石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(14)苦労は買ってでも
日本の高度成長期に働き始めた人間は、おおむね働き中毒の症状がある。この秋75歳、堂々の「後期高齢者」にカウントされる僕もその一人である。
雨が降っても風が吹いても体を動かし、頭に刺激を与えておかないと落ち着きが悪い。一日ゆっくり寝転んで、といった暮らしは、考えたこともない。いまも週に4日は現役の新聞記者、編集局長として働き、後の3日はファイターズの活動に費やしたり、近場の山を歩いたりしている。
ファイターズの諸君はいま、前期試験まっただ中で、みんな揃って練習という日程は組まれていない。だから、第3フィールドまで足を運ぶことは少ないが、代わりに今秋、スポーツ選抜の入試に挑む高校生を対象にした勉強会を週末ごとに続けている。チームのマネジャーに西宮市の学生交流センターに場所を確保してもらい、授業や練習を終えた高校生にチャーミングな文章の書き方を指導し、最後には志望理由書を書く時のアドバイスや面接試験の心得までを伝授するのである。
もう20年も続けている仕事だから、指導する側はすっかりその段取りが身についている。しかし、試験に挑む側のメンバーは毎年、新しくなる。いきなり1時間以内に800字の文章を書きなさいといわれて戸惑う生徒もいるし、周囲の雰囲気に押されて書き始めても、途中で手が止まってしまう子もいる。
そこを数回の指導で、余裕で800字を書ききれるようにするのが僕の役割。幸い、大抵の生徒は書けば書くほど上達するから、そんなに心配することはない。いかに気持ちよく原稿用紙に向かい、過去に出題された問題に取り組めるかという点にだけ注意を払えば、間違いなく上達する。それを体験的に知っているから、焦ることはない。
ただし、この夏はほかのクラブのコーチからも指導の依頼があり、そちらもいそいそと引き受けたから、仕事量は倍増し、金曜日も土曜日も予定が詰まってしまった。春休みの頃からは、就職活動に挑む新4年生や5年生の希望者を対象に「必ず勝ち残れる」エントリーシートの書き方を伝授したり、これまた面接の心得を指導したりしてきたから、シーズンはオフでも、折々の仕事はしっかり天から降ってくるのである。
いま流行の「働き方改革」という言葉になじめず、職場でも、若い記者諸君に「自分を鍛え、自身の能力が上がっていく実感を持ったとき、仕事にやりがいが生まれる。その手応えが生きがいに通じる」といった言葉を、折あるごとに口にしているのが、ほかならぬ新聞記者最長老の僕である。
それをパワハラと呼びたい人は、どうぞご随意に。自らを鍛え、向上させずに何が楽しい。苦あれば楽あり。逆に言えば、楽あれば苦あり。少々苦しい時期があっても、その先にお花畑が待っている、頂上からの絶景が待っていると思えば、一歩一歩を踏みしめる山登りも楽しくなる。
人生も同様である。若い頃の苦労は買ってでも、と先人が言い伝えてきたのには、理由があるのだ。ファイターズを志願する高校生にも、ファイターズでてっぺんを目指す選手やスタッフにもこの言葉を贈りたい。
雨が降っても風が吹いても体を動かし、頭に刺激を与えておかないと落ち着きが悪い。一日ゆっくり寝転んで、といった暮らしは、考えたこともない。いまも週に4日は現役の新聞記者、編集局長として働き、後の3日はファイターズの活動に費やしたり、近場の山を歩いたりしている。
ファイターズの諸君はいま、前期試験まっただ中で、みんな揃って練習という日程は組まれていない。だから、第3フィールドまで足を運ぶことは少ないが、代わりに今秋、スポーツ選抜の入試に挑む高校生を対象にした勉強会を週末ごとに続けている。チームのマネジャーに西宮市の学生交流センターに場所を確保してもらい、授業や練習を終えた高校生にチャーミングな文章の書き方を指導し、最後には志望理由書を書く時のアドバイスや面接試験の心得までを伝授するのである。
もう20年も続けている仕事だから、指導する側はすっかりその段取りが身についている。しかし、試験に挑む側のメンバーは毎年、新しくなる。いきなり1時間以内に800字の文章を書きなさいといわれて戸惑う生徒もいるし、周囲の雰囲気に押されて書き始めても、途中で手が止まってしまう子もいる。
そこを数回の指導で、余裕で800字を書ききれるようにするのが僕の役割。幸い、大抵の生徒は書けば書くほど上達するから、そんなに心配することはない。いかに気持ちよく原稿用紙に向かい、過去に出題された問題に取り組めるかという点にだけ注意を払えば、間違いなく上達する。それを体験的に知っているから、焦ることはない。
ただし、この夏はほかのクラブのコーチからも指導の依頼があり、そちらもいそいそと引き受けたから、仕事量は倍増し、金曜日も土曜日も予定が詰まってしまった。春休みの頃からは、就職活動に挑む新4年生や5年生の希望者を対象に「必ず勝ち残れる」エントリーシートの書き方を伝授したり、これまた面接の心得を指導したりしてきたから、シーズンはオフでも、折々の仕事はしっかり天から降ってくるのである。
いま流行の「働き方改革」という言葉になじめず、職場でも、若い記者諸君に「自分を鍛え、自身の能力が上がっていく実感を持ったとき、仕事にやりがいが生まれる。その手応えが生きがいに通じる」といった言葉を、折あるごとに口にしているのが、ほかならぬ新聞記者最長老の僕である。
それをパワハラと呼びたい人は、どうぞご随意に。自らを鍛え、向上させずに何が楽しい。苦あれば楽あり。逆に言えば、楽あれば苦あり。少々苦しい時期があっても、その先にお花畑が待っている、頂上からの絶景が待っていると思えば、一歩一歩を踏みしめる山登りも楽しくなる。
人生も同様である。若い頃の苦労は買ってでも、と先人が言い伝えてきたのには、理由があるのだ。ファイターズを志願する高校生にも、ファイターズでてっぺんを目指す選手やスタッフにもこの言葉を贈りたい。
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