石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(5)肉弾戦
「肉弾戦」という言葉を「広辞苑」(岩波書店)は「肉体を弾丸に代用する意。即ち敵陣に突進、肉薄すること」と説明している。
10月31日、神戸市の王子スタジアムで行われた関大との試合は、その形容にふさわしい戦いだった。
攻守ともにラインとラインが真っ向からぶつかり、互いに一歩も引かない。1列目が押し切られそうになっても、2列目、3列目が素早く、鋭い当たりでフォローし、独走は許さない。攻撃陣はあらゆる手を使って相手の壁をこじ開け、ボールキャリアを前に押し出す。相手が前のめりになるとパスを投じ、陣地を進める……。互いの意地と意地がぶつかり合う、文字通りの肉弾戦だったが、勝利の女神はファイターズに微笑んだ。
先手を取ったのは先攻のファイターズ。相手が先制の好機となるフィールドゴールを外した隙を的確に捕らえてRB前田と斎藤が好走。一気に相手陣深くに押し込む。相手の注意がRBに向いた瞬間、今度はTE小林へのパスで相手ゴール前8ヤード。そこからパワフルなRB前田が攻め込み、仕上げは前田と斎藤のワイルドキャット。守備陣の注意が二人に分散した隙を突いて前田がゴールに飛び込みTD。永田のキックも決まって7ー0。欲しかった先制点を攻撃陣が一丸となって手にした。
しかし相手も、攻守ともにラインが強い。ライン戦では常に優位を確保し、彼らがこじ開けた隙間を走力のあるRBが走る。これは苦しい戦いになるぞ、と思った矢先に、1年生DB永井が値千金のインターセプト。
相手の出鼻をくじいたが、この好機に手にしたFGチャンスを逃がしたことで、流れは再び相手に。先発した1年生QBがランとパスを巧妙に使い分け、第2Q早々にゴール左隅に絵に描いたようなTDパスを決めて同点に追いつく。
第2Qは、その後も一進一退。互いにFGを決めて10ー10で前半終了。試合前、上ヶ原のグラウンドで、監督やコーチから「関大は強い。簡単に勝てる相手ではない」と聞いていた通りの試合展開だ。互いに攻め込み、互いに守り合う。応援している方も「ここが我慢だ、辛抱だ」と思わず自分に言い聞かせている。
膠着した試合が動いたのは、第3Q開始早々。相手の攻撃を守備陣が抑え込み、相手が蹴ったパントを守備陣が鋭い突っ込みでブロックした場面である。相手ゴール前27ヤード付近で攻撃権を確保したファイターズがRB前田の鋭い突っ込みでダウンを更新。最後は右オープンを前田が走り切ってTD。永田のキックも決まって、再び7点をリード。
攻撃陣が押せば、守備陣も踏ん張る。DLの小林や赤倉が厳しいタックルで相手を食い止め、DB高橋が相手のパスをカバーする。互いの意地がぶつかり合う試合は、膠着状態のまま第4Qに。しかし4分11秒。今度は永田が冷静に42ヤードのFGを決める。俗に「入れごろ、外しごろ」といわれる微妙な距離だったが、永田は動じることなくまっすぐボールを蹴り込んだ。
これで得点は20ー10、残り時間は8分弱。まだまだ安全圏とはいえないが、ともかくファイターズの面々は冷静さを取り戻し、逆に相手には焦りの色が見えてくる。その焦りがフィールドゴールの失敗につながり、逆にファイターズはランプレーで時間を消費していく。終わってみれば20ー10。
堂々の勝利だったが、スタンドから見ている限り勝負は互角。互いに骨と骨をぶつけ合い、意地とプライドをきしませるような肉弾戦だった。
コロナ禍で、思い通りに練習もできない状態からスタートしたシーズン。選手もコーチもスタッフも、それぞれが我慢し、辛抱に辛抱を重ねた末に迎えたシーズンである。相手がいくら強くても、自分たちのプレーが思い通りに進まなくても、へこんでいる場合ではない。とにかく目の前の相手を倒す。圧倒することまではできなくても、とにかく自分の責任は果たす。そういう気持ちのこもったプレーが随所に見られた。その結果がもたらせたのが20-10というスコアである。
選手もスタッフも、それをそのまま自らの自信にしてほしい。この試合で見せつけられた相手のアグレッシブな守備と攻撃。それを骨身に刻み、次なる試合への糧にしてもらいたい。
次戦の相手は立命館大。現役の部員が生まれる前から、歴代の先輩たちが互いにしのぎを削ってきたチームである。自分たちの力を発揮する相手としては、これ以上のチームはない。関大との肉弾戦を制した気力と勢いをさらに高めて立ち向かってもらいたい。
僕の好きな言葉の一つに、ある詩人の歌った「私の前に道はない。私の後ろに道ができる」というフレーズがある。これを選手やスタッフに贈りたい。頑張ろう!
