えている。プレーに失敗して(あるいは成功して)ベンチに戻ってきたときの選手の顔つき、相手を思い通りに仕留めたときのしぐさ。日々の練習に向かうときの足取り、言葉を交わしたときの何げない表情。現場でそうした細部を見届けることで、大げさにいえば、このコラムは成り立っているのである。
逆に、テレビがどんなに白熱した試合の模様を伝えてくれても、どこか冷めている。先日も朝の3時半に起きて、サッカーのデンマーク戦をテレビ観戦したが、ゴールが決まったときのリプレーがさんざん繰り返され、中継するアナウンサーがどんなに絶叫しようとも、見ている当方には「しょせん試合の一部。細部まですべてを見たわけではない」という突き放した気持ちがどこかにある。サッカー観戦が嫌いなわけでもないのに、困ったことだ。これも職業病の一種だろうか。
こんなに「現場至上主義」の人間なのに、先日の明治大学との試合は、途中からしか観戦できなかった。知人の結婚式が岡山市であり、その披露宴に出席していたからである。式がお開きになると、即座に会場を出て、タクシー、新幹線、またタクシーと乗り継いで王子スタジアムに着いたが、もう第2クオーターも残り30秒。前半戦を見ることはかなわなかった。
得点の表示板を身ながら、いつもの観戦仲間の友人に前半の様子を聞くと「この雨の中やから、どうしても大味になるわな」といいながら、先発QBの糟谷が67ヤードを独走したタッチダウンと、糟谷からWR松原へのタッチダウンパスの様子を話してくれた。そして「明治のランは強い。後半、それにどう対応するかが見どころや」と話してくれた。
「なるほど、糟谷の潜在能力の高さを考えれば、独走したって不思議はない」「松原の実力からすれば、少々雨が降ってもパスキャッチに何の支障もないはず」と思いながら、あらためてそのプレーを見られなかった悔しさが募る。
この日も雨。しかし、関西学生アメリカンフットボール界の重鎮、古川明さんのご好意で記者室の一角に席を借りて観戦。持参した結婚式の引き出物や礼服が濡れないので大いに助かった。
後半は明治のレシーブから始まったが、守備陣が完璧に抑えてすぐにファイターズの攻撃。相手陣48ヤードという好位置からRB久司の22ヤード、RB松岡の12ヤード、再び久司の11ヤードと立て続けのラン攻撃で一気に相手ゴール前に迫った。残る3ヤードをRB稲村が走り抜き、あっという間にTD。3人の快足ランナーの持ち味を存分に発揮した鮮やかなシリーズだった。
次の明治の攻撃シリーズ。スペシャルプレーを成功させて一気に陣地を進めたが、結局は得点に結びつけられず、再びファイターズの攻撃。自陣32ヤードから始まったこのシリーズも糟谷から松原へのパス、松原のランなどが次々と決まり、あっという間に敵陣24ヤード。ここで再び糟谷が左オープンを独走してTD。K大西のキックも決まって28-0。たとえ後半戦だけでも見ることができれば、と思ってスタジアムに駆けつけてきた値打ちがあった、と思わせてくれる攻撃の連続だった。
ところが、ここからが凡戦。両軍ともしっかりボールを確保できず、ファンブルの応酬。とりわけファイターズはゴール前で3回もファンブルを重ね、自ら攻撃のリズムを崩してしまった。
雨の中とはいえ、この結果には納得がいかなかったのだろう。試合後、鳥内監督は「ボールのセキュリティーについては、普段から厳しくいうてんのに。結果オーライの練習ばかりしてるから、ああいうことになるんですわ」と厳しい口調だった。
ともあれ、この試合で春のシーズンは事実上終了。3日に上ケ原の第3フィールドで行われるJV戦を残すのみとなった。
春の戦いで見えてきたいくつもの課題を今後どのように克服していくか。春に先発したメンバーを押しのける新戦力がどれくらい成長してくるのか。前期試験をはさんで、夏合宿が始まるまでの間の取り組みが、すべての鍵を握っているような気がする。本気で日本1を目指すのなら、普段から練習のための練習ではなく、常に試合を意識して、さらに高いレベルの鍛錬を続けてほしい。
