石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

(17)充実した時間

投稿日時:2023/12/11(月) 21:02rss

 今、日本の学生フットボール界において、一番充実した時間を過ごしているのは、東の法政、西の関西学院であろう。双方共に、17日に阪神甲子園球場で開催される甲子園ボウルに向けて懸命に努力し、目的を持った練習に励んでいるからだ。
 今季のファイターズは、関西学生リーグ最終戦で関西大学に敗れた。その結果、先にリーグ戦を終えていた立命館とあわせ、三校がいずれも6勝1敗で優勝を分け合うことになった。試合後の抽選で甲子園ボウルへの出場権を手にしたのがファイターズ。当然、出場権を逃がしたライバルチームの思いも背負って戦わなけれればならない立場にある。
 そういう条件下、師走に入っても関西では唯一、大学王者になるべく「目的を持った時間」を過ごし、「目的を持った練習」に励んでいるのがファイターズである。私の記憶している限りでは、少なくとも5連覇を成し遂げた昨年までのチームは、この期間にさらなる技術を身に付け、新たなパワーを手にして、甲子園ボウルに臨んでいた。とりわけ4年生は毎年、関西リーグで勝ち続けた喜びを一端、棚に上げ、自分たちだけにに与えられた「戦うための時間」を、より有意義に過ごそうと、懸命に取り組んでいた。
 別の言い方をすれば、こうした「特別な時間」を与えられた喜びを力に変え、チームが一致結束して戦ったからこそ、それぞれの年次のチームが賜杯を手にし、5連覇という結果を呼び込んだのだろう。
 さて、今季のチームはどうか。ライバルチームの面々が今季を終了し、来季への準備をしているこの時期に、関西では唯一許された大学王者への挑戦が出来る「特別な時間」を有効に使えているだろうか。関西リーグで見えた欠点や弱点を克服するために、さらなる努力を重ねているだろうか。
 とりわけ4年生にとっては、文字通り今度の試合が最後になる。その試合を悔いなく戦うための準備はできているか。主将や副将だけでなく、それぞれのパートに責任を持つリーダーやプレーヤー。さらにはスタッフも含めて「学生日本一」と呼ばれるにふさわしい行動を重ねているか。
 下級生もまた、4年生を助けてチームの底上げを果たす役割を果たさなければならない。スタッフを含め、チームで活動する全員が懸命に働き、チームの底上げに貢献していかなければならない。
 そういう貴重な期間がこの3週間であり、その間の活動を通じてチームに新たな「伸びしろ」が生まれる。過去、勝ち続けてきたチームは、そういう「ライバルたちが持てない時間」を生かし切ったからこそ5年連続で学生王者の座に着くことができた。僕はそう考えている。
 さて、残すところあと数日。その間に甲子園練習もあるから、自分たちだけが他者の目を気にせず、存分に練習できる時間は限られている。監督やコーチから指摘されるから頑張る、ではなく、自分たちが勝ちたいから、もう一段階上を目指した練習に励む。それが出来るのがファイターズの選手であり、スタッフであるはずだ。
 残された時間は短い。それを有意義に使って準備を進めてもらいたい。それは待ったなし、言い分けなしの時間でもある。
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