10月31日、神戸市の王子スタジアムで行われた関大との試合は、その形容にふさわしい戦いだった。
攻守ともにラインとラインが真っ向からぶつかり、互いに一歩も引かない。1列目が押し切られそうになっても、2列目、3列目が素早く、鋭い当たりでフォローし、独走は許さない。攻撃陣はあらゆる手を使って相手の壁をこじ開け、ボールキャリアを前に押し出す。相手が前のめりになるとパスを投じ、陣地を進める……。互いの意地と意地がぶつかり合う、文字通りの肉弾戦だったが、勝利の女神はファイターズに微笑んだ。
先手を取ったのは先攻のファイターズ。相手が先制の好機となるフィールドゴールを外した隙を的確に捕らえてRB前田と斎藤が好走。一気に相手陣深くに押し込む。相手の注意がRBに向いた瞬間、今度はTE小林へのパスで相手ゴール前8ヤード。そこからパワフルなRB前田が攻め込み、仕上げは前田と斎藤のワイルドキャット。守備陣の注意が二人に分散した隙を突いて前田がゴールに飛び込みTD。永田のキックも決まって7ー0。欲しかった先制点を攻撃陣が一丸となって手にした。
しかし相手も、攻守ともにラインが強い。ライン戦では常に優位を確保し、彼らがこじ開けた隙間を走力のあるRBが走る。これは苦しい戦いになるぞ、と思った矢先に、1年生DB永井が値千金のインターセプト。
相手の出鼻をくじいたが、この好機に手にしたFGチャンスを逃がしたことで、流れは再び相手に。先発した1年生QBがランとパスを巧妙に使い分け、第2Q早々にゴール左隅に絵に描いたようなTDパスを決めて同点に追いつく。
第2Qは、その後も一進一退。互いにFGを決めて10ー10で前半終了。試合前、上ヶ原のグラウンドで、監督やコーチから「関大は強い。簡単に勝てる相手ではない」と聞いていた通りの試合展開だ。互いに攻め込み、互いに守り合う。応援している方も「ここが我慢だ、辛抱だ」と思わず自分に言い聞かせている。
膠着した試合が動いたのは、第3Q開始早々。相手の攻撃を守備陣が抑え込み、相手が蹴ったパントを守備陣が鋭い突っ込みでブロックした場面である。相手ゴール前27ヤード付近で攻撃権を確保したファイターズがRB前田の鋭い突っ込みでダウンを更新。最後は右オープンを前田が走り切ってTD。永田のキックも決まって、再び7点をリード。
攻撃陣が押せば、守備陣も踏ん張る。DLの小林や赤倉が厳しいタックルで相手を食い止め、DB高橋が相手のパスをカバーする。互いの意地がぶつかり合う試合は、膠着状態のまま第4Qに。しかし4分11秒。今度は永田が冷静に42ヤードのFGを決める。俗に「入れごろ、外しごろ」といわれる微妙な距離だったが、永田は動じることなくまっすぐボールを蹴り込んだ。
これで得点は20ー10、残り時間は8分弱。まだまだ安全圏とはいえないが、ともかくファイターズの面々は冷静さを取り戻し、逆に相手には焦りの色が見えてくる。その焦りがフィールドゴールの失敗につながり、逆にファイターズはランプレーで時間を消費していく。終わってみれば20ー10。
堂々の勝利だったが、スタンドから見ている限り勝負は互角。互いに骨と骨をぶつけ合い、意地とプライドをきしませるような肉弾戦だった。
コロナ禍で、思い通りに練習もできない状態からスタートしたシーズン。選手もコーチもスタッフも、それぞれが我慢し、辛抱に辛抱を重ねた末に迎えたシーズンである。相手がいくら強くても、自分たちのプレーが思い通りに進まなくても、へこんでいる場合ではない。とにかく目の前の相手を倒す。圧倒することまではできなくても、とにかく自分の責任は果たす。そういう気持ちのこもったプレーが随所に見られた。その結果がもたらせたのが20-10というスコアである。
選手もスタッフも、それをそのまま自らの自信にしてほしい。この試合で見せつけられた相手のアグレッシブな守備と攻撃。それを骨身に刻み、次なる試合への糧にしてもらいたい。
次戦の相手は立命館大。現役の部員が生まれる前から、歴代の先輩たちが互いにしのぎを削ってきたチームである。自分たちの力を発揮する相手としては、これ以上のチームはない。関大との肉弾戦を制した気力と勢いをさらに高めて立ち向かってもらいたい。
僕の好きな言葉の一つに、ある詩人の歌った「私の前に道はない。私の後ろに道ができる」というフレーズがある。これを選手やスタッフに贈りたい。頑張ろう!
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