石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(16)日本1のイヤーブック
自分が関係しているのに言うのも何だけど、ファイターズのホームページは読み応えがある。情報が早くて充実しているうえに、マネジャーの「リレーコラム」や畏友・川口仁さんの連載「日本アメリカンフットボール史」がある。前者は部員の「素顔」を伝えて秀逸だし、後者は無料で読ませてもらうのが申し訳ないほどの労作だ。そのうえ、友人(だけ)がこぞって褒めてくれる(単にお愛想をいわれているだけなんだけど)僕のコラムがある(自分で言ってどうするよ)。写真も素晴らしいし、デザインもしゃれている。更新の頻度も他大学に比べて圧倒的に多い。
というわけで、勝手に「日本1のホームページ」と自賛しているのだが、ファイターズには、もう一つ「日本1」がある、と僕は思っている。毎年、秋のシーズンが始まると同時に発行されるイヤーブックである。
毎年読んでいる分には、そんなに驚かないけれども、他の大学のイヤーブックと比較してみれば、その内容が充実していることに驚かされる。なにより特集記事が素晴らしい。編集にはまったく経験のない学生が作っているとは、とても思えない。
聞けば、イヤーブックは毎年、3年生のマネジャーが中心になって編集しているそうだ。今年も3年生マネジャーの豊田早穂さんを中心に、7月から本格的に作業を始め、前期試験と並行して企画・取材・執筆・編集・校正作業を進めている。秋のシーズンに間に合わせるためには、本当はもう少し早い時期から作業をスタートさせた方が、工程にゆとりが持てるのだが、春のシーズンの戦績を入れたり、対戦相手の分析をしたり、新入生メンバーがそろうのを待っていたりすると、どうしても本格的に作業できるのは7月からになるそうだ。
その作業が大変だ。まず200人もの部員の集合写真と個人写真を撮影しなければならない。幸い、カメラマンが手慣れた人なので、作業は流れるように進んでいくそうだが、今度はそれぞれにコメントをつけなければならない。パートごとの写真を撮り、その紹介も選手自身が書くのである。
呼び物の特集記事は、特別に力が入る。相手に依頼するだけで集まる原稿ならともかく、自分で取材し、執筆するのは大変だ。僕のようにそれを職業としている者にとっても気の重い作業なのに、編集も取材もほとんど経験のない学生にとっては、気の遠くなるような重圧がかかるだろう。
しかし、さすがはファイターズのメンバーである。そんな重圧をまったく感じさせないような物語を綴っている。
先日、編集作業中の記事を2本、校正段階で読ませていただいたが、それぞれに素晴らしい出来栄えだった。一つは昨年のチームの一員が書いた「挑戦への軌跡~2007年のシーズンを振り返って~」。筆者名は、イヤーブックを購入されてからのお楽しみとして伏せておくが、このホームページに連載され、衝撃を与えた小野宏コーチの「爆発(explosion)~史上最高のパスゲーム~」の向こうを張ったような中身の濃い力作である。
もう1本が「QBファクトリー」の物語。ファイターズがこの10年ほどの間に送り出し、いまも社会人の第一線でプレーしている名QB6人(名前は、読んでからのお楽しみ)に、豊田さんが直接インタビューしてまとめた読み物である。これまたファイターズのファンには、よだれの出るような企画であり、彼らが活躍した当時を思い出しながら読むと、なおさら興趣がつのるはずだ。
これらの記事を読ませてもらいながら、こういう特集をまとめ、質の高いイヤーブックが発行できる理由はなぜか、と考えた。答えはファイターズというチームに求められる。どういうことか。説明したい。
さきほど、イヤーブックは3年生マネジャーが中心になって作成していると書いた。しかし、それはあくまで「中心になっている」のであって、それをフォローする人たちが何人もいる。ディレクター補佐の宮本敬士氏や石割淳氏は、かつてマネジャー時代に編集に携わった経験があり、その経験を生かして現役のメンバーに適切な指導をしている。朝日新聞でスポーツ記者をしていた小野コーチも、特集記事については目を通し、専門家の目で助言をしている。写真スタッフである清水茂さんらの協力も大きい。
そういう、経験の蓄積と指導が惜しみなく注がれ、現役部員もそれに応えていくから、自ずと鍛えられる。「へなちょこ部員」が「ファイターズ」に成長していくのである。ホームページがリニューアルされて以来、営々と「マネジャーの日記」を綴ってくれた1昨年の神林琢己君、昨年の大石雅彦君の文章を読み直せば、それは納得していただけるだろう。そういう「成長する部員」がいるから、世間に「日本1」と自慢できる本もホームページも作れるのである。それがファイターズというチームである。
グラウンドで戦うのは選手である。けれども、彼らが存分に戦えるように育成するコーチやスタッフが充実していて、初めてチームは機能する。そのためには、兵站(へいたん)部門を充実させなければならないし、リクルート活動もがんばらなければならない。OBにも協力を仰がなければならないだろうし、大学当局の理解も不可欠だ。
