石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(6)ファイターズ・ファミリー
連休の第3フィールドは、先客万来。普段は仕事で顔の出せないOB連が次々と顔を見せ、防具を付けて後輩たちの練習台になっている。社会人リーグの現役で活躍しているメンバーもおり、日本を代表するプレーを披露してくれる選手もいる。
5日の「子どもの日」も、2001年度卒業の石田力哉氏や08年度卒の早川悠真氏らが顔を見せ、練習に入って、軽快な動きを見せていた。富士通で現役選手としてプレーしている08年度卒の藤本浩貴氏の元気な顔にも出会い、少しばかり言葉を交わした。
こうした懐かしいメンバーと顔を会わせて近況を聞き、現役選手の「手応え」について質問できるのは、このコラムを書いている筆者のささやかな特権。スポーツ推薦に備えて一緒に勉強してきた「塾長」と「塾生」ならではの深いつながりである。
石田氏は勤務先が大阪で、自宅が御影ということで、今季は休みのたびにグラウンドに顔を出している。かつて森栄市氏が務めていたサンデーコーチの役割を、自らが練習台になって務めているのである。この日はディフェンスのラインだけでなく、オフェンスのラインにも入って、後輩たちの当たりを受け止めていた。
その感想を聞く。
――ユニットとしては、そこそこ動けますけど、1対1の当たりがまだまだですね。当たって相手を崩す、そこで主導権を握るというのがアメフットの基本。その点で、まだ物足りないものがあります。そこそこ動けるメンバーがそろっているので、これからが楽しみですね。
――下級生に楽しみな子が多いですね。当たれる子もいますし。しっかり鍛えていけば、ぐんと成長しますよ。
――今年は1年生がいいですね。体がデカい子が大いし、動けます。まだまだ未熟ですけど、これから体を作り、鍛えていけば、楽しみです。
今年、社会人になって東京で勤務している早川氏とは、帰りの新幹線の時間を気にしながらの立ち話。近況を聞き、新チームについての論評を聞く。
――昨年も5年生コーチとして、練習を見てきましたが、今年は下級生が楽しみですね。体に恵まれた選手が多く、動きもよい。秋には何人かがスタメンで出てくるでしょう。
――4年生がもっと存在感を出さないと。うかうかしていたら、後輩に追い抜かれてしまいますよ。
二人とも、防具を着用して、実際にプレーした結果の発言である。口をそろえて下級生を評価していたが、逆にいえば上級生のプレーにもどかしさを感じ、さらなる奮起を促していたのかもしれない。
OBの指導について、小野コーチがこんな話をしてくれた。連休中に指導にきてくれた02年度卒のQB、尾崎陽介氏の話である。彼は、ファイターズがライスボウルで勝ったときの3年生エースQB。いまも鹿島で現役のプレーヤーとして活躍している。
彼が50ヤードの距離からレシーバーに向かってパスを投げると、いつも正確に目標に到達する。ところがファイターズの現役選手が投げると、距離は十分だが、コントロールにばらつきが出る。50ヤードのパスといえば、ある程度はコントロールが乱れても仕方がない、それは誤差の内、と思っていた現役選手たちにとっては、目の前でしっかりコントロールされたパスを投げ続けるQBがいること自体が驚きだったのだろう。
小野コーチは「尾崎の高いレベルを目の当たりにして、QBが一気に覚醒しました。自分たちの到達しなければならない目標が、尾崎というプレーヤーを通して具体的に見えたことで、目の色が違ってきたのです。こういうプレーを見せてもらえただけでも、OBがきてくれる効果があります」と喜ぶ。
ファイターズについて、ファミリーという言葉がよく使われる。それは卒業生を含めて先輩と後輩の垣根が低く、家庭的な雰囲気があるという意味で使われることが多い。後輩の就職活動に対するOBの方々の「面倒見のよさ」一つとっても、それはいまも連綿として受け継がれている。
けれどももう一つ。僕は卒業生の方々が現役選手に気軽に自らのプレーヤーとして手にした資産・技術を惜しげもなく伝授してくれるその雰囲気のよさに「ファミリー」と呼ばれる由縁があるのではないかと考える。グラウンドに気軽に顔を出し、後輩たちに胸を貸している先輩たちと、それを快く受け入れて上達の糧にしている監督やコーチ、選手たちの姿を見て、そんな感想を持った。
