石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(6)現在地を知る
「今日の試合は書きにくいでしょうね」。11日、上ヶ原の第3フィールドで行われた神戸大学との試合中、旧知の観戦仲間から、そう話題を振られた。
前半を終わって21-0。いくら相手が関西リーグの実力校であり、ファイターズがJVメンバー主体のメンバーで臨んだ試合とはいえ、相手に好きなように走られ、パスを通されてTDを決め続けられる状況に、観戦仲間も思わずさじを投げたのだろう。隣で不満げに独り言を口にしている僕の様子を見て、一言、慰めの言葉をかけなければという配慮だったかのかもしれない。
それほどシンドイ試合だった。なんとかいいところを見つけてそこに焦点を当てよう、まずい点、物足りない点についての指摘は監督やコーチに任せよう。そう考えて、懸命に選手の動きに目を凝らすのだが、単発ではいい動きがあっても、それが線になり、面になる場面はほとんど見られない。
それは後半になって守備が相手を0点に抑え、攻撃が2つのTDを奪って7点差に追い上げた時でも同様である。目を見張るような新戦力は見えず、上級生にもVのメンバーを蹴散らすような存在が見あたらない。攻撃の起点になるスナップがばらつき、フィールドゴールのスナップも乱れる。せっかく相手ゴール前まで攻め込んでも、不用意な反則が出てTDを決めきれない。これでは攻守共に周到に準備してきた相手につけ込まれるのも当然だろう。
その結果としての21-14。試合後、鳥内監督の口から出た「まあ、こんなもんやろう。試合があると分かっているのに準備せんかったのが悪い」という言葉通りの結果だった。
チームが公開した記録を見ても、ファイターズが獲得したのはランが218ヤード、パスが134ヤードの計352ヤード。相手はランが188ヤード、パスが104ヤードの計292ヤード。攻撃時間を見ればファイターズが30分14秒、相手は17分46秒。数字ではファイターズが押しているはずなのに、得点は21-14。何と効率の悪い攻撃を重ねたことだろうと改めて気がつく。
そんな試合をどのように書くのか。観戦仲間が「書きにくいでしょうね」と同情してくれるのもよく分かる。
しかし、週が明け、少し見方を変えると、また違う感慨が浮かんできた。「これが現在地。いいも悪いも、ここから出発するしかない」という感慨である。
山に登るときには、常に現在地を確認しながら行動する。どんなに雨が降っても、霧が出ても、現在地さえ正確に把握しておけば、次の行動に迷いがない。迷いがなければ道は開ける。逆に、現在地を見失えば、何もできない。あえて動いても事態を悪化させるばかりで、ついには遭難という事態になるかもしれない。これは、僕が山登りを始めた頃に指導してくれた山の先輩たちから何度も何度も叩き込まれたことだ。
フットボールも同様だろう。敵を知り己を知る。とりわけ自分たちの現在地を知ることが何よりも大切だ。いまチームに何が欠けているのか。オフェンスに欠けているモノ、ディフェンスに欠けているモノ、試合に出ている選手もベンチサイドで見ているメンバーも、後日、ビデオでそれをチェックする際にも、それぞれ事態を正確に見つめ、問題点を見つけて一つずつ解消していかなければならない。個人の力量、チームの力量に問題があれば、そこをの手立てを考える。練習の取り組みはもちろん、練習時以外の過ごし方にも注意を払い、全身全霊をかけて自らを鍛え、チーム力をアップしていかなければならない。
前回の慶応戦、そして11日の神戸大戦で明らかになった「欠けたるところ」を見つけ、問題の所在を明らかにして対処するしかない。自分たちの現在地を正確に把握し、そこから最善の行動をとるしかないのである。
試合に出たメンバーはもちろん、出場機会のなかった面々であっても「JV戦だから」とか「春だから」とかいう気持ちがかけらでもあれば、それはチームとして現在地を見失うきっかけになる。そうなれば目的地に着くことはかなわず、チームは遭難してしまう。
自分たちの現在の実力、つまり現在地を正確に把握し、夏から秋に備えてもらいたい。それは過去の先輩たちがそれぞれのやり方で克服してきた試練の道である。全員のベクトルが「俺たちは勝ちたいんや」「学生を圧倒するんや」という方向に向かったとき、それぞれの個人が成さねばならないことは必ず見えてくる。それを全うして初めて、秋のシーズンを戦う資格が生まれる。
追伸
書く場所が見つからなかったので、以上の文では触れなかったが、11日の試合で最も印象に残った選手の名前を記しておきたい。それはRBのスターターを務めた鶴留君である。21回ボールを持って154ヤードを獲得したこともすごいが、毎回、密集の中に突っ込み相手のタックルをはね飛ばし、ふりほどいて突き進んだ姿が目に焼き追いている。久々に見るパワーランナーであり、チームの士気をプレーで鼓舞した立役者である。これまで、重要な場面で起用されることは少なかったが、今回のパフォーマンスをきっかけに大いに飛躍してくれることを願っている。
