石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(14)愛されるチーム
8月16日、平郡雷太君に会いに、ファイターズが夏合宿をしている東鉢伏の「かねいちや」を訪れた。
朝6時に到着する。涼しい。途中、高速道路脇の表示板には24度とあったから、高原の中腹にあるグラウンド付近は20度を少し上回る程度だろう。長袖のシャツを着ていても肌寒い。
まだ朝食前というのに、グラウンドではJVのメンバーが出て早朝練習の準備運動をしている。4年生も次々に宿舎から出て、練習用具を整えている。いつもながらの夏合宿の光景である。
グラウンドへ降りる手前の机の上には、例年通り平郡君への「誓いの言葉」を刻んだプレートが置かれている。この言葉を読むたびに、在りし日の彼の姿が浮かんでくる。2003年8月16日、ここで合宿中、不慮の事故で帰らぬ人となった彼を偲んで手を合わせ、しばらく黙祷することが僕にとっての大切な時間である。それは、後輩の諸君が日々、切磋琢磨している第3フィールドに出掛けるたびに、平郡君のヤマモモに手を合わせるのと同様、僕とファイターズとを結び付けている「誓いの絆」といってもよい。
練習はてきぱきと進み、無駄な時間は少しもない。JVのメンバーから順次早朝練習を切り上げて朝食。それが終わると小休止の後、今度はVのメンバーから朝の練習が始まる。10日からスタートした合宿も仕上げの段階とあって、恐ろしく密度が濃い。内容も午前中の練習とは思えないほど複雑だ。
聞けば、夕方からは雷が発生する予報が出ているとのことで、夕方の練習と朝の練習のメニューを入れ替えたそうだ。
いまはリーグ戦の開幕を目の前に控えた時期だが、照準は開幕戦ではない。秋のリーグを勝ち抜き、甲子園ボウルでも勝ってライスボウル制覇までを見据えた戦いである。今季はどんな戦いをするのか、どんな風にして強力なライバルたちに勝ち抜いていくか。それを見据えた練習である。シーズンが始まれば手が回らないような課題にじっくりと取り組む数少ない機会でもある。
当然、攻守とも求められる水準は高い。チームメート同士の練習であっても、第一プレーから白熱している。オフェンスが必死ならディフェンスも必死だ。本気で向き合い、本気でぶつかり合う。当然、けが人も出る。それでも、手加減はできない。上ヶ原での練習も密度は濃いが、鉢伏の合宿での練習の密度はさらに濃い。
毎年のことだが、この合宿には多数の卒業生が参加してくれる。今春、卒業したばかりのメンバーから監督やコーチと同じ世代の卒業生まで、メンバーは日々異なるが多くの卒業生が駆けつけ、差し入れを贈ったり、練習台を務めたりしてくれる。
お盆休みにも多くの若手が訪ねてくれたそうだが、僕がお邪魔した16日にも、懐かしい顔が何人も見えた。挨拶を交わしただけでも、14年卒の吉原直人、15年卒の木下豪大、田中雄大、橋本亮、17年卒の井若大知、高松生、山下司、片山薫平、松本和樹氏らの顔が見えた。
今春、卒業したばかりのメンバーは、普段の上ヶ原の練習にも顔を出し、コーチと同様の役割を果たしてくれているが、新鮮だったのは、いまも社会人のトップチームでプレーしている田中氏や吉原氏ら。いそいそと防具を着け、練習台を務めてくれた。田中氏に至っては、本来のディフェンスバックだけでなく、レシーバーのメンバーにも入って、全日本級の動きを惜しみなく披露してくれた。
さすがは「会費納入率8割」というOB会の構成員である。若手の社会人として日々、職務に精進しながら、つかの間の休日を返上して鉢伏の合宿に参加して後輩を激励し、鍛えてくれる。これは毎年のように見掛ける光景だが、彼らがこのチームを「魂のふるさと」と思い、手伝えることは何でもしようという気持ちになってくれているからだろう。
お金のある者はお金を、知恵のある者は知恵を、汗をかく者は汗を、それぞれ惜しみなく次の世代に注ぎ込む卒業生。そんな卒業生たちに「このチームだからこそお手伝いがしたい」と思わせる現役の部員たちとそれを支える監督やコーチ、指導者らのたたずまい。双方が渾然一体となって存在するのがファイターズである。それは歴代のOB、OG、そして指導者らが営々と築いてきた文化であり、日本の学生スポーツ界でも例を見ない組織の在り方だろう。
いま、いろんな面で学生スポーツの在り方の根本が問われている。こうした時期だからこそ、ファイターズの活動と組織にもっと光を当てる必要があるのではないか。この夏の合宿を見て、その思いはさらに強くなった。
