石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(18)試合が育ててくれる
9月7日午後6時15分。エキスポ・フィールドの空には、まだ夕焼けの雲が残り、半月がかかっている。その月に向かってキッカー松本が高々とボールを蹴り上げ、2008年ファイターズの戦いはスタートした。
待ちに待った開幕である。試合の始まる3時間も前にスタンドに着くと、関学の応援席になっているバックスタンドはほぼ満員。もちろん、一つ前の近大-京大戦を見に来たファンが多いのだが、よく見ると、ファイターズファンもあちこちに陣取っている。ギャングスターの応援席にいながら、まるで試合に集中していないから、すぐに「あれはファイターズの人たち」と分かるのである。
早くからスタジアムに来ると、練習前の選手たちの表情が手に取るように分かる。入り口付近で人を待っていると、練習開始を待ちかねた選手たちが次々に通る。ヘルメットを手にして歩く選手たちに声をかけると、彼らの「いよいよシーズンイン」というワクワクする気持ちと、初戦を迎える緊張感がひしひしと伝わってくる。
マネジャーからメンバー表をもらい、スタメンを確かめる。同時にこの試合に登録されているメンバーを一人一人確認する。思いのほか1年生が多い。背番号の若い順にK大西、RB松岡、LB辻本(以上、高等部)、DB香山(崇徳)、OL谷山(関西大倉)、OL濱本(箕面)、LB土橋(関西大倉)、DL長島(佼成学園)、片岡、好川、和田、飯田(以上、高等部)、佐藤、東元(以上関西大倉)の14人もいる。
秋の初戦から登録されるというのは、それだけ期待されているという証拠である。練習などで、彼らが元気に動いている姿を見ているから、僕も彼らが登場するところを想像してワクワクする。
試合が始まる。同志社の最初の攻撃。QBが投じたパスをLB古下がカット、大きく跳ね上がったボールをDB三木がキャッチする。いきなりのターンオーバーで、ファイターズは一気に流れをつかむ。
敵陣25ヤード付近でつかんだこの好機に、RB稲毛とRB河原が立て続けにロングゲインを奪い、たちまちタッチダウン(TD)に結びつける。攻守とも、文句の付けようのない鮮やかな立ち上がりだった。
その後も、坂戸や徳井のインターセプトで同志社の攻撃をしのぎ、松本のフィールドゴール(FG)や1年ぶりにグラウンドに立ったRB石田のダイブプレーでTDを奪って、前半を17-0で折り返す。
後半は、ファイターズのレシーブ。RB稲毛の好リターンで攻撃が始まる。RB河原の好走でダウンを更新した後、QB加納がWR柴田とWR松原に立て続けに長いパスを決め、たった3プレーでゴール前4ヤードに迫る。仕上げはWR太田のラン。わずか4プレー。あっという間のTDだった。ベンチに戻る加納の笑顔が「納得のいくシリーズ」だったことを正直に物語っている。
24-0となってベンチに余裕が出たのか、次の攻撃シリーズからは、次々に新しいメンバーを送り込む。QBには期待の2年生加藤が登場。登録メンバーに名前を連ねた1年生の谷山や大西、濱本、長島、松岡らも次々に登場してグラウンドを駆け回る。
けれども、相手は一軍のメンバー。なかなか練習通りのプレーはさせてもらえない。ボールをスナップした一瞬の隙をつかれたり、思い通りに相手をブロックできなかったりで、攻守ともどんどん手詰まりになっていく。
春の試合から登場し、余裕のプレーを続けていたQB加藤も、初めての公式戦に臨む緊張感が隠せない。スタンドからわき上がる大歓声に勝手が違ったのかもしれない。練習ではやすやすと通しているパスがなかなか決まらない。せっかく投げても短かったり投げるのをためらったり。日ごろの練習で快調に投げている彼を知っている人間としては「おいおい、何を怖がってんねん」というところである。
しかし、これが公式戦である。相手が本気になって倒しにくる、時には反則まがいのプレーも辞さない、という局面で経験を積んでいかないと、なかなか普段通りのプレーはできない。相手が目の色を変えてぶつかってくる試合。絶対に負けることが許されない試合こそが、仲間内の練習だけでは乗り越えられない試練を与えてくれる。試合が人を育てるのである。
その試練を乗り越え、経験を積んで、初めてフレッシュマンもファイターズの一員になれるのである。
