石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(3)今季初の紅白戦
27日は春恒例の「FIGHTERS DAY」。シーズン開幕を前にファイターズファミリーとファン、支援者が集い、フットボールを共通のテーマにして親交を深める1日である。
午前中は大学生の練習と紅白戦。午後は小学生やOBらが参加してフラッグフットボールなどを楽しめるようにプログラムがセットされている。天気は晴れ。風もなく穏やかな一日となり、応援のお父さんやお母さんも含めて多くの人たちで賑わった。
しかし、午前のチーム練習と紅白戦を見せてもらっただけで、早々に引き上げた。時間にして2時間弱。紅白戦だけでは1時間ほど。今季の予告編というのもおこがましいほどの時間だったが、いい意味でも悪い意味でも、見るべき点は少なくなかった。
まずはいい方から。一言でいえば、昨年秋のシーズン、特に関西リーグの後半戦以降の試合に出場し、苦しい試合を勝ち抜いてきたメンバーはみな、その修羅場を踏んだ経験を糧にして、終始、堅実なプレーを見せてくれた。勝手知ったチームメートとの戦いという点を割り引いても、それぞれに一段と成長していた。攻撃ではラインの村田、藤田統、森、松永、WRの阿部、鈴木、大村、RBでは三宅、前田公。そしてQBは、昨年度甲子園ボウルMVPの奥野。これに昨年はほとんど出場チャンスがなかったTE亀井やRB斎藤、WR鏡味、OL牧野らも元気なところを見せてくれた。
守備で先発したのはDLが今井、板敷、藤本、青木。LBは実績のある大竹と海崎。DBは逆に北川、和泉、竹原、平尾、中村という新鮮な顔ぶれ。これに加えてDLの春口、LB松永らがスピードに乗った動きで攻撃陣を押し込み、再三、インターセプトやロスタックルを奪った。
攻撃側で活躍したメンバーを含めて、昨秋の終盤、苦しい試合を経験したことが糧となり、自分の足らざるところを補い、長所を伸ばすべく、春先からの練習に取り組んできた成果だろう。
問題は2枚目、3枚目として出場したメンバーである。攻撃側でいえば、捕れそうなパスを簡単に落とす。ブロックを振り切られる。スナップを取り損なう。ラインも簡単に割られるといった点だ。昨秋の修羅場をくぐってきたメンバーがそれなりに成長したプレーをしているのを見るに付けても、昨秋の経験値の違いがそのまま成長度の違いに結びついているように思えた。
もちろん、新2年生は昨年、一度も試合に出してもらえなかったメンバーが大半である。3、4年生でも、昨季の後半、山場の試合にはほとんど出ていないメンバーが何人もいる。4年生が卒業し、学年が一つ上がったからといって、全員が急激にプレー理解が進み、動きにキレが出てくる訳ではない。
しかしながら、そうしたメンバーが一人でも二人でも、昨季活躍したメンバーに追いつき追い越していかなければ、卒業したメンバーの後は埋められない。当然、勝利への道も遠ざかる。
それでなくても、ライスボウルに出場した翌年はチーム作りのスタートが遅れる。昨年の関西リーグで敗れたチームはすでの昨年の12月、場合によっては11月末から新チームをスタートさせている。対するファイターズは1月3日にライスボウルを戦った後は、すぐに後期試験。実質的には新しいチームは2月からのスタートである。
加えて今季は、グラウンドの改修工事が入って3月末まで本拠での練習ができなかった。チームの仕上がりが例年にも増して遅いのは、仕方のないことかも知れない。
しかし、対戦相手にとっては、そんなことは知ったことではない。春に対戦を予定している関東勢も、社会人チームも相手がファイターズとなれば、全力で立ち向かってくる。それは例年、春先に戦うチームには、決まって苦しい戦いを余儀なくされている前例を見れば明らかだ。
この日の試合後、鳥内監督とすれ違ったとき、開口一番「今度の試合、負けますよ」と言われたのも理由のあることである。
グラウンドの端で少し話を聞いた寺岡主将も似たような言葉を口にしていた。「試合形式で行うのは今季初めて。そこで、プレーのレベルの低さがいくつも見られた。きちんと(選手に)言わなければならないことがある」といった話である。
春先、じっくり筋力トレーニングに取り組めば、その分、試合形式の練習に割ける時間は少なくなる。だからといって、試合形式の取り組みに重点を置くと、肝心の体幹を鍛え、相手を圧倒するパワーを身に付ける時間がなくなる。そのジレンマを解消するためには、選手一人一人が自ら工夫して練習に取り組み、同時に遅れている仲間を引っ張っていくしかない。
もちろん、たとえ紅白戦であっても、勝手知った身内にさえボコボコにやられた選手は、その屈辱を成長へのエネルギーに換え、これまで以上に真剣に練習に取り組まなければならない。
今日の紅白戦で、一つだけはっきりしたことがある。それは、学年が一つ上がったからといって、自動的に実力が1ランク上がるとわけではないこと。このことを肝に銘じて練習に励んでもらいたい。
男子3日会わざれば刮目(かつもく=目を見開いて)して見よ、という。今週後半の練習、あるいは土曜日の試合で、この日、不本意な動きしかできなかったメンバーがどんな動きを見せてくれるのか。刮目して見たい。