5日の「子どもの日」も、2001年度卒業の石田力哉氏や08年度卒の早川悠真氏らが顔を見せ、練習に入って、軽快な動きを見せていた。富士通で現役選手としてプレーしている08年度卒の藤本浩貴氏の元気な顔にも出会い、少しばかり言葉を交わした。
こうした懐かしいメンバーと顔を会わせて近況を聞き、現役選手の「手応え」について質問できるのは、このコラムを書いている筆者のささやかな特権。スポーツ推薦に備えて一緒に勉強してきた「塾長」と「塾生」ならではの深いつながりである。
石田氏は勤務先が大阪で、自宅が御影ということで、今季は休みのたびにグラウンドに顔を出している。かつて森栄市氏が務めていたサンデーコーチの役割を、自らが練習台になって務めているのである。この日はディフェンスのラインだけでなく、オフェンスのラインにも入って、後輩たちの当たりを受け止めていた。
その感想を聞く。
――ユニットとしては、そこそこ動けますけど、1対1の当たりがまだまだですね。当たって相手を崩す、そこで主導権を握るというのがアメフットの基本。その点で、まだ物足りないものがあります。そこそこ動けるメンバーがそろっているので、これからが楽しみですね。
――下級生に楽しみな子が多いですね。当たれる子もいますし。しっかり鍛えていけば、ぐんと成長しますよ。
――今年は1年生がいいですね。体がデカい子が大いし、動けます。まだまだ未熟ですけど、これから体を作り、鍛えていけば、楽しみです。
今年、社会人になって東京で勤務している早川氏とは、帰りの新幹線の時間を気にしながらの立ち話。近況を聞き、新チームについての論評を聞く。
――昨年も5年生コーチとして、練習を見てきましたが、今年は下級生が楽しみですね。体に恵まれた選手が多く、動きもよい。秋には何人かがスタメンで出てくるでしょう。
――4年生がもっと存在感を出さないと。うかうかしていたら、後輩に追い抜かれてしまいますよ。
二人とも、防具を着用して、実際にプレーした結果の発言である。口をそろえて下級生を評価していたが、逆にいえば上級生のプレーにもどかしさを感じ、さらなる奮起を促していたのかもしれない。
OBの指導について、小野コーチがこんな話をしてくれた。連休中に指導にきてくれた02年度卒のQB、尾崎陽介氏の話である。彼は、ファイターズがライスボウルで勝ったときの3年生エースQB。いまも鹿島で現役のプレーヤーとして活躍している。
彼が50ヤードの距離からレシーバーに向かってパスを投げると、いつも正確に目標に到達する。ところがファイターズの現役選手が投げると、距離は十分だが、コントロールにばらつきが出る。50ヤードのパスといえば、ある程度はコントロールが乱れても仕方がない、それは誤差の内、と思っていた現役選手たちにとっては、目の前でしっかりコントロールされたパスを投げ続けるQBがいること自体が驚きだったのだろう。
小野コーチは「尾崎の高いレベルを目の当たりにして、QBが一気に覚醒しました。自分たちの到達しなければならない目標が、尾崎というプレーヤーを通して具体的に見えたことで、目の色が違ってきたのです。こういうプレーを見せてもらえただけでも、OBがきてくれる効果があります」と喜ぶ。
ファイターズについて、ファミリーという言葉がよく使われる。それは卒業生を含めて先輩と後輩の垣根が低く、家庭的な雰囲気があるという意味で使われることが多い。後輩の就職活動に対するOBの方々の「面倒見のよさ」一つとっても、それはいまも連綿として受け継がれている。
けれどももう一つ。僕は卒業生の方々が現役選手に気軽に自らのプレーヤーとして手にした資産・技術を惜しげもなく伝授してくれるその雰囲気のよさに「ファミリー」と呼ばれる由縁があるのではないかと考える。グラウンドに気軽に顔を出し、後輩たちに胸を貸している先輩たちと、それを快く受け入れて上達の糧にしている監督やコーチ、選手たちの姿を見て、そんな感想を持った。
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