石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

(9)特別な時間

投稿日時:2021/12/13(月) 07:55rss

 ファイターズの諸兄姉はいま、関西の学生アメフット界で唯一、特別な時間を過ごしている。目の前に甲子園ボウルを控え、日々、日本一を達成するという目的を持っているからだ。
 この週末、3日連続で、上ヶ原の第3フィールドを訪れ、練習を見学させていただく機会を得た。いつもの練習に比べても、なお一層、密度が濃い。時間の管理も厳格だ。
 上級生は早くからグラウンドに出て、パートごとに自主練をやっているが、4時限、5時限まで授業がある下級生は大変だ。午後の5時半、あるいは6時からの練習開始時間に間に合わせようと必死に走ってグラウンドに駆けつける。準備運動で体を温め、主将の声がかかるとダッシュでグラウンドの中央に集まる。
 すぐにハドルを解き、パートごとにVチームと準Vチームに分かれて練習開始。いま、この時期だから、試合に向けた実戦的な練習が中心と思われるかもしれないが、必ずしもそうではない。どのパートもファンダメンタルと呼んでいる基本的な体の動かし方から始め、パートごとに決めた基本的な練習メニューに取り組む。マネジャーが秒単位で全体の練習時間を管理し、合間、合間に手指の消毒をするためのクリーンタイムも確保する。
 攻守二つのチーム練習が2カ所で始まると、1年生を中心にしたそれ以外のメンバーは、サイドラインの外に出て捕球や当たりの練習に取り組む。広いグラウンドをいっぱいに使って約200人の選手が全員、それぞれの目的を持って走り回る姿は圧巻だ。
 12月も半ばになって、こういう密度の濃い練習が続けられるのも、目の前に甲子園ボウルを控え、大学日本1になるという確かな目標があるからだ。
 大学のアメフット部は各地にあり、それぞれの地区でしのぎを削っている。しかしいま、この時期に目の前に大きな目標を持って活動できるのは東西の代表校だけである。この時期の活動量と質の高さが、実はファイターズの強さに繋がっているのではないか。
 ライバルの強豪チームが早々にシーズンを終了し、新たな体勢でスタートしようとしているこの時期に、日本1という高い目標を持って日々精進する。それも惰性的にこなす練習ではなくVメンバーにとっては勝利のための練習であり、控えのメンバーにとっては明日のVメンバー、明日のスタメン入りを目指す練習である。練習に取り組む意欲の高さも、自ずから異なってくる。
 チームによっては12月を待たずにシーズンが終了するのに、ファイターズだけはこの6年間、ずっと甲子園ボウルに出場してきた。その間、高いモチベーションを持ち、意欲的な練習を続けてきた。そのトータルとして逆境に強いチームが仕上がっていたのではないか。僕がこの期間をファイターズにとっての「特別な時間」と呼ぶゆえんである。
 大学生活の4年間は短い。練習に取り組める時間はさらに限られている。だからこそ、この「特別な時間」には大きな価値がある。チームの全員が大きな目標を共有し、個々を鍛え、チーム力の向上に尽くす。他のチームにが持ち合わせていないその濃密な時間を生かすも殺すもチームの諸兄姉の双肩にかかっている。
 決戦の日曜日はもう目の前だ。残された時間をこれまで以上に濃密に過ごし、悔いのない戦いを繰り広げてもらいたい。心からの応援を捧げる。GO!FIGHTERS!
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