石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(3)学生のスポーツ活動
学生のスポーツ活動について考えるとき、いつも思い浮かぶ言葉がある。1946年に制定された日本学生野球憲章の前文である。
前文では、
「学生たることの自覚を基礎とし、学生たることを忘れてはわれらの学生野球は成り立ち得ない。勤勉と規律とはつねにわれらと共にあり、怠惰と放縦とに対しては不断に警戒されなければならない。元来野球はスポーツとしてそれ自身、意味と価値とを持つであろう。しかし学生野球としてはそれに止まらず、試合を通じてフェアの精神を体得すること、幸運にも驕らず、悲運にも屈せぬ明朗強靭な情意を涵養すること、いかなる艱難をも凌ぎうる強靭な身体を鍛錬すること、これこそ実にわれらの野球を導く理念でなければならない」と高らかに宣言している。
野球をアメリカンフットボールという言葉に置き換えてみれば、ファイターズが目指す理念もまったくこの通りであると思う。
ここはファイターズのホームページではあるが、ことは学生スポーツに共通する問題なので、いましばらく、学生野球憲章の話におつきあい願いたい。
今年4月に改正、施行された新しい日本学生野球憲章は、1946年の憲章に盛り込まれたこの理念を引き継ぎつつ、冒頭に「国民が等しく教育を受ける権利を持つことは憲法が保障するところであり、学生野球は、この権利を実現すべき学校教育の一環として位置づけられる。この意味で、学生野球は経済的な対価を求めず、心と身体を鍛える場である」と説く。そして、この「教育を受ける権利」を前提とした「教育の一環としての学生野球」という基本的理念に即して、具体的な憲章の条文を構成しているのである。
憲章がここまで「教育を受ける権利」を強調し、「教育の一環としての学生野球」にこだわるのは、学生野球を取り巻く現実が、この理念からかけ離れて見えるからである。
例えば東京六大学の構成員であるある名門チームにこんなエピソードがある。その大学の野球部OB会名簿は数年前まで、入学年次で表記されていたそうだ。ライバルチームの名簿は卒業年次でまとめてあるのにどうしたことかといぶかしく思ったその大学の当時の総長は、その理由に思い当たった瞬間、顔から火が出るほど恥ずかしい思いをしたという。
つまり、その大学では、入学はしたけれども、まともに授業も受けず、単位をとれないまま卒業できない部員が多いから、卒業生名簿にすると、部員の全体像が把握できない。従って全員の名前が把握できる「入学年次」で名簿を作っていたというのだ。
そのことに思い至った総長は「総長として、こんなに恥ずかしいことはない。これは自分の責任として、学生に教育を受ける機会を保障し、きちんと卒業させなければならないと思いました」と話された。
このエピソードに、伝聞や推測は何一つまじっていない。直接、ご本人の口から伺った話である。
ことは、この名門大学野球部に限らない。似たような例は他の大学、他の競技にもあるのではないか。
幸いファイターズは、練習時間を工夫し、少なくとも4時限までは授業に出席できるように配慮している。週に1度は練習のない日を設けて、学生生活を豊かにする工夫もしている。
もちろん厳しい練習やトレーニング、ミーティングなどが日々組まれているから勉学とクラブ活動の両立は簡単ではない。留年する者もいる。しかし、単位が十分に取れていない部員には、特別の対策もとられている。
鳥内監督をはじめ、コーチやスタッフも全員、部員をフットボール選手として鍛えると同時に、よき社会人として卒業させなければならないという信念に基いて部を運営されている。
これは、学生スポーツとして当然のことである。
だからこそ、ファイターズの諸君には、しっかり勉学に励み、その上で日本1になってほしいのである。学生スポーツのあるべき姿を諸君の行動で表現してほしいのである。
僕がファイターズを懸命に応援する、これが最大の理由である。
前文では、
