石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(15)敗戦の中に来季への希望
新型コロナの感染拡大で東上できず、ライスボウルは西宮の自宅で観戦。テレビ中継を見ながらの応援となった。東京ドームでファイターズを応援することがかなわなかったのは、東京・有楽町駅付近で火災があり、新幹線が全面的にストップした年以来である。
今年も当初は、現場で選手に声をかけ、声を張り上げて応援するつもりだったが、新型コロナには勝てない。「大都市圏への往来は避けるように」という勤務先の方針もあり、それを部下に指示する立場の人間として「自分だけは勝手にします」とはいえない。
かくして、3日はテレビ観戦。しかし、もどかしい。一つ一つのプレーはしっかりと映し出してくれるのだが、ベンチの様子やプレーが始まる前、終わった後の選手の表情など、大事な情報が手に入らない。試合後にグラウンドに降りて、選手や監督、コーチと声をかわすこともできない。
そんな状況で、コラムを書くのは難しい。第一、取材もせずに書くという行為自体が、自分にとって納得がいかない。
そういう次第だから、今回はテレビに映し出された試合の様子、選手たちの表情などを見ての感想だけを書かせていただく。読者のみなさまにとっては、歯がゆいことだろうが、許されたい。
感想の第一は、存分に資金を投入して人材を集めることのできる社会人チームと、厳しい入試を突破して入部しても、4年間で卒業してしまう大学生チームとの基礎的条件の差である。その差は年々開く一方。いまや練習への取り組みや戦術面での工夫だけでは埋め切れないところまで来てしまった。
例えば、相手守備の最前列。そこには関西リーグで名を馳せた強力なラインが並んでいる。打倒!関学、を合い言葉に立ち向かってきた立命館や関西大学で主力選手として活躍した面々である。体重130?を超えるラインメンの圧力は半端ではなく、素早い動きが持ち味のQB奥野に圧力をかけ続けた。ランニングバックやレシーバー陣にも、名前を聞いただけで往事の活躍ぶりが目に浮かんでくるメンバーが数多く並んでいる。
ファイターズで時代を画した強力な先輩たちも後輩たちとの対決を心待ちにしている。この日、相手側最初のTDを挙げたRBの望月や試合の流れを一変させるパントブロックを決めた平澤はその代表である。
こうした豪華メンバーに対応するだけでもやっかいなのに、QBやDB、WRには、本場・アメリカで鍛えた才能あふれる選手たちが並んでいる。楽々と45ヤードから50ヤードのパスを通し、TDを重ねていくその姿を見ていると、戦術を工夫し、緻密な設計で試合を進めていくファイターズの戦いぶりが否定されたかのような気分にさえなってくる。
それでも、ファイターズの面々はおめず臆さずに戦った。QB奥野が短いパスを通し、スピードとパワーのあるランニングバック3人を使い分けて陣地を進める。ベンチからの的確な指示もあって、相手の隙を突いたプレーが矢継ぎ早に繰り出される。立ち上がりの狙い澄ませた短いキックとそれをカバーしたLB都賀の機敏な動き。前半終了間際、RB三宅の84ヤード独走TD。それぞれが日頃の練習で取り組んできた成果である。
パワフルな鶴留、スピードの三宅、パワーとスピードを兼ねそろえた前田。それぞれ特徴を持った3人のRB陣をフルに稼働させる作戦も機能し、とにもかくにも3本のTDを獲得した。相手の強力な守備陣を考慮に入れると、それだけでも大きな成果である。
もう一つ、僕が注目したのは、守備の最後列に位置するDB陣である。秋のシーズンが始まった当初は、メンバーをそろえるのも難しかったようなパートだが、関西大会、甲子園ボウルと強力な攻撃陣を擁する相手と戦う中で下級生が経験を積み、試合ごとに動きが良くなってきた。
この日も、体格が大きく、スピードもある相手レシーバー陣に振り回されながら、必死に立ち向かっていった。先発で出場した北川、竹原、宮城は3年生。山本は2年生、波田は1年生である。途中から交代メンバーとして投入された3年生の西脇、永嶋はともに未経験者。高校時代、西脇は野球部、永嶋はテニス部で活躍した選手である。そうした選手が持ち前のスピードを生かして相手のエースレシーバーに食いついて行く姿に、僕は感動さえ覚えた。途中、けがで退出した山本を含め、来季はこのパートがチームを引っ張っていく予感さえ抱いた。
ことはDBのパートに限らない。オフェンスラインの4年生は副将の高木だけ。それ以外は3年生と2年生で戦った。レシーバーやランニングバックにも下級生に人材が揃っている。デイフェンスラインにも、この日活躍した2年生、小林や3年生の青木がおり、1年生にも有望なメンバーが何人もいる。
そう、ここに学生スポーツの魅力があるのだ。年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず。ファイターズという花は毎年咲くが、それを咲かせる顔ぶれは毎年変わっていく。終始、相手に押される苦しい展開だったが、その中にあっても新しい希望が見えてきた。
