石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(7)見所満載の初戦
待ちに待った2023年シーズンが開幕した。時は9月2日午後5時半、所はおなじみ神戸市の王子スタジアム。入場門が開かれるはるか前から開門を待つファンの列に並び、脳裡に選手の顔を描きながら、さて、今日はどんなメンバーが活躍してくれるだろうか、春の試合には縁のなかった新入生の中からどんなメンバーが頭角を現すのか。上ヶ原のグラウンドで、日に日に成長している1年生や2年生の中から、今日はどんなメンバーが登場し、どんな活躍を見せてくれるのか。
あれこれと考えているうちに、ようやく開門。まずはチームの小野ディレクターたちが場内限定で実況放送される放送席の隣に席を確保し、鳥内前監督からいただいた両チームのメンバー表に目を注ぐ。
1年生だけでも16人。2年生は24人。そこには春のシーズンから出場し、派手な活躍で注目された選手もいるが、試合会場で名前を見るのは初めてというメンバーもいる。昨年夏、スポーツ選抜入試の勉強会で縁のあった新入生だけでも、背番号の若い順にDBリンスコット・トバヤス(箕面自由)、同じく永井慎太郎(佼正学園)、北村翼(宝塚)、LB油谷壮馬、OL谷内史郎(箕面自由)、WR小段天響(大産大附)が名を連ねている。スポーツ選抜以外では、上ヶ原のグラウンドで、小段とともに突出した動きを見せていたWR百田真吾(啓明学院)の名前もあり、彼らがこの日、どんな動きを見せてくれるか、試合前から密かに注目していた。
午後5時半、キックオフ。先攻は龍谷。DB波田の素早いタックルなどで相手は全く陣地を進めることが出来ず、自陣ゴール前からパント。それをキャッチしたWR小段がナイスリターン。相手陣42ヤード付近からファイターズの攻撃が始まる。最初のプレーはQB星野からWR衣笠へのパスで17ヤード。次は星野のスクランブルで9ヤード、衣笠への短いパスでゴール前5ヤードと陣地を進め、仕上げはRB澤井が中央を走り抜けてTD。K大西のキックも決まって7-0。
攻撃がテンポ良く進めば、守備陣はさらに勢いづく。ライン戦で相手を押し込み、苦し紛れに相手が投じたパスをDB山村がインターセプト。相手陣38ヤード付近から再びファイターズの攻撃が始まる。ここでも星野とレシーバー陣との呼吸はぴったり。まずはWR鈴木が短いパスを受けて走り、ゴール前28ヤード。次は星野のスクランブルで陣地を稼ぎ、仕上げはRB伊丹が9ヤードを走り抜けて2本目のTD。リードを広げる。
守備のラインが終始、相手を押し込んでいるから、相手の攻撃は進まない。その結果、相手は自陣奥深くで釘付けになるから、余計にプレーの選択肢が限られる。第4ダウンでパントを蹴っても、ハーフライン付近までしか届かないという状態に陥る。
そんな状況で迎えたファイターズ3度目のの攻撃は相手陣43ヤード付近から。そこでQB星野からWR小段へのパスが決まりTD。21-0とリードを広げる。
相手攻撃を完封した守備陣の活躍で、次の攻撃シリーズも相手陣41ヤードから。まずはRB前島が21ヤードを走り、QB星野のキープを挟んで、星野からWR衣笠へミドルパスを投じてTD。わずか3プレーで28-0。
こうなると、試合経験の少ないメンバー、本番になると緊張して力が出し切れない選手にもゆとりが出てくる。逆に、相手の集中度は下がってくる。相手は、攻守とも苦しいプレーを余儀なくされているのに、ファイターズは下級生や交代メンバーが伸び伸びとプレーする。
相手QBが自陣10ヤード付近から投じたパスをDB杉本が確保し、攻守交代。相手陣41ヤード付近でファイターズの攻撃となり、それを機にQBが星野から鎌田に交代。その第1プレーでWR鈴木に短いパスを通して気持ちを落ち着かせると、次はWR小段へ長いパスを投じてTD。わずか2プレーでさらにリードを広げる。
続く相手の攻撃を守備陣が簡単に封じた後、ファイターズの攻撃は相手陣40ヤードから。鎌田は、ここでも立て続けに短いパスを2本通してダウンを更新。相手ゴールまで23ヤードと迫ったところで、エースRB前島に短いパスを通し、それを確保した前島がゴールまで走りきってTD。この二つの攻撃シリーズ。登場したばかりの鎌田は、都合5プレーで2本のTDを挙げた。
昨秋から今季の前半、思い通りにパスが通らず、後輩の星野にスターターの地位を奪われてきた4年生QB鎌田。最後の秋の初戦で見違えるような切れの良い動きを見せた彼を見て、僕はある種の感動を覚えた。
もちろん、前半で大差が付き、相手の戦意が落ちたときのプレーである。彼ほどの才能を持ったプレーヤーにとっては、出来て当たり前、というプレーだったかもしれない。けれども、昨秋から今春、試合でも練習でも、もう一つ物足りないプレーを繰り返し、もがき続ける彼の姿を見続けてきた私にとっては、「これが鎌田だ、本来の姿だ」と、思わず叫びたくなるようなプレーだった。