そういうもろもろがどれ一つ欠けることなく機能して、初めてファイターズはファイターズになれるのである。ホームページを作る作業も、イヤーブックを編集する作業も同様である。というより、チームとして「日本1」を目指すのなら、ホームページもイヤーブックも「日本1」でなければならない、と僕は思うのである。
思わず力が入って、話が長くなったが、結論はこういうことである。
というわけで、勝手に「日本1のホームページ」と自賛しているのだが、ファイターズには、もう一つ「日本1」がある、と僕は思っている。毎年、秋のシーズンが始まると同時に発行されるイヤーブックである。
毎年読んでいる分には、そんなに驚かないけれども、他の大学のイヤーブックと比較してみれば、その内容が充実していることに驚かされる。なにより特集記事が素晴らしい。編集にはまったく経験のない学生が作っているとは、とても思えない。
聞けば、イヤーブックは毎年、3年生のマネジャーが中心になって編集しているそうだ。今年も3年生マネジャーの豊田早穂さんを中心に、7月から本格的に作業を始め、前期試験と並行して企画・取材・執筆・編集・校正作業を進めている。秋のシーズンに間に合わせるためには、本当はもう少し早い時期から作業をスタートさせた方が、工程にゆとりが持てるのだが、春のシーズンの戦績を入れたり、対戦相手の分析をしたり、新入生メンバーがそろうのを待っていたりすると、どうしても本格的に作業できるのは7月からになるそうだ。
その作業が大変だ。まず200人もの部員の集合写真と個人写真を撮影しなければならない。幸い、カメラマンが手慣れた人なので、作業は流れるように進んでいくそうだが、今度はそれぞれにコメントをつけなければならない。パートごとの写真を撮り、その紹介も選手自身が書くのである。
呼び物の特集記事は、特別に力が入る。相手に依頼するだけで集まる原稿ならともかく、自分で取材し、執筆するのは大変だ。僕のようにそれを職業としている者にとっても気の重い作業なのに、編集も取材もほとんど経験のない学生にとっては、気の遠くなるような重圧がかかるだろう。
しかし、さすがはファイターズのメンバーである。そんな重圧をまったく感じさせないような物語を綴っている。
先日、編集作業中の記事を2本、校正段階で読ませていただいたが、それぞれに素晴らしい出来栄えだった。一つは昨年のチームの一員が書いた「挑戦への軌跡~2007年のシーズンを振り返って~」。筆者名は、イヤーブックを購入されてからのお楽しみとして伏せておくが、このホームページに連載され、衝撃を与えた小野宏コーチの「爆発(explosion)~史上最高のパスゲーム~」の向こうを張ったような中身の濃い力作である。
もう1本が「QBファクトリー」の物語。ファイターズがこの10年ほどの間に送り出し、いまも社会人の第一線でプレーしている名QB6人(名前は、読んでからのお楽しみ)に、豊田さんが直接インタビューしてまとめた読み物である。これまたファイターズのファンには、よだれの出るような企画であり、彼らが活躍した当時を思い出しながら読むと、なおさら興趣がつのるはずだ。
これらの記事を読ませてもらいながら、こういう特集をまとめ、質の高いイヤーブックが発行できる理由はなぜか、と考えた。答えはファイターズというチームに求められる。どういうことか。説明したい。
さきほど、イヤーブックは3年生マネジャーが中心になって作成していると書いた。しかし、それはあくまで「中心になっている」のであって、それをフォローする人たちが何人もいる。ディレクター補佐の宮本敬士氏や石割淳氏は、かつてマネジャー時代に編集に携わった経験があり、その経験を生かして現役のメンバーに適切な指導をしている。朝日新聞でスポーツ記者をしていた小野コーチも、特集記事については目を通し、専門家の目で助言をしている。写真スタッフである清水茂さんらの協力も大きい。
そういう、経験の蓄積と指導が惜しみなく注がれ、現役部員もそれに応えていくから、自ずと鍛えられる。「へなちょこ部員」が「ファイターズ」に成長していくのである。ホームページがリニューアルされて以来、営々と「マネジャーの日記」を綴ってくれた1昨年の神林琢己君、昨年の大石雅彦君の文章を読み直せば、それは納得していただけるだろう。そういう「成長する部員」がいるから、世間に「日本1」と自慢できる本もホームページも作れるのである。それがファイターズというチームである。
グラウンドで戦うのは選手である。けれども、彼らが存分に戦えるように育成するコーチやスタッフが充実していて、初めてチームは機能する。そのためには、兵站(へいたん)部門を充実させなければならないし、リクルート活動もがんばらなければならない。OBにも協力を仰がなければならないだろうし、大学当局の理解も不可欠だ。
そういうもろもろがどれ一つ欠けることなく機能して、初めてファイターズはファイターズになれるのである。ホームページを作る作業も、イヤーブックを編集する作業も同様である。というより、チームとして「日本1」を目指すのなら、ホームページもイヤーブックも「日本1」でなければならない、と僕は思うのである。
思わず力が入って、話が長くなったが、結論はこういうことである。
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