目の前のファイターズの試合なら、たいていのことは網膜に焼き付けており、結構細かいところまで覚えている。プレーに失敗して(あるいは成功して)ベンチに戻ってきたときの選手の顔つき、相手を思い通りに仕留めたときのしぐさ。日々の練習に向かうときの足取り、言葉を交わしたときの何げない表情。現場でそうした細部を見届けることで、大げさにいえば、このコラムは成り立っているのである。
逆に、テレビがどんなに白熱した試合の模様を伝えてくれても、どこか冷めている。先日も朝の3時半に起きて、サッカーのデンマーク戦をテレビ観戦したが、ゴールが決まったときのリプレーがさんざん繰り返され、中継するアナウンサーがどんなに絶叫しようとも、見ている当方には「しょせん試合の一部。細部まですべてを見たわけではない」という突き放した気持ちがどこかにある。サッカー観戦が嫌いなわけでもないのに、困ったことだ。これも職業病の一種だろうか。
こんなに「現場至上主義」の人間なのに、先日の明治大学との試合は、途中からしか観戦できなかった。知人の結婚式が岡山市であり、その披露宴に出席していたからである。式がお開きになると、即座に会場を出て、タクシー、新幹線、またタクシーと乗り継いで王子スタジアムに着いたが、もう第2クオーターも残り30秒。前半戦を見ることはかなわなかった。
得点の表示板を身ながら、いつもの観戦仲間の友人に前半の様子を聞くと「この雨の中やから、どうしても大味になるわな」といいながら、先発QBの糟谷が67ヤードを独走したタッチダウンと、糟谷からWR松原へのタッチダウンパスの様子を話してくれた。そして「明治のランは強い。後半、それにどう対応するかが見どころや」と話してくれた。
「なるほど、糟谷の潜在能力の高さを考えれば、独走したって不思議はない」「松原の実力からすれば、少々雨が降ってもパスキャッチに何の支障もないはず」と思いながら、あらためてそのプレーを見られなかった悔しさが募る。
この日も雨。しかし、関西学生アメリカンフットボール界の重鎮、古川明さんのご好意で記者室の一角に席を借りて観戦。持参した結婚式の引き出物や礼服が濡れないので大いに助かった。
後半は明治のレシーブから始まったが、守備陣が完璧に抑えてすぐにファイターズの攻撃。相手陣48ヤードという好位置からRB久司の22ヤード、RB松岡の12ヤード、再び久司の11ヤードと立て続けのラン攻撃で一気に相手ゴール前に迫った。残る3ヤードをRB稲村が走り抜き、あっという間にTD。3人の快足ランナーの持ち味を存分に発揮した鮮やかなシリーズだった。
次の明治の攻撃シリーズ。スペシャルプレーを成功させて一気に陣地を進めたが、結局は得点に結びつけられず、再びファイターズの攻撃。自陣32ヤードから始まったこのシリーズも糟谷から松原へのパス、松原のランなどが次々と決まり、あっという間に敵陣24ヤード。ここで再び糟谷が左オープンを独走してTD。K大西のキックも決まって28-0。たとえ後半戦だけでも見ることができれば、と思ってスタジアムに駆けつけてきた値打ちがあった、と思わせてくれる攻撃の連続だった。
ところが、ここからが凡戦。両軍ともしっかりボールを確保できず、ファンブルの応酬。とりわけファイターズはゴール前で3回もファンブルを重ね、自ら攻撃のリズムを崩してしまった。
雨の中とはいえ、この結果には納得がいかなかったのだろう。試合後、鳥内監督は「ボールのセキュリティーについては、普段から厳しくいうてんのに。結果オーライの練習ばかりしてるから、ああいうことになるんですわ」と厳しい口調だった。
ともあれ、この試合で春のシーズンは事実上終了。3日に上ケ原の第3フィールドで行われるJV戦を残すのみとなった。
春の戦いで見えてきたいくつもの課題を今後どのように克服していくか。春に先発したメンバーを押しのける新戦力がどれくらい成長してくるのか。前期試験をはさんで、夏合宿が始まるまでの間の取り組みが、すべての鍵を握っているような気がする。本気で日本1を目指すのなら、普段から練習のための練習ではなく、常に試合を意識して、さらに高いレベルの鍛錬を続けてほしい。
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