午前中は大学生の練習と紅白戦。午後は小学生やOBらが参加してフラッグフットボールなどを楽しめるようにプログラムがセットされている。天気は晴れ。風もなく穏やかな一日となり、応援のお父さんやお母さんも含めて多くの人たちで賑わった。
しかし、午前のチーム練習と紅白戦を見せてもらっただけで、早々に引き上げた。時間にして2時間弱。紅白戦だけでは1時間ほど。今季の予告編というのもおこがましいほどの時間だったが、いい意味でも悪い意味でも、見るべき点は少なくなかった。
まずはいい方から。一言でいえば、昨年秋のシーズン、特に関西リーグの後半戦以降の試合に出場し、苦しい試合を勝ち抜いてきたメンバーはみな、その修羅場を踏んだ経験を糧にして、終始、堅実なプレーを見せてくれた。勝手知ったチームメートとの戦いという点を割り引いても、それぞれに一段と成長していた。攻撃ではラインの村田、藤田統、森、松永、WRの阿部、鈴木、大村、RBでは三宅、前田公。そしてQBは、昨年度甲子園ボウルMVPの奥野。これに昨年はほとんど出場チャンスがなかったTE亀井やRB斎藤、WR鏡味、OL牧野らも元気なところを見せてくれた。
守備で先発したのはDLが今井、板敷、藤本、青木。LBは実績のある大竹と海崎。DBは逆に北川、和泉、竹原、平尾、中村という新鮮な顔ぶれ。これに加えてDLの春口、LB松永らがスピードに乗った動きで攻撃陣を押し込み、再三、インターセプトやロスタックルを奪った。
攻撃側で活躍したメンバーを含めて、昨秋の終盤、苦しい試合を経験したことが糧となり、自分の足らざるところを補い、長所を伸ばすべく、春先からの練習に取り組んできた成果だろう。
問題は2枚目、3枚目として出場したメンバーである。攻撃側でいえば、捕れそうなパスを簡単に落とす。ブロックを振り切られる。スナップを取り損なう。ラインも簡単に割られるといった点だ。昨秋の修羅場をくぐってきたメンバーがそれなりに成長したプレーをしているのを見るに付けても、昨秋の経験値の違いがそのまま成長度の違いに結びついているように思えた。
もちろん、新2年生は昨年、一度も試合に出してもらえなかったメンバーが大半である。3、4年生でも、昨季の後半、山場の試合にはほとんど出ていないメンバーが何人もいる。4年生が卒業し、学年が一つ上がったからといって、全員が急激にプレー理解が進み、動きにキレが出てくる訳ではない。
しかしながら、そうしたメンバーが一人でも二人でも、昨季活躍したメンバーに追いつき追い越していかなければ、卒業したメンバーの後は埋められない。当然、勝利への道も遠ざかる。
それでなくても、ライスボウルに出場した翌年はチーム作りのスタートが遅れる。昨年の関西リーグで敗れたチームはすでの昨年の12月、場合によっては11月末から新チームをスタートさせている。対するファイターズは1月3日にライスボウルを戦った後は、すぐに後期試験。実質的には新しいチームは2月からのスタートである。
加えて今季は、グラウンドの改修工事が入って3月末まで本拠での練習ができなかった。チームの仕上がりが例年にも増して遅いのは、仕方のないことかも知れない。
しかし、対戦相手にとっては、そんなことは知ったことではない。春に対戦を予定している関東勢も、社会人チームも相手がファイターズとなれば、全力で立ち向かってくる。それは例年、春先に戦うチームには、決まって苦しい戦いを余儀なくされている前例を見れば明らかだ。
この日の試合後、鳥内監督とすれ違ったとき、開口一番「今度の試合、負けますよ」と言われたのも理由のあることである。
グラウンドの端で少し話を聞いた寺岡主将も似たような言葉を口にしていた。「試合形式で行うのは今季初めて。そこで、プレーのレベルの低さがいくつも見られた。きちんと(選手に)言わなければならないことがある」といった話である。
春先、じっくり筋力トレーニングに取り組めば、その分、試合形式の練習に割ける時間は少なくなる。だからといって、試合形式の取り組みに重点を置くと、肝心の体幹を鍛え、相手を圧倒するパワーを身に付ける時間がなくなる。そのジレンマを解消するためには、選手一人一人が自ら工夫して練習に取り組み、同時に遅れている仲間を引っ張っていくしかない。
もちろん、たとえ紅白戦であっても、勝手知った身内にさえボコボコにやられた選手は、その屈辱を成長へのエネルギーに換え、これまで以上に真剣に練習に取り組まなければならない。
今日の紅白戦で、一つだけはっきりしたことがある。それは、学年が一つ上がったからといって、自動的に実力が1ランク上がるとわけではないこと。このことを肝に銘じて練習に励んでもらいたい。
男子3日会わざれば刮目(かつもく=目を見開いて)して見よ、という。今週後半の練習、あるいは土曜日の試合で、この日、不本意な動きしかできなかったメンバーがどんな動きを見せてくれるのか。刮目して見たい。
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