石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(6)「君の可能性」
最近、ファイターズの試合や練習を見るたびに、懐かしい先生の顔と、その著書のタイトルとなっている詩が浮かんでくる。すでに何度か書いたことがあるが、日曜日の試合を見て改めて記したくなった。
それは群馬県の小学校を舞台に、子どもを主役にした独自の教授法を展開し、教育界に大きな足跡を残された斎藤喜博先生(1911~1981)であり、その代表的な著書「君の可能性」(筑摩文庫)に収録されている「一つのこと」という次のような詩である。
一つのこと
いま終わる一つのこと
いま越える一つの山
風わたる草原
響きわたる心の歌
桑の海光る雲
人は続き道は続く
遠い道はるかな道
明日のぼる山もみさだめ
いま終わる一つのこと
この詩の後に、先生自身の説明がある。
「この詩は、いま自分たちは、みんなと力をあわせて一つの仕事(学習)をやり終わった。それはちょうど一つの山にのぼったようなものである。山の上に立ってみると草原にはすずしい風が吹いている。そこに立つと、いっしょにのぼってきた人たちとしみじみ心が通い合うのを感じる。そこから見ると、はるか遠くに桑畑が海のように見え、雲が美しく光っている。そしていまのぼって来た道を、人が続いて登ってくるのが見える。自分たちはいま、一つの山を登り終わったが、目の前にはさらに高い山が見えている。こんどはあの山を登るのだ、という意味である」
「学校の学習は、こういうことを、みんなと力をあわせてつぎつぎとやっていくのである。(中略)そういうことがおもしろくて楽しくてならないように、クラス全体、学校全体で力を合わせて学習をしていくのである。学校での学習、クラスでの学習とはこういうものである。ひとりがよいものを出すことによって、それが他のみんなに影響し、より高いものになって自分のところへ返ってくるのである」
先生は群馬県伊勢崎市近郊の小規模な小学校(島小学校、境小学校)で校長を務め、その教育実践で教育界に知られた教育者である。小学校長を定年で退職された後、宮城教育大学から招かれ、教育学の教授としても活躍された。その教育実践の成果を数多くの著作にまとめ、全集も出版されている。土屋文明に師事した歌人としても知られている。
僕は1970年12月、信濃毎日新聞から朝日新聞に移って前橋支局に勤務。前橋市政と文化欄を担当した時に「上毛歌壇」の選者をされていた先生とのご縁が生まれた。ほんの半年ほどの間だったが、その間、10回近くご自宅を訪問し、先生が主宰される教授学の勉強会に参加したり、個人的に指導を受けたりしてきた。
そうしたこともあって、この詩の意味することは十分に理解できたし、新聞記者としても、この詩にあるように、一つの山を登るごとに、新たな山にチャレンジしていこうと胸に刻んで生きてきた。
長い前書きとなったが、いま、ファイターズの諸君が日々取り組んでいることも全く同様であろう。日々、自らに課題を与え、それを一つ一つクリアしていく。階段を一つ上がったら、また異なる景色が見え、そこから新たな目標が生まれる。それを一つ一つクリアしていくことで、気がつけば当初は想像も付かなかった景色が見えてくる。それを仲間と励まし合い、競いながら達成していく。
その繰り返し。日々の練習ではその成果が見えなくても、いざ、ライバルと対峙したときに、その間の努力と頑張りが生きてくる。
ファイターズでの活動とは、いわば、その景色を見るための活動と断定してもよいのではないか。両親から頂いた才能、身体能力だけではなく、自らが意図して成長し、仲間もまた成長させる。
毎年、力のある4年生が卒業しても、新しい年には新たな戦士を育て、育って行く。常に新たな目標に向かって、全員が努力を重ねる。その積み重ねにこそファイターズの魅力がある。
関西大、立命館大という力のあるチームを相手に、新鮮なメンバーで戦い抜いた今季のファイターズに接して、僕はそんな思いを深くしている。
それは群馬県の小学校を舞台に、子どもを主役にした独自の教授法を展開し、教育界に大きな足跡を残された斎藤喜博先生(1911~1981)であり、その代表的な著書「君の可能性」(筑摩文庫)に収録されている「一つのこと」という次のような詩である。
一つのこと
いま終わる一つのこと
いま越える一つの山
風わたる草原
響きわたる心の歌
桑の海光る雲
人は続き道は続く
遠い道はるかな道
明日のぼる山もみさだめ
いま終わる一つのこと
この詩の後に、先生自身の説明がある。
「この詩は、いま自分たちは、みんなと力をあわせて一つの仕事(学習)をやり終わった。それはちょうど一つの山にのぼったようなものである。山の上に立ってみると草原にはすずしい風が吹いている。そこに立つと、いっしょにのぼってきた人たちとしみじみ心が通い合うのを感じる。そこから見ると、はるか遠くに桑畑が海のように見え、雲が美しく光っている。そしていまのぼって来た道を、人が続いて登ってくるのが見える。自分たちはいま、一つの山を登り終わったが、目の前にはさらに高い山が見えている。こんどはあの山を登るのだ、という意味である」
「学校の学習は、こういうことを、みんなと力をあわせてつぎつぎとやっていくのである。(中略)そういうことがおもしろくて楽しくてならないように、クラス全体、学校全体で力を合わせて学習をしていくのである。学校での学習、クラスでの学習とはこういうものである。ひとりがよいものを出すことによって、それが他のみんなに影響し、より高いものになって自分のところへ返ってくるのである」
先生は群馬県伊勢崎市近郊の小規模な小学校(島小学校、境小学校)で校長を務め、その教育実践で教育界に知られた教育者である。小学校長を定年で退職された後、宮城教育大学から招かれ、教育学の教授としても活躍された。その教育実践の成果を数多くの著作にまとめ、全集も出版されている。土屋文明に師事した歌人としても知られている。
僕は1970年12月、信濃毎日新聞から朝日新聞に移って前橋支局に勤務。前橋市政と文化欄を担当した時に「上毛歌壇」の選者をされていた先生とのご縁が生まれた。ほんの半年ほどの間だったが、その間、10回近くご自宅を訪問し、先生が主宰される教授学の勉強会に参加したり、個人的に指導を受けたりしてきた。
そうしたこともあって、この詩の意味することは十分に理解できたし、新聞記者としても、この詩にあるように、一つの山を登るごとに、新たな山にチャレンジしていこうと胸に刻んで生きてきた。
長い前書きとなったが、いま、ファイターズの諸君が日々取り組んでいることも全く同様であろう。日々、自らに課題を与え、それを一つ一つクリアしていく。階段を一つ上がったら、また異なる景色が見え、そこから新たな目標が生まれる。それを一つ一つクリアしていくことで、気がつけば当初は想像も付かなかった景色が見えてくる。それを仲間と励まし合い、競いながら達成していく。
その繰り返し。日々の練習ではその成果が見えなくても、いざ、ライバルと対峙したときに、その間の努力と頑張りが生きてくる。
ファイターズでの活動とは、いわば、その景色を見るための活動と断定してもよいのではないか。両親から頂いた才能、身体能力だけではなく、自らが意図して成長し、仲間もまた成長させる。
毎年、力のある4年生が卒業しても、新しい年には新たな戦士を育て、育って行く。常に新たな目標に向かって、全員が努力を重ねる。その積み重ねにこそファイターズの魅力がある。
関西大、立命館大という力のあるチームを相手に、新鮮なメンバーで戦い抜いた今季のファイターズに接して、僕はそんな思いを深くしている。
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記事タイトル:(6)「君の可能性」
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