石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(2)ファイターズの「背骨」
「背骨」とは脊柱(せきちゅう)のことであり、岩波の国語辞典は「脊椎動物で、頭骨に続き、中軸となって体を支える仕組み」と説明している。これがしっかりしていることで、人間は立って歩けるようになり、他の動物とは比較にならないほど多くの知恵も獲得できたそうだ。
ファイターズにとっても事情は同じこと。「背骨」がしっかり通っていることで、チームのモラルは確立され、品格が生まれる。目指すべき目標は明確になり、その目標に向かう求心力も生まれてくる。
チームに寄り添って過ごしていると、そういう「背骨」の存在を実感する機会にちょくちょく遭遇する。
4月2日に行われた新チームの礼拝もそのひとつ。これはここ数年、新しい学年の最初の合同練習の日に行われるのが恒例。2003年の夏合宿で亡くなられた平郡雷太氏を偲ぶとともに、シーズンの始まりにあたって、部員全員が心を一つに祈る行事である。当初は、平郡君の記念樹と記念碑のある第3フィールドの高台で行っていたが、最近は部員の数が増えたため、グラウンドの中央で行われている。
チームの顧問であり、関西学院の宗教総主事でもあった前島宗甫先生がまず「あなた方の中で偉くなりたい者は、みなに仕える者になり、一番上になりたい者は、すべての人の僕(しもべ)になりなさい」という聖書の一節を読んで、次のような話をされた。
――平郡君は誰よりも熱心にアメフットを極めようとした求道者だった。諸君も求道者であってほしい。平郡君が体現したスピリットを継承し、それぞれの祈り、願い、志を持って、目標を成し遂げよう。
――新しいシーズンの開幕に当たって、もう一度「マスタリー・フォー・サービス」の意味を考えよう。この言葉は隣人・社会・世界に仕えるため、自らがマスターすなわち主人公になって自らを鍛えるという意味である。校歌にある「輝く自由」も、仕えることを選ぶ自由のことを意味しており、だからこそ輝くのである。練習、試合、すべての活動を通じて、自らが主人公となって「マスタリー・フォー・サービス」を習得できますように。
おおよそ、こういう話だった。ろくにメモもとらずに聞いていたので、細かい言い回しは違っているかもしれないが、先生の説かれる言葉は、しっかり胸にしみこんだ。聞いていた部員たちも「よーし、やったるぞ」と気合が入ったはずである。
前島先生を囲んでお祈りをする時間は、公式戦の試合前にも必ずある。試合前の練習終了後、キックオフまでのほんの短い時間だが、全員が急いで控室に戻り、そこで先生から心のこもった話を聞き、祈りを捧げる。全員の士気を鼓舞し、チームの結束を図り、戦いの準備を完了するのである。
儀式といえば儀式である。しかし、こういう極めてスピリチュアルな行為によってチームが一つになり、士気が高まるのも事実である。それは、チャペルの時間が生活にとけ込み、「マスタリー・フォー・サービス」というスクール・モットーがすべての構成員に共有されている関西学院だからこそ、の儀式である。そういう風土に根ざした儀式だからこそ、ファイターズの「背骨」として、チームの中軸を支えているのである。
こういう「背骨」を大切にしたい。
どのチームにとっても1日は24時間、1年は365日。練習に費やす時間は限られている。取り組みの内容も、ライバルと目されるチームは、それぞれが工夫を重ね、知恵を絞っている違いない。
同じように全力を尽くして取り組むのなら、優劣を分けるのは何か。そう考えてい
くと、チームの中軸を支える「背骨」の大切さが分かる。
お祈りの時間だけではない。品位を大切にする伝統、高いモラル、新しい戦術を導入する柔軟性、熱心なコーチ陣、スタッフを含めて全員が主人公になれるチーム運営……。数えてみると、ファイターズにはいくつもの丈夫な「背骨」がある。これらを大切にし、さらに鍛えていくことだ。そこから「日本1」への道は開ける。
ファイターズにとっても事情は同じこと。「背骨」がしっかり通っていることで、チームのモラルは確立され、品格が生まれる。目指すべき目標は明確になり、その目標に向かう求心力も生まれてくる。
チームに寄り添って過ごしていると、そういう「背骨」の存在を実感する機会にちょくちょく遭遇する。
4月2日に行われた新チームの礼拝もそのひとつ。これはここ数年、新しい学年の最初の合同練習の日に行われるのが恒例。2003年の夏合宿で亡くなられた平郡雷太氏を偲ぶとともに、シーズンの始まりにあたって、部員全員が心を一つに祈る行事である。当初は、平郡君の記念樹と記念碑のある第3フィールドの高台で行っていたが、最近は部員の数が増えたため、グラウンドの中央で行われている。
チームの顧問であり、関西学院の宗教総主事でもあった前島宗甫先生がまず「あなた方の中で偉くなりたい者は、みなに仕える者になり、一番上になりたい者は、すべての人の僕(しもべ)になりなさい」という聖書の一節を読んで、次のような話をされた。
――平郡君は誰よりも熱心にアメフットを極めようとした求道者だった。諸君も求道者であってほしい。平郡君が体現したスピリットを継承し、それぞれの祈り、願い、志を持って、目標を成し遂げよう。
――新しいシーズンの開幕に当たって、もう一度「マスタリー・フォー・サービス」の意味を考えよう。この言葉は隣人・社会・世界に仕えるため、自らがマスターすなわち主人公になって自らを鍛えるという意味である。校歌にある「輝く自由」も、仕えることを選ぶ自由のことを意味しており、だからこそ輝くのである。練習、試合、すべての活動を通じて、自らが主人公となって「マスタリー・フォー・サービス」を習得できますように。
おおよそ、こういう話だった。ろくにメモもとらずに聞いていたので、細かい言い回しは違っているかもしれないが、先生の説かれる言葉は、しっかり胸にしみこんだ。聞いていた部員たちも「よーし、やったるぞ」と気合が入ったはずである。
前島先生を囲んでお祈りをする時間は、公式戦の試合前にも必ずある。試合前の練習終了後、キックオフまでのほんの短い時間だが、全員が急いで控室に戻り、そこで先生から心のこもった話を聞き、祈りを捧げる。全員の士気を鼓舞し、チームの結束を図り、戦いの準備を完了するのである。
儀式といえば儀式である。しかし、こういう極めてスピリチュアルな行為によってチームが一つになり、士気が高まるのも事実である。それは、チャペルの時間が生活にとけ込み、「マスタリー・フォー・サービス」というスクール・モットーがすべての構成員に共有されている関西学院だからこそ、の儀式である。そういう風土に根ざした儀式だからこそ、ファイターズの「背骨」として、チームの中軸を支えているのである。
こういう「背骨」を大切にしたい。
どのチームにとっても1日は24時間、1年は365日。練習に費やす時間は限られている。取り組みの内容も、ライバルと目されるチームは、それぞれが工夫を重ね、知恵を絞っている違いない。
同じように全力を尽くして取り組むのなら、優劣を分けるのは何か。そう考えてい
くと、チームの中軸を支える「背骨」の大切さが分かる。
お祈りの時間だけではない。品位を大切にする伝統、高いモラル、新しい戦術を導入する柔軟性、熱心なコーチ陣、スタッフを含めて全員が主人公になれるチーム運営……。数えてみると、ファイターズにはいくつもの丈夫な「背骨」がある。これらを大切にし、さらに鍛えていくことだ。そこから「日本1」への道は開ける。
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