この敗戦を糧にした彼らが新しいシーズン、どんな風に成長し、どんなプレーを見せてくれるのか。そんな期待が抱けるからこそ、学生スポーツは面白い。来季のファイターズに期待すること大である。
今年も当初は、現場で選手に声をかけ、声を張り上げて応援するつもりだったが、新型コロナには勝てない。「大都市圏への往来は避けるように」という勤務先の方針もあり、それを部下に指示する立場の人間として「自分だけは勝手にします」とはいえない。
かくして、3日はテレビ観戦。しかし、もどかしい。一つ一つのプレーはしっかりと映し出してくれるのだが、ベンチの様子やプレーが始まる前、終わった後の選手の表情など、大事な情報が手に入らない。試合後にグラウンドに降りて、選手や監督、コーチと声をかわすこともできない。
そんな状況で、コラムを書くのは難しい。第一、取材もせずに書くという行為自体が、自分にとって納得がいかない。
そういう次第だから、今回はテレビに映し出された試合の様子、選手たちの表情などを見ての感想だけを書かせていただく。読者のみなさまにとっては、歯がゆいことだろうが、許されたい。
感想の第一は、存分に資金を投入して人材を集めることのできる社会人チームと、厳しい入試を突破して入部しても、4年間で卒業してしまう大学生チームとの基礎的条件の差である。その差は年々開く一方。いまや練習への取り組みや戦術面での工夫だけでは埋め切れないところまで来てしまった。
例えば、相手守備の最前列。そこには関西リーグで名を馳せた強力なラインが並んでいる。打倒!関学、を合い言葉に立ち向かってきた立命館や関西大学で主力選手として活躍した面々である。体重130?を超えるラインメンの圧力は半端ではなく、素早い動きが持ち味のQB奥野に圧力をかけ続けた。ランニングバックやレシーバー陣にも、名前を聞いただけで往事の活躍ぶりが目に浮かんでくるメンバーが数多く並んでいる。
ファイターズで時代を画した強力な先輩たちも後輩たちとの対決を心待ちにしている。この日、相手側最初のTDを挙げたRBの望月や試合の流れを一変させるパントブロックを決めた平澤はその代表である。
こうした豪華メンバーに対応するだけでもやっかいなのに、QBやDB、WRには、本場・アメリカで鍛えた才能あふれる選手たちが並んでいる。楽々と45ヤードから50ヤードのパスを通し、TDを重ねていくその姿を見ていると、戦術を工夫し、緻密な設計で試合を進めていくファイターズの戦いぶりが否定されたかのような気分にさえなってくる。
それでも、ファイターズの面々はおめず臆さずに戦った。QB奥野が短いパスを通し、スピードとパワーのあるランニングバック3人を使い分けて陣地を進める。ベンチからの的確な指示もあって、相手の隙を突いたプレーが矢継ぎ早に繰り出される。立ち上がりの狙い澄ませた短いキックとそれをカバーしたLB都賀の機敏な動き。前半終了間際、RB三宅の84ヤード独走TD。それぞれが日頃の練習で取り組んできた成果である。
パワフルな鶴留、スピードの三宅、パワーとスピードを兼ねそろえた前田。それぞれ特徴を持った3人のRB陣をフルに稼働させる作戦も機能し、とにもかくにも3本のTDを獲得した。相手の強力な守備陣を考慮に入れると、それだけでも大きな成果である。
もう一つ、僕が注目したのは、守備の最後列に位置するDB陣である。秋のシーズンが始まった当初は、メンバーをそろえるのも難しかったようなパートだが、関西大会、甲子園ボウルと強力な攻撃陣を擁する相手と戦う中で下級生が経験を積み、試合ごとに動きが良くなってきた。
この日も、体格が大きく、スピードもある相手レシーバー陣に振り回されながら、必死に立ち向かっていった。先発で出場した北川、竹原、宮城は3年生。山本は2年生、波田は1年生である。途中から交代メンバーとして投入された3年生の西脇、永嶋はともに未経験者。高校時代、西脇は野球部、永嶋はテニス部で活躍した選手である。そうした選手が持ち前のスピードを生かして相手のエースレシーバーに食いついて行く姿に、僕は感動さえ覚えた。途中、けがで退出した山本を含め、来季はこのパートがチームを引っ張っていく予感さえ抱いた。
ことはDBのパートに限らない。オフェンスラインの4年生は副将の高木だけ。それ以外は3年生と2年生で戦った。レシーバーやランニングバックにも下級生に人材が揃っている。デイフェンスラインにも、この日活躍した2年生、小林や3年生の青木がおり、1年生にも有望なメンバーが何人もいる。
そう、ここに学生スポーツの魅力があるのだ。年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず。ファイターズという花は毎年咲くが、それを咲かせる顔ぶれは毎年変わっていく。終始、相手に押される苦しい展開だったが、その中にあっても新しい希望が見えてきた。
この敗戦を糧にした彼らが新しいシーズン、どんな風に成長し、どんなプレーを見せてくれるのか。そんな期待が抱けるからこそ、学生スポーツは面白い。来季のファイターズに期待すること大である。
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