石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(10)胸に響く記事が満載「ファイターズ80周年記念誌」
出来上がったばかりのファイターズの80周年記念誌が届いた。近々、発行されるとは聞いていたが、読んで驚いた。恐ろしいほど内容が充実しているのである。
これは機能する組織を作るための実践例であり、大学の正課外教育の活動を進めるための教科書でもある。組織の危機管理のあり方を考えるための手引きにもなるし、もちろんチームを強化するための教科書にもなる。
余計なことながら、これがライバルチームの手に渡ったら、ファイターズに勝つチームをつくるための格好の手引きになるのでは、と心配になるほどの内容がびっしりと詰め込まれている。
驚いたのが、この企画を立て、出版にまでこぎ着けた人たちも、原稿の筆者も、インタビューする人も、そのすべてがファイターズで卒業生であること。つまり、編集者から筆者まで、さらにいえば出版を企画し、費用も受け持った一般社団法人「KG FIGHTERS CLUB」(旧OB会)を含めた関係者全員が同じ釜の飯を食い、同じ上ヶ原の空気を吸った仲間であるということである。
僕も仕事柄、会社の社史や地域の案内誌、観光ガイドブックなどの企画や出版の相談に乗ったり、その宣伝を手伝ったりしたことは何度もあるが、こんな風にすべてを自分たちで企画し、原稿を書き、出版の費用までをまかなうなんて話は、自費出版以外、聞いたことがない。それだけではなく、出来上がった本の内容が正課外教育の教科書にそのまま使えるほど充実しているなんて例には出会ったこともない。
と、驚いてばかりではなく、具体的に記念誌の内容を順を追って紹介してみよう。
まず、プロローグで「勝利への執念」「自主の尊重」「自由な風土」「チームワーク精神」、その中で培われてきたファイターズスピリット……とうたい、幾多の苦難と真摯に対峙し、挑戦を重ねて来た足跡を回顧し、新たなる飛躍への糧にしたい、と出版の目的を宣言。第1部には「変革の30年」と見出しを付けて、この30年間の軌跡を追い、第2部には「時に刻まれた、栄光の軌跡」として1941年の創部から1990年まで50年の歴史を振り返っている。その50年間については、フィターズ草創期のことを熟知されていた元監督の米田満先生や関西アメリカンフットボール界の生き字引と呼ばれる古川明さんたちを中心に刊行されたファイターズの「50年史」に克明に記されていることもあり、今回はその後の30年を中心に記録している。
「変革の30年」の冒頭は、鳥内前監督へのインタビュー。朝日新聞社でスポーツ担当記者をしていた大西史恭氏(2008年卒)の質問に、鳥内さんがいつもの口調でズバリズバリと答えている。例えば、「監督のやりがいは」との質問には「社会に出て役に立つ人間を送り出すだけやん」「学生があんな人になりたいな、って思ってくれる、憧れの先輩になって欲しいねん」と答える。
「勝ったら4年生のおかげ、負けたら監督の責任でええねん」という言葉もある。なんせ6ページに渡るインタビューである。読み応えはたっぷりだ。
読み応えといえば、有馬隼人氏(2000年卒)による大村監督へのインタビューも中身が濃い。これまた8ページにわたるロングインタビューで、現場の雰囲気が手に取るように伝わってくる。僕がもし、ライバル校の監督やコーチだったら、この8ページ分のコピーをとってメモ帳に挟み、毎日、練習の始まる前に読み上げて「ようし、負けるもんか」と自分を叱咤するに違いない。
そうした記事だけではない。現場のコーチやトレーナーがこの30年間に取り組んで来られた取り組みを克明に紹介。ファイターズというチームのよって立つところ、現在地を具体例を上げて説明している。詳細は現物を読んでいただくとして、筆者(敬称略)とタイトルだけを紹介しておく。
1「Reborn-KG」(宮本敬士)、2「ディレクター部門(マネジメント体制)の確立」(石割淳)、3「ファイターズ阪神淡路大震災ドキュメント」(小野宏)、4「ファイターズと国際交流」(野原亮一)、5「平郡雷太君の事故について」(小野宏)、6「安全を追求した30年の取り組み」(西岡宗徳)、7「普及活動・地域貢献活動の展開」(石割淳)、8「OB・OG会の歩みと、これから」(徳永真介)、9「コーチングスタッフの変遷」(宮本敬士)、10「女子スタッフと分析スタッフの誕生」(小野宏・宮本敬士)、11「30年間の戦術の変遷・オフェンス1991~2001」(小野宏)、12「同・デイフェンス1991~1999」(堀口直親)、13「同オフェンス2002~2010」(小野宏)、14「同ディフェンス2000~2010」(堀口直親)、15「同オフェンス2011~2021」(大村和輝)、16「同デイフェンス2011~2021」(大寺将史)、17「キッキング」(小野宏)、18「ショートヤードの魂」(神田有基)、19「トレーニング革命の時代の先に」(油谷浩之)
それぞれが指導者として苦しみ、努力を重ね、発想を飛躍させて取り組んできた軌跡を具体例を上げて紹介しており、現役の部員はもちろん、今後入部してくるメンバーにも「ファイターズの真実」を知り、ここで学ぶことの励みになるに違いない。
毎年、僕が続けているファイターズ志望の高校生を対象にした文章表現の勉強会でも教材にしたいような記念誌である。