4年生の秋。初戦で披露してくれた彼の姿が本物であって欲しい。立命や関大などとの厳しい戦いでも、彼の才能が存分に発揮されることを願っている。
追記
この日の試合では、WRやDBを中心に下級生たちの活躍も目立った。彼らのことは、次の機会に書かせていただきます。
あれこれと考えているうちに、ようやく開門。まずはチームの小野ディレクターたちが場内限定で実況放送される放送席の隣に席を確保し、鳥内前監督からいただいた両チームのメンバー表に目を注ぐ。
1年生だけでも16人。2年生は24人。そこには春のシーズンから出場し、派手な活躍で注目された選手もいるが、試合会場で名前を見るのは初めてというメンバーもいる。昨年夏、スポーツ選抜入試の勉強会で縁のあった新入生だけでも、背番号の若い順にDBリンスコット・トバヤス(箕面自由)、同じく永井慎太郎(佼正学園)、北村翼(宝塚)、LB油谷壮馬、OL谷内史郎(箕面自由)、WR小段天響(大産大附)が名を連ねている。スポーツ選抜以外では、上ヶ原のグラウンドで、小段とともに突出した動きを見せていたWR百田真吾(啓明学院)の名前もあり、彼らがこの日、どんな動きを見せてくれるか、試合前から密かに注目していた。
午後5時半、キックオフ。先攻は龍谷。DB波田の素早いタックルなどで相手は全く陣地を進めることが出来ず、自陣ゴール前からパント。それをキャッチしたWR小段がナイスリターン。相手陣42ヤード付近からファイターズの攻撃が始まる。最初のプレーはQB星野からWR衣笠へのパスで17ヤード。次は星野のスクランブルで9ヤード、衣笠への短いパスでゴール前5ヤードと陣地を進め、仕上げはRB澤井が中央を走り抜けてTD。K大西のキックも決まって7-0。
攻撃がテンポ良く進めば、守備陣はさらに勢いづく。ライン戦で相手を押し込み、苦し紛れに相手が投じたパスをDB山村がインターセプト。相手陣38ヤード付近から再びファイターズの攻撃が始まる。ここでも星野とレシーバー陣との呼吸はぴったり。まずはWR鈴木が短いパスを受けて走り、ゴール前28ヤード。次は星野のスクランブルで陣地を稼ぎ、仕上げはRB伊丹が9ヤードを走り抜けて2本目のTD。リードを広げる。
守備のラインが終始、相手を押し込んでいるから、相手の攻撃は進まない。その結果、相手は自陣奥深くで釘付けになるから、余計にプレーの選択肢が限られる。第4ダウンでパントを蹴っても、ハーフライン付近までしか届かないという状態に陥る。
そんな状況で迎えたファイターズ3度目のの攻撃は相手陣43ヤード付近から。そこでQB星野からWR小段へのパスが決まりTD。21-0とリードを広げる。
相手攻撃を完封した守備陣の活躍で、次の攻撃シリーズも相手陣41ヤードから。まずはRB前島が21ヤードを走り、QB星野のキープを挟んで、星野からWR衣笠へミドルパスを投じてTD。わずか3プレーで28-0。
こうなると、試合経験の少ないメンバー、本番になると緊張して力が出し切れない選手にもゆとりが出てくる。逆に、相手の集中度は下がってくる。相手は、攻守とも苦しいプレーを余儀なくされているのに、ファイターズは下級生や交代メンバーが伸び伸びとプレーする。
相手QBが自陣10ヤード付近から投じたパスをDB杉本が確保し、攻守交代。相手陣41ヤード付近でファイターズの攻撃となり、それを機にQBが星野から鎌田に交代。その第1プレーでWR鈴木に短いパスを通して気持ちを落ち着かせると、次はWR小段へ長いパスを投じてTD。わずか2プレーでさらにリードを広げる。
続く相手の攻撃を守備陣が簡単に封じた後、ファイターズの攻撃は相手陣40ヤードから。鎌田は、ここでも立て続けに短いパスを2本通してダウンを更新。相手ゴールまで23ヤードと迫ったところで、エースRB前島に短いパスを通し、それを確保した前島がゴールまで走りきってTD。この二つの攻撃シリーズ。登場したばかりの鎌田は、都合5プレーで2本のTDを挙げた。
昨秋から今季の前半、思い通りにパスが通らず、後輩の星野にスターターの地位を奪われてきた4年生QB鎌田。最後の秋の初戦で見違えるような切れの良い動きを見せた彼を見て、僕はある種の感動を覚えた。
もちろん、前半で大差が付き、相手の戦意が落ちたときのプレーである。彼ほどの才能を持ったプレーヤーにとっては、出来て当たり前、というプレーだったかもしれない。けれども、昨秋から今春、試合でも練習でも、もう一つ物足りないプレーを繰り返し、もがき続ける彼の姿を見続けてきた私にとっては、「これが鎌田だ、本来の姿だ」と、思わず叫びたくなるようなプレーだった。
4年生の秋。初戦で披露してくれた彼の姿が本物であって欲しい。立命や関大などとの厳しい戦いでも、彼の才能が存分に発揮されることを願っている。
追記
この日の試合では、WRやDBを中心に下級生たちの活躍も目立った。彼らのことは、次の機会に書かせていただきます。
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