朝6時に到着する。涼しい。途中、高速道路脇の表示板には24度とあったから、高原の中腹にあるグラウンド付近は20度を少し上回る程度だろう。長袖のシャツを着ていても肌寒い。
まだ朝食前というのに、グラウンドではJVのメンバーが出て早朝練習の準備運動をしている。4年生も次々に宿舎から出て、練習用具を整えている。いつもながらの夏合宿の光景である。
グラウンドへ降りる手前の机の上には、例年通り平郡君への「誓いの言葉」を刻んだプレートが置かれている。この言葉を読むたびに、在りし日の彼の姿が浮かんでくる。2003年8月16日、ここで合宿中、不慮の事故で帰らぬ人となった彼を偲んで手を合わせ、しばらく黙祷することが僕にとっての大切な時間である。それは、後輩の諸君が日々、切磋琢磨している第3フィールドに出掛けるたびに、平郡君のヤマモモに手を合わせるのと同様、僕とファイターズとを結び付けている「誓いの絆」といってもよい。
練習はてきぱきと進み、無駄な時間は少しもない。JVのメンバーから順次早朝練習を切り上げて朝食。それが終わると小休止の後、今度はVのメンバーから朝の練習が始まる。10日からスタートした合宿も仕上げの段階とあって、恐ろしく密度が濃い。内容も午前中の練習とは思えないほど複雑だ。
聞けば、夕方からは雷が発生する予報が出ているとのことで、夕方の練習と朝の練習のメニューを入れ替えたそうだ。
いまはリーグ戦の開幕を目の前に控えた時期だが、照準は開幕戦ではない。秋のリーグを勝ち抜き、甲子園ボウルでも勝ってライスボウル制覇までを見据えた戦いである。今季はどんな戦いをするのか、どんな風にして強力なライバルたちに勝ち抜いていくか。それを見据えた練習である。シーズンが始まれば手が回らないような課題にじっくりと取り組む数少ない機会でもある。
当然、攻守とも求められる水準は高い。チームメート同士の練習であっても、第一プレーから白熱している。オフェンスが必死ならディフェンスも必死だ。本気で向き合い、本気でぶつかり合う。当然、けが人も出る。それでも、手加減はできない。上ヶ原での練習も密度は濃いが、鉢伏の合宿での練習の密度はさらに濃い。
毎年のことだが、この合宿には多数の卒業生が参加してくれる。今春、卒業したばかりのメンバーから監督やコーチと同じ世代の卒業生まで、メンバーは日々異なるが多くの卒業生が駆けつけ、差し入れを贈ったり、練習台を務めたりしてくれる。
お盆休みにも多くの若手が訪ねてくれたそうだが、僕がお邪魔した16日にも、懐かしい顔が何人も見えた。挨拶を交わしただけでも、14年卒の吉原直人、15年卒の木下豪大、田中雄大、橋本亮、17年卒の井若大知、高松生、山下司、片山薫平、松本和樹氏らの顔が見えた。
今春、卒業したばかりのメンバーは、普段の上ヶ原の練習にも顔を出し、コーチと同様の役割を果たしてくれているが、新鮮だったのは、いまも社会人のトップチームでプレーしている田中氏や吉原氏ら。いそいそと防具を着け、練習台を務めてくれた。田中氏に至っては、本来のディフェンスバックだけでなく、レシーバーのメンバーにも入って、全日本級の動きを惜しみなく披露してくれた。
さすがは「会費納入率8割」というOB会の構成員である。若手の社会人として日々、職務に精進しながら、つかの間の休日を返上して鉢伏の合宿に参加して後輩を激励し、鍛えてくれる。これは毎年のように見掛ける光景だが、彼らがこのチームを「魂のふるさと」と思い、手伝えることは何でもしようという気持ちになってくれているからだろう。
お金のある者はお金を、知恵のある者は知恵を、汗をかく者は汗を、それぞれ惜しみなく次の世代に注ぎ込む卒業生。そんな卒業生たちに「このチームだからこそお手伝いがしたい」と思わせる現役の部員たちとそれを支える監督やコーチ、指導者らのたたずまい。双方が渾然一体となって存在するのがファイターズである。それは歴代のOB、OG、そして指導者らが営々と築いてきた文化であり、日本の学生スポーツ界でも例を見ない組織の在り方だろう。
いま、いろんな面で学生スポーツの在り方の根本が問われている。こうした時期だからこそ、ファイターズの活動と組織にもっと光を当てる必要があるのではないか。この夏の合宿を見て、その思いはさらに強くなった。
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