「学生たることの自覚を基礎とし、学生たることを忘れてはわれらの学生野球は成り立ち得ない。勤勉と規律とはつねにわれらと共にあり、怠惰と放縦とに対しては不断に警戒されなければならない。元来野球はスポーツとしてそれ自身、意味と価値とを持つであろう。しかし学生野球としてはそれに止まらず、試合を通じてフェアの精神を体得すること、幸運にも驕らず、悲運にも屈せぬ明朗強靭な情意を涵養すること、いかなる艱難をも凌ぎうる強靭な身体を鍛錬すること、これこそ実にわれらの野球を導く理念でなければならない」と高らかに宣言している。
野球をアメリカンフットボールという言葉に置き換えてみれば、ファイターズが目指す理念もまったくこの通りであると思う。
ここはファイターズのホームページではあるが、ことは学生スポーツに共通する問題なので、いましばらく、学生野球憲章の話におつきあい願いたい。
今年4月に改正、施行された新しい日本学生野球憲章は、1946年の憲章に盛り込まれたこの理念を引き継ぎつつ、冒頭に「国民が等しく教育を受ける権利を持つことは憲法が保障するところであり、学生野球は、この権利を実現すべき学校教育の一環として位置づけられる。この意味で、学生野球は経済的な対価を求めず、心と身体を鍛える場である」と説く。そして、この「教育を受ける権利」を前提とした「教育の一環としての学生野球」という基本的理念に即して、具体的な憲章の条文を構成しているのである。
憲章がここまで「教育を受ける権利」を強調し、「教育の一環としての学生野球」にこだわるのは、学生野球を取り巻く現実が、この理念からかけ離れて見えるからである。
例えば東京六大学の構成員であるある名門チームにこんなエピソードがある。その大学の野球部OB会名簿は数年前まで、入学年次で表記されていたそうだ。ライバルチームの名簿は卒業年次でまとめてあるのにどうしたことかといぶかしく思ったその大学の当時の総長は、その理由に思い当たった瞬間、顔から火が出るほど恥ずかしい思いをしたという。
つまり、その大学では、入学はしたけれども、まともに授業も受けず、単位をとれないまま卒業できない部員が多いから、卒業生名簿にすると、部員の全体像が把握できない。従って全員の名前が把握できる「入学年次」で名簿を作っていたというのだ。
そのことに思い至った総長は「総長として、こんなに恥ずかしいことはない。これは自分の責任として、学生に教育を受ける機会を保障し、きちんと卒業させなければならないと思いました」と話された。
このエピソードに、伝聞や推測は何一つまじっていない。直接、ご本人の口から伺った話である。
ことは、この名門大学野球部に限らない。似たような例は他の大学、他の競技にもあるのではないか。
幸いファイターズは、練習時間を工夫し、少なくとも4時限までは授業に出席できるように配慮している。週に1度は練習のない日を設けて、学生生活を豊かにする工夫もしている。
もちろん厳しい練習やトレーニング、ミーティングなどが日々組まれているから勉学とクラブ活動の両立は簡単ではない。留年する者もいる。しかし、単位が十分に取れていない部員には、特別の対策もとられている。
鳥内監督をはじめ、コーチやスタッフも全員、部員をフットボール選手として鍛えると同時に、よき社会人として卒業させなければならないという信念に基いて部を運営されている。
これは、学生スポーツとして当然のことである。
だからこそ、ファイターズの諸君には、しっかり勉学に励み、その上で日本1になってほしいのである。学生スポーツのあるべき姿を諸君の行動で表現してほしいのである。
僕がファイターズを懸命に応援する、これが最大の理由である。
この記事は外部ブログを参照しています。すべて見るには下のリンクをクリックしてください。
記事タイトル:(3)学生のスポーツ活動
(ブログタイトル:石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」)
アーカイブ
- 2024年11月(3)
- 2024年10月(3)
- 2024年9月(3)
- 2024年6月(2)
- 2024年5月(3)
- 2024年4月(1)
- 2023年12月(3)
- 2023年11月(3)
- 2023年10月(4)
- 2023年9月(3)
- 2023年7月(1)
