石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(11)大学生の課外活動
前回のコラムは、次のような言葉で結んでいる。
「チームとしては苦しい戦いであったとしても、自分のプレーが通用するという自信を付けたメンバーもいるだろうし、自ら改善しなければならない点があることを体感した者もいるだろう」
「その気づきを個人として、またチームとして、どう止揚していくか。それを考え、明日の試合につなげ、実行していくのが、大学生が集団で取り組むスポーツの魅力であり、神髄であると僕は考えている」
どうしてこんなことを書いたのか。
一つはいま、あちこちの大学で、課外活動構成員の不祥事が次々と表面化しているからだ。指導という名を借りた下級生に対する暴力行為、薬物の不法所持や不法接種、女性に対する集団暴行事件……。ここ半年、1年ほどの間に大きく報じられた記事だけでも、その一端がうかがえる。
大学生の部活動だけではない。高校生の部活動でも、監督やコーチによる部員への私的制裁が後を絶たない。その一端は、日本高野連が定期的に公表している情報からでもうかがえる。
そんなニュースに接するたびに思い出すことがある。僕が現役記者時代、懇意にしており、後に日本高野連の理事としても席を同じくした、ある公立高校野球部指導者のことである。
彼はある日、こんな思い出話をして下さった。「僕も昔は熱血指導者。朝から晩まで高校生のことばかり考えていました。本気で怒った時はほっぺたを張り飛ばすし、言葉も荒くなる」「それでも、結果がついてこない。考えあぐねた末に、ふと思いついた。逆の発想で接したらどうか。そう思って、腹の立つときはニコニコ笑うようにしたのです」「ニコニコしながら、次は頑張れよ、期待してるで、と声を掛けるようにしたら、相手は『頑張ります』と答える。そんなことを繰り返しているうちに、チームの雰囲気も変わってくる。監督と選手の間に、目標を共有しているという実感が生まれてくる。そのご褒美が甲子園での優勝。選手が自ら目標を持って行動できるようにするだけで、優勝旗が手にできたのです。指導者としてこんなに嬉しいことはありませんでした」
これは、18歳未満の生徒を主役にした高校野球指導者の話である。大学生ともなれば、相手はもう大人である。自らが考え、互いに協力しあって、目標に向かって突き進んで行くのは当然だろう。
そういえば、ファイターズの前監督、鳥内さんも、こんな言葉をしばしば口にされていた。「ほんまに勝ちたいのは、お前らやろ。勝ちたいんやったら、勝てるようにチームをつくっていかなあかん。主役はお前らやで」
そのような考え方がチームに浸透し、4年生を中心に一丸となってお互いを高めあい、毎年、前年以上のチームをつくってきた歴史があるからこそ、手強い相手が立ちはだかるこの世界で勝ち続けているのだろう。
今年のチームも、そうした歴史の延長上にある。学生が主役となり、監督やコーチがそれを助ける。チームが一丸となって向上心を持ち、練習の成果を明日の試合につなげていく。
それが大学生が集団で取り組むスポーツの魅力であり、それを当たり前のこととして実行しているのがファイターズであろう。いつまでも応援したいチームであり続けるゆえんである。
「チームとしては苦しい戦いであったとしても、自分のプレーが通用するという自信を付けたメンバーもいるだろうし、自ら改善しなければならない点があることを体感した者もいるだろう」
「その気づきを個人として、またチームとして、どう止揚していくか。それを考え、明日の試合につなげ、実行していくのが、大学生が集団で取り組むスポーツの魅力であり、神髄であると僕は考えている」
どうしてこんなことを書いたのか。
一つはいま、あちこちの大学で、課外活動構成員の不祥事が次々と表面化しているからだ。指導という名を借りた下級生に対する暴力行為、薬物の不法所持や不法接種、女性に対する集団暴行事件……。ここ半年、1年ほどの間に大きく報じられた記事だけでも、その一端がうかがえる。
大学生の部活動だけではない。高校生の部活動でも、監督やコーチによる部員への私的制裁が後を絶たない。その一端は、日本高野連が定期的に公表している情報からでもうかがえる。
そんなニュースに接するたびに思い出すことがある。僕が現役記者時代、懇意にしており、後に日本高野連の理事としても席を同じくした、ある公立高校野球部指導者のことである。
彼はある日、こんな思い出話をして下さった。「僕も昔は熱血指導者。朝から晩まで高校生のことばかり考えていました。本気で怒った時はほっぺたを張り飛ばすし、言葉も荒くなる」「それでも、結果がついてこない。考えあぐねた末に、ふと思いついた。逆の発想で接したらどうか。そう思って、腹の立つときはニコニコ笑うようにしたのです」「ニコニコしながら、次は頑張れよ、期待してるで、と声を掛けるようにしたら、相手は『頑張ります』と答える。そんなことを繰り返しているうちに、チームの雰囲気も変わってくる。監督と選手の間に、目標を共有しているという実感が生まれてくる。そのご褒美が甲子園での優勝。選手が自ら目標を持って行動できるようにするだけで、優勝旗が手にできたのです。指導者としてこんなに嬉しいことはありませんでした」
これは、18歳未満の生徒を主役にした高校野球指導者の話である。大学生ともなれば、相手はもう大人である。自らが考え、互いに協力しあって、目標に向かって突き進んで行くのは当然だろう。
そういえば、ファイターズの前監督、鳥内さんも、こんな言葉をしばしば口にされていた。「ほんまに勝ちたいのは、お前らやろ。勝ちたいんやったら、勝てるようにチームをつくっていかなあかん。主役はお前らやで」
そのような考え方がチームに浸透し、4年生を中心に一丸となってお互いを高めあい、毎年、前年以上のチームをつくってきた歴史があるからこそ、手強い相手が立ちはだかるこの世界で勝ち続けているのだろう。
今年のチームも、そうした歴史の延長上にある。学生が主役となり、監督やコーチがそれを助ける。チームが一丸となって向上心を持ち、練習の成果を明日の試合につなげていく。
それが大学生が集団で取り組むスポーツの魅力であり、それを当たり前のこととして実行しているのがファイターズであろう。いつまでも応援したいチームであり続けるゆえんである。
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