石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

(4)前例のない戦いへ

投稿日時:2020/10/12(月) 06:34rss

 2020年度の関西学生アメリカンフットボールDiv.1の試合がこの週末から始まる。コロナ禍の中で、日程的にも試合そのものにも制約がある中での開幕である。全体の試合数を少なくするためにリーグ戦ではなくトーナメントで戦い、それも4チームずつを二つのグループに分け、それぞれ勝ち上がったチーム同士が戦い、勝ったチームが関西代表として甲子園ボウルに出場するという前例のない戦いとなる。
 ファイターズの初戦は18日。本拠地ともいえる神戸の王子スタジアムで同志社を相手に戦う。観客は入れず、スタンドからの応援もない中での試合であり、負ければそれでシーズンが終わる。リーグ始まって以来の事態であり、過去のどの世代も経験したことのない戦いとなる。
 その戦いにどう臨むのか。チームの状態をどのように盛り上げていくのか。その前に、春季は試合はおろかチームとしての練習も禁じられていた中で、チームの状態はどこまで上がっているのか。昨年度の4年生が抜けた穴をどのように埋めるのか。先発メンバーだけでなく交代メンバーの仕上がり具合はどうなっているのか。
 ファンにとっては、気にかかることが山積しているはずだ。もちろん、試合は自分たちのチームの仕上がり具合だけでなく、対戦相手の状態とも直接関係する。
 聞くところでは、関西学院大学の課外活動に対する制約は、他のチーム以上に厳しく、チームとしての練習もそれを反映して大きく出遅れているそうだ。
 しかしそれでも、シーズンが始まれば、そうした環境・条件の違いは言い訳にならない。用意!ドン!と笛が鳴れば、一斉にスタートを切らなければならない。目の前の勝利をつかむために全力で挑んで来る相手に必ず勝ち続けなければならない。その条件はどこまで整ったのか。
 僕の感想を言えば、昨年のシーズンをグラウンドで戦ったメンバー(交代出場のメンバーを含む)と、それ以外のメンバーとの間には、正直言って見た目以上の落差がある。キッキングチームを含め、攻守ともにチームとしての練習がほとんどできていないのだから仕方がないといえばそれまでだが、メンバーがそろっている割には、チームとしての完成度が低い。こういう完成度の低さで目の前に迫った試合を戦い切れるのかという不安がつきまとう。
 攻撃でいえばパスも通るし、ランも出る。何より昨年の戦いを経験し、大活躍したメンバーがQBをはじめRB、WR、そしてOLそれぞれに存在し、チームをリードしている。何度も大きな舞台を経験し、苦しい思いもうれしい思いも人一倍味わっているメンバーが全員、大きなけがもなく練習を続けているのは、本当に心強い。
 守備陣も同様だ。昨年の関西代表決定戦から甲子園ボウル、ライスボウルと華やかな舞台で活躍してきたメンバーには、そこで得た自信がある。彼ら全員が自分の持てる力を発揮できれば、そうそう大きな崩れは見せないだろう。
 けれども、それに続くメンバーがどれだけ成長したのか。キッキングのメンバーを含めて、それぞれのポジションで今春卒業したメンバーの穴を埋めることができるかどうか。もちろん練習では、鮮やかなタックルも決まるし、ボールをはたき落とすこともできる。しかし、時には信じられないミスが出ることもある。
 今春入部した1年生を含めて、本来ならこの半年間に相当実力をアップしているはずの2枚目、3枚目のメンバーがどこまで仕上がっているか。僕が勝手に推測するのは、そうしたメンバーの仕上がり具合が勝敗を分けるということだ。
 アメフットはチームスポーツ。攻守ともにグラウンドに出ている11人(キッキングチームでは、その時フィールドに出ている全員)がそれぞれの役割を完璧に果たしてこそ勝利への道が見えてくるスポーツである。同時に試合中、しばしばけがが発生するスポーツでもある。交代メンバーの層の厚さを抜きにして勝利はおぼつかない。
 もちろん、実戦の感覚がつかめていないのは、相手チームも似たような状況であろう。問題は、試合までに残された時間に、自分たちの状況をどれだけ好転させていけるかどうかにかかっている。
 幸いなことに、チームには昨年、1昨年と先発メンバーとして試合経験を積んできたメンバーが何人もいる。彼らを中心に泥臭く努力し、必死懸命に取り組んでいくことだ。上級生が本気になれば、後輩たちも奮い立つ。そこから下級生たちも実戦の感覚を身に付け、試合で活躍できるようになっていく。
 そういう姿が見られることを切望しながら18日を待ちたい。
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