石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

(30)プライズマーク

投稿日時:2018/12/11(火) 09:26rss

 ファイターズには、公式戦で活躍した選手を称えるために「プライズマーク」を贈呈する仕組みがある。僕のように観客席から眺めているだけの人間の目にも明らかな活躍をした選手はもちろん、たとえ地味であっても、控えのメンバーであっても、経験を積んだコーチから見れば高く評価できるプレーをした選手に与えられる。
 もちろん、どんなに能力の高い選手でも、けがなどで戦列を離れてしまえば、1枚ももらえない。逆に下級生であっても、試合に出場し、目を見張る活躍をした選手にはその活躍に応じて1枚、2枚、3枚と与えられる。
 だからそのマークをより多く獲得した選手がシーズンを通じて活躍した選手であり、チームのためにより多く貢献した選手といってもよい。
 その証しがプライズマークであり、選手はそれをヘルメットに貼り付けて自身の励みとし、より一層、チームに貢献しようと努力するのである。
 先日の西日本代表決定戦、立命館大学との戦いでは、そのプライズマークが驚くほど多くの選手に、驚くほど大量に与えられた。例えば、ディフェンスでは先発メンバー全員に3枚ずつ、オフェンスでは攻撃のリズムを作る華麗なパスキャッチを何度も見せてくれたWRの小田や阿部にそれぞれ5枚。試合の流れを引き寄せたQB光藤や奥野、DB横澤、畑中、さらには終始オフェンスの中央を支えきったラインの高木、森、松永らにも数多くのマークが与えられた。
 特記されるのは、前回の試合で一気に10枚を贈られる選手が、同時に二人出たことである。通常の試合では1枚、あるいは2枚と限定的に贈られ、5枚も贈られること自体が珍しい。それが前回の試合では、二人の選手に一挙に10枚ずつが贈られた。そんなことは、僕の記憶にはない。それほどコーチの目から見て、二人の活躍が突出していたのだろう。
 その選手の名前はOLの森とLBを務めた大竹である。ともに3年生。それぞれ高等部時代から活躍していた選手だが、けがなどで伸び悩み、なかなか「不動のメンバー」にはなれなかった。大竹は今季、何度も先発していたが、同じポジションで活躍している2年生の海崎や繁治の影に隠れていた。森にいたっては高校時代の同期、森田に先発の座を占められ、けがもあってほとんど出場機会がなかった。
 それがあの大一番で大活躍。大竹は果敢な突進で相手ラインを突破し、強烈なロスタックルを何度も決めた。森は終始ラインの中央を死守してQBを守り、ランナーの走路を開けた。QBを守って当たり前とされる地味なポジションだが、その役割を交代出場にも関わらず、完璧にこなした森と、能力の高い立命のラインを突破し、ボールキャリアに食らいついた大竹。
 二人の動きに目を止め、それをビデオで確認した上で高く評価したのがそれぞれの担当コーチである。スタンドから、常にボールのあるところばかりを追いかけている僕らの目には見えないところをきちんとチェックしているコーチの目に驚くと同時に、活躍した選手にはその活躍振りに応じて「プライズマーク」を惜しげもなく贈呈し、活躍を称えるベンチの冷静にして的確な判断に、いまさらながら感動した。
 さて、今度の日曜日は大学王者を決める甲子園ボウルである。昨年、日大を相手に悔しい敗北を喫したその舞台に、ファイターズが全員で戻ってくる。今季の総決算ともいえるその試合で活躍するのは誰か。東の強豪を相手に、誰が突破口を開き、誰が守護神の役割を果たすのか。
 僕としては出場選手全員に3枚、あるいは5枚とプライズマークが贈られ、その上で試合の流れをつかみ、決定づけるプレーをした選手に3枚、5枚と奮発されるような試合を期待する。さらにいえば、サイドラインに並んだ選手、スタッフ全員に3枚、5枚と出したくなるような試合になれば、もっとうれしい。
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