前半を終わって21-0。いくら相手が関西リーグの実力校であり、ファイターズがJVメンバー主体のメンバーで臨んだ試合とはいえ、相手に好きなように走られ、パスを通されてTDを決め続けられる状況に、観戦仲間も思わずさじを投げたのだろう。隣で不満げに独り言を口にしている僕の様子を見て、一言、慰めの言葉をかけなければという配慮だったかのかもしれない。
それほどシンドイ試合だった。なんとかいいところを見つけてそこに焦点を当てよう、まずい点、物足りない点についての指摘は監督やコーチに任せよう。そう考えて、懸命に選手の動きに目を凝らすのだが、単発ではいい動きがあっても、それが線になり、面になる場面はほとんど見られない。
それは後半になって守備が相手を0点に抑え、攻撃が2つのTDを奪って7点差に追い上げた時でも同様である。目を見張るような新戦力は見えず、上級生にもVのメンバーを蹴散らすような存在が見あたらない。攻撃の起点になるスナップがばらつき、フィールドゴールのスナップも乱れる。せっかく相手ゴール前まで攻め込んでも、不用意な反則が出てTDを決めきれない。これでは攻守共に周到に準備してきた相手につけ込まれるのも当然だろう。
その結果としての21-14。試合後、鳥内監督の口から出た「まあ、こんなもんやろう。試合があると分かっているのに準備せんかったのが悪い」という言葉通りの結果だった。
チームが公開した記録を見ても、ファイターズが獲得したのはランが218ヤード、パスが134ヤードの計352ヤード。相手はランが188ヤード、パスが104ヤードの計292ヤード。攻撃時間を見ればファイターズが30分14秒、相手は17分46秒。数字ではファイターズが押しているはずなのに、得点は21-14。何と効率の悪い攻撃を重ねたことだろうと改めて気がつく。
そんな試合をどのように書くのか。観戦仲間が「書きにくいでしょうね」と同情してくれるのもよく分かる。
しかし、週が明け、少し見方を変えると、また違う感慨が浮かんできた。「これが現在地。いいも悪いも、ここから出発するしかない」という感慨である。
山に登るときには、常に現在地を確認しながら行動する。どんなに雨が降っても、霧が出ても、現在地さえ正確に把握しておけば、次の行動に迷いがない。迷いがなければ道は開ける。逆に、現在地を見失えば、何もできない。あえて動いても事態を悪化させるばかりで、ついには遭難という事態になるかもしれない。これは、僕が山登りを始めた頃に指導してくれた山の先輩たちから何度も何度も叩き込まれたことだ。
フットボールも同様だろう。敵を知り己を知る。とりわけ自分たちの現在地を知ることが何よりも大切だ。いまチームに何が欠けているのか。オフェンスに欠けているモノ、ディフェンスに欠けているモノ、試合に出ている選手もベンチサイドで見ているメンバーも、後日、ビデオでそれをチェックする際にも、それぞれ事態を正確に見つめ、問題点を見つけて一つずつ解消していかなければならない。個人の力量、チームの力量に問題があれば、そこをの手立てを考える。練習の取り組みはもちろん、練習時以外の過ごし方にも注意を払い、全身全霊をかけて自らを鍛え、チーム力をアップしていかなければならない。
前回の慶応戦、そして11日の神戸大戦で明らかになった「欠けたるところ」を見つけ、問題の所在を明らかにして対処するしかない。自分たちの現在地を正確に把握し、そこから最善の行動をとるしかないのである。
試合に出たメンバーはもちろん、出場機会のなかった面々であっても「JV戦だから」とか「春だから」とかいう気持ちがかけらでもあれば、それはチームとして現在地を見失うきっかけになる。そうなれば目的地に着くことはかなわず、チームは遭難してしまう。
自分たちの現在の実力、つまり現在地を正確に把握し、夏から秋に備えてもらいたい。それは過去の先輩たちがそれぞれのやり方で克服してきた試練の道である。全員のベクトルが「俺たちは勝ちたいんや」「学生を圧倒するんや」という方向に向かったとき、それぞれの個人が成さねばならないことは必ず見えてくる。それを全うして初めて、秋のシーズンを戦う資格が生まれる。
追伸
書く場所が見つからなかったので、以上の文では触れなかったが、11日の試合で最も印象に残った選手の名前を記しておきたい。それはRBのスターターを務めた鶴留君である。21回ボールを持って154ヤードを獲得したこともすごいが、毎回、密集の中に突っ込み相手のタックルをはね飛ばし、ふりほどいて突き進んだ姿が目に焼き追いている。久々に見るパワーランナーであり、チームの士気をプレーで鼓舞した立役者である。これまで、重要な場面で起用されることは少なかったが、今回のパフォーマンスをきっかけに大いに飛躍してくれることを願っている。
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