- 2023年6月(1)
- 2023年5月(3)
- 2023年4月(1)
- 2022年12月(2)
- 2022年11月(3)
- 2022年10月(3)
- 2022年9月(2)
- 2022年8月(1)
- 2022年7月(1)
- 2022年6月(2)
- 2022年5月(3)
- 2021年12月(3)
- 2021年11月(3)
- 2021年10月(4)
- 2021年1月(2)
- 2020年12月(3)
- 2020年11月(4)
- 2020年10月(4)
- 2020年9月(2)
- 2020年1月(3)
- 2019年12月(3)
- 2019年11月(3)
- 2019年10月(5)
- 2019年9月(4)
- 2019年8月(3)
- 2019年7月(2)
- 2019年6月(4)
- 2019年5月(4)
- 2019年4月(4)
- 2019年1月(1)
- 2018年12月(4)
- 2018年11月(4)
- 2018年10月(5)
- 2018年9月(3)
- 2018年8月(4)
- 2018年7月(2)
- 2018年6月(3)
- 2018年5月(4)
- 2018年4月(3)
- 2017年12月(3)
- 2017年11月(4)
- 2017年10月(3)
- 2017年9月(4)
- 2017年8月(4)
- 2017年7月(3)
- 2017年6月(4)
- 2017年5月(4)
- 2017年4月(4)
- 2017年1月(2)
- 2016年12月(4)
- 2016年11月(5)
- 2016年10月(3)
- 2016年9月(4)
- 2016年8月(4)
- 2016年7月(3)
- 2016年6月(2)
- 2016年5月(4)
- 2016年4月(4)
- 2015年12月(1)
- 2015年11月(4)
- 2015年10月(3)
- 2015年9月(5)
- 2015年8月(3)
- 2015年7月(5)
- 2015年6月(4)
- 2015年5月(2)
- 2015年4月(3)
- 2015年3月(3)
- 2015年1月(2)
- 2014年12月(4)
- 2014年11月(4)
- 2014年10月(4)
- 2014年9月(4)
- 2014年8月(4)
- 2014年7月(4)
- 2014年6月(4)
- 2014年5月(5)
- 2014年4月(4)
- 2014年1月(1)
- 2013年12月(5)
- 2013年11月(4)
- 2013年10月(5)
- 2013年9月(3)
- 2013年8月(3)
- 2013年7月(4)
- 2013年6月(4)
- 2013年5月(5)
- 2013年4月(4)
- 2013年1月(1)
- 2012年12月(4)
- 2012年11月(5)
- 2012年10月(4)
- 2012年9月(5)
- 2012年8月(4)
- 2012年7月(3)
- 2012年6月(3)
- 2012年5月(5)
- 2012年4月(4)
- 2012年1月(1)
- 2011年12月(5)
- 2011年11月(5)
- 2011年10月(4)
- 2011年9月(4)
- 2011年8月(3)
- 2011年7月(3)
- 2011年6月(4)
- 2011年5月(5)
- 2011年4月(4)
- 2010年12月(1)
- 2010年11月(4)
- 2010年10月(4)
- 2010年9月(4)
- 2010年8月(3)
- 2010年7月(2)
- 2010年6月(5)
- 2010年5月(3)
- 2010年4月(4)
- 2010年3月(1)
- 2009年11月(4)
- 2009年10月(4)
- 2009年9月(3)
- 2009年8月(4)
- 2009年7月(3)
- 2009年6月(4)
- 2009年5月(3)
- 2009年4月(4)
- 2009年3月(1)
- 2008年12月(1)
- 2008年11月(4)
- 2008年10月(3)
- 2008年9月(5)
- 2008年8月(2)
- 2008年4月(1)