石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

(5)爽やかな試合

投稿日時:2023/06/12(月) 23:08rss

 雨上がりの日曜日。11日の王子スタジアムは厚い雲に覆われていたが、目の前で展開される試合は爽やかそのもの。両軍メンバーのメリハリの効いた動きが心地よく、久々にフットボールの魅力を堪能させてもらった。
 迎える相手は立教大学。過去の記録を見ると、ファターズとは戦後間もなくから互いに勝ったり負けたりの好勝負を繰り広げてきたライバル校である。僕がフットボールに興味を持ったその昔、今は亡き米田先生からファイターズの歴史や草創期のエピソードの中に登場したチームだが、目の前で両校の対戦を見るのは初めてだ。
 試合前の練習を眺めながら、場内のFM放送を担当されている小野ディレクターから立教大の話を聞き、相手QBらの動きを見ているうちに「今日はなんだか、爽やかな好勝負になりそう」との予感がわいてきた。
 ファイターズのキック、立教のレシーブで試合開始。試合前の練習で予想した通り、相手QBの動きがよく、レシーバーとの呼吸も合っている。ランとパスを織り交ぜて立て続けにダウンを更新する。
 けれども、ファイターズ守備陣も負けてはいない。DL浅浦の力強い動きとLB永井の鋭いタックルで、相手の勢いを食い止める。
 好守交代。今度はファイターズがテンポのよい攻撃を展開する。起点になるのはQB星野。今季、力強さを増した伊丹や澤井らのRB陣を走らせ、合間に1年生の小段や4年生の鈴木らWR陣へ短いパスを投じる。そのテンポがよいから、反応の早い相手守備陣も対応が難しい。
 あっという間に第2Q。RB伊丹や澤井らが次々と走り、仕上げはK大西。30ヤードのFGをスパッと決めて先制する。
 それでも相手はくじけない。攻めてはQBが鋭いパスを投じ、守ってはDB陣がパスを奪い取る。ファイターズの守備陣もまた、少々攻め込まれても動じない。DL浅浦が素早い動きで相手キャリアを食い止め、漏れたところはLB海崎や永井が確実に仕留める。
 双方ともに守備陣が健闘し、互いに相手の長所を消し合って前半終了。
 後半になっても、双方共に果敢なプレーが続く。互いに相手の長所を潰し合い、双方共になかなか得点機会をつかめない。
 膠着した場面を打ち破ったのはQB星野の思い切りの良いラッシュ。ハーフライン付近から一気に20ヤードを走って陣地を挽回。続けて今度はWR鈴木へ29ヤードのパス。それが見事に決まって待望のTD。投げた方の思い切りが良かったし、キャッチした方の技術も素晴らしかった。日頃、上ヶ原のグラウンドで互いに会話を交わし、技術的なことも含めて意思疎通を重ねているからこそ、ここぞという場面で「あうんの呼吸TD」を決めることが出来たのだろう。
 似たような場面は、第4Qの半ばにも訪れる。DB山村のインターセプトでめぐってきたファイターズの攻撃。今度は星野が相手陣45ヤード付近からWR小段に5ヤードのパスを投じて陣地を進める。続くプレーも標的は小段。相手ゴールまでは40ヤードもあったが、ここで投じた星野の長いパスを小段がキャッチ。決定的な2本目のTDに仕上げた。
 これを「あうんの呼吸」というのだろう。星野と鈴木との関係にもいえることだが、普段の練習時からプレーごとに会話を重ね、互いに求め合い、気持ちを交わし合ってきたからこそ、本番でも絶妙のパスが投じられ、それを確実にキャッチできる。投げる方は2年生。受ける方は4年生と1年生。学年の違いを感じさせない双方の濃密な関係が生み出したTDといってもいい。
 それは守備陣にもいえる。この日の試合ではDLのメンバーが相手に襲いかかり、漏れてきたランナーはLBとDBが仕留める、という場面が何度も見られた。その結果としての零封である。素早い動きが持ち味の相手QBやRBに、あわや、という場面を何度も作られながら、相手を無得点に封じることが出来たのも、1列目、2列目、3列目の連携がうまく機能し続けたからだろう。
 アメフトは、攻守ともグラウンドに出ている11人全員が、それぞれ助け合い、励まし合って戦うスポーツだということが改めて確認できた。空は曇っても心は快晴。爽快な気持ちで帰路についた。
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