その意味で、試合経験の少ない下級生にとっては、極めてありがたい試合だったと思う。この日の「屈辱」を胸に刻み、それを乗り越えて本当に戦える力を養ってもらいたい。
待ちに待った開幕である。試合の始まる3時間も前にスタンドに着くと、関学の応援席になっているバックスタンドはほぼ満員。もちろん、一つ前の近大-京大戦を見に来たファンが多いのだが、よく見ると、ファイターズファンもあちこちに陣取っている。ギャングスターの応援席にいながら、まるで試合に集中していないから、すぐに「あれはファイターズの人たち」と分かるのである。
早くからスタジアムに来ると、練習前の選手たちの表情が手に取るように分かる。入り口付近で人を待っていると、練習開始を待ちかねた選手たちが次々に通る。ヘルメットを手にして歩く選手たちに声をかけると、彼らの「いよいよシーズンイン」というワクワクする気持ちと、初戦を迎える緊張感がひしひしと伝わってくる。
マネジャーからメンバー表をもらい、スタメンを確かめる。同時にこの試合に登録されているメンバーを一人一人確認する。思いのほか1年生が多い。背番号の若い順にK大西、RB松岡、LB辻本(以上、高等部)、DB香山(崇徳)、OL谷山(関西大倉)、OL濱本(箕面)、LB土橋(関西大倉)、DL長島(佼成学園)、片岡、好川、和田、飯田(以上、高等部)、佐藤、東元(以上関西大倉)の14人もいる。
秋の初戦から登録されるというのは、それだけ期待されているという証拠である。練習などで、彼らが元気に動いている姿を見ているから、僕も彼らが登場するところを想像してワクワクする。
試合が始まる。同志社の最初の攻撃。QBが投じたパスをLB古下がカット、大きく跳ね上がったボールをDB三木がキャッチする。いきなりのターンオーバーで、ファイターズは一気に流れをつかむ。
敵陣25ヤード付近でつかんだこの好機に、RB稲毛とRB河原が立て続けにロングゲインを奪い、たちまちタッチダウン(TD)に結びつける。攻守とも、文句の付けようのない鮮やかな立ち上がりだった。
その後も、坂戸や徳井のインターセプトで同志社の攻撃をしのぎ、松本のフィールドゴール(FG)や1年ぶりにグラウンドに立ったRB石田のダイブプレーでTDを奪って、前半を17-0で折り返す。
後半は、ファイターズのレシーブ。RB稲毛の好リターンで攻撃が始まる。RB河原の好走でダウンを更新した後、QB加納がWR柴田とWR松原に立て続けに長いパスを決め、たった3プレーでゴール前4ヤードに迫る。仕上げはWR太田のラン。わずか4プレー。あっという間のTDだった。ベンチに戻る加納の笑顔が「納得のいくシリーズ」だったことを正直に物語っている。
24-0となってベンチに余裕が出たのか、次の攻撃シリーズからは、次々に新しいメンバーを送り込む。QBには期待の2年生加藤が登場。登録メンバーに名前を連ねた1年生の谷山や大西、濱本、長島、松岡らも次々に登場してグラウンドを駆け回る。
けれども、相手は一軍のメンバー。なかなか練習通りのプレーはさせてもらえない。ボールをスナップした一瞬の隙をつかれたり、思い通りに相手をブロックできなかったりで、攻守ともどんどん手詰まりになっていく。
春の試合から登場し、余裕のプレーを続けていたQB加藤も、初めての公式戦に臨む緊張感が隠せない。スタンドからわき上がる大歓声に勝手が違ったのかもしれない。練習ではやすやすと通しているパスがなかなか決まらない。せっかく投げても短かったり投げるのをためらったり。日ごろの練習で快調に投げている彼を知っている人間としては「おいおい、何を怖がってんねん」というところである。
しかし、これが公式戦である。相手が本気になって倒しにくる、時には反則まがいのプレーも辞さない、という局面で経験を積んでいかないと、なかなか普段通りのプレーはできない。相手が目の色を変えてぶつかってくる試合。絶対に負けることが許されない試合こそが、仲間内の練習だけでは乗り越えられない試練を与えてくれる。試合が人を育てるのである。
その試練を乗り越え、経験を積んで、初めてフレッシュマンもファイターズの一員になれるのである。
その意味で、試合経験の少ない下級生にとっては、極めてありがたい試合だったと思う。この日の「屈辱」を胸に刻み、それを乗り越えて本当に戦える力を養ってもらいたい。
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