一般の方も神戸大戦から試合会場のグッズ販売テントで3000円で購入することができる。
これは機能する組織を作るための実践例であり、大学の正課外教育の活動を進めるための教科書でもある。組織の危機管理のあり方を考えるための手引きにもなるし、もちろんチームを強化するための教科書にもなる。
余計なことながら、これがライバルチームの手に渡ったら、ファイターズに勝つチームをつくるための格好の手引きになるのでは、と心配になるほどの内容がびっしりと詰め込まれている。
驚いたのが、この企画を立て、出版にまでこぎ着けた人たちも、原稿の筆者も、インタビューする人も、そのすべてがファイターズで卒業生であること。つまり、編集者から筆者まで、さらにいえば出版を企画し、費用も受け持った一般社団法人「KG FIGHTERS CLUB」(旧OB会)を含めた関係者全員が同じ釜の飯を食い、同じ上ヶ原の空気を吸った仲間であるということである。
僕も仕事柄、会社の社史や地域の案内誌、観光ガイドブックなどの企画や出版の相談に乗ったり、その宣伝を手伝ったりしたことは何度もあるが、こんな風にすべてを自分たちで企画し、原稿を書き、出版の費用までをまかなうなんて話は、自費出版以外、聞いたことがない。それだけではなく、出来上がった本の内容が正課外教育の教科書にそのまま使えるほど充実しているなんて例には出会ったこともない。
と、驚いてばかりではなく、具体的に記念誌の内容を順を追って紹介してみよう。
まず、プロローグで「勝利への執念」「自主の尊重」「自由な風土」「チームワーク精神」、その中で培われてきたファイターズスピリット……とうたい、幾多の苦難と真摯に対峙し、挑戦を重ねて来た足跡を回顧し、新たなる飛躍への糧にしたい、と出版の目的を宣言。第1部には「変革の30年」と見出しを付けて、この30年間の軌跡を追い、第2部には「時に刻まれた、栄光の軌跡」として1941年の創部から1990年まで50年の歴史を振り返っている。その50年間については、フィターズ草創期のことを熟知されていた元監督の米田満先生や関西アメリカンフットボール界の生き字引と呼ばれる古川明さんたちを中心に刊行されたファイターズの「50年史」に克明に記されていることもあり、今回はその後の30年を中心に記録している。
「変革の30年」の冒頭は、鳥内前監督へのインタビュー。朝日新聞社でスポーツ担当記者をしていた大西史恭氏(2008年卒)の質問に、鳥内さんがいつもの口調でズバリズバリと答えている。例えば、「監督のやりがいは」との質問には「社会に出て役に立つ人間を送り出すだけやん」「学生があんな人になりたいな、って思ってくれる、憧れの先輩になって欲しいねん」と答える。
「勝ったら4年生のおかげ、負けたら監督の責任でええねん」という言葉もある。なんせ6ページに渡るインタビューである。読み応えはたっぷりだ。
読み応えといえば、有馬隼人氏(2000年卒)による大村監督へのインタビューも中身が濃い。これまた8ページにわたるロングインタビューで、現場の雰囲気が手に取るように伝わってくる。僕がもし、ライバル校の監督やコーチだったら、この8ページ分のコピーをとってメモ帳に挟み、毎日、練習の始まる前に読み上げて「ようし、負けるもんか」と自分を叱咤するに違いない。
そうした記事だけではない。現場のコーチやトレーナーがこの30年間に取り組んで来られた取り組みを克明に紹介。ファイターズというチームのよって立つところ、現在地を具体例を上げて説明している。詳細は現物を読んでいただくとして、筆者(敬称略)とタイトルだけを紹介しておく。
1「Reborn-KG」(宮本敬士)、2「ディレクター部門(マネジメント体制)の確立」(石割淳)、3「ファイターズ阪神淡路大震災ドキュメント」(小野宏)、4「ファイターズと国際交流」(野原亮一)、5「平郡雷太君の事故について」(小野宏)、6「安全を追求した30年の取り組み」(西岡宗徳)、7「普及活動・地域貢献活動の展開」(石割淳)、8「OB・OG会の歩みと、これから」(徳永真介)、9「コーチングスタッフの変遷」(宮本敬士)、10「女子スタッフと分析スタッフの誕生」(小野宏・宮本敬士)、11「30年間の戦術の変遷・オフェンス1991~2001」(小野宏)、12「同・デイフェンス1991~1999」(堀口直親)、13「同オフェンス2002~2010」(小野宏)、14「同ディフェンス2000~2010」(堀口直親)、15「同オフェンス2011~2021」(大村和輝)、16「同デイフェンス2011~2021」(大寺将史)、17「キッキング」(小野宏)、18「ショートヤードの魂」(神田有基)、19「トレーニング革命の時代の先に」(油谷浩之)
それぞれが指導者として苦しみ、努力を重ね、発想を飛躍させて取り組んできた軌跡を具体例を上げて紹介しており、現役の部員はもちろん、今後入部してくるメンバーにも「ファイターズの真実」を知り、ここで学ぶことの励みになるに違いない。
毎年、僕が続けているファイターズ志望の高校生を対象にした文章表現の勉強会でも教材にしたいような記念誌である。
一般の方も神戸大戦から試合会場のグッズ販売テントで3000円で購入することができる。
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