石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

(16)特別な時間、特別な成長

投稿日時:2022/12/12(月) 08:44rss

 午後も4時を過ぎると、決まったように冷たい六甲おろしが吹き込む上ヶ原の第3フィールド。そこでいま、毎日のように大学王者を目指し、凝縮された実戦練習を繰り広げているのがファイターズである。
 関西リーグで優勝を決め、途中、西日本代表決定戦を挟んで三週間。大学選手権5連覇を目指し、中身の濃い練習を続けている部員の姿を見るたびに、これが関西リーグにおけるファイターズのアドバンテージ。目の前の大きな目標を、自分たちの代でも必ず達成するという、強い気持ちを持って、今この時期に特別な時間を過ごしている諸君だけに許された特権。それが個々の選手はもちろん、チームの血となり肉となってファイターズという強力な集団を築き挙げてきたのだ、という思いを新たにする。
 時間が許す限り、その模様を見学させていただこうと、週の半ばからグラウンドに詰めかけている私にとっては、そういう諸君の練習が見られることが、とてつもなく幸せな時間である。少々、寒くても、体がガタガタ震えても、じっと選手やスタッフの動きに目をこらしている。
 不思議なことに、私のように全く選手経験のない人間でも、同じ選手の動きを長期間、定期的に眺めていると、必ず成長曲線が見えてくる。それまで出来なかったことが急に出来るようになったり、体のこなしがより精妙になったりしているのを目の当たりにする。そのたびに「なるほど、実戦的な練習を続ければ、ある日突然、次元の違う世界が見えてくるんだ」と理解できる。
 先日も、あるコーチと個人的な用件でメールをやり取りしている時、同じ選手の動きについて、双方の見解がぴったり合っていることを知って驚いた。
 僕のような部外者ではなく、実際、グラウンドで練習している選手らにとっては、その実感はより確かに感得出来るに違いない。その実感が自信になり、さらにもう一つ上のプレーを身に付けたいという動機付けになるに違いない。
 そういう気持ちを持って、目の前の練習に取り組むメンバーが増えれば増えるほど、チームの力は上がっていく。関西リーグが終了してから甲子園ボウルまでの3週間がファイターズの力量をアップさせる特別な時間であると考える、それが理由である。
 もちろん、そういう時間は秋のシーズンがスタートしたときから続いている。1年生や2年生が実戦の中で経験を積み、一つ一つのプレーの失敗を糧に、成功を自信にして自らの力を伸ばしてきたからこそ、強力なタレントをそろえた関西大や立命館大を相手に、勝利を収めることが出来た。
 そうした苦しい試合を自分たちの力で突破して迎える甲子園ボウルである。
 もちろん、相手もリーグ戦で同じような体験をし、東日本代表となってからも、もう一段上の力を付けているに違いない。厳しい戦いになることは予想できるが、ファイターズの諸君がこの3週間に積み上げ、築いてきた力を発揮すれば、存分に戦えるはずだ。私のような部外者がみても、急激に成長しているメンバーは何人もいる。それは控えのメンバーとして位置づけられていた下級生だけではない。ずっと先発メンバーとして活躍してきた3年生や4年生にとってもいえることだ。
 自分たちが個人として、またチームとして積み重ねてきたことを信じ、それを力に変えて存分に活躍してもらいたい。勝利への道は必ず開ける。
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